氷の上司に、好きがバレたら終わりや

naomikoryo

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本当の最終回:「ずっと一緒に、おるって決めたから」

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▶1. 悠真、保育園デビュー前日
春。東京の桜が、ようやく開きはじめたころ。
舞子は、リビングで息子・悠真の名前が書かれた「入園書類」をじっと見ていた。

「はぁ……信じられへん。あの、毎晩“夜泣き地獄”やった子が、もう保育園……」

誠:「今でも泣きますけどね。特に寝る前、たそがれ泣き」

「それな。しかも、お風呂入れようとしたら突然“いや~!”って叫びよるし」

悠真:「いや~!!(元気よく)」

「うわ、今言うた!リアルタイムで主張きた!」

ふたりは笑いながらも、どこか寂しさも滲んでいた。

舞子:「……なんかさ、ちゃんと子育てできてたんかな、って、ふと考えてまうねん」

誠:「……僕もそう思います。でも、あなたとだったから、乗り越えられた」

舞子:「うちも。あんたおらんかったら、沐浴の時点で詰んでたわ」

 

▶2. 保育園初登園の日の朝
「ほら悠真!保育園やで!わ~!初日や!ママ緊張でお腹痛いわ!」

「まいこさんが緊張するんですか」

「そらするやろ!人生初の社会やで!?
うち、いまだに“会社のスキャンカードかざす瞬間”ちょっと緊張するもん!」

誠:「わかります。あれ通らなかったら“今日、社会から拒否られた気がする”」

舞子:「それな」

悠真はリュックを背負い、キョロキョロしながらも足取りは軽い。
でも、保育園の玄関で、ピタリと足が止まった。

「……ママ」

「うん?」

「……いかんで」

小さな手が、舞子の手をぎゅっと握っていた。

(あかん……泣く……これは泣く……)

舞子の目に、自然と涙が溜まる。

「大丈夫。ママもここおるし、パパもおる。
悠真、ちゃんと笑って帰ってきたら、それで100点満点や」

誠は静かに、悠真の背中を押した。

「行ってらっしゃい。世界は、怖くないよ。
だって、君には“帰ってくる場所”があるから」

 

▶3. 舞子、職場復帰初日
数日後――

舞子は、久しぶりのスーツ姿に身を包み、会社のビルを見上げていた。

(うわ~~~……社会の風、冷たい~~~……けど、懐かしい~~~……)

「おはようございます!!」

「おお、舞子ちゃん復帰!待ってたで!」

「さっそく笑かしてくれるって噂やで」

「やかましいわ!うち、今日から“デキる母”モードやからな!」

笑顔と拍手に迎えられ、舞子は久しぶりにデスクに着いた。

そして、隣のデスクには――

「ようこそ、社会へ戻ってきましたね」

「なにその“氷の上司”口調。もう夫やのに」

「家庭と職場は切り分けましょう。業務時間内は“部下”です」

「うわ出た!でもキュンとしたわ」

ふたりは顔を見合わせ、笑った。

 

▶4. 4年後――卒園式の日
時間は飛んで、4年後。
桜の咲く、少し肌寒い日。

悠真は、小さなスーツに身を包み、
卒園式の会場の前で、ちょっと誇らしげな顔をしていた。

舞子はスーツ姿のまま、手を振って呼んだ。

「悠真!こっち向いて~!笑って~!ほら、あんたの卒園アルバムのトップバッターやで~!!」

誠:「君の声で他の親がびくついています」

「しゃーない!うちの子、めっちゃ可愛いんやもん!」

誠はカメラを構えながら、そっとつぶやいた。

「“家族になる”って、こういうことなんだな」

舞子:「ん?」

誠:「日々の積み重ねが、確かに“形”になって、
今日みたいに、未来を祝える日が来る。……感謝してるよ、舞子さん」

「……うちもや。
出会って、“氷の上司”やと思ってたあんたが、
いまは、“うちの全部”やもんな」

「それは少し、照れます」

「照れてええねん。せやけどこれだけは言うとくわ。
この先もずっと――

“うちは、あんたと悠真と一緒に生きていくって、決めたから”」
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