24 / 46
◇24-1 初めてのパーティーは波乱万丈
しおりを挟むシャレニア王国の首都にある王城。その敷地内にある宮の一つであるこの建物は、王族がパーティーなどを開く際に使われる会場だ。旦那様は陛下の甥であるため、私達の結婚式の際は披露宴にこの会場を使わせてもらった。
そして今日、王妃殿下主催のパーティーが催された。
「こちらにいらっしゃいましたか、ダルナード卿。ご夫人も、ご機嫌麗しゅう」
「あぁ、タリス卿」
もちろん、この会場には高位貴族もいる。そして、貴族の中では一番地位の高い私達に挨拶をしてくる人達も多いという事。
タリス公爵とタリス夫人とは披露宴でもお会いしたけれど……やはり緊張する。地位は一つ下ではあるけれど、やっぱり影響力というものは強い。それに、夫人も社交界では強い統率力を持っているから、気を付けないといけない人物だ。
これから、私が社交界で一番上の階級の夫人という事になる。舐められてはいけませんよ、姫様。と暁明のばぁやに言われているし。旦那様の為にも、頑張らせてもらわなきゃ。
「実は、大公妃殿下とお話したいと夫と話していたのです。いかがでしょう、あちらでお話をするのは」
それを言い出したのは、タリス夫人。
彼女はとても凛とした雰囲気の人だと披露宴の時に思っていたけれど、堂々としていて余裕も見せる方だ。彼女の持つ青い扇子はとてもよく似合っている。
それに、何となくではあるけれど、見極めようとしているようにも見える。いきなり嫁いできた、小さな島国の元王女。そんな小娘がこれから社交界を統率する事が出来るか、といったところか。
とはいえ、私は私でやるべきことは心得ている。旦那様の為にも、きちんと大公妃をやらせていただきますとも。
「私も、タリス夫人とお話がしたいと思っていたのです。初めてシャレニアに来たものですから、あまり社交界の事を知らなくて……教えていただけると嬉しいです」
「微力ではありますが、お役に立てることがあるのでしたら、よろこんで」
果たして、その笑顔の裏には何が書かれているのだろうか。逆に怖くもある。
「では旦那様、行ってまいります」
「いってらっしゃい。あとで迎えにいくから」
……来るんだ、迎えに。仕事の話とか、挨拶とかあるだろうに。
旦那様はこの国にとって重要な軍事力を管理する役職を持つ方。その忙しさからこういったパーティーにはあまり顔を出さないのだと聞いていた。だから、旦那様と話す場があれば飛び込む者達も多少なりともいるはずだ。
きっとその事も旦那様も理解しているはずなのに……来るんだ、迎えに。
「閣下ととても仲がよろしいのですね」
「えっ?」
「初めて見ましたわ、閣下のあのような姿を」
あのような姿、というのは……迎えに行く、と言ったところだろうか。別に普通のような気もしなくもないけれど……確か、陛下が以前旦那様は剣一筋の人だって言っていたような。想像しか出来ないけれど……わんこな旦那様が頭の中で邪魔をしてくる。お願い、大人しくしてて。
こちらにどうぞ、と談話が出来るよう用意されたソファーに座るよう促された。お隣、失礼してもよろしいでしょうか、と聞かれ許可をする。誰もいないから、ここを選んだのね。
「そういえば、夫人はお茶がお好きだそうですね。確か、閣下にお茶を淹れて差し上げているのだとか」
「えぇ、私他国のお茶を集めるのが趣味で、旦那様と過ごすアフタヌーンティーではその日の気分で茶葉を選び淹れて差し上げているのです」
「そうでしたか。とても仲睦まじいようで、安心しましたわ」
やっぱり、この方もちゃんとチェックしているようだ。まぁ、いきなり嫁いできた大公妃殿下だから注目はするだろう。
「夫人の母国でいらっしゃる暁明王国は貿易が盛んで何ヶ国もの国と取引をしているとお聞きしました。数年前から我がシャレニア王国とも貿易をさせていただいていているわけですから、夫人がこちらにいらしてくれた事は、国にとってもとてもありがたい事だと思っておりました」
「……そこまでおっしゃってくださってくれるとは、歓迎してくださりありがとうございます」
「もちろんですわ。夫人は我が国との架け橋となってくださった方ですから」
だいぶ、持ち上げるのね。恐らく、これで機嫌を損ねて離婚なんて事を言い出せば国際問題になると思っているのだろう。
「暁明王国は、我が国で長年頭を悩ませていたエネルギー問題を解決させてくださいました。更には……希少価値のあるものまで、この国に輸出してくださるとも聞きましたわ」
夫人は、希少価値のあるものまで、という言葉を小さな声で呟くように私に言った。それだけ、あまり周りに広げるべきでないものだと分かっているのだ。
そして、こんなに人がいるこの場所でこの話を出した。
確か、グロンダン夫人が社交界でこう言いふらしたんだっけ。私が、プラチナホワイトを持っていると嘘をついていたと。自分は元王女だからと見栄を張っていた、と。
暁明王国がどんな国で、ムセラス教皇とも繋がりがあると知っていても、私の悪評を言いふらすとは。
まぁでも、その後私に他国から結婚祝いの品が来たと知ってびっくりしているかも。
けれど、それを嘘だと見抜き、まだ公表されていないはずの、プラチナホワイトを輸入したことも知っている。それは、もうすでに情報を入手していたのか、それとも見抜いていたのか。
とはいえ、どちらであっても夫人はただ者ではないという事は分かる。
「本当に、感謝しているのです。ですから、わたくしたちは微力ながらお力になりたいと思っていますの」
お力に、ね……
公爵家のご夫人であり社交界にとって影響力もあるお方。そして私は彼女より上の地位である。夫人とは周りとの交流を深める事が仕事と言っても過言ではないから、彼女とは仲良くしていた方がいい。もちろん、足元をすくわれないように気を付けながら。
「恐れながら、わたくしが他の貴族夫人達とお会いする場を設けさせていただきたいと思っているのです。いかがでしょう、今度わたくしの主催するお茶会にいらっしゃいませんか? シャレニアの名産品である紅茶をご用意いたしますよ」
「……」
……シャレニアの名産品である、紅茶、ですか。
どうしよう、お仕事ではあっても、それを断りたい気持ちに駆られてしまう……
「……では、お言葉に甘えて、参加させてください」
けれど、ここはやっぱり大公妃としてちゃんとしないといけない。これも旦那様の為だ、と自分に言い聞かせよう。
79
あなたにおすすめの小説
ストーカーに狙われたので歳上騎士様に護衛をお願いしました。
ねーさん
恋愛
「氷の彫刻」と呼ばれる美貌の兄を持つ公爵令嬢のクラリッサは不審な視線に悩まされていた。
卒業を二日後に控えた朝、教室のクラリッサの机に置かれた一通の偏執狂者からの手紙。
親友イブを通じてイブの婚約者、近衛騎士団第四分団員のジョーンズに相談すると、第四分団長ネイトがクラリッサのパートナーとして卒業パーティーに出席してくれる事になって───
〈注〉
このお話は「婚約者が記憶喪失になりました。」と「元騎士の歳上公爵様がまさかの××でした!?」の続編になります。
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
乙女ゲームに転生するつもりが神々の悪戯で牧場生活ゲームに転生したので満喫することにします
森 湖春
恋愛
長年の夢である世界旅行に出掛けた叔父から、寂れた牧場を譲り受けた少女、イーヴィン。
彼女は畑を耕す最中、うっかり破壊途中の岩に頭を打って倒れた。
そして、彼女は気付くーーここが、『ハーモニーハーベスト』という牧場生活シミュレーションゲームの世界だということを。自分が、転生者だということも。
どうやら、神々の悪戯で転生を失敗したらしい。最近流行りの乙女ゲームの悪役令嬢に転生出来なかったのは残念だけれど、これはこれで悪くない。
近くの村には婿候補がいるし、乙女ゲームと言えなくもない。ならば、楽しもうじゃないか。
婿候補は獣医、大工、異国の王子様。
うっかりしてたら男主人公の嫁候補と婿候補が結婚してしまうのに、女神と妖精のフォローで微妙チートな少女は牧場ライフ満喫中!
同居中の過保護な妖精の目を掻い潜り、果たして彼女は誰を婿にするのか⁈
神々の悪戯から始まる、まったり牧場恋愛物語。
※この作品は『小説家になろう』様にも掲載しています。
【完結】後宮の片隅にいた王女を拾いましたが、才女すぎて妃にしたくなりました
藤原遊
恋愛
【溺愛・成長・政略・糖度高め】
※ヒーロー目線で進んでいきます。
王位継承権を放棄し、外交を司る第六王子ユーリ・サファイア・アレスト。
ある日、後宮の片隅でひっそりと暮らす少女――カティア・アゲート・アレストに出会う。
不遇の生まれながらも聡明で健気な少女を、ユーリは自らの正妃候補として引き取る決断を下す。
才能を開花させ成長していくカティア。
そして、次第に彼女を「妹」としてではなく「たった一人の妃」として深く愛していくユーリ。
立場も政略も超えた二人の絆が、やがて王宮の静かな波紋を生んでいく──。
「私はもう一人ではありませんわ、ユーリ」
「これからも、私の隣には君がいる」
甘く静かな後宮成長溺愛物語、ここに開幕。
結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた
夏菜しの
恋愛
幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。
彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。
そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。
彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。
いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。
のらりくらりと躱すがもう限界。
いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。
彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。
これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?
エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。
転生貧乏令嬢メイドは見なかった!
seo
恋愛
血筋だけ特殊なファニー・イエッセル・クリスタラーは、名前や身元を偽りメイド業に勤しんでいた。何もないただ広いだけの領地はそれだけでお金がかかり、古い屋敷も修繕費がいくらあっても足りない。
いつものようにお茶会の給仕に携わった彼女は、令息たちの会話に耳を疑う。ある女性を誰が口説き落とせるかの賭けをしていた。その対象は彼女だった。絶対こいつらに関わらない。そんな決意は虚しく、親しくなれるように手筈を整えろと脅され断りきれなかった。抵抗はしたものの身分の壁は高く、メイドとしても令嬢としても賭けの舞台に上がることに。
これは前世の記憶を持つ貧乏な令嬢が、見なかったことにしたかったのに巻き込まれ、自分の存在を見なかったことにしない人たちと出会った物語。
#逆ハー風なところあり
#他サイトさまでも掲載しています(作者名2文字違いもあり)
氷狼陛下のお茶会と溺愛は比例しない!フェンリル様と会話できるようになったらオプションがついてました!
屋月 トム伽
恋愛
ディティーリア国の末王女のフィリ―ネは、社交なども出させてもらえず、王宮の離れで軟禁同様にひっそりと育っていた。そして、18歳になると大国フェンヴィルム国の陛下に嫁ぐことになった。
どこにいても変わらない。それどころかやっと外に出られるのだと思い、フェンヴィルム国の陛下フェリクスのもとへと行くと、彼はフィリ―ネを「よく来てくれた」と迎え入れてくれた。
そんなフィリ―ネに、フェリクスは毎日一緒にお茶をして欲しいと頼んでくる。
そんなある日フェリクスの幻獣フェンリルに出会う。話相手のいないフィリ―ネはフェンリルと話がしたくて「心を通わせたい」とフェンリルに願う。
望んだとおりフェンリルと言葉が通じるようになったが、フェンリルの幻獣士フェリクスにまで異変が起きてしまい……お互いの心の声が聞こえるようになってしまった。
心の声が聞こえるのは、フェンリル様だけで十分なのですが!
※あらすじは時々書き直します!
獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。
真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。
狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。
私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。
なんとか生きてる。
でも、この世界で、私は最低辺の弱者。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる