153 / 280
第五部 六章「友人A」
「簡単なお仕事」
しおりを挟む
「……なるほど、ねぇ。また想定外な事になってるのね。さすがの私の目でもそこまで把握はできないわよ」
呆れた顔で、ネアはお手上げと肩をすくめた。
もめ続けた後。とりあえず場所を変えようと、ネアは自身が利用していた宿にへと移動。
何故魔界にいるのか。何故ニーズヘッグが表に出てきているのか。内容を聞き、ネアは納得して頷く。
「クロトは魔素の影響で爆睡。エリーちゃんはなんとか耐性があったのか、とりあえずグリアの実で正体は免れている。探しているのは魔素耐性に必要なマカツ草……か」
ネアはニーズヘッグの持っていたソフラの名を記した紙に目を細める。
「よくもまあ、あのウサギさんと張り合えたものね」
「電気女のくせに、意外な言い分だな」
「……確かに女性だけど、私、あの人苦手なのよね。極力会いたくないっていうか……。まあ、私だって色々あるわけ」
ネアに会いたくない女性がいるとは驚きだ。
明日は天変地異かと、ニーズヘッグが思ってしまうほどである。
その疑わしい目から遠ざかるため、ネアは本題に話を戻す。
「で? あの人の紹介でこの街にまで来たけど……お目当ての物がない、と」
「ねーんだよ! 森やら荒野やら通ってきたが、全くねーし。……どうなってんだよっ」
「とりあえず、最後まで話を聞きなさい蛇野郎」
心当たりがあるのか、ネアにはまだ何か続きがあるらしい。
彼女の本業は情報屋。彼女なら、もしかしたら何か情報を得ているやもしれない。
それに期待し、一度ニーズヘッグは黙って話を聞くこととした。
「そのマカツ草なんだけど、この近辺には今無いのよねぇ。あの人の事だからどうせそれすら知ってて、尚且つアンタに教えなかったんでしょうね。……相変わらず腹黒い」
「どういう事だよ?」
「お目当てのマカツ草はね、とある魔界貴族が買い占めてるの。……それも、この近辺一帯のを根こそぎね」
「あんなもん、魔族にとっちゃ不要なもんだろ? 結構マズいらしいし」
「そこが気に入ったらしいわよぉ? 場所なら特定できてるわ。この街の奥に領主の屋敷があってね、そこの魔界貴族の豚野郎が集めてるって話」
「……豚さんなんですか?」
エリーは、ふと想像する。
ピンクでまん丸とした可愛らしい泣き声を出す豚。それが高貴な身なりをしている様を。
想像上ではエリーは可愛いと和むものでしかない。
「……ああ、たぶん。エリーちゃんが想像している様な要素はないと思うの、ごめんね」
「そ、そうなんですか!?」
「夢を壊すつもりはないけど、それはもうきったない豚野郎でね。農家の豚の方が幾度かマシなものなのよ」
「すんげーぶち壊しにいくじゃねーか……」
「想像上だけでも、エリーちゃんがあの豚野郎を美化してしまうなんて、お姉さん耐えられない!!」
その程度は堪えろと、ニーズヘッグは心の奥底で思ってしまう。
クロトたちとのやり取りを見ていたが、「なるほど」とネアとの接し方には慣れが必要であると確信。
あまり深くつっこめばそれだけで無駄な時間を過ごすことになりそうだ。
しかし、ならばとニーズヘッグの方針が決まる。
窓を開け、街の奥で堂々と建つ大きな屋敷を見ては、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「なるほど、簡単な案件だな! 要はあそこの豚を焼いてくればいいってわけか!」
物騒と、何処か活き活きとしたニーズヘッグは瞳を輝かせる。
その発言にエリーは戸惑うも、
「じゃあ、手っ取り早く焼いてきてちょうだい。悪評もあったし、いい機会と思って」
と、ネアが了承。
賛同の声があがれば、ニーズヘッグは腕を鳴らし窓から飛び出す。
「ニ、ニースヘッグさんっ。穏便に……っ」
温情の言葉がニーズヘッグに届いたかどうかはわからない。
さんざん頭を悩まされる事が続いていたため、ここぞとばかりにニーズヘッグは容易い方法に活気づいて、むしろ楽しそうでもあった。
そこが不安だ。
「あ~あ、本当に野蛮だこと。まあ、いいんじゃない? 私もあの屋敷の奴、嫌いだし」
「ネアさん……」
「なんとなくだけどさ。たぶん大丈夫よ」
呆れた顔で、ネアはお手上げと肩をすくめた。
もめ続けた後。とりあえず場所を変えようと、ネアは自身が利用していた宿にへと移動。
何故魔界にいるのか。何故ニーズヘッグが表に出てきているのか。内容を聞き、ネアは納得して頷く。
「クロトは魔素の影響で爆睡。エリーちゃんはなんとか耐性があったのか、とりあえずグリアの実で正体は免れている。探しているのは魔素耐性に必要なマカツ草……か」
ネアはニーズヘッグの持っていたソフラの名を記した紙に目を細める。
「よくもまあ、あのウサギさんと張り合えたものね」
「電気女のくせに、意外な言い分だな」
「……確かに女性だけど、私、あの人苦手なのよね。極力会いたくないっていうか……。まあ、私だって色々あるわけ」
ネアに会いたくない女性がいるとは驚きだ。
明日は天変地異かと、ニーズヘッグが思ってしまうほどである。
その疑わしい目から遠ざかるため、ネアは本題に話を戻す。
「で? あの人の紹介でこの街にまで来たけど……お目当ての物がない、と」
「ねーんだよ! 森やら荒野やら通ってきたが、全くねーし。……どうなってんだよっ」
「とりあえず、最後まで話を聞きなさい蛇野郎」
心当たりがあるのか、ネアにはまだ何か続きがあるらしい。
彼女の本業は情報屋。彼女なら、もしかしたら何か情報を得ているやもしれない。
それに期待し、一度ニーズヘッグは黙って話を聞くこととした。
「そのマカツ草なんだけど、この近辺には今無いのよねぇ。あの人の事だからどうせそれすら知ってて、尚且つアンタに教えなかったんでしょうね。……相変わらず腹黒い」
「どういう事だよ?」
「お目当てのマカツ草はね、とある魔界貴族が買い占めてるの。……それも、この近辺一帯のを根こそぎね」
「あんなもん、魔族にとっちゃ不要なもんだろ? 結構マズいらしいし」
「そこが気に入ったらしいわよぉ? 場所なら特定できてるわ。この街の奥に領主の屋敷があってね、そこの魔界貴族の豚野郎が集めてるって話」
「……豚さんなんですか?」
エリーは、ふと想像する。
ピンクでまん丸とした可愛らしい泣き声を出す豚。それが高貴な身なりをしている様を。
想像上ではエリーは可愛いと和むものでしかない。
「……ああ、たぶん。エリーちゃんが想像している様な要素はないと思うの、ごめんね」
「そ、そうなんですか!?」
「夢を壊すつもりはないけど、それはもうきったない豚野郎でね。農家の豚の方が幾度かマシなものなのよ」
「すんげーぶち壊しにいくじゃねーか……」
「想像上だけでも、エリーちゃんがあの豚野郎を美化してしまうなんて、お姉さん耐えられない!!」
その程度は堪えろと、ニーズヘッグは心の奥底で思ってしまう。
クロトたちとのやり取りを見ていたが、「なるほど」とネアとの接し方には慣れが必要であると確信。
あまり深くつっこめばそれだけで無駄な時間を過ごすことになりそうだ。
しかし、ならばとニーズヘッグの方針が決まる。
窓を開け、街の奥で堂々と建つ大きな屋敷を見ては、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「なるほど、簡単な案件だな! 要はあそこの豚を焼いてくればいいってわけか!」
物騒と、何処か活き活きとしたニーズヘッグは瞳を輝かせる。
その発言にエリーは戸惑うも、
「じゃあ、手っ取り早く焼いてきてちょうだい。悪評もあったし、いい機会と思って」
と、ネアが了承。
賛同の声があがれば、ニーズヘッグは腕を鳴らし窓から飛び出す。
「ニ、ニースヘッグさんっ。穏便に……っ」
温情の言葉がニーズヘッグに届いたかどうかはわからない。
さんざん頭を悩まされる事が続いていたため、ここぞとばかりにニーズヘッグは容易い方法に活気づいて、むしろ楽しそうでもあった。
そこが不安だ。
「あ~あ、本当に野蛮だこと。まあ、いいんじゃない? 私もあの屋敷の奴、嫌いだし」
「ネアさん……」
「なんとなくだけどさ。たぶん大丈夫よ」
0
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」
公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。
忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。
「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」
冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。
彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。
一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。
これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。
「薬草まみれの地味な女」と婚約破棄された宮廷薬師ですが、辺境でのんびり暮らしていたら元婚約者が全てを失っていました
メトト
恋愛
宮廷薬師エルザは、夜会の場で婚約者の侯爵家嫡男レオンに公開婚約破棄される。
「薬草にまみれた地味な女」——そう蔑まれたエルザだが、その胸にあったのは悲しみではなく安堵だった。
七年間、浪費家の婚約者を支え続けた日々はもう終わり。
エルザは宮廷薬師を辞し、薬草の宝庫と名高い辺境の街ヴェルデンで小さな薬屋を開く。
そこで出会ったのは、不器用だけどまっすぐな領主代行の青年騎士ノエル。
薬屋は大繁盛、流行病を退け、新薬の開発にも成功——エルザの薬師としての才能が、辺境の地で花開いていく。
一方、エルザを失った王都では。
宮廷薬師の後任は見つからず、新しい婚約者の浪費で侯爵家の財政は火の車。
全てを失ったレオンがエルザの元に現れた時、彼女が返した言葉とは——。
復讐なんてしない。ただ自分らしく生きるだけ。
それが最大の「ざまぁ」になる、爽快異世界恋愛物語。
完結保証 全12話になります。
元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜
日々埋没。
ファンタジー
「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」
かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。
その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。
レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。
地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。
「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」
新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。
一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。
やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。
レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。
いつか優しく終わらせてあげるために。
イチイ アキラ
恋愛
初夜の最中。王子は死んだ。
犯人は誰なのか。
妃となった妹を虐げていた姉か。それとも……。
12話くらいからが本編です。そこに至るまでもじっくりお楽しみください。
女性が少ない世界に転生した控えめ伯爵令嬢、なぜか五人の婚約候補に選ばれて少しずつ恋を知っていきます
ノッポ
恋愛
女性が極端に少ない異世界に転生した私は、気づけば伯爵令嬢になっていた。
前世は日本で普通に生きていたせいか、貴族令嬢らしい強気な振る舞いがどうしても苦手。
社交界デビューを迎えても、「どうして私が選ばれるの?」と戸惑うばかりだった。
けれど今年デビューする高位令嬢はわずか三人。
家同士の思惑も重なり、騎士団長家の息子、宰相子息、魔術師団長の息子、幼なじみの侯爵子息、そして英雄騎士――
五人の若きエリートとのお見合いが次々と始まってしまう。
遠慮がちで控えめな性格は、この世界では珍しく、気づけば少しずつ距離を縮めていく彼ら。
異世界での恋愛に戸惑う日々。けれど出会いを重ねるたびに、私は少しずつ変わっていく――。
女性希少世界で、自分の幸せを選べるようになるまでの逆ハーレム恋愛ファンタジー。
悪役令嬢ですが、二度目は無能で通します……なので執事は黙っててください
放浪人
恋愛
社交界で“悪女”と呼ばれ、無実の罪で断罪された公爵令嬢リディア。
処刑の刃が落ちた瞬間、彼女は断罪される半年前の朝に時を遡っていた。
「二度目も殺されるなんて御免だわ。私は、何もできない無能な令嬢になって生き延びる!」
有能さが仇になったと悟ったリディアは、プライドも実績も捨てて「無能」を装い、北の辺境・白夜領へ引きこもる計画を立てる。
これで平和なスローライフが送れる……はずだった。
けれど、幼い頃から仕える専属執事・レージだけは誤魔化せない。
彼はリディアの嘘を最初から見抜いているくせに、涼しい顔で「無能な主人」を完璧に演じさせてくれないのだ。
「黙っててと言いましたよね?」
「ええ。ですから黙って、あなたが快適に過ごせるよう裏ですべて処理しておきました」
過保護すぎる執事に管理され、逃げ道を塞がれながらも、リディアは持ち前の正義感で領地の危機を次々と救ってしまう。
隠したいのに、有能さがダダ漏れ。
そうこうするうちに王都からは聖女と王太子の魔の手が迫り――?
「守られるだけはもう終わり。……レージ、私に力を貸しなさい」
これは、一度死んだ令嬢が「言葉」と「誇り」を取り戻し、過保護な執事の手を振りほどいて、対等なパートナーとして共に幸せを掴み取るまでの物語。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
【番外編も完結】で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?
Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。
簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。
一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。
ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。
そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。
オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。
オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。
「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」
「はい?」
ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。
*--*--*
覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾
★2/17 番外編を投稿することになりました。→完結しました!
★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓
このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。
第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」
第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」
第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」
どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ
もしよかったら宜しくお願いしますね!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる