5 / 128
序章
4
しおりを挟む
次の日から私が逃げることで仕事が増えていたお手伝いさん達が、新たな獲物を見つけたと言うように目をギラつかせ思う存分新入りの男の子をいじめ倒していた。
私はというと平常運転でうまく逃げ隠れる日々だ。
もちろん彼は脳内リセットされているので酷いいじめをされているのも気にもせず、今日も木の上でゆっくりお昼寝もとい、お朝寝を決め込んでいた。
「ふぁ~…後で抜け出して破格クッキー買っておこうかしら…」
バンッ
”リオ!まだ床も拭けてないの!?早くしなさい!!このグズ!!”
”ひっ”
バシッッ
木の葉の隙間から見える窓から、最近の日常になっている罵声と殴る蹴るの暴行音が聞こえてくる。
その窓にちらりと蹲る小さな背中が映った。
普通なら心痛むところだろうが今まで自分もさんざんやられた立場だからなのか、それとも感覚が鈍っているのか何も感じはしなかった。
彼の名は”リオ”というらしい。どうやら会話を盗み聞きして分かったことだが、どこぞのそれなりの由緒ある貴族の子のようだ。
だが、その家系特有の魔法が使えない、いや、使えないどころか魔力がない。生まれた時から魔法を持っているのが当たり前の家系で魔法がない子が生まれた。
しかも肌が小麦色の肌で、この世界では小麦肌は愚民と言われる、そんな肌色を持った子が生まれたのだ。どう考えても夫の子ではないと解り、幼いころから家族全員に虐められて育ったらしい。
でもって、この前の戦乱に家族ごと巻き込まれ、生き残ったのがこの子だけだった。
当然、肌色も違う魔力もない子を親戚は誰も引き取ろうとしない、だが貴族の子を修道院に預けるわけにもいかず困っていたところ、がめつい義父が大金目当てで子を引き取ったというわけらしい。
その話を聞いて、思い出したことがある。
確かそう…
(確か、この子の父親って ”最強の傭兵“ だったような…?)
魔力は使えないが身体能力がチート設定だったはず。
母が一夜限りの恋で生まれた子供って感じだったはずだ。
(やはり、思った通り攻略キャラでこの子ヤンデレだわ)
”ごめ、ごめんなさいっっ”
”早くしなさい!のろま!”
バシッ
相変わらず賑やかな罵倒と殴る蹴るの派手な音が窓から漏れ続ける。
「……」
(やっぱり、うん、リセーット!ね)
こらこら、ここは助けるだろう!心痛むだろう!と突っ込みたい所だが、リディアは臭い物に蓋をする、もとい触らぬ神に祟りなし精神の持ち主だ。
どちらにしてもゲス精神の見た目は聖女、中身は悪女なリディアは見事に蓋をし男の子を脳内消去した。
そして改めて何事もなかったように木の上で目をつむると心地良い眠りにつくのであった。
その日の昼過ぎ、大量クッキーを手に家に帰ると、早く隠さないといけないと思いリビングを駆け抜けようとしたところで何かを足で引っ掛け見事にずっこける。
「ったぁ…」
「ご、ごめんなさっっ」
そこには床を雑巾がけしていたリオの姿があった。
しばし目が合う二人。
(しまった、目が合ってしまった、り、リセ―――ット!)
平常運転に戻すと、今落としたクッキーの袋を手に取る。
(よかった、中身がでていない)
ホッとしているのも束の間、運悪く背後から足音が聞こえる。
(まずい!これは義妹1号の足音だ!)
足音を確認するや否や、リオを飛び越えソファの後ろに回り込むと、ごろんと横になりそのままソファーの下に慣れた動きでサッと隠れる。
長く逃げ隠れて培ったリビングでの最適ポジションの隠れ場所だ!
聖女がソファの下に隠れるとか聖女設定をまるっと無視しまくるリディアはそのまま息を潜める。
(今の時間帯なら、リビングを通って自分の部屋に行くだけのはず)
しばらくやり過ごせば何とかなる。と、クッキーの袋を握りしめたところで目を見開く。
「?!」
なんと目の前にぬっとリオの顔が現れ、同じようにソファの下に潜り込んできたのだ。
思わず声を出しそうになるのを、ぐっと押し止める。
と同時、ドアが開く音と義妹のバタバタという足音が聞こえた。
「っ」
リオが私の胸にギュッとしがみつく。
震える小さな肩。
(リセーットぉぉぉおおおっっっ)
その瞬間、真顔のまま抱きしめるでもなく今目の前にいる男の子を消去した。
バタバタ……
足音が遠のいていく。
そして完全に足音が消えたところで、ササササッと忍者のようにソファの下から這い出ると、クッキーを胸に屋根裏部屋へと駆け上った。
部屋に入るとドアの前で座り込む。
「焦ったぁ――」
目の前に急に現れるのは心臓に悪い。
まだバクバク心臓が跳ねている。
(まさかリオがあんな行動に出るとは…リセットを強化せねばっっ)
鏡の前に四つん這いで這い寄るとリセットの真顔の練習を始める。
ちょっと方向性を間違えだしたリディアがそこにいた。
そして、このことがリオへのきっかけとなってしまっていたことを今のリディアはまだ知らない。
私はというと平常運転でうまく逃げ隠れる日々だ。
もちろん彼は脳内リセットされているので酷いいじめをされているのも気にもせず、今日も木の上でゆっくりお昼寝もとい、お朝寝を決め込んでいた。
「ふぁ~…後で抜け出して破格クッキー買っておこうかしら…」
バンッ
”リオ!まだ床も拭けてないの!?早くしなさい!!このグズ!!”
”ひっ”
バシッッ
木の葉の隙間から見える窓から、最近の日常になっている罵声と殴る蹴るの暴行音が聞こえてくる。
その窓にちらりと蹲る小さな背中が映った。
普通なら心痛むところだろうが今まで自分もさんざんやられた立場だからなのか、それとも感覚が鈍っているのか何も感じはしなかった。
彼の名は”リオ”というらしい。どうやら会話を盗み聞きして分かったことだが、どこぞのそれなりの由緒ある貴族の子のようだ。
だが、その家系特有の魔法が使えない、いや、使えないどころか魔力がない。生まれた時から魔法を持っているのが当たり前の家系で魔法がない子が生まれた。
しかも肌が小麦色の肌で、この世界では小麦肌は愚民と言われる、そんな肌色を持った子が生まれたのだ。どう考えても夫の子ではないと解り、幼いころから家族全員に虐められて育ったらしい。
でもって、この前の戦乱に家族ごと巻き込まれ、生き残ったのがこの子だけだった。
当然、肌色も違う魔力もない子を親戚は誰も引き取ろうとしない、だが貴族の子を修道院に預けるわけにもいかず困っていたところ、がめつい義父が大金目当てで子を引き取ったというわけらしい。
その話を聞いて、思い出したことがある。
確かそう…
(確か、この子の父親って ”最強の傭兵“ だったような…?)
魔力は使えないが身体能力がチート設定だったはず。
母が一夜限りの恋で生まれた子供って感じだったはずだ。
(やはり、思った通り攻略キャラでこの子ヤンデレだわ)
”ごめ、ごめんなさいっっ”
”早くしなさい!のろま!”
バシッ
相変わらず賑やかな罵倒と殴る蹴るの派手な音が窓から漏れ続ける。
「……」
(やっぱり、うん、リセーット!ね)
こらこら、ここは助けるだろう!心痛むだろう!と突っ込みたい所だが、リディアは臭い物に蓋をする、もとい触らぬ神に祟りなし精神の持ち主だ。
どちらにしてもゲス精神の見た目は聖女、中身は悪女なリディアは見事に蓋をし男の子を脳内消去した。
そして改めて何事もなかったように木の上で目をつむると心地良い眠りにつくのであった。
その日の昼過ぎ、大量クッキーを手に家に帰ると、早く隠さないといけないと思いリビングを駆け抜けようとしたところで何かを足で引っ掛け見事にずっこける。
「ったぁ…」
「ご、ごめんなさっっ」
そこには床を雑巾がけしていたリオの姿があった。
しばし目が合う二人。
(しまった、目が合ってしまった、り、リセ―――ット!)
平常運転に戻すと、今落としたクッキーの袋を手に取る。
(よかった、中身がでていない)
ホッとしているのも束の間、運悪く背後から足音が聞こえる。
(まずい!これは義妹1号の足音だ!)
足音を確認するや否や、リオを飛び越えソファの後ろに回り込むと、ごろんと横になりそのままソファーの下に慣れた動きでサッと隠れる。
長く逃げ隠れて培ったリビングでの最適ポジションの隠れ場所だ!
聖女がソファの下に隠れるとか聖女設定をまるっと無視しまくるリディアはそのまま息を潜める。
(今の時間帯なら、リビングを通って自分の部屋に行くだけのはず)
しばらくやり過ごせば何とかなる。と、クッキーの袋を握りしめたところで目を見開く。
「?!」
なんと目の前にぬっとリオの顔が現れ、同じようにソファの下に潜り込んできたのだ。
思わず声を出しそうになるのを、ぐっと押し止める。
と同時、ドアが開く音と義妹のバタバタという足音が聞こえた。
「っ」
リオが私の胸にギュッとしがみつく。
震える小さな肩。
(リセーットぉぉぉおおおっっっ)
その瞬間、真顔のまま抱きしめるでもなく今目の前にいる男の子を消去した。
バタバタ……
足音が遠のいていく。
そして完全に足音が消えたところで、ササササッと忍者のようにソファの下から這い出ると、クッキーを胸に屋根裏部屋へと駆け上った。
部屋に入るとドアの前で座り込む。
「焦ったぁ――」
目の前に急に現れるのは心臓に悪い。
まだバクバク心臓が跳ねている。
(まさかリオがあんな行動に出るとは…リセットを強化せねばっっ)
鏡の前に四つん這いで這い寄るとリセットの真顔の練習を始める。
ちょっと方向性を間違えだしたリディアがそこにいた。
そして、このことがリオへのきっかけとなってしまっていたことを今のリディアはまだ知らない。
77
あなたにおすすめの小説
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
転生騎士団長の歩き方
Akila
ファンタジー
【第2章 完 約13万字】&【第1章 完 約12万字】
たまたま運よく掴んだ功績で第7騎士団の団長になってしまった女性騎士のラモン。そんなラモンの中身は地球から転生した『鈴木ゆり』だった。女神様に転生するに当たってギフトを授かったのだが、これがとっても役立った。ありがとう女神さま! と言う訳で、小娘団長が汗臭い騎士団をどうにか立て直す為、ドーン副団長や団員達とキレイにしたり、旨〜いしたり、キュンキュンしたりするほのぼの物語です。
【第1章 ようこそ第7騎士団へ】 騎士団の中で窓際? 島流し先? と囁かれる第7騎士団を立て直すべく、前世の知識で働き方改革を強行するモラン。 第7は改善されるのか? 副団長のドーンと共にあれこれと毎日大忙しです。
【第2章 王城と私】 第7騎士団での功績が認められて、次は第3騎士団へ行く事になったラモン。勤務地である王城では毎日誰かと何かやらかしてます。第3騎士団には馴染めるかな? って、またまた異動? 果たしてラモンの行き着く先はどこに?
※誤字脱字マジですみません。懲りずに読んで下さい。
転生先ではゆっくりと生きたい
ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。
事故で死んだ明彦が出会ったのは……
転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた
小説家になろうでも連載中です。
なろうの方が話数が多いです。
https://ncode.syosetu.com/n8964gh/
【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。
スローライフ 転生したら竜騎士に?
梨香
ファンタジー
『田舎でスローライフをしたい』バカップルの死神に前世の記憶を消去ミスされて赤ちゃんとして転生したユーリは竜を見て異世界だと知る。農家の娘としての生活に不満は無かったが、両親には秘密がありそうだ。魔法が存在する世界だが、普通の農民は狼と話したりしないし、農家の女将さんは植物に働きかけない。ユーリは両親から魔力を受け継いでいた。竜のイリスと絆を結んだユーリは竜騎士を目指す。竜騎士修行や前世の知識を生かして物を売り出したり、忙しいユーリは恋には奥手。スローライフとはかけ離れた人生をおくります。
【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました
小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。
しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!?
助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、
「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。
幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。
ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく!
ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~
eggy
ファンタジー
もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。
村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。
ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。
しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。
まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。
幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。
「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる