つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲

文字の大きさ
63 / 128
さぁ、はじめようか

62

しおりを挟む
―――― ガッシャ―ンッ

 テーブルの上の高価な食器が床に落ち派手な音を立て割れる。

「レティシア様っきゃぁっっ」
「ムカつきますわ!!あの女っっ」
「痛い…痛いですっ…ぅっ」
「痛くて当然よ、痛くしているのですもの」

 バシバシッと近くのメイドに殴り蹴り八つ当たりする。

「この私に命令するなど!!この私に!!」
「ぅっ――ぅぅっ‥‥」

 額や唇から血を流し倒れるメイドを最後にもう一度蹴り飛ばす。

「何をボーっと突っ立ってるの!早くここを片付けてお茶の一つもだせないの?この役立たず!」
「も、申し訳ございませんっっ今すぐ片付けます!」

 メイドや執事がいそいそと動き回る。

「あなたもボーっと突っ立って見ていないで一緒に床をお拭きなさい」
「‥‥」

 オズワルドは無言のまま言われ通り床を拭こうとメイドが持ってきた掃除道具へ近寄る。
 そしてぞうきんを手に取ろうと見るも、メイドが使ってしまい一枚も残っていなかった。

「何ちんたらしているの?あら、ぞうきんがもうありませんのね」

 そこでパンッと思いついたように手を一つ叩く。

「そうですわ、いいものがありますわ、あれをここへ」

 そう言うと執事デルフィーノを見る。
 するとすぐに察したのか奥から一枚のハンカチを持ってくる。

「これで拭くといいですわ」
「!」

 バッと開いたそのハンカチにはハーゼルゼットの家紋と血の跡がついていた。
 それは自分の母のハンカチだと一目で気づく。

「あら、これも汚れていますわね、でも汚れたものを拭くんですもの、それに捨てるだけだしいいわよね」

 にやーっと目元を歪ませる。

「さぁ、これで拭きなさい!」
「‥‥」

 動かずにじっと突っ立つオズワルドの前でそのハンカチを先ほどのメイドを殴った血とお茶やケーキでぐちゃぐちゃになった床へ落とす。

「!」

 それをヒールのつま先でハンカチに塗りたくるように拭く。

「‥‥」

 表情を変えずにその様をじっと見つめるオズワルド。

「あらもうぐちゃぐちゃね、汚らしいわ、捨ててちょうだい」
「はいっ」

 ドロドロになったハンカチをメイドが摘まみ上げごみ箱へと捨てる。

「何をボーっと突っ立ってるの?さっさと動きなさい!」
「‥‥」

 黙って動き始めるオズワルドにレティシアが高笑う。

「いい気味ね、私に偉そうにしていたハーゼルゼットももうすぐくたばるそうよ?」
「……」
「アグダスの英雄気取りが、最後は冷たく薄汚れた牢獄で死ぬなんてね」

 可笑しくてたまらないというようにクスクスと笑う。

「私が聖女になった暁には、ジーク派全て聖女の言葉で死を告言してあげますわ」

 蔑む瞳でオズワルドを見る。

「お前もその時が来たら最も無様な死に方をさせてあげましてよ?ああでも、その前に牢獄のハーゼルゼットの方は息絶えそうだけれど、ほーほっほっいい気味ね!」
「……」
「あー、少しスッキリしたわ」

 沈黙を守るオズワルドを他所にメイド達を見る。

「私に歯向かったらどうなるか、お前たちもよく心得ておきなさい」
「はいっ」

 メイド達が怯え怯みながら頭を下げる。

「そうよ、私に歯向かったらどうなるか、あの女、今に見ておきなさい‥‥」

 レティシアがリディアを思い浮かべ扇子をミシミシと音を鳴らした。










「あ~~~~、やっぱり出ないわね~~~~」
「大丈夫ですかっっ」

 力尽きて倒れ込むリディアをイザークが支える。

「魔力はあるのに、なぜでしょう…」
「そうなのよね~」

 ふと空を見上げると東の空が少し明るくなってきている。
 
「…いつも付き合わせて悪いわね」
「いいえ、このぐらい大したことではございません、このままベットへお連れしましょう」
「お願い」

 完全にイザークに身を任せる。

「生活魔法は諦めるしかないのかな…」

 なんとか生活魔法は使えるようになりたい。
 一人になった時の事も想定すると、もう出ないだろうという予感はあるのについ足掻いてしまう。

(とはいえ、疲れたわ…)

「ふぁあ~あ~」

 大きな欠伸がでる。
 今日は終了と思うと体にドッと疲れを感じると共に強い眠気を感じる。

「疲れた‥‥」

 抗わず重い瞼を閉じた。

「おやすみなさいませ、マイレディ」

 イザークが囁いた時にはもう既に夢の中だった。
 そんな二人の影が部屋に入るのを見計らったように、今二人が居た場所に一人の男が木から降り立つ。

「…やはり、魔法は使えぬか」
「あら?ジーク殿下もおいででしたか」
「よぉ、ドラ」

 草むらからキャサドラが出てくる。

「ジーク殿下が仰るようにリディアは魔法が使えないようですね」

 うんと頷くとキャサドラが感心したように口にした。

「いやぁ、しかし、あれから逃亡しないように夜も部屋を張っていたのですが、毎晩魔法の練習を夜遅くまでやっていて驚きました、そりゃぁ授業中寝るわけだわ」
「ほぉ」

 何かしているとは思っていたが、それが魔法の練習だったかとジークヴァルトが顎に手を当てる。

「どうかしましたか?」
「ああ、ちょっとな…、早くしないとと思ってな」
「何を?」
「ドラ、オズにも伝えておけ、陛下の容態が思わしくない事を」
「!」

 キャサドラの目が見開く。

「それは…」
「聖女試験が終わるまでギリギリもつかどうか解らん」
「! そんなに…」
「ゲラルトの報告だと最近ナセルに帝王学を重点的に学ばせているらしい」
「それは!」

 ジークヴァルトが頷く。
 ナセルはアナベルの息子で歳は12歳。
 順当にいけばジークヴァルトが国王代理の今、陛下が亡くなればそのまま国王になる確率が高い。
 だが、現王妃の息子ナセルに重点的に帝王学を学ばせているという事は、ジークヴァルトを差し置いて自分の息子ナセルを国王にさせる段取りをしているという事だ。
 息子ナセルの性格は大変大人しく、息子を王に据えて自分の思い通りに動かしたいのだという思惑が透けて見える。
 それをどうにか阻止せねば、ジーク派は全て排除されるだろう。
 ジークヴァルトの母が反逆罪での逮捕からジーク派の主要幹部らが死罪にさせられそうになったのを何とかジークヴァルトとサディアスが奮闘し、死罪を免れ、牢獄に閉じ込められたり左遷されたりとなった。
 陛下が倒れたことで国王代理となったジークヴァルトが戦乱収めるため左遷された者を幾人かは連れ戻すことが出来た。そのうちの一人がキャサドラだ。
 アナベルが息子を王に仕立て上げたとしたら、今度こそ死罪は免れないだろう。

「まぁ、まだ今のところは大丈夫だが、いずれ動き出す、用心をしておけ」
「はっ」
「あと、キナ臭い動きがあってな」
「と言いますと?」
「あの橋爆破事件を覚えているか」
「はい」
「多分、その時の犯人と同じ奴がまたコソコソ動き回っているようだ」
「犯人の目途がついたのですか?」
「いや、まだだ、だが、サディが罠を張っている、いずれ炙り出されるだろう」
「なるほど」
「こちらの施設に手が及ばない様に注意を払っているが、警備を念のため強化しておけ」
「はっ」

 そう言って背を向け歩き出しかけた足を止める。

「まだ何か?」
「…あの女に伝えてくれ」
「?」
「自分で伝えたいが、今は直接会うのは避けたい」

 イザークの件があり、下手に接触してはまた、アナベルやレティシアにうまく利用されかねない。

「賢明なご判断です、それでなんと?」

 頭だけ軽く振り返るとジークヴァルトが口にした。

「弟の話し相手になってやれと」
「ロレシオ殿下の?」
「少しは癒しになるかもしれん、それであの女の前向きな強さも伝染してくれればいいんだがな」

 小さく笑う。
 そんなジークヴァルトにキャサドラが笑む。

「畏まりました、リディアにそう伝えておきます」
「頼んだ」
「はっ」

 キャサドラが胸に手を当て敬礼すると、ジークヴァルトは闇に姿を消し去った。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

転生騎士団長の歩き方

Akila
ファンタジー
【第2章 完 約13万字】&【第1章 完 約12万字】  たまたま運よく掴んだ功績で第7騎士団の団長になってしまった女性騎士のラモン。そんなラモンの中身は地球から転生した『鈴木ゆり』だった。女神様に転生するに当たってギフトを授かったのだが、これがとっても役立った。ありがとう女神さま! と言う訳で、小娘団長が汗臭い騎士団をどうにか立て直す為、ドーン副団長や団員達とキレイにしたり、旨〜いしたり、キュンキュンしたりするほのぼの物語です。 【第1章 ようこそ第7騎士団へ】 騎士団の中で窓際? 島流し先? と囁かれる第7騎士団を立て直すべく、前世の知識で働き方改革を強行するモラン。 第7は改善されるのか? 副団長のドーンと共にあれこれと毎日大忙しです。   【第2章 王城と私】 第7騎士団での功績が認められて、次は第3騎士団へ行く事になったラモン。勤務地である王城では毎日誰かと何かやらかしてます。第3騎士団には馴染めるかな? って、またまた異動? 果たしてラモンの行き着く先はどこに?  ※誤字脱字マジですみません。懲りずに読んで下さい。

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

スローライフ 転生したら竜騎士に?

梨香
ファンタジー
『田舎でスローライフをしたい』バカップルの死神に前世の記憶を消去ミスされて赤ちゃんとして転生したユーリは竜を見て異世界だと知る。農家の娘としての生活に不満は無かったが、両親には秘密がありそうだ。魔法が存在する世界だが、普通の農民は狼と話したりしないし、農家の女将さんは植物に働きかけない。ユーリは両親から魔力を受け継いでいた。竜のイリスと絆を結んだユーリは竜騎士を目指す。竜騎士修行や前世の知識を生かして物を売り出したり、忙しいユーリは恋には奥手。スローライフとはかけ離れた人生をおくります。   

【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました

小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。 しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!? 助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、 「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。 幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。 ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく! ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~

eggy
ファンタジー
 もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。  村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。  ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。  しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。  まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。  幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

処理中です...