夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有

文字の大きさ
57 / 65

第57話 悪徳司教

しおりを挟む
 返還を求めて殺到した人々は全て退出した。
 盗品の返還のために用意された教会の一室、いまここに残っているのは俺たちと、手伝いをしてくれた五人の若い神官だけである。

「皆さんのお陰で盗品を持ち主に返還することが出来ました。ありがとうございます」

 手伝ってくれた若い神官にお礼を述べた。

「いえ、その、お手伝い出来て光栄です」

「後片付けは私たちがするので、皆さんは別室で少しお休みください」

 若い神官たちは形容しがたい笑みを浮かべる。

「テーブルや椅子を部外者や助祭に運ばせるようなことはしたくありませんので」

 そう言って、俺とユリアーナ、ロッテ、オットー助祭を二つほど隔てた部屋へと案内してくれた。

 結果的には俺のプランは効果絶大だった。
 盗品の返還を求める人々の列に向けて、真実の鏡が嘘を暴いたところから始まり、入札と入札金額、ダメ押しに悔しがる執事までの一連の出来事を事細かに説明した。

 すると瞬く間に列に並んだ人々は散り散りとなり、三百人以上いた長蛇の列も二十人弱となる始末だ。
 そして残った二十人弱の人々も例外なく真実の鏡の前で告白してもらった。

『清い心の持ち主が大勢いたことに感謝を』、そう口にしたのはオットー助祭。

 ロッテは『あの農場主がこの街に住めなくなったらどうしましょう』、と一見、農場主の心配するようなことを口にしていたが実情は違う。
 孤児院に小麦を寄付してくれた農場主が街に住めなくなって、教会の食料事情が悪化することを心配していた。

 それを容易く見抜いたオットー助祭のロッテを見る目が変わったのはまた別の話だ。

「終わったわねー」

 椅子に倒れ込むように腰かけると、ユリアーナが大きく伸びをした。

「ええ、終わりましたね……」

「色々なことが終わった気がします」

 オットー助祭が椅子に座ったまま頭を抱え込み、その隣でロッテが肩を落とした。
 そんな二人を横目に発したユリアーナの言葉が俺の胸を抉る。

「オットー助祭の名前で主催したのは拙《まず》かったかもしれないわね」

「確かに思惑とずれたかも、な……」

 当初の目的はオットー助祭の人気取りだった。
 着任早々、奇跡の力のお陰で住民からの支持が高いオットー助祭の人気を不動のものにするために画策したイベントである。

 ユリアーナの言う通り、もしかしたら失敗したかもしれない。
 だが、やってしまったことは仕方がない。

「後悔するよりも巻き返しの策を考えよう」

「賛成よ。で、何か考えはあるの?」

 俺の言葉にユリアーナが即答した。
 だが、ロッテとオットー助祭は違う。

「え? まだ何かするつもりなんですか?」

「あの、出来れば私抜きでお願いできませんでしょうか……」

 その発言は聖職者としてどうなんだ?
 口をついて出そうになった言葉を飲み込み、オットー助祭をフォローする。

「助祭様が気にすることではありませんよ。これも自業自得です」

「自業自得なのはそうかもしれませんが……」

 よし! 聖職者も認めた。
 悪いのは俺じゃない。すべてあいつらだ。

「名も知らない農場主ですが、毎年のように四種類の小麦と幾つもの果物を孤児院に寄付してくださいました」

 聞いたこともない小麦の種類と果物の名前をロッテが次々と上げていく。
 どうやら、小麦の種類と果物の名前は知っていても農場主の名前は知らないようだ。だが、この街に来て間もないオットー助祭は知っていた。

「あの農場主はヘッセさんですよ、リーゼロッテさん」

「助祭様、お教えくださり感謝申し上げます」

 殊勝にお礼を口にしているが、一晩眠ったら忘れてそうだよな。

 そのとき、突然、扉が乱暴に開けられた。
 振り向くと、開け放たれた扉の向こうから見知らぬ三人の神官がこちらを睨みつけている。

「どちら様でしょうか?」

 俺が聞くと不機嫌そうに真中に立っていた肥え太った神官が口を開く。

「何だ、ワシのことも知らんのか?」

「こちらのお方は、この度新たに赴任して来られたルーマン司教でいらっしゃいます」

 傍らに立っていた若い神官が肥え太った神官の正体を明かした。
 なるほど、これが当面の俺たちのターゲットか。

「着任したばかりの新参者なんて知るわけないでしょ」

 バッカじゃないの? と言わんばかりの口調でユリアーナが言い放った。

「貴様……!」

「無礼者が!」

 ルーマン悪徳司教が顔を真っ赤にして言葉を詰まらせる横で、お付きの神官その二が俺とユリアーナを睨み付けた。

「まあ、部外者のことなどどうでもいい」

 ルーマン悪徳司教がオットー助祭に視線を向けると勝ち誇った顔で言う。

「真実の鏡とか言うインチキ魔道具を使って街の有力者を陥れたそうだな」

「陥れるなど――」

 おっと助祭の抗弁を遮る。

「黙れ! 女神・ユリアーナから賜ったという奇跡の力とやらで、少し調子に乗ったのではないかね」

 何とも嫌味ったらしい口調だ。

「次の計画を練りたい」

「賛成」

「いい考えです、シュラさん」

 ここを早々に退出しようとの俺の提案にユリアーナとロッテ二つ返事で賛成する。
 一人、オットー助祭だけが俺たち三人に驚きの視線を向けていた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

『召喚ニートの異世界草原記』

KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。  ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。  剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。  ――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。  面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。  そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。  「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。  昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。  ……だから、今度は俺が――。  現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。  少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。  引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。 ※こんな物も召喚して欲しいなって 言うのがあればリクエストして下さい。 出せるか分かりませんがやってみます。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

ハーレムキング

チドリ正明@不労所得発売中!!
ファンタジー
っ転生特典——ハーレムキング。  効果:対女の子特攻強制発動。誰もが目を奪われる肉体美と容姿を獲得。それなりに優れた話術を獲得。※ただし、女性を堕とすには努力が必要。  日本で事故死した大学2年生の青年(彼女いない歴=年齢)は、未練を抱えすぎたあまり神様からの転生特典として【ハーレムキング】を手に入れた。    青年は今日も女の子を口説き回る。 「ふははははっ! 君は美しい! 名前を教えてくれ!」 「変な人!」 ※2025/6/6 完結。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

処理中です...