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さぁ、はじめようか
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「にゃぁ~~~」
「猫?」
足元に擦り寄る猫を抱き上げる。
「綺麗な猫ね~」
自分の背後に咲くバラと同じく真っ白で艶やかだ。
「ここん家の猫かしら?よしよし」
甘える猫の頭を撫ぜる。
「可愛いな…」
「にゃ~お」
ゴロゴロと心地よいという様に喉を鳴らしリディアの手に顔を擦り付ける。
「ほんと甘えたさんね」
「にゃ」
「ん?どうしたの?」
甘えていた猫が頭を上げリディアを見上げる。
次の瞬間、
「きゃっ」
猫が顔に向かって飛びついたと思うと結っていた髪がパサーっと落ちた。
「え?あっ!」
今日はディーノがくれた簪ではないが、喪服に合わせてサディアスから贈られた簪を付けていた。
「ちょっ、大事な資金源っっ返してっっ!!」
それなりに良い品だと思っていたから逃げる時に持ち逃げしようと決めていた品だ。
リディアに用意されたモノは居なくなれば処分されるだろう。
ならば金になるモノは持てるだけ持っていく算段だ。
急いで逃げていった猫を追いかける。
だか相手は動物。すばしっこくてあっという間に姿が見えなくなる。
「もう!どこいっちゃったのよっっ」
屋敷の中に逃げた猫を探しウロチョロと歩き回る。
その目に角を曲がっていく猫の姿を見つける。
「いた!」
急いでその猫の背を追いかける。
すると扉が半開きになっていた部屋へとするりと入っていった。
「しめたわっ」
部屋に入ればこっちのものだ。
急いでその部屋に入るとドアを閉めた。
そしてすぐさま窓の確認をする。
どこも窓は閉まっていた。
「よし、あとは猫ね…」
「猫?」
「サディアス?!」
その部屋に佇んでいたサディアスを見て目を見張る。
「どうしてここに?」
「ちょっと野暮用がありまして―――」
「?」
不意にサディアスが黙り込む。
『誰かいるのか?』
『どうしたの?』
『音が聞こえたので』
『見てきなさい』
部屋の外で声が聞こえる。
「この声―――っっ」
ドアが開くと同時にサディアスがリディアを壁に押し付けると口付けた。
「!」
(なっ?! 誰が来たの?!)
驚き手足を動かそうとするもビクともしない。
サディアスがドアから顔を覗かせ驚くオズワルドにウィンクを一つする。
「‥‥」
オズワルドが何も言わず扉を閉じる。
『風の音でした』
『そう』
そのまま足音が遠ざかっていく。
「ぷはっっ」
やっと塞がれた唇が離れ息を吐く。
「今の声、レティシアよね、てことは覗いたのはオズワルド?」
「よくお解りですね」
「ちょっとした物音まで気づくのはオズぐらいでしょ」
「ふふ、そうですね…、口づけたことは問わないのですか?」
そこでリディアの頬が赤く染まる。
「ほぉ、あなたにもそんな表情ができるのですね」
「で、何を探っていたの?」
「やはりバレましたか」
「当然、私を利用したのだから聞く権利はあると思うけど?」
「そう言えばあなたも何故こんな部屋に…おや」
サディアスがリディアの髪を手にすると口づけた。
「私が差し上げた簪がありませんね」
ギクッ
「もしや失くしたなどと仰いませんよね?」
(しまった、気取られたか…)
「先ほどまで髪を結い上げ挿していたはずです」
「大丈夫、心配には及びませんわ」
「にゃ~~~~」
「!」
猫の鳴き声に棚の上を見上げる。
その足元に簪が転がっていた。
「なるほど、猫に攫われてしまったのですね」
(これでは何故ここに居るかは教えてもらえないわね)
サディアスの簪を猫に攫われたことで、先ほどのキスはチャラになったと悟ったリディアはがっくしと肩を落とす。
(サディアスの情報GETできるかと思ったのに…はぁ~~)
そんなリディアの髪が不意に持ち上げられる。
「!」
「じっとして」
言われるままじっとすると髪を結い上げ、猫から取り上げた簪を挿す。
「あなたは本当に次から次へと、少しは大人しく出来ないかな?」
(え?敬語じゃない――)
サディアスの言葉遣いに一瞬気を取られたリディアの耳元に唇が当たる。
「この事は秘密に…、いいですね」
「~~~~~~~」
頬を赤く染め睨むリディアを可笑しそうに見る。
「解ってる、じゃ、いくわ」
「ええ、くれぐれも遅れないように」
(知ってて揶揄っているわね…こういうのは困る)
ジークヴァルトやサディアスの場合、心臓が崩壊しそうだ。
(さっきのリオもヤバかったけど‥‥乙女ゲーム全開状態ね)
画面の中で見ているだけでもクッション抱え悶絶するのに、実際リアルにやられては心臓が持たない。
(イケメン最高)
震える拳を握る。ブレずに外道志向まっしぐらなリディアだった。
式典が始まり、だだっ広い会場が参列者で埋め尽くされる。
見ると、オーレリーだけでなくゴドリゴ教皇も来ていた。
聖女と言うだけでなく、国王陛下の弟妻だからだろう。
見ただけで身分の高い者たちが沢山参列しているのが解る。
その目にジークヴァルトを見つけ止まる。
その隣に同じぐらいの年頃の男が座っていた。
「あの方はジークヴァルトの従弟のドルフリー様です」
「てことは国王弟の息子?」
「はい」
改めてマジマジと見る。
ジークヴァルトの隣に座ると線がどうしても弱く見えてしまう。
「それなりに鍛えてそうだけど、弱く見えるわね」
「ドルフリー様は父と同じく魔力量は多く魔術は得意なのですが、武術の方は苦手と聞きます」
「ちょっと気の毒ね…」
ちらっとジークヴァルト達を見る者の表情を見る。
ドルフリーを見て嘲笑している風がある。
「それは―――、始まりましたね」
イザークが何か言いかけた所で、式典が始まった。
(あれが、国王弟か…)
王の風格を持つ男が前に立つ。
息子ドルフリーよりしっかりとしたガタイをしていた。
その目が大きく描かれた妻の絵を見上げ潤りと揺れる。
(妻のために、この広い屋敷一面のバラを咲かせ続ける男…か…)
愛されていたのが十分に伝わる。
息子のドルフリーの目も潤む。
リディアはその愛された前聖女の絵を見上げる。
そこには大人しく優しそうな女性が笑っていた。
(これが前聖女か…、優しそうだけど見方を変えれば何も言わない従順そうな女性ね)
国王と同等の意見を述べられる存在だ。
(こんな場所でうがった見方をして申し訳ないけれど‥‥)
下手な事を言われては困る存在でもあるのだ。
従順で大人しいのは教会も国も好都合なはず。
今回のように王妃の娘レティシアが居なければ、簡単に言いくるめられそうなフェリシー辺りが選ばれるか、もしくはもっと大人しい女性が選ばれるだろう。
あのあれだけの商人を集め欲にまみれた豪勢な金の使い方をする教皇や貴族が居る場所だ。
利権が絡んでいないはずがない。いや、どっぷり利権で汚れまくっていると考えていいだろう。
『聖女』自体や『聖女試験』が利権のために作られたとも十分に考えられる。
(やっぱり聖女なんて御免だわ…)
ちやほやされ贅沢し放題かもしれないが、面倒な人間関係なんて御免だ。
しかも付き合いたくもないタイプの奴らのご機嫌なんか取りたくもない。
(こんな関係をよくやり続けているわよね…)
ジークヴァルトやサディアス、それに壁に立つオズワルドを見る。
そうせずにはいられない立場なのだろうけれど。
それは気の毒には思うけれど、それに巻き込もうとしてくるジークヴァルトやサディアスの思い通りにさせられてたまるかとも思う。
(のんびり平民でぐーたら生活が一番最高よね)
何のしがらみも、面倒な人間関係に煩わされることもない生活。
早くちゃっちゃとゲームを終わらせなければと改めて心に闘志を燃やす。
その脳裏に先ほどのサディアスを思い返し、少し頬が赤らむ。
(サディアスの好感度が上がったという事よね…でも、上がり過ぎてはマズいわ)
サディアスルートに入られては困る。
目指すは大団円だ。
(ちゃっちゃとサディアスの問題解決しないと…そう言えば)
先ほど何か探っていた風な感じだったことを思い出す。
(私が目撃したという事は、問題と何か関わりある事かも知れないわ…)
主人公の自分が目撃とか、絶対関連がありそうだ。
(一体何を探っていたのかしら‥‥)
「いいですか、こちらで待っていてくださいね」
式典前に姿を晦ましたリディアに念を押す。
「大丈夫、ちゃんといるから」
返事を聞くとイザークがリディアを庭園に残して去っていく。
またオーレリーに呼ばれたのだ。
式典が終わり、帰る段取りの説明か何かだろう。
イザークが庭園から姿が消えたのを見計らい辺りを見渡す。
「さてと、確かあっちだったかしら?」
猫を追いかけてサディアスと会った部屋の方角を見る。
あの部屋に何かヒントがあるかもしれない。
そうして歩き出そうとしたらブーンという羽根の音と共に太ももに激痛が走る。
「ったぃっっって、蜂?!」
「姉さま!このっ」
リオがスッと現れると蜂を一撃で倒す。
「大丈夫?!姉さま」
「大丈夫じゃない、痛い―― ちょっとリオ?!」
「ごめん、じっとしてて」
リディアを近くのベンチに座らすと喪服の裾を捲し上げる。
そのまま蜂が射された箇所に唇を当てる。
「っ…」
針を吸い出そうとしてくれているのだろう。
刺された箇所に吸い付くリオ。
痛みにふと顔を背けた所で人影に気づきハッとして見上げる。
「!」
庭園の先の渡り廊下をレティシアの後に続き歩くオズワルドがこちらに気づき蔑む眼差しで睨んでいた。
(あの顔も堪らん)
一瞬顔を緩めるも痛みですぐに意識が戻る。
そうしてもう一度オズワルドの方を見ると既に屋敷に入っていった後だった。
「姉さま、痛みはどう?」
「うん、少し楽になったわ…」
最初の痛みに比べれば大分とマシだ。
そこでハタっと気づく。
スカートが捲れ上がり真っ白い太ももが露わになったその横にリオの顔。
見るからにエロい。
そして脳裏に浮かぶ先ほどの蔑んだオズワルドの瞳。
(もしかして…、誤解された?)
さっきもサディアスとの口づけを見られた後だ。
(これってヤバイかも…)
「姉さま?」
悶々と考えるリディアの顔を伺い見る。
(いや、そもそも本命攻略キャラだけど、今は違うわよね…)
目指すは大団円で、ゲームでキャラを攻略するわけではない事を思い出す。
蔑んだ瞳がまた脳裏に浮かぶ。
(嫌われた?好感度上がってなかったらマズイ?)
全員がある程度の好感度を持っていないと大団円にはならない。
大団円失敗になるかもしれない。
そう思うとサーッと顔が青ざめる。
「姉さま、大丈夫?気分悪い?医務室に行こうか?」
「大丈夫、後で、イザークに薬を貰うわ」
医務室に連れて行こうと抱き上げるリオを止める。
(ちょっとマズい事になってしまったかしら…好感度上げるには)
オズワルドの問題を解決しなければならない。
「あ」
「?」
そこでハタっと思い出す。
(そう言えば、オズの問題は…)
――― もう解決している
「なら問題ないわね」
「姉さま?」
(ああ、だけど胸が痛む~~~~~~)
解っていても心が痛む。
一押し本命キャラにバッドエンド攻略進行する時も心苦しく胸が痛んだものだ。
(けど、その痛みも苦しみもまた美味、蔑む瞳も見たくもなる、ああ~~苦しいわ)
下衆街道まっしぐらなリディアここに健在だった。
「ああ、そうだ、丁度いいわリオ、お願いがあるの」
「猫?」
足元に擦り寄る猫を抱き上げる。
「綺麗な猫ね~」
自分の背後に咲くバラと同じく真っ白で艶やかだ。
「ここん家の猫かしら?よしよし」
甘える猫の頭を撫ぜる。
「可愛いな…」
「にゃ~お」
ゴロゴロと心地よいという様に喉を鳴らしリディアの手に顔を擦り付ける。
「ほんと甘えたさんね」
「にゃ」
「ん?どうしたの?」
甘えていた猫が頭を上げリディアを見上げる。
次の瞬間、
「きゃっ」
猫が顔に向かって飛びついたと思うと結っていた髪がパサーっと落ちた。
「え?あっ!」
今日はディーノがくれた簪ではないが、喪服に合わせてサディアスから贈られた簪を付けていた。
「ちょっ、大事な資金源っっ返してっっ!!」
それなりに良い品だと思っていたから逃げる時に持ち逃げしようと決めていた品だ。
リディアに用意されたモノは居なくなれば処分されるだろう。
ならば金になるモノは持てるだけ持っていく算段だ。
急いで逃げていった猫を追いかける。
だか相手は動物。すばしっこくてあっという間に姿が見えなくなる。
「もう!どこいっちゃったのよっっ」
屋敷の中に逃げた猫を探しウロチョロと歩き回る。
その目に角を曲がっていく猫の姿を見つける。
「いた!」
急いでその猫の背を追いかける。
すると扉が半開きになっていた部屋へとするりと入っていった。
「しめたわっ」
部屋に入ればこっちのものだ。
急いでその部屋に入るとドアを閉めた。
そしてすぐさま窓の確認をする。
どこも窓は閉まっていた。
「よし、あとは猫ね…」
「猫?」
「サディアス?!」
その部屋に佇んでいたサディアスを見て目を見張る。
「どうしてここに?」
「ちょっと野暮用がありまして―――」
「?」
不意にサディアスが黙り込む。
『誰かいるのか?』
『どうしたの?』
『音が聞こえたので』
『見てきなさい』
部屋の外で声が聞こえる。
「この声―――っっ」
ドアが開くと同時にサディアスがリディアを壁に押し付けると口付けた。
「!」
(なっ?! 誰が来たの?!)
驚き手足を動かそうとするもビクともしない。
サディアスがドアから顔を覗かせ驚くオズワルドにウィンクを一つする。
「‥‥」
オズワルドが何も言わず扉を閉じる。
『風の音でした』
『そう』
そのまま足音が遠ざかっていく。
「ぷはっっ」
やっと塞がれた唇が離れ息を吐く。
「今の声、レティシアよね、てことは覗いたのはオズワルド?」
「よくお解りですね」
「ちょっとした物音まで気づくのはオズぐらいでしょ」
「ふふ、そうですね…、口づけたことは問わないのですか?」
そこでリディアの頬が赤く染まる。
「ほぉ、あなたにもそんな表情ができるのですね」
「で、何を探っていたの?」
「やはりバレましたか」
「当然、私を利用したのだから聞く権利はあると思うけど?」
「そう言えばあなたも何故こんな部屋に…おや」
サディアスがリディアの髪を手にすると口づけた。
「私が差し上げた簪がありませんね」
ギクッ
「もしや失くしたなどと仰いませんよね?」
(しまった、気取られたか…)
「先ほどまで髪を結い上げ挿していたはずです」
「大丈夫、心配には及びませんわ」
「にゃ~~~~」
「!」
猫の鳴き声に棚の上を見上げる。
その足元に簪が転がっていた。
「なるほど、猫に攫われてしまったのですね」
(これでは何故ここに居るかは教えてもらえないわね)
サディアスの簪を猫に攫われたことで、先ほどのキスはチャラになったと悟ったリディアはがっくしと肩を落とす。
(サディアスの情報GETできるかと思ったのに…はぁ~~)
そんなリディアの髪が不意に持ち上げられる。
「!」
「じっとして」
言われるままじっとすると髪を結い上げ、猫から取り上げた簪を挿す。
「あなたは本当に次から次へと、少しは大人しく出来ないかな?」
(え?敬語じゃない――)
サディアスの言葉遣いに一瞬気を取られたリディアの耳元に唇が当たる。
「この事は秘密に…、いいですね」
「~~~~~~~」
頬を赤く染め睨むリディアを可笑しそうに見る。
「解ってる、じゃ、いくわ」
「ええ、くれぐれも遅れないように」
(知ってて揶揄っているわね…こういうのは困る)
ジークヴァルトやサディアスの場合、心臓が崩壊しそうだ。
(さっきのリオもヤバかったけど‥‥乙女ゲーム全開状態ね)
画面の中で見ているだけでもクッション抱え悶絶するのに、実際リアルにやられては心臓が持たない。
(イケメン最高)
震える拳を握る。ブレずに外道志向まっしぐらなリディアだった。
式典が始まり、だだっ広い会場が参列者で埋め尽くされる。
見ると、オーレリーだけでなくゴドリゴ教皇も来ていた。
聖女と言うだけでなく、国王陛下の弟妻だからだろう。
見ただけで身分の高い者たちが沢山参列しているのが解る。
その目にジークヴァルトを見つけ止まる。
その隣に同じぐらいの年頃の男が座っていた。
「あの方はジークヴァルトの従弟のドルフリー様です」
「てことは国王弟の息子?」
「はい」
改めてマジマジと見る。
ジークヴァルトの隣に座ると線がどうしても弱く見えてしまう。
「それなりに鍛えてそうだけど、弱く見えるわね」
「ドルフリー様は父と同じく魔力量は多く魔術は得意なのですが、武術の方は苦手と聞きます」
「ちょっと気の毒ね…」
ちらっとジークヴァルト達を見る者の表情を見る。
ドルフリーを見て嘲笑している風がある。
「それは―――、始まりましたね」
イザークが何か言いかけた所で、式典が始まった。
(あれが、国王弟か…)
王の風格を持つ男が前に立つ。
息子ドルフリーよりしっかりとしたガタイをしていた。
その目が大きく描かれた妻の絵を見上げ潤りと揺れる。
(妻のために、この広い屋敷一面のバラを咲かせ続ける男…か…)
愛されていたのが十分に伝わる。
息子のドルフリーの目も潤む。
リディアはその愛された前聖女の絵を見上げる。
そこには大人しく優しそうな女性が笑っていた。
(これが前聖女か…、優しそうだけど見方を変えれば何も言わない従順そうな女性ね)
国王と同等の意見を述べられる存在だ。
(こんな場所でうがった見方をして申し訳ないけれど‥‥)
下手な事を言われては困る存在でもあるのだ。
従順で大人しいのは教会も国も好都合なはず。
今回のように王妃の娘レティシアが居なければ、簡単に言いくるめられそうなフェリシー辺りが選ばれるか、もしくはもっと大人しい女性が選ばれるだろう。
あのあれだけの商人を集め欲にまみれた豪勢な金の使い方をする教皇や貴族が居る場所だ。
利権が絡んでいないはずがない。いや、どっぷり利権で汚れまくっていると考えていいだろう。
『聖女』自体や『聖女試験』が利権のために作られたとも十分に考えられる。
(やっぱり聖女なんて御免だわ…)
ちやほやされ贅沢し放題かもしれないが、面倒な人間関係なんて御免だ。
しかも付き合いたくもないタイプの奴らのご機嫌なんか取りたくもない。
(こんな関係をよくやり続けているわよね…)
ジークヴァルトやサディアス、それに壁に立つオズワルドを見る。
そうせずにはいられない立場なのだろうけれど。
それは気の毒には思うけれど、それに巻き込もうとしてくるジークヴァルトやサディアスの思い通りにさせられてたまるかとも思う。
(のんびり平民でぐーたら生活が一番最高よね)
何のしがらみも、面倒な人間関係に煩わされることもない生活。
早くちゃっちゃとゲームを終わらせなければと改めて心に闘志を燃やす。
その脳裏に先ほどのサディアスを思い返し、少し頬が赤らむ。
(サディアスの好感度が上がったという事よね…でも、上がり過ぎてはマズいわ)
サディアスルートに入られては困る。
目指すは大団円だ。
(ちゃっちゃとサディアスの問題解決しないと…そう言えば)
先ほど何か探っていた風な感じだったことを思い出す。
(私が目撃したという事は、問題と何か関わりある事かも知れないわ…)
主人公の自分が目撃とか、絶対関連がありそうだ。
(一体何を探っていたのかしら‥‥)
「いいですか、こちらで待っていてくださいね」
式典前に姿を晦ましたリディアに念を押す。
「大丈夫、ちゃんといるから」
返事を聞くとイザークがリディアを庭園に残して去っていく。
またオーレリーに呼ばれたのだ。
式典が終わり、帰る段取りの説明か何かだろう。
イザークが庭園から姿が消えたのを見計らい辺りを見渡す。
「さてと、確かあっちだったかしら?」
猫を追いかけてサディアスと会った部屋の方角を見る。
あの部屋に何かヒントがあるかもしれない。
そうして歩き出そうとしたらブーンという羽根の音と共に太ももに激痛が走る。
「ったぃっっって、蜂?!」
「姉さま!このっ」
リオがスッと現れると蜂を一撃で倒す。
「大丈夫?!姉さま」
「大丈夫じゃない、痛い―― ちょっとリオ?!」
「ごめん、じっとしてて」
リディアを近くのベンチに座らすと喪服の裾を捲し上げる。
そのまま蜂が射された箇所に唇を当てる。
「っ…」
針を吸い出そうとしてくれているのだろう。
刺された箇所に吸い付くリオ。
痛みにふと顔を背けた所で人影に気づきハッとして見上げる。
「!」
庭園の先の渡り廊下をレティシアの後に続き歩くオズワルドがこちらに気づき蔑む眼差しで睨んでいた。
(あの顔も堪らん)
一瞬顔を緩めるも痛みですぐに意識が戻る。
そうしてもう一度オズワルドの方を見ると既に屋敷に入っていった後だった。
「姉さま、痛みはどう?」
「うん、少し楽になったわ…」
最初の痛みに比べれば大分とマシだ。
そこでハタっと気づく。
スカートが捲れ上がり真っ白い太ももが露わになったその横にリオの顔。
見るからにエロい。
そして脳裏に浮かぶ先ほどの蔑んだオズワルドの瞳。
(もしかして…、誤解された?)
さっきもサディアスとの口づけを見られた後だ。
(これってヤバイかも…)
「姉さま?」
悶々と考えるリディアの顔を伺い見る。
(いや、そもそも本命攻略キャラだけど、今は違うわよね…)
目指すは大団円で、ゲームでキャラを攻略するわけではない事を思い出す。
蔑んだ瞳がまた脳裏に浮かぶ。
(嫌われた?好感度上がってなかったらマズイ?)
全員がある程度の好感度を持っていないと大団円にはならない。
大団円失敗になるかもしれない。
そう思うとサーッと顔が青ざめる。
「姉さま、大丈夫?気分悪い?医務室に行こうか?」
「大丈夫、後で、イザークに薬を貰うわ」
医務室に連れて行こうと抱き上げるリオを止める。
(ちょっとマズい事になってしまったかしら…好感度上げるには)
オズワルドの問題を解決しなければならない。
「あ」
「?」
そこでハタっと思い出す。
(そう言えば、オズの問題は…)
――― もう解決している
「なら問題ないわね」
「姉さま?」
(ああ、だけど胸が痛む~~~~~~)
解っていても心が痛む。
一押し本命キャラにバッドエンド攻略進行する時も心苦しく胸が痛んだものだ。
(けど、その痛みも苦しみもまた美味、蔑む瞳も見たくもなる、ああ~~苦しいわ)
下衆街道まっしぐらなリディアここに健在だった。
「ああ、そうだ、丁度いいわリオ、お願いがあるの」
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ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。
しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。
まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。
幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。
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