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木立 花音

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第三章「新生、永青高校バドミントン部始動!」

【ランキング戦スタート! VS 夏美&小春(1)】

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 夏休みが終盤に近付いた今日。あたしと紗枝ちゃんはいつもの朝練をすることなくサブアリーナにやってきた。
 普段行われている厳しい練習も今日はない。
 今日は、ランキング戦を行う予定だからだ。
 部内におけるランキング戦が、すべてにおいて正解だとは限らない。
 周知の仲である部員同士の対戦では、癖の読みあいになってしまうため、対外試合での成績と違った結果がでることもある。部内では不利でも、対外戦で力を発揮するタイプの選手もいるだろう。ランキング戦なんてやりたくない、対外戦の結果のみで決めたらいいだろう、と反発が出ることだってあるかもしれない。
 それでも、団体戦メンバーを選抜するにあたって、公平な順位付けは必要となる。ランキング戦の戦績で順位を決めるのは、まあ妥当と言えば妥当だ。ランキング戦が活発に行われている部とそうでない部、いずれが成長率が大きいかは言うまでもないのだし。
 まあ――。

「一番乗り、みたいだね」

 あたしがストレッチを始めると、隣に紗枝ちゃんが来て言う。

「そうだね」と。

 いずれにしてもあたしたちは、監督とコーチが決めた意向に従うしかないのだが。
 ランキング戦は、ダブルス、シングルス双方とも総当たり戦で行われる。
 ランキング戦をするとコーチから発表があったのが数日前の話。このとき同時に、心が団体戦メンバーとして当確であることが発表された。
 この瞬間、少なくともシングルスにおいては心が部内で最強なのだと証明され、同時に団体戦メンバーの枠が一つ減った。
 みんなわかっていたことだ。わかっていたことではあるが、自分が心に負けているんだ、という現実を突き付けられると嫌でも動揺してしまう。
 みな、終始無言だった。けど、その表情はこわばっていた。
 特に反応が顕著だったのが鈴木先輩だ。シングルスにおいて、彼女は心に次ぐ二番手だと目されていた。こうして、わかりやすい形で敗北を突きつけられたことが、少なからずショックだったのだろう。

「紗枝、紬、ずいぶんと早いじゃない。気合いが入っているようで何より」

 あたしらの次に現れたのは、噂の心だった。
 彼女だけは今日試合をしない。それゆえか、いや、それでなくても彼女は普段からそんなに動揺しないが、普段と変わらぬクールな顔だ。

「まあね。初戦から、小春と夏美なんだもん」

 今日、あたしと紗枝ちゃんが最初に当たるのが、ダブルスプレイヤーとしてもっとも経験値が高く、かつ最強であろう市川姉妹だ。
 彼女らと初戦で戦い、続いて二年生のペア、一年生のペア、最後に澤藤先輩と鈴木先輩のペアと戦う。
 初戦は強い相手だから落としてもいい、とはいかない。最終戦である主将ペアに負けた場合、二勝二敗の五分の星におそらくなる。
 市川姉妹も主将ペアも、その他の二つはまず取りこぼしをしない。必然的に、この二ペアが直接対決をして勝った側に間違いなく水を空けられてしまう。それだけは、避けねばならなかった。
 深く、息を吸って呼吸を整える。ダブルスプレイヤーとして再起を目指してきたあたしの真価が、今日問われるのだ。

「勝とうね」と言って、拳を出してきた紗枝ちゃんと拳を合わせる。
「当たり前だよ。そのために毎朝走ってきたんだから」
「うん」
「乱打、する?」

 シャトルを準備してくれた心の声に頷いた。
 シャトルを打ち合うこ気味よい音がサブアリーナの中に響く。体がほどよく温まってきたところでサブアリーナの扉が開いた。
 顔を出したのは小春と夏美だ。二人とも、ミディアムの髪をポニーテールに結い上げ気合い十分といった様相だ。
 いつになく夏美は口数が少なく、小春はいつも通り淡々とラケットの準備を始めた。
 数本のラケットを代わる代わる手に取って、その中から一本を選びだした。

「隣で打ってもいいかな?」

 小春の声に頷いた。

「もちろん」

 あたしたちは仲間であると同時に、限られた枠を争うライバルでもある。場に、静かな緊張感が流れた。
 やがて主将を始めとした全部員がサブアリーナに顔を揃え、ランキング戦が始まった。


「オンマイライト、仁藤・石黒ペア。オンマイレフト、市川・市川ペア。仁藤・石黒ペア、トゥサーブ。ラブオールプレー」
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