わんこな旦那様の胃袋を掴んだら、溺愛が止まらなくなりました。

楠ノ木雫

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◇14 あっ、終わった。

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 つい数時間前に出勤された旦那様の言った通り、ムセラス教皇から贈り物が届いた。

 そして、それを持ってきたのは……


「お久しぶりでございます、殿下」

「えぇ、久しぶりね……これ、一体誰が選んだの」

「それはもちろん! アルトゥル様でございますよ」


 あ……終わったかも。あのいたずら小ぞ……教皇のご子息が一体何を選んだのかは分からないけれど、彼が客間のローテーブルに置いている箱の中身は嫌な予感しかない。

 けれどまさか、教皇の側近のご子息の方がわざわざ来るとは思わなかった。暇なのか? いや、ここに来る暇があったらちゃんと神様を拝んでろよ。

 そして、箱を目の前に置かれた。やばい、冷や汗かいてきた。さ、開けてみてくださいと言われて、独特なデザインの箱をそっと開けてみると……そっと閉めてお返ししたくなってしまった。あぁ、やっぱりそうだ……


「……教会の仲間入りをしろと?」

「そんな事はございませんよ。異国の地に嫁入りした姫さまに、神の祝福をお与えするよう教皇から承ったまででございます」

「……」


 あんのクソジジイ……と言いたいところではあるけれど、さすがにこんなところで言ってしまうのはマズい。

 このご子息は、確か教会の神官じゃなかったっけ。だから来たのね。はぁ、何とも余計な事を……

 内心ため息を吐きつつも、箱の中身に目を向けた。これは、教会の神官たちが持つものの一つであるネックレスだ。神官になる際にいただくものであり、この円の中に十字があるデザインのチャームは神からの加護をいただいているという証となる。

 ……なるほど、仲間入りはしていないけれど祝福と加護はいただきますだなんて……いいのか?

 まぁ、この関係の始まりを考えると……まぁ、いっか。


「さ、姫さま」

「えぇ」


 客間のソファーから腰を上げた私と子息。私はソファーから離れ、よっこいしょと両膝を床に付け両指を組み祈りの姿勢を取った。

 そして、その目の前に立った子息は私の頭の上に手を乗せ、唱え始めた。この言葉は分からないけれど、何となく分かるような、ないような。唱え終わると、先ほどもらったネックレスをかけられた。


「神は姫さまに祝福をお与えくださいました。神は姫さまを常に見守り、時には手を貸してくださいます。これからの人生の中で、試練に直面する事がある事でしょう。ですが、神の祝福があれば、愛する者と共に……」


 ……ん? 愛する人と共に?


「その試練を乗り越えることが出来るでしょう」


 今、何て言った? 愛する人?


「神のお導きがあらんことを」


 これ、政略結婚って知ってるよね、あなた。ちょっと。それなのに愛する人って言っちゃっていいの?

 これって、絶対に旦那と仲良くしろよって、言ってる……?

 ……マジで言ってる?


「では姫さま、ダルナード大公殿下には姫さまからよろしくお願いしますよ」

「……はい」


 ……やられた。その笑顔に書いてある。神に言われたんだからちゃんと愛を育めよって。でも、言えない。まだ旦那様とちゃんと話すらしてないって。


 そして、国王陛下に少し挨拶をして今日中に首都を出ると残して邸宅を去っていってしまった。ダルナード大公殿下にもよろしくお伝えください、と。神官が教会を長く留守にするのはマズいらしいけれど、貴方今まで何回暁明に使節団として来てたっけ。まぁ言わないけれど。


「リーファ、これ後で宝物庫に持っていって」

「かしこまりました」

「えっ、よろしいのですか?」


 その時、アドラがそう声をかけてきた。これをずっと身に付けないといけないのでは? と言いたげだ。


「神から祝福が与えられた証がこのネックレスという事。なら、この邸宅にあるという事はここも神のご加護を受けたという事よ。だから身に付けなくても大丈夫」

「なるほど……」


 まぁ、知らないのも無理はないか。あの国の事は周りは知らないから。

 あの国は、神の声を聞く役目を持つ教皇がトップに立っている。いわゆる特殊な国だ。だから、色々と規制がある。

 とはいえ、私がこんな待遇を受けてしまっている事には理由がある。

 ムセラス市国の使節団は、最初は再生可能エネルギーの話をしたいがためにこちらに来訪したのだが……うちには御年80歳のおじちゃまがいる。そのおじちゃまを見た使節団の代表が興奮しきった様子で国王陛下に聞いてきたのだ。この方は一体いくつだと。

 教えてあげると、長生きの秘訣だのなんだのと質問の嵐となった。私はあの国は気難しいからと気を付けて対応していたんだけれど、まさか健康オタクの集まりだったとは思いもしなかった。

 まぁ、長生きしなさいという神のお告げがあったからだとは言っていたけれど……あの国の平均年齢が40歳だと聞いた時は本当に驚いた。さすがに神様もびっくりだ。まぁ、暁明も平均年齢は前世の日本より低いが、当時はどんどん上がり調子真っただ中だった。

 だから、どんどん仲良くなっていき友好関係はがっちりと強化されてしまったのだ。というか、使節団の来る頻度が多すぎる。そして教皇自ら来訪した時だってあった。その時の大騒ぎは今でも忘れられない。健康オタクすぎだわ。

 そしたらまさかのこのネックレス。本当に何を考えているのやら……


「はぁ……旦那様になんて言おう……」

「そのままお伝えすればよろしいのでは?」

「あの国の人達がどんな人達なのかまで言わないといけないって?」

「……神のお告げ、でしたし……」


 リーファも苦笑いね。気持ちは分かるわ。来訪期間中はいつも大変な思いしてたし。

 とりあえず、帰ってきた旦那様にご報告と、あと祝福も私がしなくちゃいけないよね……あぁ、面倒く……いや、大役を承ってしまって大丈夫かしら。

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