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第2章 あたしが宮廷女官? それも皇后付きの侍女!
5 利害が一致? そして、後宮へ
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「改めてお礼を言おうと思ってたんだ。そろそろ、ここを出ようと思って。奥さまにもきちんとお礼とお別れをしたいんだけど」
すると、一颯は顔つきを厳しくさせた。
「ここを出てどこへ行くつもりだ?」
「どこって、家に帰るに決まってんじゃない。両親を殺した奴らを探す」
この数日間で心に決めたこと。それは、両親を殺した賊を見つけだすことだ。
「探してどうする? 復讐でもするのか?」
「そこまでは考えていないけど、とにかく探すって決めた。それに、いつまでもあんたんちにいるわけにはいかないでしょう」
蓮花は無意識に懐から数珠を取り出し握りしめた。そうして、気持ちを落ち着かせるのだ。
一颯は蓮花の手元に視線を落とす。
「そういえばおまえ、霊能者だと言っていたな。賊を見つけて呪い殺すのか?」
蓮花が霊能者と聞き、恵医師も驚いたように目を丸くしている。
「はあ! なに言ってんのよ。そんなことするわけがないでしょ! やめてよ。人を呪うなんて絶対にやっちゃいけないことなんだから!」
蓮花は一颯を睨みつけながらも、その手があったかと心の中で手を叩く。
なーんて、冗談だけれど。
「霊能者っていっても、霊が視えて祓えるだけだし」
いや、普通の者にはそれすらできないと思うが、と一颯はぼそっと言う。
「だが、おまえの力はそれだけではないだろう。僕にお守りをくれた。あのお守りのおかげで亡霊どもから救われた。それに、部下たちの持病もあてたな?」
「ああ、あれね。なんとなく分かっちゃうっていうか。悪い部分に黒い靄がかかったように視えるの。あ、常に視えるわけじゃないから。普段は視えないように能力を遮断してる」
ほう、と一颯は感心したように声をもらす。一緒に話を聞いていた恵医師も、信じられないと呟いていた。
「やはりな。おまえには何か特別な力があると思っていた」
「言っておくけれど、霊能者ってだけで、誰かを呪い殺したりとかはできないから」
だけど、確かに賊を見つけてどうしたいのだろう。
復讐をしたくても、あたし一人の力では賊に立ち向かうことなんてできない。
役人に捕まえてもらって正当な裁きをと思っても、多分それも望みは薄い。
結局、泣き寝入りするしかないのか。
うーん、と唸って寝台の上にあぐらをかき、考え込むように頬杖をつく。
「……? 蓮花」
何度か名前を呼ばれたことにようやく気づき、蓮花は顔をあげた。
「僕に協力してくれないか? 協力してくれるなら、賊どもは僕が探そう。実はあの日、一人逃げた賊を捕らえられず見逃した。おまえが望むなら始末してやる」
「し、し、始末って、殺すってこと?」
「それ以外になにがある」
言うことが物騒すぎる。
「あたしはこの国の法で裁いてくれたらいいと思ってるだけよ。霊が視えるって言ったでしょ。人の生き死にには敏感なの」
「なら、賊どもを捕らえて牢にぶちこもう。どうせたくさんの人を殺したのだろうから結局は死罪だろうがな」
一颯はついっと蓮花に詰め寄った。
「聞いたと思うが僕には姉がいる。姉のためにおまえの力を貸して欲しい。協力してくれるなら、さっき言った通り、おまえの両親を殺した賊どもを僕が捕らえると約束する」
「力を貸すって何をするの? 危険なことはしたくないんだけど」
「姉上を陥れようとする者から守ってくれればいい。霊能者なら、通常の者よりも勘が鋭いのだろう? それに、薬草の知識もあるらしいじゃないか。毒に詳しいのだろう?」
「あんたが側について守ってあげればいいじゃない。武人なら、危険を察知する能力は人並み以上でしょ? 腕っ節も強いし頼もしい限りじゃない」
「それができるならそうしている。それに、目に見えない力では、さすがの僕も太刀打ちできない。時には呪いをかけられることもある。せめて、姉上に子ができれば状況も変わるのだが」
最後の姉上に子が云々のあたりは、ほとんど呟く声だったので聞き取れなかった。
なるほど。
呪詛が絡むとなると、確かに一颯ではどうにもできない。だけど、あたしなら対処できる。毒の知識もそれなりにある。
それにしても、呪いまでかけられて、毒殺の危険もあるって、よほどこいつのお姉さん嫌われ者なの?
頼む、と一颯は頭を深く下げた。
蓮花は考えるように腕を組む。
「あんたのお姉さんに呪いをかける奴がいたら、その呪いを跳ね返してやればいいってこと?」
「やってくれるのか?」
「一颯さま! 私にもぜひ協力をさせてください。幼い頃、親に捨てられた私を、静麗(ジンリー)さまは拾って面倒をみてくれました。こうして医師になれたのも、静麗さまのおかげ。ぜひ役に立ちとうございます」
それまで、さりげなくこちらの会話を聞いていた恵医師が、一颯の前にひざまずき頭を下げ願い出てきた。
「恵医師も協力してくれるのなら、ありがたい」
約束に間違いはないか、蓮花はもう一度念を押す。
「ちゃんと賊を見つけてくれるんでしょうね」
「むろんだ」
「分かったわ。その話に乗りましょう。で、あんたの姉さんは今どこに?」
「宮廷だ。後宮にいる」
「そう、宮廷ね。き、宮廷!」
蓮花は素っ頓狂な声をあげた。
うん、確かにこいつの姉さんは皇后だって言っていた。
すっかり忘れてたよ。
すると、一颯は顔つきを厳しくさせた。
「ここを出てどこへ行くつもりだ?」
「どこって、家に帰るに決まってんじゃない。両親を殺した奴らを探す」
この数日間で心に決めたこと。それは、両親を殺した賊を見つけだすことだ。
「探してどうする? 復讐でもするのか?」
「そこまでは考えていないけど、とにかく探すって決めた。それに、いつまでもあんたんちにいるわけにはいかないでしょう」
蓮花は無意識に懐から数珠を取り出し握りしめた。そうして、気持ちを落ち着かせるのだ。
一颯は蓮花の手元に視線を落とす。
「そういえばおまえ、霊能者だと言っていたな。賊を見つけて呪い殺すのか?」
蓮花が霊能者と聞き、恵医師も驚いたように目を丸くしている。
「はあ! なに言ってんのよ。そんなことするわけがないでしょ! やめてよ。人を呪うなんて絶対にやっちゃいけないことなんだから!」
蓮花は一颯を睨みつけながらも、その手があったかと心の中で手を叩く。
なーんて、冗談だけれど。
「霊能者っていっても、霊が視えて祓えるだけだし」
いや、普通の者にはそれすらできないと思うが、と一颯はぼそっと言う。
「だが、おまえの力はそれだけではないだろう。僕にお守りをくれた。あのお守りのおかげで亡霊どもから救われた。それに、部下たちの持病もあてたな?」
「ああ、あれね。なんとなく分かっちゃうっていうか。悪い部分に黒い靄がかかったように視えるの。あ、常に視えるわけじゃないから。普段は視えないように能力を遮断してる」
ほう、と一颯は感心したように声をもらす。一緒に話を聞いていた恵医師も、信じられないと呟いていた。
「やはりな。おまえには何か特別な力があると思っていた」
「言っておくけれど、霊能者ってだけで、誰かを呪い殺したりとかはできないから」
だけど、確かに賊を見つけてどうしたいのだろう。
復讐をしたくても、あたし一人の力では賊に立ち向かうことなんてできない。
役人に捕まえてもらって正当な裁きをと思っても、多分それも望みは薄い。
結局、泣き寝入りするしかないのか。
うーん、と唸って寝台の上にあぐらをかき、考え込むように頬杖をつく。
「……? 蓮花」
何度か名前を呼ばれたことにようやく気づき、蓮花は顔をあげた。
「僕に協力してくれないか? 協力してくれるなら、賊どもは僕が探そう。実はあの日、一人逃げた賊を捕らえられず見逃した。おまえが望むなら始末してやる」
「し、し、始末って、殺すってこと?」
「それ以外になにがある」
言うことが物騒すぎる。
「あたしはこの国の法で裁いてくれたらいいと思ってるだけよ。霊が視えるって言ったでしょ。人の生き死にには敏感なの」
「なら、賊どもを捕らえて牢にぶちこもう。どうせたくさんの人を殺したのだろうから結局は死罪だろうがな」
一颯はついっと蓮花に詰め寄った。
「聞いたと思うが僕には姉がいる。姉のためにおまえの力を貸して欲しい。協力してくれるなら、さっき言った通り、おまえの両親を殺した賊どもを僕が捕らえると約束する」
「力を貸すって何をするの? 危険なことはしたくないんだけど」
「姉上を陥れようとする者から守ってくれればいい。霊能者なら、通常の者よりも勘が鋭いのだろう? それに、薬草の知識もあるらしいじゃないか。毒に詳しいのだろう?」
「あんたが側について守ってあげればいいじゃない。武人なら、危険を察知する能力は人並み以上でしょ? 腕っ節も強いし頼もしい限りじゃない」
「それができるならそうしている。それに、目に見えない力では、さすがの僕も太刀打ちできない。時には呪いをかけられることもある。せめて、姉上に子ができれば状況も変わるのだが」
最後の姉上に子が云々のあたりは、ほとんど呟く声だったので聞き取れなかった。
なるほど。
呪詛が絡むとなると、確かに一颯ではどうにもできない。だけど、あたしなら対処できる。毒の知識もそれなりにある。
それにしても、呪いまでかけられて、毒殺の危険もあるって、よほどこいつのお姉さん嫌われ者なの?
頼む、と一颯は頭を深く下げた。
蓮花は考えるように腕を組む。
「あんたのお姉さんに呪いをかける奴がいたら、その呪いを跳ね返してやればいいってこと?」
「やってくれるのか?」
「一颯さま! 私にもぜひ協力をさせてください。幼い頃、親に捨てられた私を、静麗(ジンリー)さまは拾って面倒をみてくれました。こうして医師になれたのも、静麗さまのおかげ。ぜひ役に立ちとうございます」
それまで、さりげなくこちらの会話を聞いていた恵医師が、一颯の前にひざまずき頭を下げ願い出てきた。
「恵医師も協力してくれるのなら、ありがたい」
約束に間違いはないか、蓮花はもう一度念を押す。
「ちゃんと賊を見つけてくれるんでしょうね」
「むろんだ」
「分かったわ。その話に乗りましょう。で、あんたの姉さんは今どこに?」
「宮廷だ。後宮にいる」
「そう、宮廷ね。き、宮廷!」
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うん、確かにこいつの姉さんは皇后だって言っていた。
すっかり忘れてたよ。
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