追放された『迷宮術士』の俺は、廃村を開拓してスローライフするつもりだったのだが?~元追放者のワケアリ領民たちと村を発展させます~

くま猫

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第五章『黄昏の終わり月夜と漆黒』

第47話『漆黒の至高の財』

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 俺は、みんなの前に立ち深呼吸をする。

 みなが、覚悟の決まった良い面構えをしている。
 この場に、一人たりとも臆する者はいない。

 最高の友だ。

 檄《げき》、難しい話などはしない。
 漆黒らしく、カマしてやるさ。



「水平線の向こうには、十万を越える軍勢。対する俺たちはたったの4人だ、どうだッ! 恐ろしいかっ!!!」

呵呵、不足十万、求兵百万10万?けっ!――100万は連れてこいやっ



「曰《いわ》く、生きる伝説。曰《いわ》く、戦場の人狼ウォー・ウルフ。傭兵の王、ベオウルフ、どうだッ! 絶望したかっ!!!」

「クククッ……絶望? いや、これほどの楽しみはねぇなぁッ。漆黒の格に相応しい、好敵手だぁッ。不敗の伝説は、今日、終わりを告げるッ」



「あの、ギルドマスターをして、未知の脅威と言わしめる、異界から召喚された災厄級の使い魔! どうだッ! 臆するに値するかっ!!!」

「ふひひ――いやぁ……血沸き肉踊る、相手っすねぇ。臆するに、値はしませぬが。拙者が、恐怖に底などないと教えてやるでござる……」




「そうだ!!! 漆黒は、恐れず、絶望せず、臆することもない! 何故なら、それらは俺たちが、与えるものだからだ!!! 悪を、敵を、嗤《わら》うのだ!!!」

「クククッ! カァーッハハカハハッ!」

「ふひひひ! ふひっ……ひひゃっひッ!」

「呵呵呵呵! 呵呵――火禍狩架變ッ!」




「思い出せ! 漆黒は――俺たちの決意は!!! 悲壮な自己犠牲であったことが一度でも、あったかっ! 誰かに押し付けられ、イヤイヤやってたモンだったか!」

「違ぇなぁッ。真に欲しいモンを勝ち取るために、俺たちゃ望んで戦ってきたのさ……ククッ……漆黒はなぁ、どんな冒険者より――強欲なんだぜッ!」



「そうだ! 俺たちは、既に至高の財を得ている。だが……その財を奪わんと有象無象の盗人が、漆黒の宝物庫を土足で踏み荒らそうとしている、許せるか!」

不招客……呵呵、饗漆黒流、鮮血狂宴!悪魔の家に迷い込んだ悪い仔猫ちゃんは、漆黒の躾でわからせるしかねえべなぁ



「漆黒の、守ってきた至高の財、そして、それを狙う、恐れを知らぬ不逞の輩《やから》! 許しておけるか!」

「ふふ……拙者は、奪はせない、穢させもない、命と釣り合う財……その罪、死をもって償わせるっす!」





「なら……問おう、邪悪を討てるのは、正義だけか! 漆黒は――正義か!」

「クックック……いやぁ、そりゃ、違う。正義じゃねぇなぁッ!――俺たちゃなぁ――悪だ。悪鬼を喰らう、共食いの鬼だッッ!!!」



「悪虐の徒を滅ぼせるのは、聖人だけか! 漆黒は――聖人か!」

「ふひひ……んなわきゃねーっす。拙者たちは、咎人を処刑する咎人っす!」



「絶望を伝播する者の、その敵は希望だけか! 漆黒は――希望か!」

与絶望漆黒、受絶望伝播輩!絶望を広めるヤツに絶望を思い知らせる、それが漆黒だわな



「そうだ! 漆黒は、正義を信じ、聖人の善行を尊び、希望こそ至高の財、そう認める者たちだ。だからこそ、正義の敵の邪悪である! 聖人を冒涜する者を罰する咎人である! 希望を踏み躙る者の絶望である!」



 漆黒は奪う者を、決して許さない。
 悪に絶望を与える殺戮者。

 漆黒の外套を纏《まと》いし、禍々しい深紅の悪魔。
 邪悪に対する抑止の力。




「ユーリ。ここらで、漆黒の財の棚卸《たなおろ》しをしようぜッ。俺達が守ってきた、至高の財を読み上げてみてくれやッ! 改めて、知りてぇんだよ……俺たちが守ってきた物、そしてこれから守ろうとしている至高の財ってヤツをよぉッ!!!」




「団長、分かった。至高の財。その価値をいま、問おう。――正義!」

「正義、ソイツを信じて、善行をなそうと頑張ってるヤツラ、最高じゃん、カッコいいじゃんかよッ。そいつらの行為をなぁッ……偽善と嘲る奴らを、許さねぇッ!」



「愛!」

不可人間、不可恋愛誰かを愛さずして、人間なんてやってられねーべや?



「尊厳!」

「畜生は死んで骨を残す、人は死んで名残す。尊厳、名誉。死後なお生きるぜッ!」



「優しさ!」

「人が誰かを思いやる気持ち、それを弱さだと言う人もいるっす。でも、優しさとか、思いやりとかがなくなったら、きっと世界は地獄と変わらないものになるっす」



「夢!」

「見果てぬ夢をいだいてさぁ……叶わず、その夢が破れたとしても、なお、夢には価値があると断言するぜッ! 身の丈にあわねー夢? ハッ! すげぇ、いいじゃねぇかッ! 叶うか、叶わないかッ、んなもんな、――二の次、三の次だッ!!!!」



「赦《ゆる》し!」

「罪を赦すこと、それは人の高潔な精神の発露だと思うっす。だからこそ、それを裏切る、非道なる輩を……拙者は、絶対に許さないっす!」



「矜持《きょうじ》!」

「矜持、大好物だぜッ! 伊達《だて》、見得《みえ》、格好付け!――そういうのって最高に粋じゃねぇかッ! 非合理の極み、大いに結構ッ! だから良いんだぜッ!」





「これが、漆黒が守ってきた、財。形なき至高の財。命と天秤に掛け、なお釣り合う、究極の財! それ故《ゆえ》に、略奪者に、その一切を奪わせはしない!」

「ユーリ。良いじゃんかよ。そうだよな。あったりめぇーだなぁッ!!!」



「漆黒は、邪悪を写す鏡。善因には善果、悪因には悪果、その因果の報いを与える、執行者。因果応報の、体現者だ!」

我執行者、因果応報閻魔さんより一足先に報いを受けさせるべや



「奪う者から奪い、殺める者を殺め、絶望を与える者に絶望を与える。行った悪行、積み上げた悪徳。漆黒は、それに釣り合った、相応しい罰を与える!」

「正義では救えない罪人に誅を下す。それが、拙者たちの基本っすからね」




「今宵、漆黒は、全ての悪にとって、絶望の象徴となる! 漆黒の名を聞き、全ての悪党は、恐怖し、絶望するだろう。邪悪の終着点《デッド・エンド》。過去において、漆黒を見て生き伸びた悪党は一人も居ない。それは、未来においても変わらない! 漆黒の財を奪わんとする、身の程知らずどもに、その恐ろしさ、思い知らせてやろうぜ!!! さぁ、これが最後の問いだ。俺たちは、何者だ!!!」



「「「「漆黒だ!!!」」」」
 


 月明かりが水平線の十万の軍勢を映し出す。
 迫りくる戦場。揺れる大地。戦場の鼓動。



 決戦の時は、近い。
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