元貧乏貴族の大公夫人、大富豪の旦那様に溺愛されながら人生を謳歌する!

楠ノ木雫

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 最悪だ。

 次の日起きたのは、昼間。そして、むぎゅっと思いっきり抱きしめられている。息苦しい。


「……あの、エヴァンさん。起きてるならこの腕どけてもらえませんか」

「……おはよう」

「はい、おはようございます。で、仕事はどうしました?」

「仕事って何だ?」

「……」


 めちゃくちゃだな。しかも私達服を着てないから目の前に胸板があって恥ずかしいんですけど。

 次の日になってもまだ機嫌が悪いらしい。一体何が気に入らないんだ。まぁ、昨日ご令嬢達に囲まれてイライラしてたかもしれないけれど。


「……今日はパンケーキにジャム乗せましょうか」

「いちご。んで、ヨーグルト付き」

「決定」


 本当に、エヴァンっていちごジャム好きだよね。あと、ヨーグルトの組み合わせも。私も好きだけど。美味しいよね。

 これで機嫌は直ったかな?

 でも、ベッドの中でこんなことしたのは初夜の次の日だけ。何でこんなにいきなりしたんだろう。周りを気にしてないって言いながら。


「……テトラ、お前欲しいものあるか」

「……何です? いきなり」

「……」


 だんまりで、何も言ってこない。ただふと思ったから聞いてみた、ってだけかな?


「バラ、は好きじゃないか」

「バラ? 花束でも作るつもりですか?」

「……この前言ってた、嫁の為に作った庭、やってみっかなって思った」


 あぁ、言ったな。商会に行った時に家庭菜園するためのものばかり購入したから、大公夫人がこんな買い物するのはいかがなものかと思い、自分の奥さんの為に庭を作ろうとしてる旦那様なんて素敵! って言ったんだった。覚えてたんだ。

 大公邸の庭、大きいですけどどれくらい作るんです? 今の庭も私好きですけど。

 とりあえず、作ってくれるなら嬉しいですと適当に答えてようやくベッドから出られたのだ。

 だが……


「……はぁ!?」


 自分の身体に無数についている、この赤い痕はなんだ!! これ昨日エヴァンが付けたやつでしょ!! いや、付けるにもほどがあるでしょこれ!!


「ぷ、くくっ」

「エヴァン!!」

「あ~腹減った~朝メシ~」

「こらっ!!」


 いつも通りのテンションのエヴァンに戻ってよかったけど、これはやりすぎでしょ!!


 着替えで手伝ってくれたマーラに見られて恥ずかしくなりつつ、ようやく朝食、のはずのお昼ご飯を食べる事が出来た。


「奥様、今朝こちらが送られてきました」

「手紙?」


 名前は、公爵家のご夫人だ。まだ覚えきれてないから誰なのか分からない。


「あぁ、トマ夫人か。怖いぞこの人」

「え゙っ」

「トマ夫人の事だから、どうせ招待状だろ?」


 マーラに封を切ってもらって中身を確認すると……お茶会の招待状だった。マジか、お茶会か。

 エヴァンが怖い人って言ってるのだから、只者じゃないよね。うわ、怖いな。今までずっと招待状は断ってたけど……断ったらどうなるか恐ろしいな。


「お茶会の、招待状なんですけど……断っちゃダメですよね、これ」

「さぁ? でも目はつけられるか。怒ったら怖いぞ~」

「……まだ根に持ってます? 昨日の事」

「昨日? さぁ、どうだろうな?」


 昨日助けられなかったから、大袈裟に言ってくるんでしょ。どうせ、助けないから自分で何とかしろって思ってるんでしょ。

 はぁ、昨日もお茶会のお誘いOKしちゃったし、仕方ないよね。


「はぁ……マーラ、ブティック呼んでくれる?」

「かしこまりました」

「俺が選んでやろうか?」

「いらないです」


 どうせ最終的に選ぶのは私でしょうしね。


「やだ。俺が選ぶ」

「……」


 いちごジャム入りのヨーグルトを用意するか。おかしくなったら口に突っ込む。
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