わんこな旦那様の胃袋を掴んだら、溺愛が止まらなくなりました。

楠ノ木雫

文字の大きさ
39 / 46

◇33 久しぶりの双子達

しおりを挟む

 時は過ぎ、《クッキー専門店・パティスリー》も着実に成果を上げていた。最初はためらっていた紅茶のクッキーは今では人気商品となっていた。

 そして、今日。私は今、王城にいる。

 もう国王誕生祭を数日に控えているのだ。そのため他国からの使節団の方々が着々とシャレニア王国に集まってきている。そしてその中の一つ。


「お久しぶりでございます、姉様」

「お元気そうで何よりです」

「……長旅、ご苦労様」


 何故だか、暁明シァミン王国の者達が来ていた。まぁ、王女の嫁ぎ先の国王誕生祭だから分かるっちゃ分かるけど……何故に私の弟達である双子が来てるんだ。しきたりはどうした、しきたりは。王族が島を出てこんな所に来ていていいのか。

 しかも、双子は王子モードでありつつも、もう旦那様と話したくて話したくてしょうがないらしい。周りの目はだませても、私は騙せないぞ。


「この度はご招待いただき誠にありがとうございます。そして、お誕生日おめでとうございます、シャレニア王」

「ご足労頂き光栄だ。滞在中は羽を伸ばしてゆっくりしていってくれ」

「恐れ入ります」


 シャレニアとでは文化が違うから、こちらに集まって来る使節団の者達は服装はもちろん所作まで変わってくる。暁明王国の者がこの国に来るのは私が初めてであるため、周りはどう言った対応をしていいのか分からずにいる。だから私が相手をしているわけなんだけれど……陛下と王妃殿下はだいぶ楽しんでいらっしゃる様子だ。


「あらまぁ、とってもしっかりしているのね。素敵なピンクの髪もお姉さんにそっくりだわ」

「お褒めいただき光栄です」

「我が国の王族は皆ピンクの髪色をしているのです。我々の父上である国王陛下も、母上である王妃殿下も父上といとこ同士という事もあり同じ髪色をしていますよ」

「ほぅ、そうなのか。今度会ってみたいものだな。その時は我々がそちらの国におもむくとしようか」

「光栄です。きっと父上もお喜びになります」

「お待ちしております」


 陛下方の前でヘマをしないか心配ではあったが、腐っても王族だ。ちゃんと出来て偉いぞ。

 今回、弟達は使節団用に用意されていた王宮の来賓専用の部屋ではなくダルナード邸で過ごすことになっている。だから話す時間は十分にあるだろう。

 まぁこれから色々と忙しくなるが……私は大公妃殿下であるからこの国の為にも頑張らなければ。

 とりあえず、今日はもうひと国の使節団もいらっしゃることになっているからそちらに向かおう。実は予定より早い到着となりもう来ていらっしゃるようで、タリス夫人が対応しているらしい。私もすぐに行かなければ。

 と、思っていたんだけど……なんとも楽しそうに談話しているようだ。でも、何故に万国共通語ではないのだろうか。


「遅くなってしまい申し訳ありません。スイラン・ダルナードと申します。初めまして」


 だけど……あぁ、なるほど。私の弟達と同じぐらいの歳の女の子はきっと王族の方なのだろう。でも万国共通語が出来ないらしい。隣国で使われている言葉しか分からないのだろうか。

 でも、タリス夫人がそちらの言葉で話しかけている。なるほど、喋れないのなら引っ込んでろと。そういう事か。だけど……


『初めまして』

『こ、こちらこそ初めまして』


 この国の方々はメリウス王国から来た方々だ。母国にもメリウス王国使節団は来たことがあり、私も交流があった。まぁ、そちらの言語の猛勉強はしたから一応喋れる。あぁ、お母様の鬼の顔が浮かぶ……さっさと覚えなさいと叩き込まれた日々がフラッシュバックされそうだ。これは血と涙と恐怖のたまものだと言っても過言ではない。


『ではご案内しますね』


 そう言うと、タリス夫人はいさぎよく下がった。出来るのならよろしいですわ。とでも言いたいのだろう。あぁ、怖い。

 毎年、こういった際はタリス夫人が仕切っていたようだ。お出迎えするのは夫人の仕事らしいし。ミーア夫人はそういった事には口出しはせずお好きにどうぞと譲っていたそうだ。確かに、面倒ごとはしませんよって言いそうだ。

 とはいえ、経験者であるタリス夫人に何か聞こうとすると、なら私がやりますから引っ込んでいてくださいと言われそうだから頑張ろう。


『シャレニアは初めてですか?』

『は、はい』

『そうでしたか。でしたら滞在中空いた時間でいろいろと見て回っていかがでしょう。美術館や劇場、ボートや噴水ショーなどございますよ』

『噴水ショー! あっ、ですか……』

『ふふ、音楽に合わせて噴水の水が踊るように地面から噴き出すのですよ。もしよろしければガイドもお付けいたしましょうか。ショーが始まる時間などもお調べしましょう』

『でも、お手間をおかけしてしまいますから……』

『構いませんよ。王女様にシャレニアを気に入ってくださるよう務めさせてくださいな』

『じゃあ、お願いします!』


 例え王女であっても中身は可愛い女の子だ。




「おぉ、先月ぶりですね、ダルナード夫人」

「お越しくださりありがとうございます、スラディ大公」


 今回は、テリサ王国の使節団も参加となった。初参加だ。あまりこの国と関わりのない国ではあったけれど、向こうは関わりを持ちたかったようだ。向こうは私を通じて関わりを作ったため私を利用したという事ではあるけれど、私としても紅茶の件で利用させてもらったからこれでおあいこだ。どちらも得したんだし。

 そんなこんなで、今日の来訪者はきちんとご案内したのだが……


「はっはっはっ、やはり良いですなぁこれは。とても新鮮で楽しいですよ」

「大公は本当にこのテーブルが好きですね」

「おや、王子はあまり好きではないのですかな?」

「もちろん好きですよ。前これを回しすぎて母上に怒られたこともあります」

「ははっ、子供のうちはそれでよろしいかと思いますよ。やりたくなってしまうものですからね」


 まぁ、双子はダルナード邸に泊まる事にはなっていたけれど……何故にスラディ大公までいらっしゃるんだろうか。まぁ、この回るテーブルで食事したかったのは知ってるけれど……今日は王宮での食事ではなかっただろうか。いいの?

 丸いテーブルに私と旦那様、双子とスラディ大公という何とも言えないメンバーが揃っているわけだけど……いいの?


「おぉ~! 八宝菜だ!」

「リーファ! それチンジャオロースだよね! ねーちゃん選んでくれたの!」

「こら、お行儀良くしなさい」

「はっはっはっはっ! いつもながらにお二人は元気がありますな。ダルナード夫人、良いではないですか。今日くらいは。久しぶりのお姉さんとの再会なんですから。ダルナード卿も、どうでしょう」

「えぇ、食事は楽しくしなくては意味がないですからね。スイラン、久しぶりなんだから、今日ぐらいは大目に見てやってくれないか?」

「……羽目は外しすぎないようにね」

「はーい!」

「ねーちゃんありがと!」


 おい、ねーちゃん呼びはやめろ。

 その後、楽しく昔話に花を咲かせつつもここに来てからの結婚話も交えつつ、そして酒も進み楽しい食事の時間となった。


「いやぁ姫様は本当にお酒が強いですなぁ~! ダルナード卿はご存じですかな? 姫様の成人式の話を」

「スラディ大公、少し飲みすぎですよ」

「そうですか? シャレニア王国のお酒はとても口当たりが良くて飲みやすいのでつい飲みすぎてしまいそうになりますね」

「そうなの?」

「おこちゃまはジュースよ」

「ケチ」


 アホか。ダメに決まってるだろ。あんたらは成人してないんだからソフトドリンクだ。


「姫様の事なら小さい頃からの付き合いですからよく知ってますよ~、お聞きになりますかな、ダルナード卿?」

「もちろんですよ」

「おぉ~! でしたら、どれがいいでしょうかねぇ。あれは確か、姫様が10歳の頃だったでしょうか。結構やんちゃでしたから……」

「ストップ」


 このじいさんは酔うとぺらぺらと喋っちゃうのが問題よね。本当にやめてほしい。私の幼少時代なんて聞かなくてもいい。ちょっと旦那様、何ですその残念そうな顔は。

 でも、こんな風に昔の話をしつつの食事はだいぶ久しぶりだった。まぁ、弟達との食事が久しぶりだったというのもあるけれど。

 とても、楽しかった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ストーカーに狙われたので歳上騎士様に護衛をお願いしました。

ねーさん
恋愛
 「氷の彫刻」と呼ばれる美貌の兄を持つ公爵令嬢のクラリッサは不審な視線に悩まされていた。  卒業を二日後に控えた朝、教室のクラリッサの机に置かれた一通の偏執狂者からの手紙。  親友イブを通じてイブの婚約者、近衛騎士団第四分団員のジョーンズに相談すると、第四分団長ネイトがクラリッサのパートナーとして卒業パーティーに出席してくれる事になって─── 〈注〉 このお話は「婚約者が記憶喪失になりました。」と「元騎士の歳上公爵様がまさかの××でした!?」の続編になります。

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

乙女ゲームに転生するつもりが神々の悪戯で牧場生活ゲームに転生したので満喫することにします

森 湖春
恋愛
長年の夢である世界旅行に出掛けた叔父から、寂れた牧場を譲り受けた少女、イーヴィン。 彼女は畑を耕す最中、うっかり破壊途中の岩に頭を打って倒れた。 そして、彼女は気付くーーここが、『ハーモニーハーベスト』という牧場生活シミュレーションゲームの世界だということを。自分が、転生者だということも。 どうやら、神々の悪戯で転生を失敗したらしい。最近流行りの乙女ゲームの悪役令嬢に転生出来なかったのは残念だけれど、これはこれで悪くない。 近くの村には婿候補がいるし、乙女ゲームと言えなくもない。ならば、楽しもうじゃないか。 婿候補は獣医、大工、異国の王子様。 うっかりしてたら男主人公の嫁候補と婿候補が結婚してしまうのに、女神と妖精のフォローで微妙チートな少女は牧場ライフ満喫中! 同居中の過保護な妖精の目を掻い潜り、果たして彼女は誰を婿にするのか⁈ 神々の悪戯から始まる、まったり牧場恋愛物語。 ※この作品は『小説家になろう』様にも掲載しています。

【完結】後宮の片隅にいた王女を拾いましたが、才女すぎて妃にしたくなりました

藤原遊
恋愛
【溺愛・成長・政略・糖度高め】 ※ヒーロー目線で進んでいきます。 王位継承権を放棄し、外交を司る第六王子ユーリ・サファイア・アレスト。 ある日、後宮の片隅でひっそりと暮らす少女――カティア・アゲート・アレストに出会う。 不遇の生まれながらも聡明で健気な少女を、ユーリは自らの正妃候補として引き取る決断を下す。 才能を開花させ成長していくカティア。 そして、次第に彼女を「妹」としてではなく「たった一人の妃」として深く愛していくユーリ。 立場も政略も超えた二人の絆が、やがて王宮の静かな波紋を生んでいく──。 「私はもう一人ではありませんわ、ユーリ」 「これからも、私の隣には君がいる」 甘く静かな後宮成長溺愛物語、ここに開幕。

結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた

夏菜しの
恋愛
 幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。  彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。  そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。  彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。  いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。  のらりくらりと躱すがもう限界。  いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。  彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。  これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?  エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。

転生貧乏令嬢メイドは見なかった!

seo
恋愛
 血筋だけ特殊なファニー・イエッセル・クリスタラーは、名前や身元を偽りメイド業に勤しんでいた。何もないただ広いだけの領地はそれだけでお金がかかり、古い屋敷も修繕費がいくらあっても足りない。  いつものようにお茶会の給仕に携わった彼女は、令息たちの会話に耳を疑う。ある女性を誰が口説き落とせるかの賭けをしていた。その対象は彼女だった。絶対こいつらに関わらない。そんな決意は虚しく、親しくなれるように手筈を整えろと脅され断りきれなかった。抵抗はしたものの身分の壁は高く、メイドとしても令嬢としても賭けの舞台に上がることに。  これは前世の記憶を持つ貧乏な令嬢が、見なかったことにしたかったのに巻き込まれ、自分の存在を見なかったことにしない人たちと出会った物語。 #逆ハー風なところあり #他サイトさまでも掲載しています(作者名2文字違いもあり)

氷狼陛下のお茶会と溺愛は比例しない!フェンリル様と会話できるようになったらオプションがついてました!

屋月 トム伽
恋愛
ディティーリア国の末王女のフィリ―ネは、社交なども出させてもらえず、王宮の離れで軟禁同様にひっそりと育っていた。そして、18歳になると大国フェンヴィルム国の陛下に嫁ぐことになった。 どこにいても変わらない。それどころかやっと外に出られるのだと思い、フェンヴィルム国の陛下フェリクスのもとへと行くと、彼はフィリ―ネを「よく来てくれた」と迎え入れてくれた。 そんなフィリ―ネに、フェリクスは毎日一緒にお茶をして欲しいと頼んでくる。 そんなある日フェリクスの幻獣フェンリルに出会う。話相手のいないフィリ―ネはフェンリルと話がしたくて「心を通わせたい」とフェンリルに願う。 望んだとおりフェンリルと言葉が通じるようになったが、フェンリルの幻獣士フェリクスにまで異変が起きてしまい……お互いの心の声が聞こえるようになってしまった。 心の声が聞こえるのは、フェンリル様だけで十分なのですが! ※あらすじは時々書き直します!

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

処理中です...