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コーヒーとCEOの秘密 (完)
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「赤石さ~~ん、本当に行っちゃうのね。もう会えないなんて」
「お疲れさまでした~。向こうでもお元気で」
本当にラストの日。秘書室の皆に囲まれてさすがにじんとなった。
51階の秘書室は給湯室と直接つながっていて、会長室ほどじゃないが広めのキッチンが入ってる。
お土産のお菓子を片手に誰かが入れたコーヒーを飲んだり、ごく普通の光景がとてもありがたく感じてしまう。
「…白本さん、しつこいようだけど何も気にしなくていいから。ごく普通の業務以外は指示を待っていればいいのよ」
「ええ…」
人数的に会長の秘書は室長になるだろう。大したことは言えないが、何かしてくれと言われない限り余計なことをしないに限る。実際、飲まないコーヒーを淹れなくなって、少しでも話ができた。ほんのちょっとだが。
「私だって、一杯しか飲んでもらえなかったんだから」紙コップのね。
「えっ、そうなの?」
「そんなに心配なら私がお持ちしますよ、室長」
社長秘書の吉永が間に入った。
気が強く、しっかりした、わりにずばずばものをいうタイプだ。
「赤石さんでもダメなんですね~。もうあれしてこれして…思わない方がいいんじゃないですかね」
情報処理係の若い男性社員もいて、雰囲気はすごくいい。
「会長も普通にお話しされる分には問題ないのにね」
「だからコーヒーなんていったん置いておきましょ。誰に咎められるわけじゃないでしょ」
「放っておく、て言うのがハードル高いんですよ」
そうなのよ、結局自分もほぼ×だったわけだし。もう誰がやっても一緒なんじゃないの?
なんだか力が抜けて、最後のディナーに誘われてもあまり緊張はしていない。
いやな上司なら、それも気が重くなるものでしょうに。
「もう荷物は送られたんですか」
「ええ。とっくに部屋はすっからかんよ。あとは着替えとベッドだけ。土曜に業者が来る予定」
「そうかあ。俺も転勤してみたいな」
「あら、春日くん、転勤する予定なの? どこへ」
「あ、引っ越しの方でしたね」
「今まで世話になったな」
「いいえ、こちらこそ」
フロア全体が夜景に浮いてるように見える。新宿及び代々木、その向こうまで見渡せるホテルの最上階のグリル&バー。
食事に誘ってもらえるとは思わなかったけど。フォーシーズンやリッツもいいけど特別のディナーといえばやっぱりここでしょ。すぐお隣の。
「いい景色ですね」色とりどりのガラス玉を敷き詰めたような夜景がどこまでも続いて、
「キミがそんなことを言うとは思ってなかったね。もう何度も商談で使ってそうだ」
「それとこれとは別です」・・ところどころ高層ビル群がそびえたつ。
今晩は自分がもてなされる方。
上品なアメリカ料理をアラカルトでオーダーし、会長のお皿にはメニューにある海老やイクラがのっていない、彼は上客なのですでに排除リストが熟知されているのだろう。
「キミがとってくれたここの部屋、なかなか快適だね。職場のすぐ近くで寝起きするのがこんなにいいとは思わなかった」
秘書室のだれでもこのホテルをおさえるわ。『近くにホテルを取ってくれ、出来るだけ長期で』そう言われてとっただけだもの。
ハイアットの最低でも6万くらいする客室の(当時)少し広めの部屋に会長は寝泊まりしている。
眺めがうちの社屋側なのはホテルの配慮だろう。
渋谷にご実家があってその近くに役員宿舎まであるのにね。
「ホテルを執務室として使うというのもありだな。接待にも事欠かないしな」
「……本格的に閉じこもるおつもりですか? やめてくださいよ」
「お疲れさまでした~。向こうでもお元気で」
本当にラストの日。秘書室の皆に囲まれてさすがにじんとなった。
51階の秘書室は給湯室と直接つながっていて、会長室ほどじゃないが広めのキッチンが入ってる。
お土産のお菓子を片手に誰かが入れたコーヒーを飲んだり、ごく普通の光景がとてもありがたく感じてしまう。
「…白本さん、しつこいようだけど何も気にしなくていいから。ごく普通の業務以外は指示を待っていればいいのよ」
「ええ…」
人数的に会長の秘書は室長になるだろう。大したことは言えないが、何かしてくれと言われない限り余計なことをしないに限る。実際、飲まないコーヒーを淹れなくなって、少しでも話ができた。ほんのちょっとだが。
「私だって、一杯しか飲んでもらえなかったんだから」紙コップのね。
「えっ、そうなの?」
「そんなに心配なら私がお持ちしますよ、室長」
社長秘書の吉永が間に入った。
気が強く、しっかりした、わりにずばずばものをいうタイプだ。
「赤石さんでもダメなんですね~。もうあれしてこれして…思わない方がいいんじゃないですかね」
情報処理係の若い男性社員もいて、雰囲気はすごくいい。
「会長も普通にお話しされる分には問題ないのにね」
「だからコーヒーなんていったん置いておきましょ。誰に咎められるわけじゃないでしょ」
「放っておく、て言うのがハードル高いんですよ」
そうなのよ、結局自分もほぼ×だったわけだし。もう誰がやっても一緒なんじゃないの?
なんだか力が抜けて、最後のディナーに誘われてもあまり緊張はしていない。
いやな上司なら、それも気が重くなるものでしょうに。
「もう荷物は送られたんですか」
「ええ。とっくに部屋はすっからかんよ。あとは着替えとベッドだけ。土曜に業者が来る予定」
「そうかあ。俺も転勤してみたいな」
「あら、春日くん、転勤する予定なの? どこへ」
「あ、引っ越しの方でしたね」
「今まで世話になったな」
「いいえ、こちらこそ」
フロア全体が夜景に浮いてるように見える。新宿及び代々木、その向こうまで見渡せるホテルの最上階のグリル&バー。
食事に誘ってもらえるとは思わなかったけど。フォーシーズンやリッツもいいけど特別のディナーといえばやっぱりここでしょ。すぐお隣の。
「いい景色ですね」色とりどりのガラス玉を敷き詰めたような夜景がどこまでも続いて、
「キミがそんなことを言うとは思ってなかったね。もう何度も商談で使ってそうだ」
「それとこれとは別です」・・ところどころ高層ビル群がそびえたつ。
今晩は自分がもてなされる方。
上品なアメリカ料理をアラカルトでオーダーし、会長のお皿にはメニューにある海老やイクラがのっていない、彼は上客なのですでに排除リストが熟知されているのだろう。
「キミがとってくれたここの部屋、なかなか快適だね。職場のすぐ近くで寝起きするのがこんなにいいとは思わなかった」
秘書室のだれでもこのホテルをおさえるわ。『近くにホテルを取ってくれ、出来るだけ長期で』そう言われてとっただけだもの。
ハイアットの最低でも6万くらいする客室の(当時)少し広めの部屋に会長は寝泊まりしている。
眺めがうちの社屋側なのはホテルの配慮だろう。
渋谷にご実家があってその近くに役員宿舎まであるのにね。
「ホテルを執務室として使うというのもありだな。接待にも事欠かないしな」
「……本格的に閉じこもるおつもりですか? やめてくださいよ」
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