【完結】君が見ているその先には

彩華(あやはな)

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 マリアが帰った次の日、絨毯のことを領民に相談したところ、渋々といった感じだった。
 自分は信用されていないのだと実感した。

 知っているはずの顔や話したことがある人もいたが、初対面であるような反応をしてくる。
 
 困っていることを聞いても答えてくれなかった。一人相撲している気になる。
 どうすればいいのか。僕を見てくれないので何を喋れば良いのかもわからなくなる。

 彼らは僕の背後を見ていた。
 形のない兄の姿を見ているのだろうか。

 兄の存在の大きさを痛感した。

 一週間もしないうちに王都に帰る。
 タウンハウスに帰れば、屋敷に入ってすぐに使用人たちから冷たい視線を受けることになった。
 ヴィクトリアが僕を見た瞬間眉を顰める。

「早いお帰りですね。碌に仕事もせずのお戻りですか?」
「いや・・・そうじゃ・・・」
「ほんとうに使えない方ですね。ローレンスは素晴らしかったですわ。仕事をするのも手際が良かったですもの。早く仕事を終わらせて、私との時間を作ってくださいましたもの」 

 知っている。兄は時間の使い方が上手かった。
 なかなか同じように出来なくて悔しかったのだから。

 僕だって真剣にやっている。
 でも誰も理解してくれない。

「なんですの、その顔?自分は頑張っていると思っているの?できていないのに?努力が足りていないのにやった気でいるなんて、大丈夫なの?それとも頭が足りないのに気づいてないだけなのかしら?」

 ヴィクトリアは嘲笑ってきた。

 悔しいのに何もいい返せない。

「あなたのしけた顔を見たら気分が悪くなりましたわ。気晴らしにこれから友人のパーティーに行ってくるわ。明日は買い物に行くから、お代はよろしくね」

 ふんと鼻を鳴らして彼女は去っていった。
 これを見ていた使用人たちもくすくすと笑いながらいなくなる。
 
 誰もいなくなってから、執務室に帰った。
 静かな部屋が落ち着く。いや、静かだからこそヴィクトリアの言葉が頭の中を反響した。
 頑張ってると思ってるの?努力が足りていないと言われた。頭が足りない?彼女のいうように僕は他人と違うのだろうか?どこかおかしいのだろうか?
 同じだと思っていた。
 
 

 その夜、外出していた父に呼ばれた。
 絨毯のことが耳に入ったのかもしれない。
 部屋に入るなり、父は僕を見るなり深いため息をついた。

「リューン。お前は余計なことはしなくていい」

 抑揚のない声。
 
「ですが・・・」
「はあ・・・。理解していない素人になにができる?」
「勉強はしました。マリア嬢の話は有益だと思います」
「あんな女のいうことを間に受けるあたりが素人だと言っている」
「ですが、彼女の商会はこの国でも誰もが知っているほどの」
「リューン!!」

 初めて強い口調で名前を呼ばれ押し黙る。
 父は額に手をやりまたため息をついた、ら

「ローレンスならば・・・」

 兄ならば・・・なんだろう。
 兄ならこんな提案をしなかった?
 僕の考えはいけないこと?聞くことも考える価値もないくだらないことなのか?
 

 マリア。自信なんてないよ。
 僕のいる価値ってあるのかな?

「父さんの決定に、従い、ます」

 僕は部屋を出た。

 
 

 
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