元貧乏貴族の大公夫人、大富豪の旦那様に溺愛されながら人生を謳歌する!

楠ノ木雫

文字の大きさ
4 / 30

◇4

しおりを挟む
 国王陛下から、この国の大公殿下との政略結婚の提案が書かれた手紙が舞い込んできた。

 こんな貧乏貴族の娘にこの国唯一の大公殿下を、だなんておかしな話だ。いや、国王陛下がそう言ってきたこともだいぶおかしい。一体どういう事なんだ、これはドッキリか? ドッキリなのか!?


「オデール卿はとてもハンサムですよ? 今は確か30でしたね。テトラ嬢とは少し離れていますがこれくらいは許容範囲内でしょう。首都ではだいぶ人気ですし、大公という地位もあって、しかもこの国一の王室御用達を意味するロイヤルワラント商会の取締役商会長という役職も持っています。これは優良物件と言っても過言ではありませんよ。この国一の大富豪でもありますから、きっと妻となられる方のご実家の支援もしていただけるでしょうしね。それくらい心優しい方ですよ」

「します、結婚」

「はは、では陛下にそう伝えておきましょう。この後馬車などをご用意いたしますから、首都へ向かうご準備などを済ませておいてください」

「はい」

「……はぁ、うちの娘は潔いな。恐ろしいくらいだ……一体誰に似たんだか……」

「じゃあお父様、あのクソ野郎と大公様どっちがいいの」

「娘の事をどうぞよろしくお願いします」


 うん、お父様の潔さ、私は好きですよ。まぁ、誰が考えてもあの息子はない。閣下が一体どんな方なのかは私は知らないけれど、心優しくてお金を実家に使ってくれるなら文句なしよ。

 それに私自身はこの結婚で別に困る事はない。結婚生活は大人しくしていればいいだけの事。まぁ多少なりとも後ろ指を指すような人はいるだろうけれど、そんなものは無視すればいい。あら、虫の羽音が聞こえるわ~とでも言っておけばいい。

 それに、学校に行かせてもらえたから馬鹿ではないし前世の記憶もある。

 女主人としての振る舞いも理解しているし、そもそも夫人は仕事をしない。適応するのに時間はかかるだろうけれど、私が頑張ればいいだけの事だ。

 というか……この人、妙にすんごく大公殿下の株をどんどん上げようと頑張ってるような気がするのだが。私達に向かってだいぶニコニコしてるし。何、同情? 会った事のないすんごい人といきなり結婚しろって言われて困惑してるだろうなって。まぁ実際そうなんだけどね?

 まぁ、でも大公殿下に助けていただけるのであれば、あの野郎共の顔面に一発入れられるって事だ。いいね、それ。

 ではまたお会いしましょう、と来訪者は帰っていった。


「……テトラ、本当によかったのか」

「えぇ」

「……テトラにはだいぶ苦労を掛けてしまっていたから、せめて結婚は、自分が選んだ愛する相手としてほしいと願っていたんだ。どうか、幸せになってほしいと。リデルも、そう願っていた。だが、こんな形で結婚など……この家のために犠牲になど……」


 リデル、とは私の母の事だ。レオが生まれた後すぐに亡くなってしまった。


「犠牲にだなんて言わないで。私は家族が幸せならそれでいいし、大公様は大富豪だからいい生活させてもらえるかもしれないし。だからそんな顔しないで、お父様」

「テトラ……」


 そういえば、お父様って大公様とお会いしたことあるのかしら。まぁ、全員参加の王室主催パーティーなどに参加しているのだから見た事はあるでしょうけど。

 オデール大公殿下かぁ。一体どんな人なんだろう。私そういうの知らないんだよなぁ。王室御用達の商会の商会長なんでしょ? 想像がつかないんだけど。

 私の商会長のイメージはあのクソ野郎しか出てこないんだよなぁ。アレより酷い人かな。

 でも今日来た人、大公様の事を優しい人だって言ってたから、期待はしておこう。

 初めて会う人との結婚だから、愛だのとかそんなものは一切ない事は分かってる。私はこの家の為に嫁ぐのだから。私が少しでも実家の為に役に立てれば、家族と領民達が幸せな生活を過ごせれば、それでいい。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

わんこな旦那様の胃袋を掴んだら、溺愛が止まらなくなりました。

楠ノ木雫
恋愛
 若くして亡くなった日本人の主人公は、とある島の王女李・翠蘭《リ・スイラン》として転生した。第二の人生ではちゃんと結婚し、おばあちゃんになるまで生きる事を目標にしたが、父である国王陛下が縁談話が来ては娘に相応しくないと断り続け、気が付けば19歳まで独身となってしまった。  婚期を逃がしてしまう事を恐れた主人公は、他国から来ていた縁談話を成立させ嫁ぐ事に成功した。島のしきたりにより、初対面は結婚式となっているはずが、何故か以前おにぎりをあげた使節団の護衛が新郎として待ち受けていた!?  そして、嫁ぐ先の料理はあまりにも口に合わず、新郎の恋人まで現れる始末。  主人公は、嫁ぎ先で平和で充実した結婚生活を手に入れる事を決意する。 ※他のサイトにも投稿しています。

所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜

しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。 高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。 しかし父は知らないのだ。 ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。 そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。 それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。 けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。 その相手はなんと辺境伯様で——。 なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。 彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。 それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。 天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。 壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。

モンスターを癒やす森暮らしの薬師姫、騎士と出会う

甘塩ます☆
恋愛
冷たい地下牢で育った少女リラは、自身の出自を知らぬまま、ある日訪れた混乱に乗じて森へと逃げ出す。そこで彼女は、凶暴な瘴気に覆われた狼と出会うが、触れるだけでその瘴気を浄化する不思議な力があることに気づく。リラは狼を癒し、共に森で暮らすうち、他のモンスターたちとも心を通わせ、彼らの怪我や病を癒していく。モンスターたちは感謝の印に、彼女の知らない貴重な品々や硬貨を贈るのだった。 そんなある日、森に薬草採取に訪れた騎士アルベールと遭遇する。彼は、最近異常なほど穏やかな森のモンスターたちに違和感を覚えていた。世間知らずのリラは、自分を捕らえに来たのかと怯えるが、アルベールの差し出す「食料」と「服」に警戒を解き、彼を「飯をくれる仲間」と認識する。リラが彼に見せた、モンスターから贈られた膨大な量の希少な品々に、アルベールは度肝を抜かれる。リラの無垢さと、秘められた能力に気づき始めたアルベールは…… 陰謀渦巻く世界で二人の運命はどうなるのか

王女なのに虐げられて育った私が、隣国の俺様皇帝の番ですか?-または龍神皇帝の溺愛日記-

下菊みこと
恋愛
メランコーリッシュ・パラディースは小国パラディース王国の王の子。母は側妃ですらないただの踊り子。誰にも望まれず誕生したメランコーリッシュは祝福の名(ミドルネーム)すら与えられず塔に幽閉され、誰にも愛されず塔の侍女長に虐げられる日々を過ごした。そんなある日、突然大国アトランティデの皇帝ディニタ・ドラーゴ・アトランティデがメランコーリッシュを運命の番だと名指しし、未来の皇后として半ば強引にアトランティデに連れ帰る。ディニタは亜人で、先祖返り。龍神としての覚醒をもって運命の番を初めて認識して、思わず順序も考えず連れ帰ってしまったのだ。これはそんな二人が本当の番になるまでのお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

婚約破棄された際もらった慰謝料で田舎の土地を買い農家になった元貴族令嬢、野菜を買いにきたベジタリアン第三王子に求婚される

さくら
恋愛
婚約破棄された元伯爵令嬢クラリス。 慰謝料代わりに受け取った金で田舎の小さな土地を買い、農業を始めることに。泥にまみれて種を撒き、水をやり、必死に生きる日々。貴族の煌びやかな日々は失ったけれど、土と共に過ごす穏やかな時間が、彼女に新しい幸せをくれる――はずだった。 だがある日、畑に現れたのは野菜好きで有名な第三王子レオニール。 「この野菜は……他とは違う。僕は、あなたが欲しい」 そう言って真剣な瞳で求婚してきて!? 王妃も兄王子たちも立ちはだかる。 「身分違いの恋」なんて笑われても、二人の気持ちは揺るがない。荒れ地を畑に変えるように、愛もまた努力で実を結ぶのか――。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

処理中です...