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◇26-1 カフェインの摂りすぎはダメですよっ!
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その後、新聞でふたの付いたティーカップが話題となった。ミセラ夫人はこの紅茶をだいぶ気に入ってくれたらしく、ブティックに足を運んでくれた貴族のお客様達にこの紅茶を振る舞ったそうだ。ミセラ夫人が連れてきた使用人にちゃんと伝授もしたから、きっと美味しい紅茶を振る舞っているんだと思う。
そして、お母様からもティーポットの注文が多くなっているとの報告も受けた。
というか、早すぎるって。まぁ、それだけ社交界は広まるのが早いという事なんだろうけどさ。となると……これから向かうお茶会で何を言われるかたまったもんじゃない。だって、今乗ってる馬車の行き先はタリス公爵邸。タリス夫人が主催のお茶会なんだから。
絶対、何か言われる事だろう。タリス夫人はとても鋭い人でもあり、情報力にもたけている。そして社交界では影響力の強いだ。もし私が何か気に障るようなことをしたら……
「お待ちしておりました、ダルナード夫人」
「ごきげんよう」
馬車が停まり、私を出迎えてくれたのは今日の主催者であるタリス夫人だ。表情からして……何を考えているか分からないか。
数日前にも一度お会いしたけれど、本当にタリス夫人は優雅で所作の一つ一つが綺麗だ。私の目指すお手本がここにいらっしゃると感じてしまう。
このお屋敷だって、煌びやかで豪華、というものではないけれど、上品だ。本当に。お屋敷の見た目も、洗礼された庭も、素晴らしい。
今日は、庭園の東屋でお茶をするらしく、もうすでに他の招待客である夫人達が揃って談話をしていた。私はこの中で一番階級が上だから、こういった集まりなどは一番最後に入るためだ。
「ごきげんよう、ダルナード夫人」
「ごきげんよう」
皆、私が来たことに気が付くとすぐさま気付き立ち上がって挨拶をしてきた。今回の招待客は私含め皆上位階級のご夫人のみだ。タリス夫人は、上位階級は上位階級のみでの交流も重要だと思う方らしい。
上位階級は、名前の通り貴族の中で上の立場の者達。大公、公爵、侯爵、辺境伯、伯爵だ。上の立場ゆえの気品、誇り。それらを大切にする方なのだ。まぁ、頭が固いとも言うが。
その中で一番上の階級である私は、まぁ何かすれば睨まれる可能性もあるだろう。ダルナード家に文句を言えるかどうかは別として。
「わたくしたち、ダルナード夫人の母国である暁明王国に興味がございますの。お話を聞かせいただけたら嬉しいですわ」
「暁明王国は貿易大国ですからね。シャレニアも混ぜていただけて、今は強い友好関係を築き上げていますから、こちらとしてはとてもありがたい事ですわ」
「使節団に参加した私の旦那様は、とても素敵な国だったと得意げに私にお話になるのですよ。流石島国といったところでしょうか、船の技術は世界一だと言っていました。私もこの目で見てみたいと思っているのですが、タイミングがなくて……」
「外交官の侯爵がおっしゃるには、船内はまるで最高級のホテルのようだったそうです。でも私達、生まれてからずっと小さな船しか見た事がございませんので、船の中がホテルのようだと言われても想像がつかなくて。ですからぜひ、この目で見てみたいですわ」
皆さん母国の事を知りたかったらしい。いや、暁明をほめちぎるために呼ばれた、と言っていいかもしれないような、ないような。そう思いつつも質問に答えてあげた。
一応この国とは交流してきたけれど、知らない事ばかりだろう。それは当然の事だ。暁明王国の宝と考えられている技術などは他言無用とされている。だから、外に流れることを防いでいるのだ。そのせいもあって他国は暁明王国の事をよく知らない。
まぁ、私としても喋れることは限られているけれど。
「そういえば、ダルナード夫人のよく着ていらっしゃるベルスリーブドレス。今巷で大流行されているようですよ」
わたくしたちも仕立ててみたのです、と話しているが……ちらほらとベルスリーブドレスを着ている人がいる。ミセラ夫人が手掛けるブティックは、何ヶ月待ちと言っていたから、他の皆さん仕立ててる最中なのかな。
これから、コットンで作った服が登場する事になる。それが店頭に並び、周りがどんな反応をするのかは楽しみだ。まぁ、私が着ればこの国の流行となるとまで言われているから、私が着れば流行る事だろうけれど。
と、思っていたら……ご夫人の鋭い一撃を喰らう事になったのである。
「ところで、大公妃殿下、お茶が冷めてしまいますよ」
先ほどから、色々と隣にいらっしゃるタリス夫人から注意深く見られていたのは分かっていた。まるで大企業の面接のように。
以前お会いした王妃殿下主催のパーティーとはまた違った様子だったから、何かあるとは思っていたけれど……やっぱりそうか。まぁ、違う飲み方をミセラ夫人に教えて広めてもらい、新聞にも載せたから当然彼女も知っている事だろう。それを見て、彼女はどう思ったのだろうかと思っていたけれど……そうきたか。
私はまだ、紅茶のカップすら触れていない。だから、紅茶を一口も飲んでいないのだ。
「シャレニア王国でよく飲まれる、シャレニア人にとって慣れ親しんだお茶なのですが」
すごく刺々しい言い方だ。さっさと全部飲めとでも言っているように聞こえる。そして、ダルナード夫人、ではなく大公妃殿下、と私を呼んだ。その地位にいるのだから礼儀作法をちゃんとしろとしかりつけられているような気分になる。あなたは私のお母様ではないのですが。
ちょっと、カチンときてしまった。だから、ついこう言ってしまった。
「私はここでこの紅茶を飲んではいけないと判断したからですよ」
……と。当然、場は静かになる。
今、私は一口も紅茶を口にしていないためカップには紅茶が残っている。そして、皆さんのカップにも紅茶が残っている。それはどうしてか。この中で一番階級の高い方よりも多く飲んではいけないというルールがあるからだ。そう、ルール。じゃあ、そのルールは一体誰が決めたのだろうか。
「……大公妃殿下、好き嫌いは人それぞれでしょうが、ここはシャレニア王国です。きっとたびたびこのお茶が出る場面がございます。まだ礼儀作法どころか基本知識すら身に付いていないようですから、今のうちに勉強なさった方がよろしいかと。恥をかかぬうちに」
「……」
「そのせいで、家門に泥を塗ってしまったご令嬢を何人も見た事がございます。彼女達はその後社交界に顔を出さなくなってしまいましたからどうなってしまったのかは存じませんが、大公妃殿下、貴方は彼女達より上の地位に立っております。貴方という存在がどういうものなのか、それをまずはご理解した方がよろしいかと思いますわ」
確かに、言っていることは分かる。
だけど、冷める前に飲まなければいけないという決まりはこの国ではどこにもない。もちろん、ちゃんと最後まで飲まなければならないという決まりも。王族の方々から出されたものは別だが。
これはただ単に、この方が勝手に決めたルール。それが社交界に広まっただけの事。地位の高い者に全て合わせる。それが常識にされてしまった。
それはつまり、例え紅茶に含まれているカフェインを控えていたとしても飲まなければならない。もしそんな事を言ってみろ、社交界で力のあるタリス夫人に睨まれでもしたら大変な事になる。なんとも理不尽な事である。
「それは大変申し訳ございませんでした。でしたら、お詫びしなければなりませんね」
そう言い、近くに立っていたリーファに目を向けた。どういう意味なのかを瞬時に理解してくれたようだ。少々失礼しますとその場を去った。
お詫び。その言葉に困惑している人が多々いるが、その中の一人は怖い顔をしている。
大公妃殿下とあろうものが、地位の低い者達へお詫びをする。しかも、今ここで。
本来なら、軽く謝罪をし後日贈り物を送るか同じメンバーを招待しお茶会などを催すのが常識だ。だが私はあえて今ここでお詫びをすることに決めた。それは何故か。
少し待つと、リーファが持ってきた。トレーに乗せた、ティーポット二つと人数分のティーセットを。そして、今日出された紅茶と同じ茶葉ともう一つの茶葉を。
「……これはどういう事でしょうか」
もしかして、と他の方々は思っているだろうが……ただ一人だけは鋭い目つきでこちらを見てくる。
「キッチンをお借りしてもよろしいですか?」
「……構いませんよ」
地位の高い者からのお願いだ。断れるわけがない。
そして、お母様からもティーポットの注文が多くなっているとの報告も受けた。
というか、早すぎるって。まぁ、それだけ社交界は広まるのが早いという事なんだろうけどさ。となると……これから向かうお茶会で何を言われるかたまったもんじゃない。だって、今乗ってる馬車の行き先はタリス公爵邸。タリス夫人が主催のお茶会なんだから。
絶対、何か言われる事だろう。タリス夫人はとても鋭い人でもあり、情報力にもたけている。そして社交界では影響力の強いだ。もし私が何か気に障るようなことをしたら……
「お待ちしておりました、ダルナード夫人」
「ごきげんよう」
馬車が停まり、私を出迎えてくれたのは今日の主催者であるタリス夫人だ。表情からして……何を考えているか分からないか。
数日前にも一度お会いしたけれど、本当にタリス夫人は優雅で所作の一つ一つが綺麗だ。私の目指すお手本がここにいらっしゃると感じてしまう。
このお屋敷だって、煌びやかで豪華、というものではないけれど、上品だ。本当に。お屋敷の見た目も、洗礼された庭も、素晴らしい。
今日は、庭園の東屋でお茶をするらしく、もうすでに他の招待客である夫人達が揃って談話をしていた。私はこの中で一番階級が上だから、こういった集まりなどは一番最後に入るためだ。
「ごきげんよう、ダルナード夫人」
「ごきげんよう」
皆、私が来たことに気が付くとすぐさま気付き立ち上がって挨拶をしてきた。今回の招待客は私含め皆上位階級のご夫人のみだ。タリス夫人は、上位階級は上位階級のみでの交流も重要だと思う方らしい。
上位階級は、名前の通り貴族の中で上の立場の者達。大公、公爵、侯爵、辺境伯、伯爵だ。上の立場ゆえの気品、誇り。それらを大切にする方なのだ。まぁ、頭が固いとも言うが。
その中で一番上の階級である私は、まぁ何かすれば睨まれる可能性もあるだろう。ダルナード家に文句を言えるかどうかは別として。
「わたくしたち、ダルナード夫人の母国である暁明王国に興味がございますの。お話を聞かせいただけたら嬉しいですわ」
「暁明王国は貿易大国ですからね。シャレニアも混ぜていただけて、今は強い友好関係を築き上げていますから、こちらとしてはとてもありがたい事ですわ」
「使節団に参加した私の旦那様は、とても素敵な国だったと得意げに私にお話になるのですよ。流石島国といったところでしょうか、船の技術は世界一だと言っていました。私もこの目で見てみたいと思っているのですが、タイミングがなくて……」
「外交官の侯爵がおっしゃるには、船内はまるで最高級のホテルのようだったそうです。でも私達、生まれてからずっと小さな船しか見た事がございませんので、船の中がホテルのようだと言われても想像がつかなくて。ですからぜひ、この目で見てみたいですわ」
皆さん母国の事を知りたかったらしい。いや、暁明をほめちぎるために呼ばれた、と言っていいかもしれないような、ないような。そう思いつつも質問に答えてあげた。
一応この国とは交流してきたけれど、知らない事ばかりだろう。それは当然の事だ。暁明王国の宝と考えられている技術などは他言無用とされている。だから、外に流れることを防いでいるのだ。そのせいもあって他国は暁明王国の事をよく知らない。
まぁ、私としても喋れることは限られているけれど。
「そういえば、ダルナード夫人のよく着ていらっしゃるベルスリーブドレス。今巷で大流行されているようですよ」
わたくしたちも仕立ててみたのです、と話しているが……ちらほらとベルスリーブドレスを着ている人がいる。ミセラ夫人が手掛けるブティックは、何ヶ月待ちと言っていたから、他の皆さん仕立ててる最中なのかな。
これから、コットンで作った服が登場する事になる。それが店頭に並び、周りがどんな反応をするのかは楽しみだ。まぁ、私が着ればこの国の流行となるとまで言われているから、私が着れば流行る事だろうけれど。
と、思っていたら……ご夫人の鋭い一撃を喰らう事になったのである。
「ところで、大公妃殿下、お茶が冷めてしまいますよ」
先ほどから、色々と隣にいらっしゃるタリス夫人から注意深く見られていたのは分かっていた。まるで大企業の面接のように。
以前お会いした王妃殿下主催のパーティーとはまた違った様子だったから、何かあるとは思っていたけれど……やっぱりそうか。まぁ、違う飲み方をミセラ夫人に教えて広めてもらい、新聞にも載せたから当然彼女も知っている事だろう。それを見て、彼女はどう思ったのだろうかと思っていたけれど……そうきたか。
私はまだ、紅茶のカップすら触れていない。だから、紅茶を一口も飲んでいないのだ。
「シャレニア王国でよく飲まれる、シャレニア人にとって慣れ親しんだお茶なのですが」
すごく刺々しい言い方だ。さっさと全部飲めとでも言っているように聞こえる。そして、ダルナード夫人、ではなく大公妃殿下、と私を呼んだ。その地位にいるのだから礼儀作法をちゃんとしろとしかりつけられているような気分になる。あなたは私のお母様ではないのですが。
ちょっと、カチンときてしまった。だから、ついこう言ってしまった。
「私はここでこの紅茶を飲んではいけないと判断したからですよ」
……と。当然、場は静かになる。
今、私は一口も紅茶を口にしていないためカップには紅茶が残っている。そして、皆さんのカップにも紅茶が残っている。それはどうしてか。この中で一番階級の高い方よりも多く飲んではいけないというルールがあるからだ。そう、ルール。じゃあ、そのルールは一体誰が決めたのだろうか。
「……大公妃殿下、好き嫌いは人それぞれでしょうが、ここはシャレニア王国です。きっとたびたびこのお茶が出る場面がございます。まだ礼儀作法どころか基本知識すら身に付いていないようですから、今のうちに勉強なさった方がよろしいかと。恥をかかぬうちに」
「……」
「そのせいで、家門に泥を塗ってしまったご令嬢を何人も見た事がございます。彼女達はその後社交界に顔を出さなくなってしまいましたからどうなってしまったのかは存じませんが、大公妃殿下、貴方は彼女達より上の地位に立っております。貴方という存在がどういうものなのか、それをまずはご理解した方がよろしいかと思いますわ」
確かに、言っていることは分かる。
だけど、冷める前に飲まなければいけないという決まりはこの国ではどこにもない。もちろん、ちゃんと最後まで飲まなければならないという決まりも。王族の方々から出されたものは別だが。
これはただ単に、この方が勝手に決めたルール。それが社交界に広まっただけの事。地位の高い者に全て合わせる。それが常識にされてしまった。
それはつまり、例え紅茶に含まれているカフェインを控えていたとしても飲まなければならない。もしそんな事を言ってみろ、社交界で力のあるタリス夫人に睨まれでもしたら大変な事になる。なんとも理不尽な事である。
「それは大変申し訳ございませんでした。でしたら、お詫びしなければなりませんね」
そう言い、近くに立っていたリーファに目を向けた。どういう意味なのかを瞬時に理解してくれたようだ。少々失礼しますとその場を去った。
お詫び。その言葉に困惑している人が多々いるが、その中の一人は怖い顔をしている。
大公妃殿下とあろうものが、地位の低い者達へお詫びをする。しかも、今ここで。
本来なら、軽く謝罪をし後日贈り物を送るか同じメンバーを招待しお茶会などを催すのが常識だ。だが私はあえて今ここでお詫びをすることに決めた。それは何故か。
少し待つと、リーファが持ってきた。トレーに乗せた、ティーポット二つと人数分のティーセットを。そして、今日出された紅茶と同じ茶葉ともう一つの茶葉を。
「……これはどういう事でしょうか」
もしかして、と他の方々は思っているだろうが……ただ一人だけは鋭い目つきでこちらを見てくる。
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