つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲

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さぁ、はじめようか

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 忘れもしない義理姉妹、リディアをいたぶりまくったあの義理姉妹がゴテゴテに着飾った洋装で部屋に入ってきた。

「先客がいらしたの?」
「失礼、すぐに‥‥」

 そう言って踵を返そうとした動きがピタッと止まり姉妹がリディアをじっと見る。

「…?もしかして…リディア?」

(やばい、バレた!)

 義妹である1号がじっと見つめ口にする。
 思わずその言葉にギクッと反応してしまう。

「やはりリディアなのね!」
「ホントだわ!綺麗に着飾っているから誰だか解らなかったけれど、間違いないわ!」

 義妹である2号が声を上げる。

「リオと共に誰かの元に貰われたと聞いてたけど‥‥」

 美しいそのリディアの姿に義姉妹が一気に不機嫌になる。

「リディアのくせに!こんないい思いして!そんな服あなたには似合わないわ!」

 リディアと分かった途端、態度がガラリと変わり横柄な態度でずかずかと近寄ってくる。

「まぁ!お姉様、リディアのくせにこんな高級ワインを飲んでいるわ!」
「え?」

 目の前にいつの間にかオズワルドの飲んでいた高級ワインが置かれていた。

(オズぅ~~)

 ちらりと辺りを見渡すが見当たらない。

(逃げた?!騎士なら守りなさいよっっ)

 くぅっと拳を握りしめる中、近寄ってくる義理姉妹を見る。

(参ったわね…名前を知られているだけに誤魔化しが効かないわ…)

 『伝説の聖女リディア』と、名が知られてしまっている。
 誤魔化した所で、直ぐにバレる。

「まぁこんな高価な宝石を付けて!」
「貴方には不釣り合いよ!!」
「っ」

 リディアの髪を掴みグイッと引っ張ると、胸元で輝く宝石に手を伸ばしそのブローチを奪い取る。

「リディアのくせにっっ生意気なっ」

 結っていた髪が解け落ちる。
 そんなリディアを嫉妬に満ちた怒りの形相で尚も詰め寄る。

「このドレスも!こんな高価で綺麗なドレスなんてあなたに勿体ないわ!卑しい女の娘が!!」
「脱ぎなさいよ!これは私達が貰うわ!」

 義姉妹がそのドレスに手を掛けようとした所で風を感じる。
 それにハッとし、リディアが声を上げた。

「止めなさい!」

 リディアの声に反応するように風が止まると、2人の影が映った。
 そこにはイザークとリオの姿があった。

「?!」

 気配もなく現れた男達に絶句する義姉妹。

「リディア様、大丈夫ですか?!」

 イザークが心配そうに顔を覗き込む。

「ひっ魔物!?」
「この者達は?」
「元居た義理家族の1号2号」
「1号2…?」
「姉さま‥、最後まで義姉妹の名前覚える気なかったから」

 厳密には記憶が戻るまではちゃんと名前を覚えていたし呼んでいた。
 記憶が戻って1号2号と呼ぶようになり名前を忘れたのだ。
 相変わらず安定のリディアだ。

「義姉妹…なるほど」

 納得するイザークに説明していた男を見た2号が声を上げる。

「お姉さま!あれはリオではなくて?」

 不機嫌そうに立つリオを見上げる。

「ホントだわ!待って…愚民の凄腕の刺客と紅い眼の魔物執事を従えるって…まさか」

 ハッとしたように義姉妹がリディアを見る。

「もしや、伝説の聖女リディアって…あんたの事?!」

(あー…やっぱりバレたか)

「嘘っっ」

 2号も驚き見る。
 すると二人が嘲笑う様に腹を抱えて笑い出した。

「あーはっはは、お笑いだわ!!伝説の聖女がこんな女だなんて!!」
「あり得ない!リディアが伝説の聖女だなんて!クスクス、そうか、嘘なのね、そうよ、嘘に決まっているわ!まさか伝説の聖女をでっち上げていたなんて!凄い裏情報、手に入れたわ!」
「伝説の聖女になったのにお生憎様ね!バラされたくなければ、これからは私達の言う通りに従いなさい!」
「あんたにこんないい思いなんてさせてやんないから!」
「これからは今までの分も含め私達にたーっぷりと奉仕なさい!そしたら黙っててあげるわ」

 勝ち誇ったように義姉妹が嘲笑う。
 そんな義姉妹にリオが反応し刃を向ける。

「ひっ」
「い、いいの?すべてバラしますわよ?」
「何を勘違いしていらっしゃるのか解りませんが、嘘などではなくリディア様はこの世界を救った正しく本物の伝説の聖女にございます」
「はっ、嘘よ!リディア如きが世界を救えるはずないわ!」
「そうよ!ひっ」

 リオの刃により喉から血が伝う。

「止めなさい」
「姉さま、今始末した方がいい」
「同意見だ」

 リディアが止めるも反対する。

「いいから、その刃を仕舞いなさい」

(流石に今、流血スプラッターは見たくない…)

 ちらりとイザークが持ってきたフルーツの皿を見る。

(早く食べたいな…)

 リディアの命令に、仕方なく刃を仕舞う。
 それを見て、やはりリディアは自分たちに歯向かえないと思った義姉妹が調子に乗り出す。

「ほーほっほっほ、それでいいのよ、リディア」
「そう言えばあっちの男、あの出来損ないの団長の息子じゃなくて?」
「え…  っ!」

 そこに逃げたのだと思っていたオズワルドが、壁に凭れかけ、暇そうにまたあの高級ワインを飲んでいた。

「あの噂は本当だったのね、伝説の聖女の騎士を宣言したって」

 騎士だというのに暢気に酒を飲む姿は鈍らにしか見えない。
 そんなオズワルドをみて義理妹がニヤーと笑う。

「出来損ないも本当だったのね!親の七光りなだけで団長になったって、元王宮騎士団長の馬鹿息子という噂、役立たずな上、あげくの果てにはレティシア様の下僕になったっていう…あーはっはっは!リディアにはお似合いね!」
「ああでもいい男だから、私達が可愛がってあげますわ」
「それは名案ですわ!顔もいい上に曲がりなりにもハーゼルゼット様の御子息、身分も申し分ありませんわ」
「はぁ~、何でもいいから、死にたくなければさっさとどっか行ってくれない?」

 リディアがため息交じりに口にする。

「その言い草は何!?」
「私たちに歯向かう気!?」

 手を出そうとした所でその手頸を強く掴まれる。

「痛いっ!」
「離しなさい!無礼な!!」

 手にしていたリディアから奪い取ったブローチが床へ落ちる。

「ああっ私の宝石が!」
「それは姉さまのだ」
「私のよ!リディアになんか相応しくないわ!離しなさい!」

 喚く二人にやれやれと眉間に手を当てる。

「いい?私は一応伝説の聖女なの、ここで殺されても隠蔽されるわ、だから大人しく去ってくれないかな?」
「!」

 リディアの言葉に義姉妹が騒がしくしていた二人がピタッと止まる。

「ば、ばらされてもいいの?私達がいなくなればお父様やお母――――」
「そんなの殺されるに決まっているでしょ、一家もろとも」
「!」
「ひ、卑怯よ!酷いわ!」
「卑怯でも酷くても、これは国家を揺るがす問題よ、私がとかあなたがとか個人は関係ないわ、私も必要なくなれば殺されるでしょうね、ましてやあなた達は底辺貴族、簡単に殺されるわ」
「っ‥‥」

 義姉妹の顔が青褪めていく。

「解ったらさっさと帰って」

 大人しくなった二人を見てリオ達を見る。

「二人とも、手を離しなさい」

 リオとイザークが手を離す。

「さっさと二人を追い出して」
「いいのですか?」

 始末しないでいいのかと念を押すイザークにリディアが頷く。

「いいから、追い出しなさい」

 リディアの言葉に腑に落ちない表情を浮かべながら義理姉妹を戸から放り投げる。
 悲鳴が遠くに消えていく。

「どうして、姉さま?あんな奴ら殺しちゃえばよかったんだ」
「あんなの殺したら、貴方達の方が汚れるでしょう?」
「!」
「‥‥」

 その言葉に驚き顔を上げた。
 読者の皆はきっと勘違いしていないだろうと思うが、一応言っておく。
 リディアは良い事を言ったように聞こえるが、よくあるこういった時の決め台詞を言っただけだ。
 今まで必要であれば容赦なくリオとイザークを使っていたリディアがどの口で言うである。

(便利ね、この言葉、簡単に止めれて、誰でもいい人になれる魔法の言葉だわ)

 相変わらず下衆思考健在である。
 だが言わずもがな、しっかりリオとイザークは感動していた。
 リオなんて目をキラキラさせている。

「それより、果物が食べたいわ」
「畏まりました」

 イザークが机に置いていた持ってきた果物の皿を手に取るとリディアに差し出した。

「髪を結い直しましょう」
「お願い」

 果物を口にしながらリディアはイザークの手に身を任せた。
 そんなリディアとイザークの耳に瓶が割れる音を聞く。

「リ、リオ?」

 リオがオズワルドの持っていた高級ワインを叩き割っていた。

「守る気ないなら宣言取り消せよ、邪魔」

 オズワルドを睨みつけるリオにふんと鼻を鳴らす。

「弱い敵に興味はない、それにあれは…」
「ふざけるなっ」
「お前達だけで充分だろ、それともお前達はあんなのにも負けるのか?」
「っ」

 言い掛けた言葉を止め挑発するオズワルド。
 リオは前の大好きな姉さまを危険な目に合わせた事を思い出し、びくりと体が反応する。

「リオ、その辺にしときなさい」

(リオではオズに論破は無理ね…)

 制するリディアにリオが反抗する。

「でもっ‥‥、こんな奴絶対許せない!姉さまもハッキリと断ってよ!何で断んないの?姉さまもまさか本気でこのでかぶつが好きなの?!」
「大丈夫よ、オズは私を何とも思ってはないんだから」
「え?」

 そこで三人がハタと止まりリディアを見る。

「あの時オズワルド様は皆の前で公言なさったはずですが…」
「うまくはぐらかしてたわよね」
「え?はぐらかしたって…?どういう事、姉さま」
「あの時、オズの口から一言も『好き』だなんて言ってないわ」
「!」

 イザークとリオが驚き思い返す。

(私もあの時気づかなかったけど…)

 姫の件に疑問を持って考えた時に気づいた事だ。

「そう思わせる様な事は匂わせていたけどね」
「ほぉ」
「オズワルド様?」

 オズワルドがニヤリと笑う。

「なるほど、あの男どもが夢中になる姫君だ」
「では、あの告白は嘘だったのですか?!」
「さぁ、どうかな?」
「はっきりしろよ!」

 食って掛かるリオを軽々かわす。

「それより、あなたの目的は何?」
「もう知っているだろう?姫に次々と襲い来る強敵を倒して、美しい姫を娶ると」
「教えてくれないの?」
「今も答えたはずだが?」
「姫の命令でも?」
「姫を認めるのか?」
「う…」
「オズワルド様っ」
「なかなか良い酒だったんだがな…、新しい酒を取ってくる」

 そのまま皆を残し部屋を出て行くオズワルド。

「一体、何をお考えなのでしょう…?」
「さぁ」

 肩を上げる。

「私もそれを聞こうとして上手くはぐらかされちゃったわ」

(オズは私の騎士になり、何をしたいの?)

 確かにオズワルドが自分の騎士になるのは好条件な上、目の保養だ。
 だけど何考えているか解らない分、そのオズワルドの目的に巻き込まれないかの心配が残る。

(やっぱ、この件、保留が一番だわ)

 やれやれと一つ息を吐くと、やっと手にした飲み物を口にした。


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