コーヒーとCEOの秘密🔥他

シナモン

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コーヒーとCEOの秘密 (完)

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「ご依頼のもの揃いましたよ」


 終業後渋谷のカフェで頼んでおいた㊙︎封筒を受け取った。
 洒落た封筒で一見すると重要書類には見えない。

「ご苦労様」
「毎度ーー」

 ほぼ個室のように仕切りがあって他からは見えない。マスクをして帽子を深く被った若者はさっと隣に座った。企業情報を専門に取引する情報屋と呼ばれる業者だ。

 封を切る。村上本部長の身辺調査書だ。

 情報屋なんて怪しいと思いつつ、どうしても気になって依頼した。


 村上周吾 48歳。ライバル社でどんな職についているのか。


 ついでに『お嬢さん』とは誰のことか、それも依頼した。
 単に子供のことを指して言ったのではなさそうだ。
 村上に女の子供はいなかったはず。

「彼は、借金を抱えてましてね」

 ……それが裏切りのきっかけ?

「昨年、T商事から転職ーー、」

(知ってるわ)

「これ、一緒にいるのは…」

 いくつかの写真が同封してあった。

「上司ですね」

 村上と一緒に写っている女性。
 IDも。

 樫木マヤ 32歳。

(え、樫木?)

 樫木とはS物産の取締役の一人だ。

「彼女は社内で『お嬢さん』と呼ばれてるようです。親は樫木完二」

 情報屋の若い男は指差してそれに触れた。

「村上は総務部所属となってますが、実際にはこの女性について補佐のような役割をしてるようです」
「そう」
「…役職ではありませんがこの女性、特別扱いみたいですね。村上をT商事から引き抜いたのも彼女が関係してるようです」

『お嬢さん』えらく気になった呼び方だった。やはりただの女ではなかった。

(嫌ねえ、村上さん不倫でもしてたのかしら)

 どんどんイメージが崩れていく。

 村上本部長……中東貿易責任者の地位を捨ててまで何故?

 樫木マヤ…就学就業履歴とともに現行詳細も記載してある。


 裁判訴訟中。
 訴状ーー婚約解消。

 相手方の名前まで。


 ーー九条成明ーーー


 ーーー!?



 三津子は凝視した。

(これ…は)

 何度見ても、この名前はあの男のものだ。こんな名前の男、日本に二人といるわけがない。

 これは思わぬところから…。

(ライバル社の女とできてたってこと?)

 樫木マヤ、黒髪ワンレングスの落ち着いた美人顔だ。

(婚約解消って穏やかじゃないわ。しかもS物産の中枢に近しい人?)

「ーー被告はT商事創業者一族の子息。お望みでしたら更にしらべますよ」男は三津子の動揺を見て取った。

 頼んだコーヒーを飲むのも忘れ、三津子は調書を見つめていた。
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