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第4章 え? あたしが夜伽! それだけは勘弁してください
2 陛下の心を繋ぎ止めるための策
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「あの子は無理よ」
蓮花の気性を考えれば無理だと皇后も理解しているようだ。
なにより、蓮花は陛下に気に入られて妃になろうという野心はまったくない。それに、蓮花がここに来た理由も皇后は知っている。
子が産まれれば、彼女は後宮を出て行く身。それに、蓮花は両親を殺した賊を見つけ出すという目的がある。その彼女が陛下に仕えるはずがない。
「何故ですか? 陛下に気に入られているのに嫌がる理由が私には分かりません。後宮にいる女性のほとんどが陛下の寵愛を得ることを望んでいるのに」
「あの子はそういう目的でここへやって来たのではないの」
蓮花は陛下のことなど少しも興味がない。そんな彼女を自分の目的のために利用するのはいけないことだ。
「もういいわ。あなたも下がって。それから蓮花を呼び戻してちょうだい。書道を教える約束をしたの」
「ですが……」
「皇后さま、恵医師が来ました!」
呼び戻すまでもなく、蓮花の元気な声が部屋の外から聞こえた。
「お腹の子によい薬を恵医師が煎じたそうですよ。お食事もあまり摂っていなかったですよね。これを飲んで少しは元気を出してください」
蓮花の背後には薬箱を持った恵医師が立っている。
牢で罰を受けていた時に、蓮花は恵医師を呼び、それ以来、彼は度々皇后の宮にやって来るようになった。
暁蕾は皇后に目配せをする。
先程の話を蓮花に話してみるべきではという意味だ。しかし、皇后は否と首を振る。
陛下の心を他の妃に向けないために蓮花を利用することは、やはり気が進まないようだ。
自分のいないところでそんな会話がされていたとは知らない蓮花は、皇后と暁蕾の様子に違和感を抱きながらも、特に問うことはしなかった。
「皇后さま、安胎薬をお持ちしました。私が煎じたのでどうかご安心ください」
恵医師から差し出された薬湯の器を受け取ったものの、皇后の表情はやはり浮かない。
「自分でも分かっているの。こんなことではいけないって。でも、毎日が不安で」
蓮花はぐっとこぶしを握りしめる。
「皇后さま、そんな弱気じゃ、お腹の皇子さまも不安に思いますよ。かわいそうです」
「皇子?」
「そう、皇后さまには元気な皇子を産んでもらわなければ」
もうその言葉は聞き飽きたというように、皇后は一瞬不機嫌な表情を浮かべる。
「本当にこの子が皇子だったらよいのだけれどね」
「だから、皇子さまですよ」
皇后は眉根を寄せ蓮花に厳しい視線を向ける。しかし、蓮花の顔は真剣そのものであった。冗談とか気休めでお腹の中に皇子がいると言った様子ではないと分かり、皇后は肩の力を抜いた。
「ええと、言うべきじゃないと思っていたから黙っていたんですけど、皇后さまの今の状態を視たら言わずにはいられなくて。間違いないです。だって、あたしの目にはお腹の中にいる子が皇子さまに視えるから」
皇后は唇を震わせ目を見開いた。
「本当なの? 視えるの?」
「はい、元気で健やかな皇子さまです。もし産まれた子が公主さまだったら、あたし裸で後宮を歩き回ってもいいです」
「いや、それ死罪だから」
と、明玉はぽつりと言う。
皇后は両手を顔にあて、涙を流した。
「だから、しっかりとご飯を食べて、元気な皇子を産んでください!」
「そうね。この子のためにも私がしっかりしなければいけないわね。安心したらお腹が空いてきたわ。明玉、何か食事を持ってきてくれるかしら」
「はい……はい! ただちに厨房に行って作ってもらうよう指示します!」
明玉は元気よく返事をし、部屋の入り口まで走ると、近くにいた侍女を呼びつけ食事を持ってくるよう指示しながらも、自分も厨房に走って行く。
蓮花は皇后に向き直る。
蓮花の気性を考えれば無理だと皇后も理解しているようだ。
なにより、蓮花は陛下に気に入られて妃になろうという野心はまったくない。それに、蓮花がここに来た理由も皇后は知っている。
子が産まれれば、彼女は後宮を出て行く身。それに、蓮花は両親を殺した賊を見つけ出すという目的がある。その彼女が陛下に仕えるはずがない。
「何故ですか? 陛下に気に入られているのに嫌がる理由が私には分かりません。後宮にいる女性のほとんどが陛下の寵愛を得ることを望んでいるのに」
「あの子はそういう目的でここへやって来たのではないの」
蓮花は陛下のことなど少しも興味がない。そんな彼女を自分の目的のために利用するのはいけないことだ。
「もういいわ。あなたも下がって。それから蓮花を呼び戻してちょうだい。書道を教える約束をしたの」
「ですが……」
「皇后さま、恵医師が来ました!」
呼び戻すまでもなく、蓮花の元気な声が部屋の外から聞こえた。
「お腹の子によい薬を恵医師が煎じたそうですよ。お食事もあまり摂っていなかったですよね。これを飲んで少しは元気を出してください」
蓮花の背後には薬箱を持った恵医師が立っている。
牢で罰を受けていた時に、蓮花は恵医師を呼び、それ以来、彼は度々皇后の宮にやって来るようになった。
暁蕾は皇后に目配せをする。
先程の話を蓮花に話してみるべきではという意味だ。しかし、皇后は否と首を振る。
陛下の心を他の妃に向けないために蓮花を利用することは、やはり気が進まないようだ。
自分のいないところでそんな会話がされていたとは知らない蓮花は、皇后と暁蕾の様子に違和感を抱きながらも、特に問うことはしなかった。
「皇后さま、安胎薬をお持ちしました。私が煎じたのでどうかご安心ください」
恵医師から差し出された薬湯の器を受け取ったものの、皇后の表情はやはり浮かない。
「自分でも分かっているの。こんなことではいけないって。でも、毎日が不安で」
蓮花はぐっとこぶしを握りしめる。
「皇后さま、そんな弱気じゃ、お腹の皇子さまも不安に思いますよ。かわいそうです」
「皇子?」
「そう、皇后さまには元気な皇子を産んでもらわなければ」
もうその言葉は聞き飽きたというように、皇后は一瞬不機嫌な表情を浮かべる。
「本当にこの子が皇子だったらよいのだけれどね」
「だから、皇子さまですよ」
皇后は眉根を寄せ蓮花に厳しい視線を向ける。しかし、蓮花の顔は真剣そのものであった。冗談とか気休めでお腹の中に皇子がいると言った様子ではないと分かり、皇后は肩の力を抜いた。
「ええと、言うべきじゃないと思っていたから黙っていたんですけど、皇后さまの今の状態を視たら言わずにはいられなくて。間違いないです。だって、あたしの目にはお腹の中にいる子が皇子さまに視えるから」
皇后は唇を震わせ目を見開いた。
「本当なの? 視えるの?」
「はい、元気で健やかな皇子さまです。もし産まれた子が公主さまだったら、あたし裸で後宮を歩き回ってもいいです」
「いや、それ死罪だから」
と、明玉はぽつりと言う。
皇后は両手を顔にあて、涙を流した。
「だから、しっかりとご飯を食べて、元気な皇子を産んでください!」
「そうね。この子のためにも私がしっかりしなければいけないわね。安心したらお腹が空いてきたわ。明玉、何か食事を持ってきてくれるかしら」
「はい……はい! ただちに厨房に行って作ってもらうよう指示します!」
明玉は元気よく返事をし、部屋の入り口まで走ると、近くにいた侍女を呼びつけ食事を持ってくるよう指示しながらも、自分も厨房に走って行く。
蓮花は皇后に向き直る。
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