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瀬尾くんの秘密 (完)
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はっと気づいた。
そうだ今日はバレンタインだ。あることがある日。このまま家に帰れば…。
…というわけにはいかない。
「仲根さん、ちょっと休んで行かない」俺は言った。
「え」
「公園にでも寄ろうか 」「うん」
まっすぐ進めば家、というその道を逸れ、少し離れた公園に向かう。
「瀬尾くん、神社のお祓いっていくらするの」
「え」
「知ってるんでしょ」
個人の場合は5000円からか。
お気持ちでということにはなってるけど。
それは界隈の相場だが、俺がやる場合は…おそらく最低限だと思う。俺個人的にはもらいたくない。
特別な霊能力があるでもなし、本格的なお祓いの儀式とは違うんだ。
「内容によるんだけど…仲根さん」
「ん」
俺はその公園というより公共施設の比較的暖かそうな場所でくるりと彼女の前に立った。寒いと言ってもそれほどでもなく、駅から徒歩圏内とはいえ緑地が広がり、とても穏やかだ。
公園の一角には小さな池があり、鳥の姿も見える。公園の中心には大きな木が立ち、その下にはベンチやテーブルが置かれている。人はほとんどいない。
よし。
そんなところで立ち止まってじっと彼女の目を見つめた。
一瞬、たじろぐ彼女の目がたちまちただの物質と化して――――。
透明なその世界へ俺は吸い込まれていくように進めた。
「あれ、私、何してたんだろう」
仲根さんが頭を上げたのは俺の家のすぐ近くだった。
いきなり、神社の鳥居の横でチョコを手にする女子たちの群れ――が視界に飛び込んできたからなのか、彼女はきょろきょろ不思議そうだ。みんなにこやかに、中には私服に着替えている女子もいて、まさにバレンタインデーの光景が広がる。
「仲根さん、抜け駆けはなしね」と一人の女子が早口で言った。
「え?」
その言葉に仲根さんは戸惑いながら、かすかに首を傾げた。
それはそうだろう。時間がスキップしたようなものだから。
「何なのよ、だから一緒に帰っただけだから……」仲根さんはその子に向かって、はっきり答えた。
「それもなしなんだけど―――」
「あーうるさいうるさい、だからバレンタインじゃないし」
「ふーーん?」
「調べてみなさいよ、チョコなんてないし、むしろ私が…」
言いかけて口ごもると、その子ははなれていった。
「じゃあ、瀬尾くん、つきあってくれてありがとう」仲根さんはこちらを向いた。
「うん」と俺は答える。彼女はすっかりいつもの表情、口調だった。
何となく隊列のようになった集団から一人離れ、道を去っていく。
公園から神社の数歩手前まで。
この少しの間に、何かが彼女に起きた。
それはいつからか俺に備わったよくわからない能力だ。
決してオカルトやスピリチュアルじゃなく、本当にあることが起きる。
それは何かと言われれば、上手く説明できない。
だから、誰にも言えない、表立って施術できない。
距離にしたら200Mくらいのほんの少し歩く間の秘密の出来事。ついでに、彼女はその前後の記憶も飛んでいることだろう。
そうだ今日はバレンタインだ。あることがある日。このまま家に帰れば…。
…というわけにはいかない。
「仲根さん、ちょっと休んで行かない」俺は言った。
「え」
「公園にでも寄ろうか 」「うん」
まっすぐ進めば家、というその道を逸れ、少し離れた公園に向かう。
「瀬尾くん、神社のお祓いっていくらするの」
「え」
「知ってるんでしょ」
個人の場合は5000円からか。
お気持ちでということにはなってるけど。
それは界隈の相場だが、俺がやる場合は…おそらく最低限だと思う。俺個人的にはもらいたくない。
特別な霊能力があるでもなし、本格的なお祓いの儀式とは違うんだ。
「内容によるんだけど…仲根さん」
「ん」
俺はその公園というより公共施設の比較的暖かそうな場所でくるりと彼女の前に立った。寒いと言ってもそれほどでもなく、駅から徒歩圏内とはいえ緑地が広がり、とても穏やかだ。
公園の一角には小さな池があり、鳥の姿も見える。公園の中心には大きな木が立ち、その下にはベンチやテーブルが置かれている。人はほとんどいない。
よし。
そんなところで立ち止まってじっと彼女の目を見つめた。
一瞬、たじろぐ彼女の目がたちまちただの物質と化して――――。
透明なその世界へ俺は吸い込まれていくように進めた。
「あれ、私、何してたんだろう」
仲根さんが頭を上げたのは俺の家のすぐ近くだった。
いきなり、神社の鳥居の横でチョコを手にする女子たちの群れ――が視界に飛び込んできたからなのか、彼女はきょろきょろ不思議そうだ。みんなにこやかに、中には私服に着替えている女子もいて、まさにバレンタインデーの光景が広がる。
「仲根さん、抜け駆けはなしね」と一人の女子が早口で言った。
「え?」
その言葉に仲根さんは戸惑いながら、かすかに首を傾げた。
それはそうだろう。時間がスキップしたようなものだから。
「何なのよ、だから一緒に帰っただけだから……」仲根さんはその子に向かって、はっきり答えた。
「それもなしなんだけど―――」
「あーうるさいうるさい、だからバレンタインじゃないし」
「ふーーん?」
「調べてみなさいよ、チョコなんてないし、むしろ私が…」
言いかけて口ごもると、その子ははなれていった。
「じゃあ、瀬尾くん、つきあってくれてありがとう」仲根さんはこちらを向いた。
「うん」と俺は答える。彼女はすっかりいつもの表情、口調だった。
何となく隊列のようになった集団から一人離れ、道を去っていく。
公園から神社の数歩手前まで。
この少しの間に、何かが彼女に起きた。
それはいつからか俺に備わったよくわからない能力だ。
決してオカルトやスピリチュアルじゃなく、本当にあることが起きる。
それは何かと言われれば、上手く説明できない。
だから、誰にも言えない、表立って施術できない。
距離にしたら200Mくらいのほんの少し歩く間の秘密の出来事。ついでに、彼女はその前後の記憶も飛んでいることだろう。
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