つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲

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さぁ、はじめようか

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「おおっ、これはこれは!どこからか妖精が迷い込んだのかと思いましたらフェリシー嬢でしたか!とても素敵でお似合いですね」

 ハールス伯爵が両手を広げ絶賛する。

「ありがとうございます」

 頬染めドレスを少し持ち上げ挨拶するフェリシー。
 やっと待ちに待ったジークヴァルト殿下との面会の日がやって来た。
 昨日の夜は興奮でなかなか眠れなかった。

「私、おかしくない?寝不足で変な顔になってない?」

 心配そうにユーグを見上げる。

「大丈夫でございます、今日は今までで一番素敵にございます」
「そ、そう?」
「ふふ、お可愛らしい、私はありとあらゆる美しい女性をたくさん見てきましたが、今日のあなたはその中でも最も美しく輝いていらっしゃいますよ」

 ハーネス伯爵が優しくウインクする。

「ありがとうございます」

 頬を染め手を当てる。

「それで、それは?」

 大事に抱えている箱に目線を送る。

「あ、これはジークヴァルト殿下に手作りのケーキをプレゼントしようと思って…」
「それは名案です!フェリシー嬢の手作りならジークヴァルト殿下もさぞや喜んで下さることでしょう」
「そうでしょうか」
「ええ、さぁ、そろそろ時間ですね、参りましょう、お手をどうぞ、お姫様」
「ふふ、はい」

 差し出された手に自分の手を重ねる。

「既に侯爵達は自分の娘や推薦する女性を連れて控室に到着しているとか、急ぎましょう、先を越されてはなりません」
「はい」

 手を引かれ、ハールス伯爵と共に城の謁見室へと足を運ばせた。









「まだ見つからないのか?!」
「はい、ゲラルト様もお手上げだと嘆いておられます」
「やれやれ…、出てくるつもりはないようですね」

 王謁見室はざわざわとどよめく。

「なぜ、姿を現さん!」
「今回のミクトランで凄い活躍を見せ、功績を残したとはいえ、これは余りに不敬」

 なかなか現れない主役に、痺れを切らし不満が口に出だす。
 今回のミクトラン戦で大活躍したリオに勲章を与えようとなった。
 だが肝心のリオが雲隠れして姿を一向に現わさない。

「あらかじめ予想して、伏せていたはずだが…」

 リオが素直に勲章を授与されるとは思えない。
 だから伏せておいて授与前にゲラルトに適当な理由を付けて連れてこさす段取りだった。
 だがどこで知られたのかゲラルトが呼びに行った時には姿を晦ましていた。

「このままではまずいな」

 ジークヴァルトとしてはどうしてもこれからの戦を考えるとリオを取り込みたい。

(何としてでも勲章は受け取ってもらわねば…)

「ゲラルトで無理なら見つけるのは不可能でしょう」
「ああ、仕方がない、代わりに聖女候補生のリディア嬢をここに!内容を知らせず連れてこい!」
「はっ」

 リディアも聡い。
 取り込みたいことを悟られれば、逃げられる可能性がある。

「まったく、勲章授与にこれだけ手間取るとは、普通授与してくれと賄賂まで渡してくる輩もいるというのに…」
「とにかく、リディアが来れば無事解決だ」

 イライラとリディアが来るのを待つ中、リディアでない新たな客人達がぞろぞろと現れる。

「ああ、もう次の謁見の時間か」

(ジークヴァルト殿下!)

 フェリシーが中央に居るジークヴァルト殿下を見つけ胸が高鳴る。
 侯爵方とその花嫁候補達の後に続いてハールス伯爵の手に引かれ、ジークヴァルト殿下の前に立つ。
 そして皆、挨拶のお辞儀をすると、侯爵の一人が周りを見ながら訪ねた。

「ジークヴァルト殿下、これは一体何の騒ぎです?」
「ああ、すまない、実は前のミクトラン戦の功績を称え、勲章を与える事になった男がまだ現れなくてな」
「なんと勲章を授与されると言うのに姿を晦ましているのですか?!」
「噂には聞いております、今回の出陣で大変大活躍された兵でもない男が居ると…、兵が皆口を揃えて勲章に値する働きだった話していると、その彼に授与されるのは良い事かと思いますが、しかしどうして受け取りを拒否するのでしょう?」
「ええ‥皆がざわつくのも無理はない」

 サディアスが取り繕う様に口にする。

「そう言うのに興味がない男なのですよ、ですが、もう手は打ってあります」
「手ですか?」
「彼の姉君である聖女候補のリディア嬢をこちらに今呼んでおります」

(リディア?!)

 フェリシーの顔色が変わる。

(こんなところまで‥‥)

 待ちに待ったジークヴァルト殿下との面会の日。
 こんな日までリディアの名前を耳にし、ここに登場するなんて。

(どこまでも邪魔をする気なの?!)

 ケーキの箱を持つ手が震える。

「授与できる代わりの者が居るのなら安心ですね」
「ええ、ということで、時間がまだ掛かりますがどう致しましょう、殿下」
「そうだな、女の準備は時間が掛かる、よし、先にこちらを片付けておくか」
「ですが途中で彼女が現れたらいかがいたしましょう?」
「それならば問題ございません、ぜひとも我々も授与式で称賛を送りたく思います」
「申し出ありがとうございます、侯爵方が参加とあれば授与した彼にも箔が付く事でしょう」

 肌の色から貴族でも愚民と思われるリオの授与式だ。
 流石に侯爵を呼ぶわけにもいかず、授与してもいいという問題なさそうな貴族を適当に集めた中での授与式だった。
 そこに侯爵からの自らの申し出は中々に有難く美味しい話だ。 

「感謝する、では早速…と言いたいところだが、何だ?その女共は?」

 ジークヴァルトが侯爵達の後ろに立つ女達を見る。

「今日は領土の状況報告という事だったはず、なのに関係のない女にハールス伯爵まで…ハールス伯爵は関係がないだろう?」

 じろりとハールス伯爵を見る。

「今回の謁見でこちらの侯爵方が推薦する殿下の花嫁候補を紹介するという話を耳にしまして、私も是非にと強く推したい候補がおりますゆえ、少々強引ではありますが参加させて頂いた所存にございます」
「それで、聖女候補生のフェリシー嬢までここに居るのか」
「!」

 こちらを見たジークヴァルトに頬染め急いでスカートを持ち上げる。

「はぁ…、今がどんな状況か解っているだろう?嫁とかそんなことを言っている場合ではない」
「こんな状況だからです!殿下!」

 侯爵の一人が声を上げる。

「国王が倒れ、その息子達誰ひとりまだ嫁もなく後継ぎもいない、このどうなるか解らぬ状況、早くお世継ぎを沢山産むことも大事にございます!」
「大事かもしれぬが、今は興味がない、さっさと状況報告せよ」
「殿下!我が娘は幼き頃より、いつでも殿下の妃になれるよう厳しいお妃教育をさせてきております、嫁に興味がなくても、結婚さえすればすぐに仕えることが出来るでしょう」
「私の推すこちらの娘はクイグリー家のご息女にございます、もうご存知でいらっしゃいますでしょう、幼き頃、一度は婚約者にと候補に上がった女性にございます、こうして才色兼備を兼ね揃えた素晴らしい女性へと成長致しました、クイグリーと言えば王家とも深く繋がりがあります、やはり彼女こそ王家の次期国王になるジークヴァルト殿下の妃に相応しいと再度申し出に参った次第です」

 侯爵達が鼻息荒く自分が推薦する花嫁候補の女性を前に出し、一生懸命アピールする。

「知らん!今この状況で嫁などいらん!」
「今この状況だからこそ、私はこの可愛らしい聖女候補のフェリシー嬢を推薦します」
「!」

 不意にぐいっと背を押され、フェリシーは焦りながら急いで前に出るともう一度スカートを持ち上げ首を垂れた。

「フェリシー嬢はアナベルの娘レティシア様とも親友でいらっしゃいます、この厳しい状況の中、城の中は二つの勢力で分断されています、ですが、彼女はジーク派でありながらレティシア様と親交を深められた稀な存在、レティシア様からもフェリシー嬢ならばジークヴァルト殿下の花嫁に相応しいとお墨付きをもらいました!」
「なんと!レティシア様が?!」

(レティシアが私を!?ああ、やっぱり私を親友と思ってくれているのね!)

 もしかしたらと思ったけれど、本当にレティシアが推してくれたことにパッと顔が明らむ。

「さらには、アナベル様まで娘の親友ならばとフェリシー嬢をジークヴァルト殿下の花嫁にと仰ってくださいました!!」
「!!!」

 先ほどまでと違うどよめきが王謁見室に響き渡る。
 フェリシーも思っても見なかった言葉に驚き言葉を失う。

(アナベル様まで?!)

「フェリシー嬢を花嫁に迎えれば、長らく悩ませていた二つの勢力が手を取り合うという奇跡を起こす事ができます!」

 ”おおーっ”と会場が沸く。

「ジークヴァルト殿下の母君もまた聖女の親友の聖女候補生、まさにこれは運命!」

 そう言えばと言う様に、会場中が頷く。

「そんなフェリシー嬢と一緒になりお世継ぎをお産みになれば、きっとジークヴァルト殿下のような素晴らしいお子に恵まれる事でしょう!」

(ジークヴァルト殿下との赤ちゃん?!)

 フェリシーが頬を染め手を当てる。

「ジークヴァルト殿下の花嫁にこれ以上の方はいないと私は豪語致します!」

 会場一致するように拍手が沸き起こる。

(皆が拍手を…)

 嬉しさに心が震える。
 拍手する人々を見渡す。

(ああ、やはり私はジークヴァルト殿下の花嫁になるためにここに来たのだわ)

 幸せに胸がいっぱいになる。

「さぁ、殿下!フェリシー嬢の手をお取りください!」

(ジークヴァルト殿下…)

 頬染め夢見心地でジークヴァルト殿下を見上げた時だった。




「ジークヴァルトはここに居るかぁああっっっ!!」



 不意に会場中に響き渡る怒声。
 皆が一斉に入って来た男達を振り返った。







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