つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲

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さぁ、はじめようか

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「…ア様、リディア様」
「ん?ああ、授業終わったのね、やっとお昼かぁ♪」

 背伸びしながら起き上がると、ふとご機嫌なフェリシーが目に映る。

(あら?吹っ切れたのかしら?)

「オーレリー様!一緒にお昼を如何ですか?」

 オーレリーの周りに数人の聖女候補生が集まる。
 目をハートにして集まる聖女候補生達に目を細める。

(はぁん、オーレリー枢機卿狙いかぁ、ん?)

「ねぇ、枢機卿って恋愛できるの?」

 ボソボソとイザークに聞く。

「表向きは出来ませんが、こっそり関係を持っている教団関係者も数多くいます」
「ふ~ん」
「援助金を貰うために教団側が擦り寄る場合もございますし、逆に教団側に取り入って権力を持とうとする貴族も多くいます」

 リディアの頭に真っ先に浮かんだのはロドリゴ教皇だった。
 レティシアに媚びを売るあれはまさに援助金目当てという事だろう。

「イケメンで枢機卿と言う立場、結婚は出来なくとも権力は相当なモノ、狙う女性も多いと聞きます」
「まぁ、聖女はほぼレティシアに決まってるようなものだものね、それでオーレリー狙いか」
「そのようですね、試験も終盤になってきて権力や嫁入り先を気にしだしている聖女候補生が結構出てきていますから…」
「そうだったんだ」
「ええ、呑気にしていらっしゃるのはリディア様ぐらいです」
「はは…」

 思わず苦笑いが零れる。
 逃亡予定で、平民でぐーたら暮らしを狙っているリディアには全く無縁で興味のない話だ。

「お誘い頂き嬉しいのですが、まだ仕事が残っておりますので、これで失礼いたします」
「残念ですわぁ」

 オーレリーが聖女候補生達を軽くあしらい教室を後にしようとした時だった。
 勢いよくドアが開く。

「リディア嬢!リディア嬢はいらっしゃるか!!!」

 驚き皆が振り返る。
 そこに顔見知ったミドルダンディなリオの教官ゲラルトが居た。

「私はここにいるわ!ゲラルト、どうしたの?」

 スッと立ち上がるとゲラルトに呼びかけた。

「おお!!よかった!」
「っ!」

 リオに劣らず、いつの間にか目の前にいて焦り見上げる。

(リオの教官だけに、この人も凄い身体能力だわ…)
 
「リオを、リオを呼び出してくれ!至急だ!!」

 肩をガシッと掴まれ血相を変えて叫ぶゲラルトに戸惑う。

「一体何事?」
「どうしたのです?」

 オーレリーも寄ってきてゲラルトに質問する。

「ミクトランが動いた!」
「なんですって?!」

 教室中がざわめく。

「それでリオの力が絶対に必要なのです!ですがリオがどこにも見当たらなくて」
「戦争になるのですか?!」
「そうなる前に抑えるため急いでいるのです!」
「そうなる前?」
「今は説明している暇はない、頼む!お願いだ!あなたしかリオを呼べない」

(戦争に…リオを…)

 脳裏に戦乱の頃の記憶が蘇る。まだ前世の記憶が戻ってない幼い頃の記憶だ。
 リディアが居た街も何度も戦で焼かれた。
 戦争が起こるたびに屋敷のクローゼットの中に身を隠し体を震わせ息を潜めた。
 街は度重なる戦乱で荒れ、その時に両親が馬車で盗賊に襲われ亡くなった。

(リオも確か戦で屋敷を焼かれ、あの強欲な義理父に引き取られてきたのよね…)

 戦闘能力からいくとリオはチート設定だし問題はないだろう。
 今も国境のいざこざを治めるのに駆り出され沢山人を殺めている。
 戦争だからとリオにトラウマがあるようにはあまり見受けられないからそれも問題ない。
 だからさっさと呼び出して行ってきなさい!と喝を入れれば国も守れ、しいてはそれは自分の安全を守れるわけで、何の問題もない。
 今までだったらリオなら大丈夫ねと気楽に呼べたのに、何故だろう、あのサディアスの問題解決の辺りから胸の辺りがざわざわする。

「リディア様…」
「大丈夫、そこまで危険な任務ではない、ただ抑え込むのに早さが必要なんだ、お願いだ、リオを呼んでくれ!急ぐんだ!頼む!!」

(もうリオは問題解決済みだし、死ENDはないわよね…)

 ぐっと拳を握りしめる。

「リオ!」

 するとふいっとリオが姿を現しいつものようにリディアに抱き着く。

「姉さまが呼んでくれた…嬉しい」

(あー、名前呼んでほしくて隠れてたってわけね、流石ヤンデレ…)

 リオがリディアの顔を覗き込む。

「僕が必要?」
「‥‥」

 リディアもリオの顔をじっと見つめる。



(これもまた私の責任かしら…リオをここへ連れてきたのは私だ…)



「姉さま?――――っ!!」

 スッと手を伸ばしリオを抱きしめた。
 初めてリディアに抱きしめられたことに目を真ん丸に開けていたリオの瞳がキラキラと煌めく。

「必要、よ」
「解った、姉さま」

 リオもまたそっとリディアを抱きしめ返した。

「じゃ、ちゃっちゃと行って片付けてくるよ!」
「お願い」
「リディア嬢、忝いかたじけな

 あっという間にリオとゲラルトの姿が消える。

「大丈夫ですか?」

 オーレリーとイザークが心配そうにリディアの顔を覗き込む。

「あ、あー、全然平気です、大丈夫」

 手を上げ大丈夫というそぶりをみせる。
 そうしてふと目を逸らしたその目に少し沈んだフェリシーが映った。

(? フェリシー?…もしかして戦争に嫌な思い出があるのかしら?)

「無事に抑制できるとよいのですが…」
「そうね…」
「ジークヴァルト殿下もサディアス軍師まで行ったから問題ないない!」
「キャサドラ!」

 不意に大きな影が出来たと思ったらキャサドラが立っていた。

「何か状況をご存じなのですか?」
「ああ、ざっとだが、国境付近のいざこざとそう変わらないよ」
「ではなぜ、ジークヴァルト殿下や軍師まで赴き、リオ君まで駆り出されたのですか?」
「それはもしものためね」
「もしも?」

 キャサドラが近くの机に腰を下ろす。

「ミクトランはもう後がない、無理やりなだれ込んで来ようとするのを先に抑えられたら、国境付近のいざこざ程度で終わる、だが、抑えきれなかったら一気になだれ込んでくる可能性がある、だから念のためジーク殿下とディアが赴いたのさ」
「そうでしたか」
「リオが必要なのは、あちらは下り坂、しかも風魔法を得意とする陣が豊富なミクトランだ、一気になだれ込む可能性があるから、スピード勝負と言うわけ」
「なるほど」
「だから、なーんも心配いらないいらない!」
「い、いたっっいたっっ」

 バシバシ背中を叩かれ身体が仰け反る。

(あー、キャサドラもさっきの私の感じで気に掛けて出てきてくれたのか…)

「ありがと」
「ふふ、可愛いなぁ~」

 ボスっと胸に抱きしめられる。

(うわっでかっっ)

「胸何カップ?」

 キャサドラがニヤッと笑う。

「G」
「なっっ‥‥触っていい?」
「いいぞ」

 そっと両手をキャサドラの胸に当てる。

「うわぁ、めちゃくちゃ張りがある!すごい」
「ふふーん」
「きゃっ」

 キャサドラの手がリディアの胸を掴む。

「あははっ、リディアも可愛い声して鳴くんだな」
「言い回し!」
「意外とあるな‥D?」
「いえ、Cです」
「そこ、何でイザークが答えるかな」
「出過ぎた真似をすみません…」
「栄養失調でも胸は残ったのか、よかったな」
「いえ、マッサージと食事で、BカップからCカップに仕上げました」
「そうだったの?!」
「いい執事を持ったな、ん?マッサージ?」
「コホンっ」

 そこでオーレリーの咳払いにハタっと会話が止まる。

「ここは神聖な場です、そういう話はお控えください」
「す、すみません…」

 すっかり状況を忘れてた3人が現実に戻ってくる。

「とにかく、まだ予断を許しませんが、状況は大丈夫そうなので安心しました」
「ああ、今の所、リオも間に合ったし問題ない」
「そうですね、では私はこの辺で失礼いたします」

 オーレリーが教室を後にする。
 教室内も安心したのかまた普段通りの状態へと戻った。
 そんな中、俯くフェリシーに目が留まる。

(やはり、何か戦争でトラウマがあるのかな…?)

 そんなフェリシーを横目に、リディア達もランチをしに教室を出た。

「フェリシー様、元気をお出しください、話しがお流れになったわけではないのですから」

 落ち込むフェリシーに執事ユーグが話しかける。

「折角、髪飾りに生花を取り寄せたのに…」

 この戦のお陰で、ジークヴァルト殿下との面会は間違いなく先送りだ。
 早くお会いしてユーグと共に選んだ素敵なドレスや着飾った自分を見てもらいたくて楽しみにしていたというのに、戦が起これば面会の日取りがまた迷宮入りする。
 はぁっとため息をつく。

「また取り寄せればいいではないですか、楽しみが少し先延ばしになったというだけです」
「うん…」
「楽しみの時間が増えたと思えばよろしいのです」
「…そうね、そうよね」
「ええそうですとも」
「そうだわ!私お菓子作りが得意なの!お会いした時のプレゼントに美味しいケーキを焼くわ!」
「では、ケーキのプランを一緒に考えましょう」
「ええ!何だかとても楽しくなってきたわ」
「ふふ、それは良かったです、さ、フェリシー様もランチに致しましょう」
「うん!」

 機嫌を取り戻したフェリシーがユーグの後に続いて教室を出た。







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