わんこな旦那様の胃袋を掴んだら、溺愛が止まらなくなりました。

楠ノ木雫

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◇34 まさかの事件勃発

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 国王誕生祭が着々と近づいてきて、忙しくはありつつも大変な事はなく事件もなく進んでいった。


「よっ、あんとき以来だな」

「こら、テモワス。本日はご招待いただきありがとうございます、ダルナード大公妃殿下」

「……ご足労頂きありがとうございます、ライアス王子、テモワス王子」

「お久しぶりですね」


 ……おい、二人で来るとは一言も聞いてないぞお前ら。しかも第一王子と第二王子二人で来るとか、いいのか。まぁ、初めてシャレニアにご来訪いただいたわけだけれど……

 それにしても、第一王子のライアス王子とはだいぶ久しぶりではあるけれど、やっぱり二人並ぶとだいぶそっくりだな。さすが双子だ。ウチの弟達も負けないくらいのそっくりさんだけど。


「数ヶ月前にご結婚されたとお聞きしました。ご結婚おめでとうございます」

「……ありがとうございます」


 ……貼り付けた笑顔がだいぶ磨き上げられてるな。流石時期王太子である第一王子。おい、隣の第二王子、ニヤニヤすんな。あと、一歩後ろにいらっしゃる副団長、そのキラキラと向けてくるその視線はやめろ。

 とりあえず、ご案内しよう。そう思っていたところで……いきなり、声をかけられた。


「貴方がオリバー・・・・の結婚相手?」


 後ろからそう声をかけられたけれど……私、後ろを振り向きたくなくなってしまった。目の前の双子は、面倒くさいなと顔に書いている。聞いたことのないお声だけれど……何となく、誰なのか予想が出来た。


「お初にお目にかかります、私スイラン・ダル――」

「何よ、ただのちんちくりんの小娘じゃない」


 事件勃発である。

 金髪に赤い瞳。きっと、今回いらっしゃるチョラン王国の第二王女殿下だろう。

 先ほどの言葉に、皆は固まり、追いかけてきていたタリス夫人はピクリと眉が動いた。こりゃやばいやつだろうか。


「殿下! この国の大公妃殿下ですぞ!」

「私より身分が下なのに何故礼儀をわきまえないといけないのよ。こんな私より若いちんちくりんなんて、オリバーの妻にふさわしくないわ!」


 あんれまぁ、また旦那様の名前を気安く言ってしまうなんて。しかも、嫁の前で。そう、嫁の前で。はぁ、一体どんな教育を受けてきたのやら。ほら、私の隣にいらっしゃったタリス夫人も、わなわなとお怒りオーラがにじみ出てきてるわよ。そりゃ怒るわな。


「……シャレニア王国へようこそいらっしゃいました。チョラン王国第二・・王女殿下」

「……は?」


 私のその言葉に、ピクリと眉を動かした王女殿下。第二、を強調して言ったのだから、怒るに決まってる。この方は我儘わがまま王女として有名だ。でも、この方のお姉さんとはだいぶ仲が悪いようで、《妹》というところが悔しいそうだ。


「私、その第二王女って言われるの嫌いなの。だから、言わないでくれる? もしまた言ったらどうなるか、分かるわよね。私と貴方とでは身分が違うの。前は王女だったとしても今は大公妃よ。私より下なの。だから口を慎んでちょうだい」

「では第二・・王女殿下、ご案内いたします」


 満面の笑みでそう言ってやった。


「……~~~~!!」


 彼女は、持っていた扇子を閉じ、私の頬めがけて振ろうとしていた。私は、隣にいたタリス夫人を押し少し離し……


「はぁ!?」

「いかがいたしました? 長旅でお疲れのようですから、早く行きましょうか。国王陛下方がお待ちですよ」


 彼女の振った扇子は、どこにも当たらなかった。私の顔のギリギリを通ったのだ。それを気に入らなかったのか今度は反対側の頬めがけて振ったけれど……それも当たらなかった。乾いたような音は全くしなかったのだ。


「あら、いかがいたしましたか? もしや、目がくらんでしまいましたか? 少々疲れが出てしまっているようですね。少し休んでから謁見に向かいましょうか?」

「あなたっ!! 何避けてるのよっ!!」

「いかがいたしました?」


 周りは慌てふためいている者もいれば、顔を青ざめている者まで。そして双子の王子達は「よくやるな……」と同情。ついさっき押した女性は驚いているようだった。

 でも、それがお気に召さなかったのか怒りだしてしまった。近くにいたそちら側の方に「アンタが案内しなさいっ!」と無茶ぶりを言っていたが、仕方なく私ではなくシャレニア王国側の男性使用人が案内した。


「王女殿下を怒らせてしまったようですが、いかがなさるおつもりですか? 大公妃殿下・・・・・


 そう言って静かに私の横に立ったのはタリス夫人だ。


「もし今私の顔に赤い痕が残りでもしたら、それこそ大変な事になりますよ。私では旦那様を止められる自信がありませんし」


 本当に、ここに旦那様がいなくてよかったと安心してしまう。今は陛下方の所で護衛をしていることだろうから、この話はきっとすぐ耳に入るだろうけれど。まぁでも、警備もあって護衛もあってと忙しくてそれどころではないと思う。それでも何かあったら何とかなだめよう。


「それもそうですね。私としても、王族の風上にも置けないような者が来客としていらっしゃるだなんて、迷惑極まりないですわ。妻の前で旦那の名前を気安く呼ぶだなんて、王族以前に人としてどうかしています。同情いたしますわ、ダルナード夫人・・・・・・・


 王城にいるのにこんな事を言えるとは、さすが肝が据わってる。まぁ私に聞こえるくらいの小声ではあったけれど。きっとそれだけ頭にきたのだろう。前にも来たことがあるだろうけれど、きっとガチバトルでもしていたのかもしれない。あぁ恐ろしい。

 でも、タリス夫人は今回は私の味方になってくれるらしい。それは幸いね。


「さてと、ライアス王子、テモワス王子、お騒がせしてしまい申し訳ありませんでした。ご案内いたしますね」

「うん、ありがとう」

「お前も大変だな」

「旦那様をなだめるのが、でしょうか」

「そうそっち」


 テモワス王子のその言動に、ライアス王子は同情している様子。という事は、テモワス王子から聞いてるな? あの密売事件後何があったのか。というか、そこにお立ちになっている副団長が冷ややかな目をしているから誰か対応してくださると助かります。

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