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数日後。その日がやってきた。
「……見事に化けたわね」
「奥様はとても美人でいらっしゃいますよ。とってもお似合いです」
まじかぁ、ウェディングドレスに着せられてる感出てるよねこれ。見事なプリンセスラインで、肩紐なしの胸元のラインがまっすぐ。これかぁ、とは思っていたけれど意外と着心地がいい。見た目より軽いし。
何枚も重ねられたスカートに、レースもいっぱい。ふんわりすぎだって。
これで招待客のいる中を歩くのかぁ、と嘆いていたその時、この部屋のドアがノックされた。男性の声で、入っていいか、と。
え、誰? と思いつつ、どうぞと許可した。が……
入ってきたのは、私より年上の男性。しかも、白い装い。すぐに分かった。まじか、私の旦那様じゃん。え、かっこよ。何このイケメン。やば、旦那様万歳。
「……やりやがったな」
「……」
やり、やがった……?
そんな言葉を、後ろから来ていた執事に向けていた。なにか問題あった?
「あの野郎、俺の好み知ってやがったな」
「旦那様、不敬ですよ」
「……」
ソファーに座る私に近づいてきた旦那様は、あろう事か私をジロジロ観察してきた。
え、この田舎娘を審査してる?
……それより、眼福だわ。これはやばい。金髪にブルーの瞳が輝いてる。このタキシード姿はヤバい。
「……うん、好みどストライク。まさか本当にいたとは……」
「旦那様」
「趣味は?」
「え?」
「ドレスとか宝石とか、好きか?」
……趣味? これ、お見合いとかそういうので出てくる質問よね。
「……すみません、田舎育ちなもので、そういうのよく分からなくて……」
「……まじか。お前本当に貴族のご令嬢?」
「だーんーなーさーまー!」
「あ、悪い悪い」
これ、私なんて言ったらいい……? とりあえず、眼福だわ……
「ああいうご令嬢だったらバックれようかと思ってたんだけど、これなら大丈夫そうだ。これからよろしく」
「あ、はい、よ、よろしくお願いします……」
バ、バックれ……?
え、私の答え次第ではこの結婚式台無しになるところだった……? こ、怖っ……
じゃあ会場でな、と旦那様は出ていってしまった。
「すみません、奥様。旦那様は今までのお見合いが散々だったもので……多めに見てあげてください……」
「あ、はい、お気になさらず……」
……あのイケメンだったら、なんとなく分かる。あれじゃあ人気だろうなぁ……
けど、私大丈夫かな。後ろからナイフで刺されたりしないかな。お、恐ろしい……
なんて危機感を持ちつつ、呼ばれたので重い足取りで会場に向かったのだった。
この教会は、この国一の大きく繊細な建物。こんなの見た事がない。ゆっくり見たいところではあるけれど、この先には……会ったこともない、名前しか知らないすごい人ばかり。
……国王陛下とか、王妃殿下とか、そういう人達ばっかりらしい。たぶん、一緒にいるお父様とレオは今頃震え上がっていることだろう。頑張れ、私も頑張るから。もうすでに魂抜けそうだけれど。
そして、バージンロードを一人で歩き、バックれるなんて恐ろしい言葉を先ほど発した旦那様のところに。
……あぁ、やっぱり眼福だわ。こんなイケメンを前にしたらご飯10杯はいける。お腹パンパンになるけどさ。
とりあえず、誓いますの一言を告げ、おっそろしい誓いのキスなんてものをさせられ、なんとか終わらせる事が出来たのだった。やばい、失神しそう。
「本日は足を運んでくださりありがとうございました」
「こちらこそ、ご招待いただき光栄です」
招待した貴族の方々は少なくはあるけれど偉い人達ばかり。自己紹介してくるたびに目を回してしまいそうになる。やばい、こんな世界に入ってしまった私は一体これからどうなるのだろうか。
「お初にお目に、かかります……テトラ・オデールでござい、ます……」
「ウチの甥をもらってくれて大変感謝している。これからよろしく頼むよ」
「も、もったいないお言葉です……」
「陛下」
「元はと言えばお主が悪いのだ。文句など言わせんぞ」
「……」
「可愛いお嬢さんがお嫁さんになってくれたのだから、逆に感謝してほしいくらいだわ」
あの、どうして私の目の前に国王陛下と王妃殿下がこんな近くに、目の前にいらっしゃるのです……? あ、まぁ、叔父であるのだからご挨拶するのだろうなぁ、と思ってはいたけれど、この会話に入っていけるほど私は肝が据わってない。無理だ、まじで。
「テトラさん、このお馬鹿さんがなにかしでかしたら私に言うのよ。いいわね?」
「か、かしこまりました……?」
「ふふ、可愛らしいわね。私がお嫁さんにもらいたかったわ」
「殿下、困らせないでください」
「あら、取られたくなかったら正直におっしゃい?」
「……」
終わって、お願いだからこの会話終わって。
なんて思いつつ、まじで頑張った。
ようやく終わる頃には、もう夕方。大公家邸宅にようやく戻る事が出来たのだ。
「おかえりなさいませ、旦那様、奥様」
「腹減った」
「ご用意しておりますよ」
おぉ、帰って早々腹減ったですか。
「奥様も朝から何も食べておりませんから、お腹が空いたでしょう」
「は? それは一大事だろ」
「え?」
ま、まぁ、お腹が膨れちゃうから食べなかったけど……恐ろしいものでも見たような顔で言う事ですか……?
早く用意させろ、とだいぶ急かしているけれど……別に食事抜いたところでいつものことだから慣れてるんだけどなぁ……
「さっさと着替えてこい」
「あ、はい」
とりあえず、このぎゅうぎゅうに締め付けられたコルセットを脱ぎたい。旦那様ナイス。
「……見事に化けたわね」
「奥様はとても美人でいらっしゃいますよ。とってもお似合いです」
まじかぁ、ウェディングドレスに着せられてる感出てるよねこれ。見事なプリンセスラインで、肩紐なしの胸元のラインがまっすぐ。これかぁ、とは思っていたけれど意外と着心地がいい。見た目より軽いし。
何枚も重ねられたスカートに、レースもいっぱい。ふんわりすぎだって。
これで招待客のいる中を歩くのかぁ、と嘆いていたその時、この部屋のドアがノックされた。男性の声で、入っていいか、と。
え、誰? と思いつつ、どうぞと許可した。が……
入ってきたのは、私より年上の男性。しかも、白い装い。すぐに分かった。まじか、私の旦那様じゃん。え、かっこよ。何このイケメン。やば、旦那様万歳。
「……やりやがったな」
「……」
やり、やがった……?
そんな言葉を、後ろから来ていた執事に向けていた。なにか問題あった?
「あの野郎、俺の好み知ってやがったな」
「旦那様、不敬ですよ」
「……」
ソファーに座る私に近づいてきた旦那様は、あろう事か私をジロジロ観察してきた。
え、この田舎娘を審査してる?
……それより、眼福だわ。これはやばい。金髪にブルーの瞳が輝いてる。このタキシード姿はヤバい。
「……うん、好みどストライク。まさか本当にいたとは……」
「旦那様」
「趣味は?」
「え?」
「ドレスとか宝石とか、好きか?」
……趣味? これ、お見合いとかそういうので出てくる質問よね。
「……すみません、田舎育ちなもので、そういうのよく分からなくて……」
「……まじか。お前本当に貴族のご令嬢?」
「だーんーなーさーまー!」
「あ、悪い悪い」
これ、私なんて言ったらいい……? とりあえず、眼福だわ……
「ああいうご令嬢だったらバックれようかと思ってたんだけど、これなら大丈夫そうだ。これからよろしく」
「あ、はい、よ、よろしくお願いします……」
バ、バックれ……?
え、私の答え次第ではこの結婚式台無しになるところだった……? こ、怖っ……
じゃあ会場でな、と旦那様は出ていってしまった。
「すみません、奥様。旦那様は今までのお見合いが散々だったもので……多めに見てあげてください……」
「あ、はい、お気になさらず……」
……あのイケメンだったら、なんとなく分かる。あれじゃあ人気だろうなぁ……
けど、私大丈夫かな。後ろからナイフで刺されたりしないかな。お、恐ろしい……
なんて危機感を持ちつつ、呼ばれたので重い足取りで会場に向かったのだった。
この教会は、この国一の大きく繊細な建物。こんなの見た事がない。ゆっくり見たいところではあるけれど、この先には……会ったこともない、名前しか知らないすごい人ばかり。
……国王陛下とか、王妃殿下とか、そういう人達ばっかりらしい。たぶん、一緒にいるお父様とレオは今頃震え上がっていることだろう。頑張れ、私も頑張るから。もうすでに魂抜けそうだけれど。
そして、バージンロードを一人で歩き、バックれるなんて恐ろしい言葉を先ほど発した旦那様のところに。
……あぁ、やっぱり眼福だわ。こんなイケメンを前にしたらご飯10杯はいける。お腹パンパンになるけどさ。
とりあえず、誓いますの一言を告げ、おっそろしい誓いのキスなんてものをさせられ、なんとか終わらせる事が出来たのだった。やばい、失神しそう。
「本日は足を運んでくださりありがとうございました」
「こちらこそ、ご招待いただき光栄です」
招待した貴族の方々は少なくはあるけれど偉い人達ばかり。自己紹介してくるたびに目を回してしまいそうになる。やばい、こんな世界に入ってしまった私は一体これからどうなるのだろうか。
「お初にお目に、かかります……テトラ・オデールでござい、ます……」
「ウチの甥をもらってくれて大変感謝している。これからよろしく頼むよ」
「も、もったいないお言葉です……」
「陛下」
「元はと言えばお主が悪いのだ。文句など言わせんぞ」
「……」
「可愛いお嬢さんがお嫁さんになってくれたのだから、逆に感謝してほしいくらいだわ」
あの、どうして私の目の前に国王陛下と王妃殿下がこんな近くに、目の前にいらっしゃるのです……? あ、まぁ、叔父であるのだからご挨拶するのだろうなぁ、と思ってはいたけれど、この会話に入っていけるほど私は肝が据わってない。無理だ、まじで。
「テトラさん、このお馬鹿さんがなにかしでかしたら私に言うのよ。いいわね?」
「か、かしこまりました……?」
「ふふ、可愛らしいわね。私がお嫁さんにもらいたかったわ」
「殿下、困らせないでください」
「あら、取られたくなかったら正直におっしゃい?」
「……」
終わって、お願いだからこの会話終わって。
なんて思いつつ、まじで頑張った。
ようやく終わる頃には、もう夕方。大公家邸宅にようやく戻る事が出来たのだ。
「おかえりなさいませ、旦那様、奥様」
「腹減った」
「ご用意しておりますよ」
おぉ、帰って早々腹減ったですか。
「奥様も朝から何も食べておりませんから、お腹が空いたでしょう」
「は? それは一大事だろ」
「え?」
ま、まぁ、お腹が膨れちゃうから食べなかったけど……恐ろしいものでも見たような顔で言う事ですか……?
早く用意させろ、とだいぶ急かしているけれど……別に食事抜いたところでいつものことだから慣れてるんだけどなぁ……
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