43 / 65
第43話 魔術師ギルド(3)
しおりを挟む
俺は彼女から受け取った買い取り明細に視線を走らせた。
アンデッド・オーガの素材一式で金貨三十五枚かよ。
日本円にして三千五百万円ほどだ。
受ける被害や損害、討伐に参加する人数を考えると妥当な額なのかもしれないが、ついこの間まで日本の高校生だった俺からすればちょっと想像し難い金額だ。
「参考までにお伺いしたいのですが、通常のオーガだとどれくらいになりますか? 大体の金額で構いませんので教えてください」
常識なのだろう、三人が不思議そうな顔をした。
俺は『この国の相場をまだ理解していませんので』と付け加える。
すると、ギルド長と入室してきた女性の視線が交錯した。
答えたのはギルド長。
「金貨二枚から三枚といったところです」
十倍以上か。
アンデッド・オーガも普通のオーガも戦闘力的には大して差はなかったから、希少価値ということなのだろう。
「献上品の鑑定をお願いしてもよろしいですか? 魔術師ギルドの鑑定証明証を発行頂ければ心強いです」
たったいま女性から受け取った代金から、金貨五枚を最初に渡した長剣の横に積み上げる。
ギルド長と二人の女性が息を飲んだ。
「こちらは鑑定証明証の発行手数料と急いで頂くことへの私の気持ちです」
鑑定証明証の発行費用は、代物によって多少の差はあるが、銀貨十枚――日本円にして十万円程度だ。
押し黙るギルド長に向けて言う。
「商品はまた仕入れればいい。金はまた稼げばいい。ですが、時間だけは取り戻すことができません」
さっきも言っただろう。
時間は何よりも貴重なんだよ。
特に今はな。
「分かりました、すぐに代官の屋敷まで人を走らせます」
そう言って代金を持ってきた女性を見ると、
「畏まりました」
彼女はそう言って即座に退室した。
「無理をお願いして申し訳ございません。このご恩は近いうちに返させて頂きます」
俺はギルド長と握手を交わし、魔術師ギルドを後にした。
◇
続いて、第二部隊のコンラート隊長に会うために騎士団第二部隊の詰所を訪れた。
さて、第一部隊と第二部隊、この二つの癌をどうやって排除するかな。
先ずは敵情視察と行こうか。
出迎えたのは十二、三歳ほどの少年騎士。
「ご丁寧にありがとうございます」
案内の少年騎士に笑顔を向けると、
「コンラート隊長から『アンデッド・オーガとオーガ八体を単独で撃破した英雄に失礼のないように』、と言われています」
そう言ってキラキラとして瞳で見返された。
純粋な英雄への憧れなのか?
崇拝するような目で俺を見ないでくれ。
チクリと胸が痛む。
ごめんよ。
第一部隊と第二部隊には配置転換してもらう予定なんだ。
本当、ごめん。
俺は心の中で少年騎士に詫びながら隊長室へと向かった。
アンデッド・オーガの素材一式で金貨三十五枚かよ。
日本円にして三千五百万円ほどだ。
受ける被害や損害、討伐に参加する人数を考えると妥当な額なのかもしれないが、ついこの間まで日本の高校生だった俺からすればちょっと想像し難い金額だ。
「参考までにお伺いしたいのですが、通常のオーガだとどれくらいになりますか? 大体の金額で構いませんので教えてください」
常識なのだろう、三人が不思議そうな顔をした。
俺は『この国の相場をまだ理解していませんので』と付け加える。
すると、ギルド長と入室してきた女性の視線が交錯した。
答えたのはギルド長。
「金貨二枚から三枚といったところです」
十倍以上か。
アンデッド・オーガも普通のオーガも戦闘力的には大して差はなかったから、希少価値ということなのだろう。
「献上品の鑑定をお願いしてもよろしいですか? 魔術師ギルドの鑑定証明証を発行頂ければ心強いです」
たったいま女性から受け取った代金から、金貨五枚を最初に渡した長剣の横に積み上げる。
ギルド長と二人の女性が息を飲んだ。
「こちらは鑑定証明証の発行手数料と急いで頂くことへの私の気持ちです」
鑑定証明証の発行費用は、代物によって多少の差はあるが、銀貨十枚――日本円にして十万円程度だ。
押し黙るギルド長に向けて言う。
「商品はまた仕入れればいい。金はまた稼げばいい。ですが、時間だけは取り戻すことができません」
さっきも言っただろう。
時間は何よりも貴重なんだよ。
特に今はな。
「分かりました、すぐに代官の屋敷まで人を走らせます」
そう言って代金を持ってきた女性を見ると、
「畏まりました」
彼女はそう言って即座に退室した。
「無理をお願いして申し訳ございません。このご恩は近いうちに返させて頂きます」
俺はギルド長と握手を交わし、魔術師ギルドを後にした。
◇
続いて、第二部隊のコンラート隊長に会うために騎士団第二部隊の詰所を訪れた。
さて、第一部隊と第二部隊、この二つの癌をどうやって排除するかな。
先ずは敵情視察と行こうか。
出迎えたのは十二、三歳ほどの少年騎士。
「ご丁寧にありがとうございます」
案内の少年騎士に笑顔を向けると、
「コンラート隊長から『アンデッド・オーガとオーガ八体を単独で撃破した英雄に失礼のないように』、と言われています」
そう言ってキラキラとして瞳で見返された。
純粋な英雄への憧れなのか?
崇拝するような目で俺を見ないでくれ。
チクリと胸が痛む。
ごめんよ。
第一部隊と第二部隊には配置転換してもらう予定なんだ。
本当、ごめん。
俺は心の中で少年騎士に詫びながら隊長室へと向かった。
82
あなたにおすすめの小説
俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
『召喚ニートの異世界草原記』
KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。
ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。
剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。
――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。
面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。
そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。
「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。
昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。
……だから、今度は俺が――。
現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。
少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。
引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。
※こんな物も召喚して欲しいなって
言うのがあればリクエストして下さい。
出せるか分かりませんがやってみます。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!
IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。
無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。
一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。
甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。
しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--
これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話
複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています
ハーレムキング
チドリ正明@不労所得発売中!!
ファンタジー
っ転生特典——ハーレムキング。
効果:対女の子特攻強制発動。誰もが目を奪われる肉体美と容姿を獲得。それなりに優れた話術を獲得。※ただし、女性を堕とすには努力が必要。
日本で事故死した大学2年生の青年(彼女いない歴=年齢)は、未練を抱えすぎたあまり神様からの転生特典として【ハーレムキング】を手に入れた。
青年は今日も女の子を口説き回る。
「ふははははっ! 君は美しい! 名前を教えてくれ!」
「変な人!」
※2025/6/6 完結。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる