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第30話 奇跡の助祭
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「何があったの?」
ユリアーナが比較的軽傷の冒険者を治療しながら訊ねた。
「オーガの群れだ――――」
八体のオーガとそれを追いかけるアンデッド・オーガに襲われたのだという。
「――――ギルドが募った冒険者が足止めしているが数が足りない。戦える者をもっと集めなきゃだめだ」
「騎士団は何をしているんだ?」
「街の外壁を突破されないよう、防備を固めている」
最後の砦ということか。
続いて隣の男からも答えが返ってきた。
「大型兵器を用意していた」
「投石機やバリスタか?」
「運ばれるときに攻撃魔法が使える部隊とすれ違ったから、街への侵入はしばらく防げるはずだ」
「しばらく?」
投入された戦力がどの程度か判然としないが、安心できる状況じゃないと言うことか。
「八体のオーガは冒険者と騎士団でなんとでもなるだろうが、アンデッド・オーガを倒すには火力が足りねえ」
「攻撃魔法が使える魔術師が必要と言うことか?」
「回復も追い付かねえはずだ」
それはこの状況を見れば想像がつく。
できるだけ早めに駆け付けた方が良さそうだな。
俺とユリアーナの目が合った。
互いに小さくうなずいたタイミングで、よく通るロッテの声が響く。
「シュラさん、ユリアーナさん、こっちです!」
声のする方を振り向くと、二十代半ばと思われる女性の傍らにしゃがみ込むロッテがいた。
俺とユリアーナはロッテの下へと足早に駆け寄った。
横たわるシスターを見たユリアーナが優しい声で言う。
「大丈夫よ、この程度の傷ならすぐに治るわ」
「ありがとうございます。私よりも子どもたちを先にお願いします」
「子どもたちなら心配ないわ」
子どもたちは軽傷なので後回しにされているのだがそのことは適当にごまかして、シスター・アンジェラの治療を開始した。
細かな裂傷が瞬く間に消え、背中にあった大きな傷もみるみる塞がっていく。それに伴って、血の気が失せていた顔にも生気が戻る。
「シスター!」
ロッタの喜びの悲鳴と同時に周囲からどよめきが沸き起こる。
やはりユリアーナの光魔法は驚愕に値するようだ。
覚悟はしていたがこれは後が大変そうだ。
そう思った瞬間、俺たちの周囲で湧きおこったどよめきを遥かに凌駕する歓声が上がった。
「奇跡だ!」
「助祭様が奇跡を起こされた!」
歓声の中、確かに聞き取れた。
人混みの隙間から見えたのは二十代後半の青年。恐らく彼が赴任してきたばかりの助祭なのだろう。
ユリアーナに集まりかけた注目を攫ってくれたことに内心で感謝しながらユリアーナへと視線を戻す。
「このシスターはもう大丈夫なのか?」
「ええ、問題ないわ」
「ありがとうございます。ありがとうございます!」
涙で顔をグチャグチャしたロッテが何度も頭をさげた。
「他の重傷者の手当てをするから、ロッテちゃんはこの女性の側を離れないでね」
ロッテにそう告げながら立ち上がり際に俺に耳打ちをした。
「あの助祭、神聖石の恩恵を受けているわ」
「分かるのか?」
ユリアーナがうなずいた。
俺とユリアーナの最大の目的である、この世界に散った百余個の神聖石の回収。
その一つが早くも見つかった。
ユリアーナが比較的軽傷の冒険者を治療しながら訊ねた。
「オーガの群れだ――――」
八体のオーガとそれを追いかけるアンデッド・オーガに襲われたのだという。
「――――ギルドが募った冒険者が足止めしているが数が足りない。戦える者をもっと集めなきゃだめだ」
「騎士団は何をしているんだ?」
「街の外壁を突破されないよう、防備を固めている」
最後の砦ということか。
続いて隣の男からも答えが返ってきた。
「大型兵器を用意していた」
「投石機やバリスタか?」
「運ばれるときに攻撃魔法が使える部隊とすれ違ったから、街への侵入はしばらく防げるはずだ」
「しばらく?」
投入された戦力がどの程度か判然としないが、安心できる状況じゃないと言うことか。
「八体のオーガは冒険者と騎士団でなんとでもなるだろうが、アンデッド・オーガを倒すには火力が足りねえ」
「攻撃魔法が使える魔術師が必要と言うことか?」
「回復も追い付かねえはずだ」
それはこの状況を見れば想像がつく。
できるだけ早めに駆け付けた方が良さそうだな。
俺とユリアーナの目が合った。
互いに小さくうなずいたタイミングで、よく通るロッテの声が響く。
「シュラさん、ユリアーナさん、こっちです!」
声のする方を振り向くと、二十代半ばと思われる女性の傍らにしゃがみ込むロッテがいた。
俺とユリアーナはロッテの下へと足早に駆け寄った。
横たわるシスターを見たユリアーナが優しい声で言う。
「大丈夫よ、この程度の傷ならすぐに治るわ」
「ありがとうございます。私よりも子どもたちを先にお願いします」
「子どもたちなら心配ないわ」
子どもたちは軽傷なので後回しにされているのだがそのことは適当にごまかして、シスター・アンジェラの治療を開始した。
細かな裂傷が瞬く間に消え、背中にあった大きな傷もみるみる塞がっていく。それに伴って、血の気が失せていた顔にも生気が戻る。
「シスター!」
ロッタの喜びの悲鳴と同時に周囲からどよめきが沸き起こる。
やはりユリアーナの光魔法は驚愕に値するようだ。
覚悟はしていたがこれは後が大変そうだ。
そう思った瞬間、俺たちの周囲で湧きおこったどよめきを遥かに凌駕する歓声が上がった。
「奇跡だ!」
「助祭様が奇跡を起こされた!」
歓声の中、確かに聞き取れた。
人混みの隙間から見えたのは二十代後半の青年。恐らく彼が赴任してきたばかりの助祭なのだろう。
ユリアーナに集まりかけた注目を攫ってくれたことに内心で感謝しながらユリアーナへと視線を戻す。
「このシスターはもう大丈夫なのか?」
「ええ、問題ないわ」
「ありがとうございます。ありがとうございます!」
涙で顔をグチャグチャしたロッテが何度も頭をさげた。
「他の重傷者の手当てをするから、ロッテちゃんはこの女性の側を離れないでね」
ロッテにそう告げながら立ち上がり際に俺に耳打ちをした。
「あの助祭、神聖石の恩恵を受けているわ」
「分かるのか?」
ユリアーナがうなずいた。
俺とユリアーナの最大の目的である、この世界に散った百余個の神聖石の回収。
その一つが早くも見つかった。
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