つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲

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さぁ、はじめようか

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「はぁあぁあ~~~気持ちいいわぁああぁあ~~~~」

 部屋でエステマッサージを受けるリディアは悩まし気な声を上げる。

「香りも最高ぉ」
「ふふ、喜んで頂けて何よりです」

 イザークが曝け出された背を優しくオイルマッサージをする。
 あれから爆発事件の犯人はすぐに捕まり、事なきを得、また普通の日常が戻っていた。

「それはそうと…」
「ん?」
「最近、リオ様は姿を見せませんね」

 そう言えばと、毎日1度は顔を見せていたリオが最近来ていない事に気づく。

「噂で聞きましたが…」
「ん?」
「国境付近でいざこざがあり、そこを治めるのに一人の男が大活躍したと聞きます、あっという間に数十人の兵を皆殺しにしたとか…」
「それがリオというの?」
「憶測ですが、あの身体能力、そしてリディア様に心酔するリオ様がここ数日現れていない事を思いますとそうではないかと…」
「‥‥」

 確かにと納得する。そしてもう一つ思い当たる事がある。

(あれから何も言ってこないのは、いざこざがあったためね…)

 普通の日常が戻ったとはいえ、疑われていたら何かしらリアクションがあるだろうと警戒していたが何事もなかった。

(リオを使った事で帳消しか…)

 あの俺様ジークとドS軍師ならあり得ると心の中で呟く。
 オーレリーの助けに演技したのもバレバレである事は確かだ。
 となると、報復にリオを使うのは十分にあり得る話だ。
 そして脳裏に蘇る映像。
 リオが主人公を思い残虐しているシーン。ヤンデレを彷彿とさせるシーンだ。
 普通、人を殺すには抵抗がある。だがリオのヤンデレを考えれば数十人をあっという間に殺したというのも違和感はない。

(まぁ、私は助かったわね…)

 お陰であれ以上の追及を受けなかったことは良しとしようと、それ以上の思考を止めた。







 リディアは午前の授業が終わりフゥーっとため息をつく。
 あれから実践授業は一人一人ではなく皆一斉にする。
 そのためイザークが内緒で手伝い事なきを得ている。

「あぁあ~今日も美味しいわぁあ~~~」

 平民用の食材なので高級食材はないものの、イザークの料理は完璧だ。
 しっかりと手作り昼食を完食し、大好きなイザークのお茶を嗜む。
 そんなリディアの前に影が出来た。

「?」

 見上げると、そこには淡い桃色の髪を靡かせた女性が立っていた。

「リディア様、今朝紹介にあった新しい聖女候補生フェリシー嬢でございます」

 イザークが耳元で囁く。
 そう言えばとリディアは思い出す。
 祖父を亡くし、喪に伏せっていたため参加が遅れたというフェリシーという娘が今朝紹介にあった。

「あなたがリディアね、私の爵位は伯爵だけど、すごーい田舎だからここでは馬鹿にされるの、だからあなたと扱いは同じよ、これからよろしくね」

 愛らしい笑顔でリディアを見る。

「ええ、宜しく…」
「話は色々聞いているわ、ジークヴァルト殿下に連れられ来てレティシア様に色々と酷い目にあわされているって…」

(酷い目かぁ…)

 そこまでそこは気にしている点ではなかったため返答に困る。

「貴族でありながら平民の部屋に入れられたりとも聞いたわ、私に出来ることがあれば何でも言って、貴方を助けたいの」

(へ?助けたい?)

 初めて会って突然「助ける」と言い出すフェリシーに目が点になる。

「どうして?」
「私がジーク派という事もあるけれど、権力を笠に弱い者いじめとか許せないわ、階級とか関係ない、皆が幸せになる権利があるわ、人は平等であるべきよ!!」
「‥‥」

 正義に燃え拳を握り熱く語り出す。
 そんなフェリシーに口元がひくつく。

(あ―…これは面倒くさいのに絡まれた?)

「それに私は殿下が大好きなの、ジークヴァルト殿下は階級など気にせずゲラルト様など階級も何も持たない者を軍に引き入れたり、本当に素晴らしい方だと思っているの、リディアもそうやって連れてこられたのでしょう?本当、ジークヴァルト殿下は素晴らしいわ…、私も殿下のように困っている人を助けたい、だから聖女試験を頑張りたいと思っているの、全ての人が平等に幸せに平和に生きられますようにと‥‥、だから私は貴方を助けたいの!」

 胸に手を当て純真な眼差しで真剣に見詰める。

(やばい、早く逃げよう)

「あ、あー、そろそろ午後の授業ですわね」
「ええ、一緒に参りましょう」
「いえ、結構ですわ」
「遠慮はいりません、レティシア様御一行が何と言おうと、私は貴方の味方よ」
「‥‥いえ、そう言う意味では…」
「気になさらないで、えーと、イザークと言ったかしら?」

 そこでフェリシーがイザークを見る。
 イザークが頷く。

「本当に目が紅いのね、宝石みたい!とっても綺麗ね」
「!」

 驚くイザークを他所に鳥肌立つ腕を摩る。

「リディア様?お寒いのですか?」
「大丈夫よ…」

 急いで自分の上着を脱ごうとするイザークを止める。

「さぁ、参りましょう」

 フェリシーがリディアの腕に自分の腕を絡め歩き出す。

(参ったなぁ~…)

 これを振りほどく理由が見つからず仕方なくそれに従い歩く。






 教室に入れば皆がこちらを注目する。

「あら、田舎娘に偽聖女、お似合いですわね」

 入るなり、嫌味を言われる。
 そんなリディアの前にフェリシーが庇う様に立ちはだかる。

「リディアにもしっかりと徴がでていますわ!それを偽という証拠でもあるのですか!」

 正義感漂うフェリシーにリディアが頭を抱える。

(はぁ~~~面倒だわ…)

 レティシアを中心にレティシア派とフェリシーが教室のど真ん中で対立する。

「何をしているのです?」

 そこでオーレリーが現れて事なきを得た。



 そこからというもの、フェリシーがリディアの元にやってくる。
 そして何かとお節介を焼いた。

「私は誹謗中傷を受けるなど慣れっこですわ、気にしないで」

 そう言ってリディアを庇う。
 そして今も当然の様に隣に座り、お茶を一緒にしている。

「イザークの入れるお茶は本当に美味しいわね」
「ええ」

 あまりこちらに関心を向けたくないので簡素に答える。

「紅い眼というだけで魔物扱いなど酷過ぎますわ!」
「お心遣い感謝いたします、フェリシー嬢」
「お心遣いなどではないわ!本当に思っている事よ!」

 真っすぐにイザークを見つめるフェリシー。
 見事なまでの聖女様だ。

(あ、あー、主人公は私だっけー?いや、もしかしら違ったのかしら…??)

 真っすぐで純粋な眼差し。
 そしてその言動。
 まさに主人公そのものだった。





「お酒飲みたい」
「畏まりました」

(そう言えば、この世界でお酒を飲むのは初めてね…)

 前世では毎日浴びるように飲んでいた。
 境遇もあるが、聖女候補生になってからも忙しくてすっかり酒のさの字も忘れていた。

(なのに飲みたくなるって、…ストレスよね~)

 脳裏に浮かぶ、最近やたらと絡んでくる女。はーっとため息をつく。
 リディアの言葉に床に就く前にベットに座る主人にお酒を用意する。

「ん、ん~~、流石イザークね、私の好みドンピシャだわ」
「お褒めに預かり光栄です」

 その言葉にイザークが嬉しそうにほほ笑む。

「ようございましたね、リディア様」
「?」
「フェリシー嬢というお友達が出来て」

 イザークの言葉に頭を俯かせる。

「リディア様?」

 敵しかいない中、現れた聖女のようなフェリシー。
 イザークにも物怖じしない主人公気質のフェリシー。

「イザーク、あなたはそう見えるのね」
「?」

 リディアの言葉に少し首を傾げる。
 そんなイザークに空になったグラスを渡すとうんっと伸びをした。

「久しぶりのお酒でいい感じに酔えたわ」

 そのままベットに寝転ぶとイザークが毛布を被せてくれる。

「ねぇイザーク」
「どうか致しましたか?」

 背を向け目を瞑るリディアを見る。

「フェリシーの所に行きたい?」
「え?」
「メイドも居るし、ここの様に平民用でないちゃんとした貴族の施設よ、楽にもなるし、貴方の容姿も皆が慣れ何事も起こしていない今なら酷い扱いからも解放される可能性だってある、それにあなたローズ家という由緒ある家柄の執事なのでしょう?」

 リディアの言葉にイザークが瞠目する。

「本心が聞きたいわ」

 そんなリディアにイザークの目尻が下がる。

「私の主はリディア様だけです」
「フェリシーの様に正義感に満ちていないわよ?」
「私の正義はリディア様です」
「酷い事をするかもしれないわ」
「構いません、私の主はリディア様で私の全てはリディア様のモノ」
「本当に私のモノにするわよ?」
「!」

 リディアの言葉に目を輝かせる。

「ええ、それを切望致します、マイレディ」

(叶わないと解っていても…)

 その白い手に口付ける。

「!」

 口付けした手がイザークの手を握りしめる。

「なら、眠るまで手を握っていて」

 そんなリディアにイザークの頬が緩む。

「仰せのままに」

 その手を握り返した。


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