6 / 58
コーヒーとCEOの秘密 (完)
6
しおりを挟む
「ご依頼のもの揃いましたよ」
終業後渋谷のカフェで頼んでおいた㊙︎封筒を受け取った。
洒落た封筒で一見すると重要書類には見えない。
「ご苦労様」
「毎度ーー」
ほぼ個室のように仕切りがあって他からは見えない。マスクをして帽子を深く被った若者はさっと隣に座った。企業情報を専門に取引する情報屋と呼ばれる業者だ。
封を切る。村上本部長の身辺調査書だ。
情報屋なんて怪しいと思いつつ、どうしても気になって依頼した。
村上周吾 48歳。ライバル社でどんな職についているのか。
ついでに『お嬢さん』とは誰のことか、それも依頼した。
単に子供のことを指して言ったのではなさそうだ。
村上に女の子供はいなかったはず。
「彼は、借金を抱えてましてね」
……それが裏切りのきっかけ?
「昨年、T商事から転職ーー、」
(知ってるわ)
「これ、一緒にいるのは…」
いくつかの写真が同封してあった。
「上司ですね」
村上と一緒に写っている女性。
IDも。
樫木マヤ 32歳。
(え、樫木?)
樫木とはS物産の取締役の一人だ。
「彼女は社内で『お嬢さん』と呼ばれてるようです。親は樫木完二」
情報屋の若い男は指差してそれに触れた。
「村上は総務部所属となってますが、実際にはこの女性について補佐のような役割をしてるようです」
「そう」
「…役職ではありませんがこの女性、特別扱いみたいですね。村上をT商事から引き抜いたのも彼女が関係してるようです」
『お嬢さん』えらく気になった呼び方だった。やはりただの女ではなかった。
(嫌ねえ、村上さん不倫でもしてたのかしら)
どんどんイメージが崩れていく。
村上本部長……中東貿易責任者の地位を捨ててまで何故?
樫木マヤ…就学就業履歴とともに現行詳細も記載してある。
裁判訴訟中。
訴状ーー婚約解消。
相手方の名前まで。
ーー九条成明ーーー
ーーー!?
三津子は凝視した。
(これ…は)
何度見ても、この名前はあの男のものだ。こんな名前の男、日本に二人といるわけがない。
これは思わぬところから…。
(ライバル社の女とできてたってこと?)
樫木マヤ、黒髪ワンレングスの落ち着いた美人顔だ。
(婚約解消って穏やかじゃないわ。しかもS物産の中枢に近しい人?)
「ーー被告はT商事創業者一族の子息。お望みでしたら更にしらべますよ」男は三津子の動揺を見て取った。
頼んだコーヒーを飲むのも忘れ、三津子は調書を見つめていた。
終業後渋谷のカフェで頼んでおいた㊙︎封筒を受け取った。
洒落た封筒で一見すると重要書類には見えない。
「ご苦労様」
「毎度ーー」
ほぼ個室のように仕切りがあって他からは見えない。マスクをして帽子を深く被った若者はさっと隣に座った。企業情報を専門に取引する情報屋と呼ばれる業者だ。
封を切る。村上本部長の身辺調査書だ。
情報屋なんて怪しいと思いつつ、どうしても気になって依頼した。
村上周吾 48歳。ライバル社でどんな職についているのか。
ついでに『お嬢さん』とは誰のことか、それも依頼した。
単に子供のことを指して言ったのではなさそうだ。
村上に女の子供はいなかったはず。
「彼は、借金を抱えてましてね」
……それが裏切りのきっかけ?
「昨年、T商事から転職ーー、」
(知ってるわ)
「これ、一緒にいるのは…」
いくつかの写真が同封してあった。
「上司ですね」
村上と一緒に写っている女性。
IDも。
樫木マヤ 32歳。
(え、樫木?)
樫木とはS物産の取締役の一人だ。
「彼女は社内で『お嬢さん』と呼ばれてるようです。親は樫木完二」
情報屋の若い男は指差してそれに触れた。
「村上は総務部所属となってますが、実際にはこの女性について補佐のような役割をしてるようです」
「そう」
「…役職ではありませんがこの女性、特別扱いみたいですね。村上をT商事から引き抜いたのも彼女が関係してるようです」
『お嬢さん』えらく気になった呼び方だった。やはりただの女ではなかった。
(嫌ねえ、村上さん不倫でもしてたのかしら)
どんどんイメージが崩れていく。
村上本部長……中東貿易責任者の地位を捨ててまで何故?
樫木マヤ…就学就業履歴とともに現行詳細も記載してある。
裁判訴訟中。
訴状ーー婚約解消。
相手方の名前まで。
ーー九条成明ーーー
ーーー!?
三津子は凝視した。
(これ…は)
何度見ても、この名前はあの男のものだ。こんな名前の男、日本に二人といるわけがない。
これは思わぬところから…。
(ライバル社の女とできてたってこと?)
樫木マヤ、黒髪ワンレングスの落ち着いた美人顔だ。
(婚約解消って穏やかじゃないわ。しかもS物産の中枢に近しい人?)
「ーー被告はT商事創業者一族の子息。お望みでしたら更にしらべますよ」男は三津子の動揺を見て取った。
頼んだコーヒーを飲むのも忘れ、三津子は調書を見つめていた。
1
あなたにおすすめの小説
妖狐の嫁入り
山田あとり
恋愛
「――おまえを祓うなどできない。あきらめて、俺と生きてくれ」
稲荷神社の娘・遥香(はるか)は、妖狐の血をひくために狐憑きとさげすまれ、ひっそり生きてきた。
ある日、村八分となっている遥香を探して来たのは怨霊や魔物を祓う軍人・彰良(あきら)。
彼は陰陽師の名門・芳川家の男だった。
帝国陸軍で共に任務にあたることになった二人だったが、実は彰良にもある秘密が――。
自己評価は低いが芯に強さを秘める女が、理解者を得て才能を開花させる!
&
苦しみを抱え屈折した男が、真っ直ぐな優しさに触れ愛を知る!
明治中期風の横浜と帝都を駆ける、あやかし異能ロマンス譚です。
可愛い妖怪・豆腐小僧も戦うよ!
※この作品は、カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」と言われたので別れたのですが、呪われた上に子供まで出来てて一大事です!?
綾織季蝶
恋愛
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」そう告げられたのは孤児から魔法省の自然管理科の大臣にまで上り詰めたカナリア・スタインベック。
相手はとある貴族のご令嬢。
確かに公爵の彼とは釣り合うだろう、そう諦めきった心で承諾してしまう。
別れる際に大臣も辞め、実家の誰も寄り付かない禁断の森に身を潜めたが…。
何故か呪われた上に子供まで出来てしまった事が発覚して…!?
まだまだこれからだ!
九重
恋愛
温泉が大好きなOLの暖(うらら)。今日も今日とて山奥の秘湯にひとり浸かっていたのだが……突如お湯が流れ出し、一緒に流されてしまった。
気づけば異世界で、なんと彼女は温泉を召喚した魔女の魔法に巻き込まれてしまったらしい。しかもそこは、異世界でも役立たずとされた病人ばかりの村だった。――――老いた関節痛の魔女と、腰を痛めた女騎士。アレルギーで喘息持ちの王子と認知症の竜に、うつ病のエルフなどなど――――
一癖も二癖もある異世界の住人の中で、暖が頑張る物語。
同時連載開始の「勇者一行から追放されたので異世界で温泉旅館をはじめました!」と同じプロローグではじまる物語です。
二本同時にお楽しみいただけましたら嬉しいです!
(*こちらのお話は「小説家になろう」さまサイトでも公開、完結済みです)
運命の番より真実の愛が欲しい
サトウミ
恋愛
田舎娘のゾーイは龍族の王子・シャウロンの『運命の番』だった。
ロマンチックな恋を夢見るゾーイは『運命の番』であるシャウロンと会えるのを楽しみにしていた。
しかし、シャウロンはゾーイに対して素っ気ない。
運命の番だからといって、必ずしも愛し合う関係だとは限らないらしい。
それを悟ったゾーイは、シャウロンのもとから去ることを決意した。
婚約破棄されるはずでしたが、王太子の目の前で皇帝に攫われました』
鷹 綾
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間――
目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。
そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。
一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。
選ばれる側から、選ぶ側へ。
これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。
--
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
前世の記憶なんていらなかった……
ミカン♬
恋愛
日本から西洋風の異世界に転生したローゼリアの物語です。幸か不幸か、前世の記憶は彼女に何をもたらせてくれたのか。
ヒロインのローゼリアは前世の『香帆』の記憶を持って生まれ消せないでいた。過去の恋人への恋慕と今世の婚約者への好意。揺れ動く中で彼女に待っていたのは婚約の解消という悲運だった。
自由奔放な妹ミゼットに全て奪われたローゼリアに婚約者候補が二人現れた。それは年下の少年ハーシェルとオッドアイの青年デミアン。傷ついたローゼリアの心を癒すのはどちらなのか。ハッピーエンドです。
さくっと進みます。
小説家になろう様にも投稿。5/27
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる