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さぁ、はじめようか
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「キャサドラじゃないか」
「よう、報告は終わったのか?」
「ああ、まぁね‥‥」
「どうした?浮かない顔だな?」
キャサドラが珍しく歯切れ悪い返事をした事に同期のマーカスと先輩で元副隊長のルーサーが顔を覗き込む。
「何だ?証拠が見つかるかもーきゃーって騒いでたのにどうした?」
「あ、ああ、まぁそうなんだが…ちょっと残念みたいな?」
「何が?団長にも報告したんだろ?」
「それが、ちょっと引っ掛かるのよね」
「何が?」
「報告しても表情ピクリとも動かさないのよ」
「はははっ団長らしい!」
「まあそうなんだけどさ、流石に今回は少しは反応見れるかと思ったのよ」
「無理無理、どんな惨劇でも表情変わらないあの団長だぜ?」
「でも家族の事なら少しは動くかと思ったんだけどね~」
「それで残念か!ははっ、お前団長の表情動くのを一度見てみたいとストーカー繰り返してたもんな、で、殆どまかれてたっけお前」
「だって睨むとか戦場での表情以外みたことないじゃん、みたいじゃん?だーっもう、今回はイケると思ったんだけどね~」
項垂れるキャサドラを笑いながら腰に下げてた酒を放り渡す。
「そういう時は飲め!さっき厨房から拝借してきた酒だ、一本譲ってやる」
「サンキュー、さっすが元副隊長ルーサー様っ」
「しかしこれで証拠が見つかれば、やっと奴らをねじ伏せられるな」
「団長への仕打ち、そうなったら俺らの無念を一気に晴らしてやるぜ、くぅ楽しみだぜっ」
「ああ、暴れ倒してやるさ!」
「そういや、うーん…」
「どうした?」
そこでマーカスが今度は首を捻る。
「いやぁ、今思うとアナベルというかレティシアは怖いもの知らずだよな」
「何が?」
「あの団長をあんな扱いしてるんだぜ?幾ら優位に立っていても俺なら怖くて出来ないよ」
「言えてる…怖いもの知らずって怖いねー」
キャサドラとマーカスが呆れた声で話す。
そんな二人をルーカスはしばらく見つめると声を上げた。
「ははっそれな、あいつら知らねーんだよ」
「知らないって?」
キャサドラとマーカスがルーサーを傾げ見る。
ルーサーは少し考えるように手を口に当てると二人の目を真っすぐに見た。
「お前ら団長になる前の団長の隊に配属なった一般兵だったから知らないだろうけど、団長の隊は実は特別隊だったんだ」
「へ?普通に皆と行動したりもしてただろ?」
「建前上はな」
「建前上?」
「だって考えてみろ、あの時団長は隊長で俺らを指揮し動いていた時の働きはどうだった?」
「凄かった!もう凄いとしか言いようがない!顔色変えず目的のためなら手段も選ばず淡々と任務をこなし、任務をあんなに早く終わらせるなんて神だわ!マジ神!」
「あーキャサドラの団長崇拝が始まった」
「ははは、実際凄かったしな」
「ああ、尊敬に値する人だよ、ホントあの動きは人じゃない、マジ人じゃねぇ…ん?てこたぁキャサドラの言うように神かもな」
「はははっっ」
3人で腹を抱えて笑う。
「で、だ」
「?」
「その隊長時代、そんな凄い隊長なのに表彰されたことはあったか?」
「それ!なんで表彰されないのかすっごくムカついてたのよ」
「ああ、結構我が隊皆文句言ってたよな、俺もだが」
「だから特別隊だったんだよ、副隊長だった俺と隊長、殿下と軍師、そして当時の団長ハーゼルゼット様しか知らされていなかったんだ」
「マジか‥‥」
「なるほど、それなら表彰されないのも納得だわ、考えてみるとあの時の班も人数が凄く少なかったのもそのせいか…」
「だからオズワルド団長の活躍はアナベルもレティシアも知らない」
「そう言えば、団長になってすぐに反逆罪になって剥奪されたんだよな」
「そか、そうなると団長の凄さを誰も知らないのか…、ハーゼルゼット様も凄いお方だが、それが霞むほどに団長はずば抜けていたというのに」
「そう、あの隊に居た者しか団長の凄さを知らないんだ、団長になったのもハーゼルゼット様の息子だからだけだと思っている」
「あれねー、アナベル派が勲章もないバカ息子を自分の利権で団長にしたと抗議の声上げまくってたわよね、それにジーク派までも同じようなこという奴らが一杯いて、あー今思い出しても腹立たしい!団長の凄さを知らない奴らが何言ってんだと!」
「そうそう!敵の方が団長の怖さ知ってるからビビりまくっているのに、当の味方は団長の凄さをまるで知らないときたもんだ、本当歯がゆいぜ」
「あーっもうムカつく!団長を怖がって敵が逃げているのに自分達アグダス軍の軍勢を見て怖がって逃げ出したとか思っちゃってさぁ!それなのに団長を馬鹿にしてさぁ!団長のお陰だっちゅうの!楽して勝ててんのも陰で団長が動いているからだっての!団長の凄さを全然解ってないんだから!」
「そうそう凄さを知らない‥‥ん、あれ?…それってもしかしてそれ自体が秘密事項?」
「そこだよ」
「っ」
そこで元副隊長ルーサーが二人の肩を抱き寄せ頭を引き寄せる。
「だから今話したことも機密事項だ、信用できるお前たちにだけ話している」
「なぜ話した?」
「殿下が何も考えなく団長をあの位置に置いたとは考えにくい、だとすると、団長はアナベル派のスパイに送られたと考える方がいいと思わないか?」
「!」
二人が目を見張る。
アナベルが嫌がらせと力を見せつけるためにレティシアの下僕にしたのだと思っていた。
ジークヴァルト殿下もオズワルド団長の父ハーゼルゼット様を人質に取られ仕方なくだと。
「やっと解ってきたか、いいか?殿下はあの隊の中で俺達3人を先に城内に引き戻した、信用できると判断したからだ、団長が動き出す時、団長の援護と、伝達役をするようにと命令が下っている、その時には特別隊であった事を話していいという許可が出ている」
「てことは団長が動き出したという事か?」
「隠れて俺も見張っていたが、レティシアがリディアしか眼中にない今、証拠も得る可能性が出てきたこの時に団長が動かない筈がないだろう?」
「!」
そこでパッと二人から手を離す。
「という事だ、新たな任務よろしく!」
「「了解」」
「とはいえ、今は休め」
「もちろん休みまーす!」
「はぁ~今日俺遠乗りしてヘトヘト」
一息つくように手に持っていた酒を飲み、その酒瓶を見てキャサドラがやれやれとため息をつく。
「しかし、団長はどうやったら表情を出してくれるのかねぇ~」
「またそれか」
「もうあきらめろって」
「そう言えば」
「?」
「俺一回見てるかも」
「?!」
二人が驚き顔を上げマーカスを見る。
「いつ?」
「どこで?」
「あー、ここにリディア嬢がやって来た時、俺レティシアの動きを護衛扮して庭先で見張ってたのよ、その時運悪くリディア嬢がやって来て初めてのレティシアとのご対面!の時に…」
「時に?」
「一瞬だけ団長の目が見開いて、ほんの一瞬だぜ?時が止まったように動きが止まって…」
「なぜそれを早く話さん!」
「だって、当時お前まだここに配属なってなかったろ?その後すっかり忘れてた」
「おいおい、マジかー」
「ああっっ見たかった!!レアものだぞ!レア!」
「俺もあの時珍しいモノ見たーと思ったよ」
「あああっっもっと早くにここに配属になってればーっっ」
「タラればな、ほれ、飲め飲めっ」
「飲んでやるーっ」
あれから動きが見えぬまま、聖女試験日がやってきた。
大きな扉が小さな女の前に聳え立つ。
知らぬ間に一押しキャラ・オズワルドに『殺す』と思われるというもれなく『残念な人』感が増した大きな扉の前に立つ美女リディアは、少し神妙な面持ちでその大きな扉を見上げた。
今回の試験会場だ。
試験会場の前で一つ深呼吸する。
(結果次第で状況は完全に変わる…わね)
運命を決める試験。
魔力量の計測だと聞いた。となると、完全に不正はできない。
(運次第ね‥‥)
そんなリディアの手が握りしめられる。
「大丈夫よ」
複雑な表情をしたイザークにニッコリと笑う。
この表情の意味は安心させたいのと共に、これにより私が逃亡するかもしれないという不安だろう。
未だイザークがここにとどまる理由は解らない。
そのため、ここでとどまざるを得ないためにイザークは私がここに居て欲しいのだろう。
だが、私の逃亡する意思は変わらない。
(それにイザークもまだあきらめたわけじゃないわ)
オズワルドの事もある。
『助けてあげる』と宣言してしまった以上、誕生祭まではここにいないといけなくなった。
まだ時間はある。
それまでにできればイザークの問題を取り除きたい。
「じゃ、行ってくるわ」
イザークの手が離れる。
試験は試験官のオーレリーとその助手、そして聖女候補生のみで行われる。
リディアは試験会場へとつながるその大きな扉を手で押した。
中に入ると、レティシアが強い瞳で睨んでくる。
その隣に立つフェリシーもまた同じく強い瞳でこちらを睨んでいた。
(うわぁ‥、怖っ)
レティシアがこれで1位を取れば聖女が決まる。
フェリシーが1位を取れば私が聖女降格となる。
私が1位を取れば、フェリシーは残りの試験全て1位にならないと聖女になれない。
レティシアは絶対聖女を取ってやるという気迫。
フェリシーはもう後がないからの気迫。
サディアスに脅されているフェリシーは、この不正のしようがない試験に掛けているのだろう。
(私は1位以外ならセーフね…)
レティシアとフェリシーはイザークの見立てでは量に差はないと言っていた。
という事は、レティシアとフェリシーどちらかが1位の場合 私は多分3位以下。
1位さえ取らなければ、聖女から逃れられる。
(聖女から解放される…)
一番望んでいる事だ。
そうなれば、注目は完全に逸れ逃亡しやすくなる。
レティシアとフェリシーに睨まれながら会場内へと足を進め横へと並んだ。
「なぜ『量』にした!これでは不正が行えないじゃないか!!」
レティシアを勝たせたいロドリゴ教皇が焦りオーレリーに詰め寄る。
ロドリゴ教皇はてっきり何時もの様に重要試験の”測定“は『力』か『質』の試験にすると思い込んでいた。
オーレリーにもいつもレティシア優位になるようにと言っていたからだ。
だからレティシアがアナベルの力を使って超強力な魔法石を準備して挑み、間違いなく聖女確定という算段が頭に出来上がっており、アナベルに対しても『力・質』どちらかになるとそう伝えていた。
オーレリーに全てを丸投げし遊び惚けていたロドリゴ教皇は試験内容を『量』にしたことを知らなかった。
当日の今日になってそれを知り慌てふためく。
「そうだ、今から変更しよう!確かここに力を封じ込めた魔法石が…」
机の中のモノをひっくり返し魔法石を探し始める。
皆は『量』だと思っているため魔法石を用意していない可能性が高い、だとしたら今レティシアにそれを持たせれば1位獲得することが可能だ。
必死に探すロドリゴ教皇をオーレリーは冷めた眼差しで見る。
「もう時間です、では行って参ります」
「待て!!」
そんなロドリゴ教皇を後目にオーレリーが部屋を出る。
「待てと言ってる!魔法石はどこだ!!」
部屋を後にしたところで自分の手にある魔法石を見る。
(邪魔はさせません)
その魔法石をポケットに入れる。
「候補生達は?」
「もう全員揃っております」
「そうですか、ならばすぐに始められそうですね」
「はい」
(邪魔が入る前に早く始めなければ…)
オーレリーが試験会場に姿を現す。
皆が固唾を飲む。
「これより聖女試験を行います」
オーレリーの声が響き渡る。
「今回の試験は聖女試験の中でも重要度が高い試験となります、今回の試験で聖女が決まらなければ、後の試験は候補に残った者のみでの試験となります」
その言葉に皆がレティシアを見る。
今回の試験でレティシアが聖女になるかもしれないとレティシア派が多い聖女候補生は期待の眼差しを送る。
「また今回の試験は聖女降格となった皆は点数には入りません、ですが今後の参考のため計測試験は全員参加となります」
すると計測の板を助手の試験官が皆に見せる様に手に持つ。
「こちらの計測器に触れるだけで測定量が解ります、この測定器でMAXとなれば、追加点が加算されます」
フェリシーがぐっとスカートを握りしめる。
追加点が付けば、レティシアと並ぶ。いや、少し有利になるかもしれない。
「質問があれば挙手を」
静まり返る場内。
誰も手が上がらない事を確認するとオーレリーは開始の言葉を口にした。
「では、試験を始めます」
皆が緊張に息を飲む。
測定は降格者から始まった。
次々と測定していく。
降格者は点数も入らない部外者なので気楽な気分であるためか、皆躊躇なく測定機に手を当てるのでサクサクと進んでいく。
そしてあっという間に候補3名以外の測定は終わった。
「では、聖女候補者3名前へ」
呼ばれたレティシア、フェリシー、そしてリディアが前に出る。
「それではレティシア様、こちらにお触れください」
レティシア派の皆が期待に満ちた目で注目する。
注目される中、レティシアは堂々と立ちオーレリーに差し出された板を見る。
そして優雅に手を伸ばす。
完全に静まり返った場内がその計測器に集中する。
計測器のメモリがぐんっと上がり、皆が目を見張る。
「おお、流石にございます」
降格者と段違いに多い魔力量に一斉にワッと歓声が上がる。
レティシアも安心したのかニヤッと口元を引く。
「これで聖女確定?」
「あれだけの量ですもの」
「レティシア様が聖女に…」
ざわつく場内。
フェリシーが俯きぐっと服を掴む。
「静かに!」
オーレリーの注意に皆が急いで口を噤む。
まだ試験は続いているのだ。
「次、フェリシー嬢」
「はい」
フェリシーの前に差し出された計測器を唾を飲み込み見下ろす。
(レティシア以上を出さなければ…私は‥‥)
不安に駆られ、なかなか手を出すことが出来ない。
(これに触れれば決まってしまう…)
1位を取れなければ聖女の道は閉ざされてしまう。
(嫌だ…私が聖女になりたい!)
「こちらに手を」
なかなか手を出さないフェリシーにオーレリーが即す。
「……はい」
ここにただ突っ立っているわけにもいかない。
もう一度ぐっと手を握りしめる。
(大丈夫、大丈夫よ、きっと、私は神に愛されし子なんだから…)
ゆっくりと手を差し出す。
(私は神に選ばれた人間!絶対大丈夫!!)
目を瞑り、その計測器へ触れる。
静まり返る場内。
そのあまりの静けさに恐怖心が膨れ上がる。
(ダメ…だったの?)
と、思った瞬間だった。
場内がドワッと沸き上がる。
「レティシア様とぴったり同じ量とは!凄いわ、フェリシー嬢!」
「これでレティシア様とフェリシー嬢の一騎打ちとなるわね」
「流石はフェリシー嬢ですわ!」
その言葉に計測器を見る。
レティシアと全く同じ量の所で計測は止まっていた。
(同率1位?‥‥ってことは…)
今の状態と変わらない、現状維持となる。
1位がレティシア、2位がフェリシー。
(リディアは…)
―――― 聖女降格?!
(や‥、やったわ!私やったんだわ!!)
これだけの量をそうそう出せるはずがない。
となると、現状維持を得たという事だ。
それはつまり、リディアは聖女降格。
(あら?よく考えたら…)
聖女に残ったジーク派は私のみ。
”あの女がもしもの時の保険に残すことも選択肢に入れてあげたのですよ、その時はあなたのなりたい聖女にならせて差し上げましょう“
サディアスの言葉を思い出す。
(ということは、候補に残った私をこれからは後押しして下さる?…そうだわ!)
その後、殺すような事を言ったが、聖女になってすぐにジークの妃になればいい。
サディアスが行動する前に、聖女の宣言を言ってしまえばいいのだ。
(やったわ!私は死なない!私、聖女になれるんだわ!)
歓喜に身を震わせる。
聖女の宣言は国王同等の価値がある。
よく考えれば宣言してしまえばサディアスは私を殺せない。
(やはり私は神に愛されし子‥‥、選ばれた人間なんだわ!)
「静かに!」
ざわめく場内をまたオーレリーが鎮める。
そのオーレリーがリディアを見る。
「では次、リディア嬢」
オーレリーの足がリディアの前に立つ。
既に皆の関心はこれからのレティシアとフェリシーに移っていた。
リディアの存在を忘れ、レティシアとフェリシーを皆が注目する。
そんな中、オーレリーがリディアにニッコリと笑いかけた。
「さぁ、こちらにお触れ下さい」
計測器を差し出す。
「‥‥」
(大丈夫よね?…あれだけの量叩き出したのだから‥)
レティシアとフェリシーはMAXまではいかないが、皆と段違いの測定量を叩き出していた。
(MAXとかやめてよ?…)
こういう時のパターンは実は量がめちゃくちゃ多かった!って話が多い。
(触るのやだなぁ~~~~)
はぁっと一つ息を吐く。
(なるようにしかならないか…)
心を決め、おずおずと手を差し出す。
(あー、やっぱ触るの嫌だなぁ~~~そうだ!触れるふりしてちょっとだけにしよう!)
触れなければ魔力量が0のままなのでバレてしまう。
ならば、ほんのちょこっと触れるだけなら量を低めに出せるかもしれない。
体重計に足先をちょこんと乗せる要領だ。
そう思い板に触れる寸前で手を止める。
(ちょこっとだけ…)
そう心で呟くと同時に、本当に微かにちょんっと指が板に触れた。
刹那――――
パリィィ―――――ンッッッ
「?!」
会場内が驚き振り返る。
「ば、爆発?!」
「何が起こったの?!」
「一体どうしたの…?」
パラパラと計測器が砕け散り粉となって床に散らばる。
それを唖然と皆が見る。
何が起こったのかさっぱり解らずシーンと静まり返った時だった。
「素晴らしい‥‥」
不意にオーレリーのつぶやきに皆が振り返る。
「これ程の魔力量とは!!初代聖女に匹敵する!!!」
「!!!?」
その言葉に皆が瞠目しリディアをバッと見る。
「そんなまさか…」
あまりの思ってもみない出来事に皆が言葉を失くす。
それはリディアもだった。
(嘘でしょ‥?ちょこっと触れただけよ??)
オーレリーの華麗なる魔法で計測器が元に戻る様を呆然と見つめる。
(ああぁああぁあ、やっぱりこのパターンかぁあ!!)
唇の端をひくひくさせながら心の中で絶叫するリディア。
会場が呆然と静まり返る中、パンパンとオーレリーがまとめる様に手を叩く。
「リディア嬢にはMAX以上を計測致しましたので加算点が追加されます」
あまりの想定外の事に皆がざわめく。
「これにより、1位リディア嬢、2位レティシア様、確定となります!」
レティシアがわなわなと震えリディアを睨み見る。
「そして…」
オーレリーがフェリシーを見る。
「フェリシー嬢はこれで聖女降格となります」
「っ‥‥」
フェリシーが俯き唇を噛みしめる。
会場中が更にざわめく。
(私が…神に愛された私が‥‥聖女降格?)
「次からはレティシア様、リディア嬢のみで試験を執り行います」
(どうして?私の名前がないの?)
(どうしてこうなったの?)
「降格者も、まだ全ての試験が終了するまでは施設に残って頂きます」
(リディアはいつも試験で最下位で…)
(リディアは可哀そうな子で私が守ってあげて…)
「試験には参加する必要はありません」
(どうして私をこんなに虐めるの?)
(最初はあんなに仲良かったのに…)
(いつから?)
「今後の詳しい事はまた各執事に説明しておきますので、各々自分の執事に質問してください、また逆に質問ある方は執事を通して質問するように」
(あの子、私を蹴落としてまでしてそんなに聖女にそんなになりたかったの?)
(神に選ばれていたのは私なはずなのに…)
(そうか…、これも誑かされているのだわ)
「それでは、これで試験終了です、皆さまお疲れさまでした、お部屋へお戻りください」
「よう、報告は終わったのか?」
「ああ、まぁね‥‥」
「どうした?浮かない顔だな?」
キャサドラが珍しく歯切れ悪い返事をした事に同期のマーカスと先輩で元副隊長のルーサーが顔を覗き込む。
「何だ?証拠が見つかるかもーきゃーって騒いでたのにどうした?」
「あ、ああ、まぁそうなんだが…ちょっと残念みたいな?」
「何が?団長にも報告したんだろ?」
「それが、ちょっと引っ掛かるのよね」
「何が?」
「報告しても表情ピクリとも動かさないのよ」
「はははっ団長らしい!」
「まあそうなんだけどさ、流石に今回は少しは反応見れるかと思ったのよ」
「無理無理、どんな惨劇でも表情変わらないあの団長だぜ?」
「でも家族の事なら少しは動くかと思ったんだけどね~」
「それで残念か!ははっ、お前団長の表情動くのを一度見てみたいとストーカー繰り返してたもんな、で、殆どまかれてたっけお前」
「だって睨むとか戦場での表情以外みたことないじゃん、みたいじゃん?だーっもう、今回はイケると思ったんだけどね~」
項垂れるキャサドラを笑いながら腰に下げてた酒を放り渡す。
「そういう時は飲め!さっき厨房から拝借してきた酒だ、一本譲ってやる」
「サンキュー、さっすが元副隊長ルーサー様っ」
「しかしこれで証拠が見つかれば、やっと奴らをねじ伏せられるな」
「団長への仕打ち、そうなったら俺らの無念を一気に晴らしてやるぜ、くぅ楽しみだぜっ」
「ああ、暴れ倒してやるさ!」
「そういや、うーん…」
「どうした?」
そこでマーカスが今度は首を捻る。
「いやぁ、今思うとアナベルというかレティシアは怖いもの知らずだよな」
「何が?」
「あの団長をあんな扱いしてるんだぜ?幾ら優位に立っていても俺なら怖くて出来ないよ」
「言えてる…怖いもの知らずって怖いねー」
キャサドラとマーカスが呆れた声で話す。
そんな二人をルーカスはしばらく見つめると声を上げた。
「ははっそれな、あいつら知らねーんだよ」
「知らないって?」
キャサドラとマーカスがルーサーを傾げ見る。
ルーサーは少し考えるように手を口に当てると二人の目を真っすぐに見た。
「お前ら団長になる前の団長の隊に配属なった一般兵だったから知らないだろうけど、団長の隊は実は特別隊だったんだ」
「へ?普通に皆と行動したりもしてただろ?」
「建前上はな」
「建前上?」
「だって考えてみろ、あの時団長は隊長で俺らを指揮し動いていた時の働きはどうだった?」
「凄かった!もう凄いとしか言いようがない!顔色変えず目的のためなら手段も選ばず淡々と任務をこなし、任務をあんなに早く終わらせるなんて神だわ!マジ神!」
「あーキャサドラの団長崇拝が始まった」
「ははは、実際凄かったしな」
「ああ、尊敬に値する人だよ、ホントあの動きは人じゃない、マジ人じゃねぇ…ん?てこたぁキャサドラの言うように神かもな」
「はははっっ」
3人で腹を抱えて笑う。
「で、だ」
「?」
「その隊長時代、そんな凄い隊長なのに表彰されたことはあったか?」
「それ!なんで表彰されないのかすっごくムカついてたのよ」
「ああ、結構我が隊皆文句言ってたよな、俺もだが」
「だから特別隊だったんだよ、副隊長だった俺と隊長、殿下と軍師、そして当時の団長ハーゼルゼット様しか知らされていなかったんだ」
「マジか‥‥」
「なるほど、それなら表彰されないのも納得だわ、考えてみるとあの時の班も人数が凄く少なかったのもそのせいか…」
「だからオズワルド団長の活躍はアナベルもレティシアも知らない」
「そう言えば、団長になってすぐに反逆罪になって剥奪されたんだよな」
「そか、そうなると団長の凄さを誰も知らないのか…、ハーゼルゼット様も凄いお方だが、それが霞むほどに団長はずば抜けていたというのに」
「そう、あの隊に居た者しか団長の凄さを知らないんだ、団長になったのもハーゼルゼット様の息子だからだけだと思っている」
「あれねー、アナベル派が勲章もないバカ息子を自分の利権で団長にしたと抗議の声上げまくってたわよね、それにジーク派までも同じようなこという奴らが一杯いて、あー今思い出しても腹立たしい!団長の凄さを知らない奴らが何言ってんだと!」
「そうそう!敵の方が団長の怖さ知ってるからビビりまくっているのに、当の味方は団長の凄さをまるで知らないときたもんだ、本当歯がゆいぜ」
「あーっもうムカつく!団長を怖がって敵が逃げているのに自分達アグダス軍の軍勢を見て怖がって逃げ出したとか思っちゃってさぁ!それなのに団長を馬鹿にしてさぁ!団長のお陰だっちゅうの!楽して勝ててんのも陰で団長が動いているからだっての!団長の凄さを全然解ってないんだから!」
「そうそう凄さを知らない‥‥ん、あれ?…それってもしかしてそれ自体が秘密事項?」
「そこだよ」
「っ」
そこで元副隊長ルーサーが二人の肩を抱き寄せ頭を引き寄せる。
「だから今話したことも機密事項だ、信用できるお前たちにだけ話している」
「なぜ話した?」
「殿下が何も考えなく団長をあの位置に置いたとは考えにくい、だとすると、団長はアナベル派のスパイに送られたと考える方がいいと思わないか?」
「!」
二人が目を見張る。
アナベルが嫌がらせと力を見せつけるためにレティシアの下僕にしたのだと思っていた。
ジークヴァルト殿下もオズワルド団長の父ハーゼルゼット様を人質に取られ仕方なくだと。
「やっと解ってきたか、いいか?殿下はあの隊の中で俺達3人を先に城内に引き戻した、信用できると判断したからだ、団長が動き出す時、団長の援護と、伝達役をするようにと命令が下っている、その時には特別隊であった事を話していいという許可が出ている」
「てことは団長が動き出したという事か?」
「隠れて俺も見張っていたが、レティシアがリディアしか眼中にない今、証拠も得る可能性が出てきたこの時に団長が動かない筈がないだろう?」
「!」
そこでパッと二人から手を離す。
「という事だ、新たな任務よろしく!」
「「了解」」
「とはいえ、今は休め」
「もちろん休みまーす!」
「はぁ~今日俺遠乗りしてヘトヘト」
一息つくように手に持っていた酒を飲み、その酒瓶を見てキャサドラがやれやれとため息をつく。
「しかし、団長はどうやったら表情を出してくれるのかねぇ~」
「またそれか」
「もうあきらめろって」
「そう言えば」
「?」
「俺一回見てるかも」
「?!」
二人が驚き顔を上げマーカスを見る。
「いつ?」
「どこで?」
「あー、ここにリディア嬢がやって来た時、俺レティシアの動きを護衛扮して庭先で見張ってたのよ、その時運悪くリディア嬢がやって来て初めてのレティシアとのご対面!の時に…」
「時に?」
「一瞬だけ団長の目が見開いて、ほんの一瞬だぜ?時が止まったように動きが止まって…」
「なぜそれを早く話さん!」
「だって、当時お前まだここに配属なってなかったろ?その後すっかり忘れてた」
「おいおい、マジかー」
「ああっっ見たかった!!レアものだぞ!レア!」
「俺もあの時珍しいモノ見たーと思ったよ」
「あああっっもっと早くにここに配属になってればーっっ」
「タラればな、ほれ、飲め飲めっ」
「飲んでやるーっ」
あれから動きが見えぬまま、聖女試験日がやってきた。
大きな扉が小さな女の前に聳え立つ。
知らぬ間に一押しキャラ・オズワルドに『殺す』と思われるというもれなく『残念な人』感が増した大きな扉の前に立つ美女リディアは、少し神妙な面持ちでその大きな扉を見上げた。
今回の試験会場だ。
試験会場の前で一つ深呼吸する。
(結果次第で状況は完全に変わる…わね)
運命を決める試験。
魔力量の計測だと聞いた。となると、完全に不正はできない。
(運次第ね‥‥)
そんなリディアの手が握りしめられる。
「大丈夫よ」
複雑な表情をしたイザークにニッコリと笑う。
この表情の意味は安心させたいのと共に、これにより私が逃亡するかもしれないという不安だろう。
未だイザークがここにとどまる理由は解らない。
そのため、ここでとどまざるを得ないためにイザークは私がここに居て欲しいのだろう。
だが、私の逃亡する意思は変わらない。
(それにイザークもまだあきらめたわけじゃないわ)
オズワルドの事もある。
『助けてあげる』と宣言してしまった以上、誕生祭まではここにいないといけなくなった。
まだ時間はある。
それまでにできればイザークの問題を取り除きたい。
「じゃ、行ってくるわ」
イザークの手が離れる。
試験は試験官のオーレリーとその助手、そして聖女候補生のみで行われる。
リディアは試験会場へとつながるその大きな扉を手で押した。
中に入ると、レティシアが強い瞳で睨んでくる。
その隣に立つフェリシーもまた同じく強い瞳でこちらを睨んでいた。
(うわぁ‥、怖っ)
レティシアがこれで1位を取れば聖女が決まる。
フェリシーが1位を取れば私が聖女降格となる。
私が1位を取れば、フェリシーは残りの試験全て1位にならないと聖女になれない。
レティシアは絶対聖女を取ってやるという気迫。
フェリシーはもう後がないからの気迫。
サディアスに脅されているフェリシーは、この不正のしようがない試験に掛けているのだろう。
(私は1位以外ならセーフね…)
レティシアとフェリシーはイザークの見立てでは量に差はないと言っていた。
という事は、レティシアとフェリシーどちらかが1位の場合 私は多分3位以下。
1位さえ取らなければ、聖女から逃れられる。
(聖女から解放される…)
一番望んでいる事だ。
そうなれば、注目は完全に逸れ逃亡しやすくなる。
レティシアとフェリシーに睨まれながら会場内へと足を進め横へと並んだ。
「なぜ『量』にした!これでは不正が行えないじゃないか!!」
レティシアを勝たせたいロドリゴ教皇が焦りオーレリーに詰め寄る。
ロドリゴ教皇はてっきり何時もの様に重要試験の”測定“は『力』か『質』の試験にすると思い込んでいた。
オーレリーにもいつもレティシア優位になるようにと言っていたからだ。
だからレティシアがアナベルの力を使って超強力な魔法石を準備して挑み、間違いなく聖女確定という算段が頭に出来上がっており、アナベルに対しても『力・質』どちらかになるとそう伝えていた。
オーレリーに全てを丸投げし遊び惚けていたロドリゴ教皇は試験内容を『量』にしたことを知らなかった。
当日の今日になってそれを知り慌てふためく。
「そうだ、今から変更しよう!確かここに力を封じ込めた魔法石が…」
机の中のモノをひっくり返し魔法石を探し始める。
皆は『量』だと思っているため魔法石を用意していない可能性が高い、だとしたら今レティシアにそれを持たせれば1位獲得することが可能だ。
必死に探すロドリゴ教皇をオーレリーは冷めた眼差しで見る。
「もう時間です、では行って参ります」
「待て!!」
そんなロドリゴ教皇を後目にオーレリーが部屋を出る。
「待てと言ってる!魔法石はどこだ!!」
部屋を後にしたところで自分の手にある魔法石を見る。
(邪魔はさせません)
その魔法石をポケットに入れる。
「候補生達は?」
「もう全員揃っております」
「そうですか、ならばすぐに始められそうですね」
「はい」
(邪魔が入る前に早く始めなければ…)
オーレリーが試験会場に姿を現す。
皆が固唾を飲む。
「これより聖女試験を行います」
オーレリーの声が響き渡る。
「今回の試験は聖女試験の中でも重要度が高い試験となります、今回の試験で聖女が決まらなければ、後の試験は候補に残った者のみでの試験となります」
その言葉に皆がレティシアを見る。
今回の試験でレティシアが聖女になるかもしれないとレティシア派が多い聖女候補生は期待の眼差しを送る。
「また今回の試験は聖女降格となった皆は点数には入りません、ですが今後の参考のため計測試験は全員参加となります」
すると計測の板を助手の試験官が皆に見せる様に手に持つ。
「こちらの計測器に触れるだけで測定量が解ります、この測定器でMAXとなれば、追加点が加算されます」
フェリシーがぐっとスカートを握りしめる。
追加点が付けば、レティシアと並ぶ。いや、少し有利になるかもしれない。
「質問があれば挙手を」
静まり返る場内。
誰も手が上がらない事を確認するとオーレリーは開始の言葉を口にした。
「では、試験を始めます」
皆が緊張に息を飲む。
測定は降格者から始まった。
次々と測定していく。
降格者は点数も入らない部外者なので気楽な気分であるためか、皆躊躇なく測定機に手を当てるのでサクサクと進んでいく。
そしてあっという間に候補3名以外の測定は終わった。
「では、聖女候補者3名前へ」
呼ばれたレティシア、フェリシー、そしてリディアが前に出る。
「それではレティシア様、こちらにお触れください」
レティシア派の皆が期待に満ちた目で注目する。
注目される中、レティシアは堂々と立ちオーレリーに差し出された板を見る。
そして優雅に手を伸ばす。
完全に静まり返った場内がその計測器に集中する。
計測器のメモリがぐんっと上がり、皆が目を見張る。
「おお、流石にございます」
降格者と段違いに多い魔力量に一斉にワッと歓声が上がる。
レティシアも安心したのかニヤッと口元を引く。
「これで聖女確定?」
「あれだけの量ですもの」
「レティシア様が聖女に…」
ざわつく場内。
フェリシーが俯きぐっと服を掴む。
「静かに!」
オーレリーの注意に皆が急いで口を噤む。
まだ試験は続いているのだ。
「次、フェリシー嬢」
「はい」
フェリシーの前に差し出された計測器を唾を飲み込み見下ろす。
(レティシア以上を出さなければ…私は‥‥)
不安に駆られ、なかなか手を出すことが出来ない。
(これに触れれば決まってしまう…)
1位を取れなければ聖女の道は閉ざされてしまう。
(嫌だ…私が聖女になりたい!)
「こちらに手を」
なかなか手を出さないフェリシーにオーレリーが即す。
「……はい」
ここにただ突っ立っているわけにもいかない。
もう一度ぐっと手を握りしめる。
(大丈夫、大丈夫よ、きっと、私は神に愛されし子なんだから…)
ゆっくりと手を差し出す。
(私は神に選ばれた人間!絶対大丈夫!!)
目を瞑り、その計測器へ触れる。
静まり返る場内。
そのあまりの静けさに恐怖心が膨れ上がる。
(ダメ…だったの?)
と、思った瞬間だった。
場内がドワッと沸き上がる。
「レティシア様とぴったり同じ量とは!凄いわ、フェリシー嬢!」
「これでレティシア様とフェリシー嬢の一騎打ちとなるわね」
「流石はフェリシー嬢ですわ!」
その言葉に計測器を見る。
レティシアと全く同じ量の所で計測は止まっていた。
(同率1位?‥‥ってことは…)
今の状態と変わらない、現状維持となる。
1位がレティシア、2位がフェリシー。
(リディアは…)
―――― 聖女降格?!
(や‥、やったわ!私やったんだわ!!)
これだけの量をそうそう出せるはずがない。
となると、現状維持を得たという事だ。
それはつまり、リディアは聖女降格。
(あら?よく考えたら…)
聖女に残ったジーク派は私のみ。
”あの女がもしもの時の保険に残すことも選択肢に入れてあげたのですよ、その時はあなたのなりたい聖女にならせて差し上げましょう“
サディアスの言葉を思い出す。
(ということは、候補に残った私をこれからは後押しして下さる?…そうだわ!)
その後、殺すような事を言ったが、聖女になってすぐにジークの妃になればいい。
サディアスが行動する前に、聖女の宣言を言ってしまえばいいのだ。
(やったわ!私は死なない!私、聖女になれるんだわ!)
歓喜に身を震わせる。
聖女の宣言は国王同等の価値がある。
よく考えれば宣言してしまえばサディアスは私を殺せない。
(やはり私は神に愛されし子‥‥、選ばれた人間なんだわ!)
「静かに!」
ざわめく場内をまたオーレリーが鎮める。
そのオーレリーがリディアを見る。
「では次、リディア嬢」
オーレリーの足がリディアの前に立つ。
既に皆の関心はこれからのレティシアとフェリシーに移っていた。
リディアの存在を忘れ、レティシアとフェリシーを皆が注目する。
そんな中、オーレリーがリディアにニッコリと笑いかけた。
「さぁ、こちらにお触れ下さい」
計測器を差し出す。
「‥‥」
(大丈夫よね?…あれだけの量叩き出したのだから‥)
レティシアとフェリシーはMAXまではいかないが、皆と段違いの測定量を叩き出していた。
(MAXとかやめてよ?…)
こういう時のパターンは実は量がめちゃくちゃ多かった!って話が多い。
(触るのやだなぁ~~~~)
はぁっと一つ息を吐く。
(なるようにしかならないか…)
心を決め、おずおずと手を差し出す。
(あー、やっぱ触るの嫌だなぁ~~~そうだ!触れるふりしてちょっとだけにしよう!)
触れなければ魔力量が0のままなのでバレてしまう。
ならば、ほんのちょこっと触れるだけなら量を低めに出せるかもしれない。
体重計に足先をちょこんと乗せる要領だ。
そう思い板に触れる寸前で手を止める。
(ちょこっとだけ…)
そう心で呟くと同時に、本当に微かにちょんっと指が板に触れた。
刹那――――
パリィィ―――――ンッッッ
「?!」
会場内が驚き振り返る。
「ば、爆発?!」
「何が起こったの?!」
「一体どうしたの…?」
パラパラと計測器が砕け散り粉となって床に散らばる。
それを唖然と皆が見る。
何が起こったのかさっぱり解らずシーンと静まり返った時だった。
「素晴らしい‥‥」
不意にオーレリーのつぶやきに皆が振り返る。
「これ程の魔力量とは!!初代聖女に匹敵する!!!」
「!!!?」
その言葉に皆が瞠目しリディアをバッと見る。
「そんなまさか…」
あまりの思ってもみない出来事に皆が言葉を失くす。
それはリディアもだった。
(嘘でしょ‥?ちょこっと触れただけよ??)
オーレリーの華麗なる魔法で計測器が元に戻る様を呆然と見つめる。
(ああぁああぁあ、やっぱりこのパターンかぁあ!!)
唇の端をひくひくさせながら心の中で絶叫するリディア。
会場が呆然と静まり返る中、パンパンとオーレリーがまとめる様に手を叩く。
「リディア嬢にはMAX以上を計測致しましたので加算点が追加されます」
あまりの想定外の事に皆がざわめく。
「これにより、1位リディア嬢、2位レティシア様、確定となります!」
レティシアがわなわなと震えリディアを睨み見る。
「そして…」
オーレリーがフェリシーを見る。
「フェリシー嬢はこれで聖女降格となります」
「っ‥‥」
フェリシーが俯き唇を噛みしめる。
会場中が更にざわめく。
(私が…神に愛された私が‥‥聖女降格?)
「次からはレティシア様、リディア嬢のみで試験を執り行います」
(どうして?私の名前がないの?)
(どうしてこうなったの?)
「降格者も、まだ全ての試験が終了するまでは施設に残って頂きます」
(リディアはいつも試験で最下位で…)
(リディアは可哀そうな子で私が守ってあげて…)
「試験には参加する必要はありません」
(どうして私をこんなに虐めるの?)
(最初はあんなに仲良かったのに…)
(いつから?)
「今後の詳しい事はまた各執事に説明しておきますので、各々自分の執事に質問してください、また逆に質問ある方は執事を通して質問するように」
(あの子、私を蹴落としてまでしてそんなに聖女にそんなになりたかったの?)
(神に選ばれていたのは私なはずなのに…)
(そうか…、これも誑かされているのだわ)
「それでは、これで試験終了です、皆さまお疲れさまでした、お部屋へお戻りください」
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