3 / 30
◇3
しおりを挟む
いきなりの大物来訪にもう屋敷内はてんやわんや。とりあえず応接室にっ!! お父様すぐに呼んできてっ!! レオもっ!! いちばん高いお茶と見た目のいいティーカップをっ!! ……な感じで。
「申し訳ない、知らせも送らず押しかけてしまって」
「あ、いえ、お気になさらず……」
お父様、顔が引きつってる。まぁ、私も手汗がハンパないけれど。レオは何が何だかよく分ってないな。
「それで、国王陛下よりこれを預かりました。レブロン子爵に、と」
出してきたのは手紙。金ぴかの、王族が使う封筒だ。ちなみに言うと、王族主催のパーティーの招待状もこの封筒が使われる。
だけど、わざわざ秘書の方が持ってくるなんて……一体何が書かれているのだろうか。
「……これは、本当ですか」
「はい、間違いありません」
中に入っていた手紙を広げて目を通したお父様は、信じられない、といった顔をしていた。
「閣下は今隣国近くの港の視察に行ってらっしゃいますが、すぐ帰ってくるようお伝えいたしました。こちらではもう準備は進んでいるので、すぐにでも首都に来ていただきたいのです」
閣下、って……大公殿下の事? 私、あまりその人の事知らないんだよね。陛下の甥としか。あと、この国一の商会の商会長を務めてる人。
でもどうしてその方が話に出てくるんだろう。
「婚約もなしに、もう結婚など……一体陛下は何をお考えなのでしょうか」
……ん? 結婚?
「今、閣下は独身で相手がいらっしゃらない。候補は何人かいますが、貴族派の娘ばかりなのです。そうなってくると、社交界や政治のバランスが崩れてしまいます」
んん? 独身?
「今、公爵家や侯爵家などが動き出しているためすぐにでもふさわしい相手を見つけなければならない」
「それが、うちの娘だという事ですか」
「はい。レブロン子爵家はずっと王族派であり、歴史の長い家柄です。そう言った面を考慮しお選びになったのだと思われます」
「いや、でも、それにはあまりにも身分差が……」
何の話をしているのだろうか。だいぶ忘れられているな、ここに私がいることを。
でも、話に出てきたワード。大公殿下、結婚、そして私。
いや、まっさかぁ……
「テトラ嬢はどうだろうか」
「えっ」
「オデール大公殿下とはお会いしたことはありますか?」
「い、いえ、そもそも2年前のデビュタントの時以外、首都に行かなかったものですから」
「そうですか。なら話は聞いたことはあるでしょう。〝この国一のロイヤルワラント商会の取締役商会長〟の」
「……」
ロイヤルワラント、商会の、商会長……?
「おっと、それは残念です」
すみません、こんなど田舎にそんな話とか入ってこないものですから。お父様も何回か首都に行くけど、そんな話聞いたことがない。……あの、お父様、あちゃぁ、って顔しないでくださいよ。
そして、私に手紙を渡してくれた。どれどれ、と目を通したが……
「……マジ?」
つい、お偉いさんの前で、そんな言葉が出てしまった。
私と、大公殿下の、結婚話が書かれていたからだ。
「申し訳ない、知らせも送らず押しかけてしまって」
「あ、いえ、お気になさらず……」
お父様、顔が引きつってる。まぁ、私も手汗がハンパないけれど。レオは何が何だかよく分ってないな。
「それで、国王陛下よりこれを預かりました。レブロン子爵に、と」
出してきたのは手紙。金ぴかの、王族が使う封筒だ。ちなみに言うと、王族主催のパーティーの招待状もこの封筒が使われる。
だけど、わざわざ秘書の方が持ってくるなんて……一体何が書かれているのだろうか。
「……これは、本当ですか」
「はい、間違いありません」
中に入っていた手紙を広げて目を通したお父様は、信じられない、といった顔をしていた。
「閣下は今隣国近くの港の視察に行ってらっしゃいますが、すぐ帰ってくるようお伝えいたしました。こちらではもう準備は進んでいるので、すぐにでも首都に来ていただきたいのです」
閣下、って……大公殿下の事? 私、あまりその人の事知らないんだよね。陛下の甥としか。あと、この国一の商会の商会長を務めてる人。
でもどうしてその方が話に出てくるんだろう。
「婚約もなしに、もう結婚など……一体陛下は何をお考えなのでしょうか」
……ん? 結婚?
「今、閣下は独身で相手がいらっしゃらない。候補は何人かいますが、貴族派の娘ばかりなのです。そうなってくると、社交界や政治のバランスが崩れてしまいます」
んん? 独身?
「今、公爵家や侯爵家などが動き出しているためすぐにでもふさわしい相手を見つけなければならない」
「それが、うちの娘だという事ですか」
「はい。レブロン子爵家はずっと王族派であり、歴史の長い家柄です。そう言った面を考慮しお選びになったのだと思われます」
「いや、でも、それにはあまりにも身分差が……」
何の話をしているのだろうか。だいぶ忘れられているな、ここに私がいることを。
でも、話に出てきたワード。大公殿下、結婚、そして私。
いや、まっさかぁ……
「テトラ嬢はどうだろうか」
「えっ」
「オデール大公殿下とはお会いしたことはありますか?」
「い、いえ、そもそも2年前のデビュタントの時以外、首都に行かなかったものですから」
「そうですか。なら話は聞いたことはあるでしょう。〝この国一のロイヤルワラント商会の取締役商会長〟の」
「……」
ロイヤルワラント、商会の、商会長……?
「おっと、それは残念です」
すみません、こんなど田舎にそんな話とか入ってこないものですから。お父様も何回か首都に行くけど、そんな話聞いたことがない。……あの、お父様、あちゃぁ、って顔しないでくださいよ。
そして、私に手紙を渡してくれた。どれどれ、と目を通したが……
「……マジ?」
つい、お偉いさんの前で、そんな言葉が出てしまった。
私と、大公殿下の、結婚話が書かれていたからだ。
881
あなたにおすすめの小説
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜
しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。
高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。
しかし父は知らないのだ。
ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。
そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。
それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。
けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。
その相手はなんと辺境伯様で——。
なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。
彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。
それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。
天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。
壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。
わんこな旦那様の胃袋を掴んだら、溺愛が止まらなくなりました。
楠ノ木雫
恋愛
若くして亡くなった日本人の主人公は、とある島の王女李・翠蘭《リ・スイラン》として転生した。第二の人生ではちゃんと結婚し、おばあちゃんになるまで生きる事を目標にしたが、父である国王陛下が縁談話が来ては娘に相応しくないと断り続け、気が付けば19歳まで独身となってしまった。
婚期を逃がしてしまう事を恐れた主人公は、他国から来ていた縁談話を成立させ嫁ぐ事に成功した。島のしきたりにより、初対面は結婚式となっているはずが、何故か以前おにぎりをあげた使節団の護衛が新郎として待ち受けていた!?
そして、嫁ぐ先の料理はあまりにも口に合わず、新郎の恋人まで現れる始末。
主人公は、嫁ぎ先で平和で充実した結婚生活を手に入れる事を決意する。
※他のサイトにも投稿しています。
モンスターを癒やす森暮らしの薬師姫、騎士と出会う
甘塩ます☆
恋愛
冷たい地下牢で育った少女リラは、自身の出自を知らぬまま、ある日訪れた混乱に乗じて森へと逃げ出す。そこで彼女は、凶暴な瘴気に覆われた狼と出会うが、触れるだけでその瘴気を浄化する不思議な力があることに気づく。リラは狼を癒し、共に森で暮らすうち、他のモンスターたちとも心を通わせ、彼らの怪我や病を癒していく。モンスターたちは感謝の印に、彼女の知らない貴重な品々や硬貨を贈るのだった。
そんなある日、森に薬草採取に訪れた騎士アルベールと遭遇する。彼は、最近異常なほど穏やかな森のモンスターたちに違和感を覚えていた。世間知らずのリラは、自分を捕らえに来たのかと怯えるが、アルベールの差し出す「食料」と「服」に警戒を解き、彼を「飯をくれる仲間」と認識する。リラが彼に見せた、モンスターから贈られた膨大な量の希少な品々に、アルベールは度肝を抜かれる。リラの無垢さと、秘められた能力に気づき始めたアルベールは……
陰謀渦巻く世界で二人の運命はどうなるのか
没落令嬢、異世界で紅茶店を開くことにいたしました〜香りと静寂と癒しの一杯をあなたに〜
☆ほしい
ファンタジー
夜会で父が失脚し、家は没落。屋敷の裏階段で滑り落ち、気づけば異世界――。
王国貴族だったアナスタシアが転移先で授かったのは、“極上調合”という紅茶とハーブのスキルだった。
戦う気はございませんの。復讐もざまぁも、疲れますわ。
彼女が選んだのは、湖畔の古びた小屋で静かにお茶を淹れること。
奇跡の一杯は病を癒やし、呪いを祓い、魔力を整える力を持つが、
彼女は誰にも媚びず、ただ静けさの中で湯気を楽しむのみ。
「お代は結構ですわ。……代わりに花と静寂を置いていってくださる?」
騎士も王女も英雄も訪れるが、彼女は気まぐれに一杯を淹れるだけ。
これは、香草と紅茶に囲まれた元令嬢の、優雅で自由な異世界スローライフ。
氷の騎士と陽だまりの薬師令嬢 ~呪われた最強騎士様を、没落貴族の私がこっそり全力で癒します!~
放浪人
恋愛
薬師として細々と暮らす没落貴族の令嬢リリア。ある夜、彼女は森で深手を負い倒れていた騎士団副団長アレクシスを偶然助ける。彼は「氷の騎士」と噂されるほど冷徹で近寄りがたい男だったが、リリアの作る薬とささやかな治癒魔法だけが、彼を蝕む古傷の痛みを和らげることができた。
「……お前の薬だけが、頼りだ」
秘密の治療を続けるうち、リリアはアレクシスの不器用な優しさや孤独に触れ、次第に惹かれていく。しかし、彼の立場を狙う政敵や、リリアの才能を妬む者の妨害が二人を襲う。身分違いの恋、迫りくる危機。リリアは愛する人を守るため、薬師としての知識と勇気を武器に立ち向かうことを決意する。
【完結】戸籍ごと売られた無能令嬢ですが、子供になった冷徹魔導師の契約妻になりました
水都 ミナト
恋愛
最高峰の魔法の研究施設である魔塔。
そこでは、生活に不可欠な魔導具の生産や開発を行われている。
最愛の父と母を失い、継母に生家を乗っ取られ居場所を失ったシルファは、ついには戸籍ごと魔塔に売り飛ばされてしまった。
そんなシルファが配属されたのは、魔導具の『メンテナンス部』であった。
上層階ほど尊ばれ、難解な技術を必要とする部署が配置される魔塔において、メンテナンス部は最底辺の地下に位置している。
貴族の生まれながらも、魔法を発動することができないシルファは、唯一の取り柄である周囲の魔力を吸収して体内で中和する力を活かし、日々魔導具のメンテナンスに従事していた。
実家の後ろ盾を無くし、一人で粛々と生きていくと誓っていたシルファであったが、
上司に愛人になれと言い寄られて困り果てていたところ、突然魔塔の最高責任者ルーカスに呼びつけられる。
そこで知ったルーカスの秘密。
彼はとある事件で自分自身を守るために退行魔法で少年の姿になっていたのだ。
元の姿に戻るためには、シルファの力が必要だという。
戸惑うシルファに提案されたのは、互いの利のために結ぶ契約結婚であった。
シルファはルーカスに協力するため、そして自らの利のためにその提案に頷いた。
所詮はお飾りの妻。役目を果たすまでの仮の妻。
そう覚悟を決めようとしていたシルファに、ルーカスは「俺は、この先誰でもない、君だけを大切にすると誓う」と言う。
心が追いつかないまま始まったルーカスとの生活は温かく幸せに満ちていて、シルファは少しずつ失ったものを取り戻していく。
けれど、継母や上司の男の手が忍び寄り、シルファがようやく見つけた居場所が脅かされることになる。
シルファは自分の居場所を守り抜き、ルーカスの退行魔法を解除することができるのか――
※他サイトでも公開しています
婚約破棄された竜好き令嬢は黒竜様に溺愛される。残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ
水無瀬
ファンタジー
竜が好きで、三度のご飯より竜研究に没頭していた侯爵令嬢の私は、婚約者の王太子から婚約破棄を突きつけられる。
それだけでなく、この国をずっと守護してきた黒竜様を捨てると言うの。
黒竜様のことをずっと研究してきた私も、見せしめとして処刑されてしまうらしいです。
叶うなら、死ぬ前に一度でいいから黒竜様に会ってみたかったな。
ですが、私は知らなかった。
黒竜様はずっと私のそばで、私を見守ってくれていたのだ。
残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる