31 / 153
2話 恋の神様
1
しおりを挟む
髪を切ったばかりの自分の顔を眺める。
『ーーーみたいなパッツン前髪にしてください』
喉元まで出掛かってた台詞を急遽飲み込んで、『ーーーみたいな』を省略しちゃったのだが、まあまあ成功の部類に入ると思う。
長い間ストレートロングで、下手すりゃ半年髪をカットしてない状態が続いただけに、スタイリストさんもはさみを入れる直前、『切りますよ。いいですか?』と念を押して聞いてきた。
そして仕上がった鏡の中の自分の姿。確かにーーー某有名女優だった。遠目には。
切りたくなった理由は、正月に実家で見た雑誌の表紙の彼女が可愛かったから。
衝動的にってやつだけど3月まで我慢していたの。だって年末に切ったばかりだから。もったいないじゃん? カラートリートメント込みで15000円するしね。
前髪切ると運命変わる。
って言わない?
飛行機恐怖症な私。
アトランタまでの飛行時間知って恐れおののいた。
12時間て。本当に行けるのだろうか?
試しに、飛行機で帰省を試みたものの、あえなく撃沈……。
しょっぱなから頭がぐわんぐわんしてゲロってしまったのだ。
しかも悪天候で機体は伊丹に引き返してしまう始末。
ヒーヒー言いながら実家に電話かけて迎えに来てもらった。
ああ、もうサイアク。
そのせいで鼻高々に自慢するはずだったアトランタ行きの話が、
『羽田~出雲も無事に乗れん人間がアメリカだ~? 無理無理、何時間かかると思っとるんだ? 具合が悪くなった所でどうするんだ? 空の上だぞ』
『そうよねえ。何かあって迎えに来いって言われても困るわあ』
何ですと!?
いきなり家族全員にダメだしされてしまったのだ。
おまけに。
会長=おじいちゃん、食事の世話=半分介護、なんて勝手に解釈してくれて。
『やっぱりあんたには無理無理。お年寄りの世話なんて。東京だから何とかなってるんでしょう。飛行機も乗れないのにアメリカなんて。オカさんとこみたいに旦那さんの転勤ならまだしも、あんた1人で行ってどうするの!? ちょっとばかし料理ほめられたからってのぼせ上がらないの。現実的にならなきゃだめよ』
『だから東京なんか行くなっつーとんじゃ。今年いっぱい働かせてもらって戻ってくればいい。これ以上心配かけさすな。戻ったらすぐに見合いじゃ、見合い!』
と全く予想外の反応に終わってしまった。
ちょ、娘の話聞けーー! オカさんてダレ!?
でもまあそうだよね。普通会長というとおじいちゃんだよね。
でもね、そんな要介護のおじいちゃんがアトランタの企業で役職につくかい?
その辺からしておかしいと思うんだけど。
真実を知ったら驚くだろうな。
名誉回復のためにも是非乗れるようにしないと。
デスクの上のミラーから目を離し、小さなノートPCでブログの編集作業に取り掛かる。ついに! 引っ越したばかりの新居は小さいながらも快適。フローリングにベッドとデスクとチェアを置き、床に座る生活に別れを告げた。本当は近所の高級ショップで買いたかったけど妥協して揃えたデスク&チェアー。
『ゆるカフェ』とタイトル変更してはや4ヶ月。
店長に発見されたのを反省して、そして会長に見られちゃったのがこっぱずかしくて、一時閉鎖しようかと思ったものの……。
開き直ったーー。
もういいや、見られちゃっても。
皆のコメント、そっちのほうが大事だから。ええ。
そういうわけでタイトルだけ変えて今に至ってる。
中身は相変わらずの食べ物ブログだ。
最近では僭越ながらレシピを載せることもしばしば。実際自炊や主婦してる人から生の意見もらえてすごく助かってるの。
さて……。
未チェックのコメント筆頭は、またまた、というか、毎回マイペースを貫くコメントを下さる古参のみなみんさんだ。
『……ところで、ヒロくんとドレスを見に行ってきました!』
って。コメントの殆どにヒロくんネタがくっついてる。
『あけましておめでとうございます~~。ヒロくんとお正月に東京大神宮に行ってきました~。ご存知ですか?縁結びの神様で有名な神社です。こんな所にこんなご立派なお社があるんだぁって感動しました。すっごいひとでしたよ!みなさんやっぱり神様にお願いしちゃうんですね~。ヒロくんたら~奮発してお札を入れてました。ご利益があるといいな』
今年一発目の書き込みがこれ。その後彼氏と結婚が決まった彼女の文章は幸せが溢れていて、『いいなぁ……』とつい呟いてしまう。
そうしてもう1人。『いいなぁ』連発なのが同じく古参のプシィさん。
『みなみんさん、いいなあ~。ドレス姿かわいくってヒロくんもデレデレでしょうね。私は当分かかりそうです。彼氏は最近痩せてしまって〇〇に激変しちゃいましたよ。差し入れにも気を遣います。こちらのヘルシーメニュー参考にさせてもらってます』
試験勉強中なんだよね。彼氏さん。
それにしても……。〇〇というタレントの顔を思い出して和む。
ぷっ、ちょっとかわいいよね。
みんなけなげだ。思えば今までの私にはこれ系のときめきがなかったな。
『みなみんさんへ。ドレス何種類着られるのかな~。彼氏とドレスを選ぶって行為が幸せそのものですね。都内の教会でしたっけ。よかったらどこかに画像アップしてくださいね!』
『プシィさんへ。へんし~んですか。〇〇かあ。ちょっとつぼっちゃいました。あの雰囲気好き。ヘルシーメニュー考えちゃいますよね。私もこのところご年配の方にお出しする機会が多くて』
と返信して、新規に記事を書く。
『もうすっかり春ですね~。今日は半日ぶらぶらしてきました。目黒通りの家具屋さん中心に。あ、髪も切ったんですよ。主に前髪だけどね~。目指せーー様(笑)。ずっとワンレングスだったのでとても新鮮です。いいことあったらいいな。目黒も久しぶりに行ってみたけど見てたら欲しくなっちゃいました。一人用のソファを買いたいなと思っています。サイドテーブル置いてゆっくりひとりカフェ…もいいですよね』
保存していた部屋の画像入れて更新すると、コメントが入っていた。キョンママさん。主婦の方。
『〇〇、うちの主人もそれっぽいかな。おのろけになりますが一緒にいてラク~。BだけどBっぽくないの。話変わりますがBの人って両極端ですよね。良いか悪いか。主人の前に付き合ってた人もBなんだけど、も~~~すごかった(笑)。主人に救われた気分です』
B。
そういえば。
元彼氏4人のうち3人がB型だったな。
この遭遇率ってすごいな、よく考えてみれば。
今頃気付くな?
付き合ってた男どもは、一言で表せばマイペース。
マイペースなんだけど、男らしい感じじゃなかったな。
少年っぽいといえば聞こえはいいけど。ときめき皆無。
何で付き合ってたんだろう。
今思うと不思議だ。
友達の延長かな。
しかし学習能力ないな、私。普通1人で懲りるよね?
同じようなのを続けて選ぶとは。
見る目ないのね……。
BよりもABってどうなんだろうね。
完璧主義って以外に。血液型の話って自分からはしにくいな。
『キョンママさんへ。一緒にいてラクっていいなあ。私も最近年のせいか激しいのは疲れる(笑)。ずーっと黙って手をつないでいても飽きないようなゆるい相手がいいです。あ、でも草食系男子はパス』
一通りレスして、画面閉じて。
ネットし放題のワンルームマンションなので前より部屋でネットすることが多くなった。仕事場の素敵キッチンをさらせない代わりに部屋のあちこち撮って載せてるの。
もうワンショット入れるか、と思って見ると携帯ホルダーに挿した携帯が光ってる。見るとゆなからのメール着信だった。
『正月の写真彼に見せてたらさ、出雲大社で式挙げても良かったねってぬかすの。ハズイよねwww』
ぷっ。
どうでもいいのろけメールだ。
そうそう、参拝客に花嫁姿さらすことになるからね。ちょっとした芸能人気分が味わえるの。
『いいんじゃないの?女優気分でやっちゃいなよ』
打つたびに携帯に付けたストラップが揺れる。
ゆなを含む地元の友達連中(男女混合チーム)と毎年恒例の出雲大社初詣ツアーに行ってきたのだが、ふと目に付いたこれを買ってみたのだ。
浮いた感じしない天然石の縁結びストラップ。9月の誕生石ラピスラズリ。落ち着いた色合いがお気に入り。
出雲大社も縁結びで有名だ。東京じゃあんまり知られてないかな。
毎年10月には全国の神様が出雲に集ってあの子とあの子をくっ付けようなどと話し合いをするんだって、小学生まで信じていた。つまり恋愛の神様の総本山なのだと。
それを特に意識していつになく丁寧に拝んできたの。
誰とは言いませんが、いいご縁がありますように……。
連れのヤローどもは論外ですからお間違えのないようお願いします、縁結びの神様……。
デスクの脇には同じく買ったばかりのフォトスタンドが立ててある。
中のハンサムな男の人の写真と目があう。
彼の名は九条高広。会長の弟クン。
せめて私も人探しの手助けをしようと会長に申し出たらこの写真を渡された。
正面顔のどう見ても証明写真。まあ何とも味気のないこと。もうちょっと色んなスナップがあればイメージしやすいのに。男所帯ってそういう写真撮らんのか。
しかしさすがにあの人の弟だけあって、かっこいいこと!
似てるって感じじゃないけどね。さわやかな好青年という類だろうか。会長はお父さん似で弟はお母さん似なんだって。……どんだけ美男美女なんだよ、ご両親。
ライトブラウンのライオンヘアー。身長は182cm。歳は28。
この写真は5年位前のものなので勝手に現在図を脳内修正して。毎晩のように眺めて顔を頭に叩き込んでいる。
この人口爆発シティで1人の人を見つけ出すなんて至難の業だ。新宿だけで毎日300万人以上行き交ってるらしいし。
そもそも高広クンがここに来るかどうかもわからない……。
でもね。
もし私が彼の立場だとしたら、定期的に肉親の様子探りに来ると思うんだ。仲良しだったお兄さんの姿をそっと確認しに。やっぱり心配だもの。
違うかな……?
万が一ってこともある。世の中何が起こるかわからないから。私がいい例だ。室長のお呼びがなければ今の待遇はなかったんだもの。まさに千載一遇、こんな四字熟語を遣うこともめったにないのに自分の人生でそんな目に遭うなんてね。
奇跡よ再び。早く見つかってほしい。
そうすれば会長も心置きなく渡米できるだろう。
あんな悲しい顔することもなくなる。
だから私の飛行機克服と同じくらい重要課題なの。
神様、九条高広クンにあわせてください。お願いします……。
『ーーーみたいなパッツン前髪にしてください』
喉元まで出掛かってた台詞を急遽飲み込んで、『ーーーみたいな』を省略しちゃったのだが、まあまあ成功の部類に入ると思う。
長い間ストレートロングで、下手すりゃ半年髪をカットしてない状態が続いただけに、スタイリストさんもはさみを入れる直前、『切りますよ。いいですか?』と念を押して聞いてきた。
そして仕上がった鏡の中の自分の姿。確かにーーー某有名女優だった。遠目には。
切りたくなった理由は、正月に実家で見た雑誌の表紙の彼女が可愛かったから。
衝動的にってやつだけど3月まで我慢していたの。だって年末に切ったばかりだから。もったいないじゃん? カラートリートメント込みで15000円するしね。
前髪切ると運命変わる。
って言わない?
飛行機恐怖症な私。
アトランタまでの飛行時間知って恐れおののいた。
12時間て。本当に行けるのだろうか?
試しに、飛行機で帰省を試みたものの、あえなく撃沈……。
しょっぱなから頭がぐわんぐわんしてゲロってしまったのだ。
しかも悪天候で機体は伊丹に引き返してしまう始末。
ヒーヒー言いながら実家に電話かけて迎えに来てもらった。
ああ、もうサイアク。
そのせいで鼻高々に自慢するはずだったアトランタ行きの話が、
『羽田~出雲も無事に乗れん人間がアメリカだ~? 無理無理、何時間かかると思っとるんだ? 具合が悪くなった所でどうするんだ? 空の上だぞ』
『そうよねえ。何かあって迎えに来いって言われても困るわあ』
何ですと!?
いきなり家族全員にダメだしされてしまったのだ。
おまけに。
会長=おじいちゃん、食事の世話=半分介護、なんて勝手に解釈してくれて。
『やっぱりあんたには無理無理。お年寄りの世話なんて。東京だから何とかなってるんでしょう。飛行機も乗れないのにアメリカなんて。オカさんとこみたいに旦那さんの転勤ならまだしも、あんた1人で行ってどうするの!? ちょっとばかし料理ほめられたからってのぼせ上がらないの。現実的にならなきゃだめよ』
『だから東京なんか行くなっつーとんじゃ。今年いっぱい働かせてもらって戻ってくればいい。これ以上心配かけさすな。戻ったらすぐに見合いじゃ、見合い!』
と全く予想外の反応に終わってしまった。
ちょ、娘の話聞けーー! オカさんてダレ!?
でもまあそうだよね。普通会長というとおじいちゃんだよね。
でもね、そんな要介護のおじいちゃんがアトランタの企業で役職につくかい?
その辺からしておかしいと思うんだけど。
真実を知ったら驚くだろうな。
名誉回復のためにも是非乗れるようにしないと。
デスクの上のミラーから目を離し、小さなノートPCでブログの編集作業に取り掛かる。ついに! 引っ越したばかりの新居は小さいながらも快適。フローリングにベッドとデスクとチェアを置き、床に座る生活に別れを告げた。本当は近所の高級ショップで買いたかったけど妥協して揃えたデスク&チェアー。
『ゆるカフェ』とタイトル変更してはや4ヶ月。
店長に発見されたのを反省して、そして会長に見られちゃったのがこっぱずかしくて、一時閉鎖しようかと思ったものの……。
開き直ったーー。
もういいや、見られちゃっても。
皆のコメント、そっちのほうが大事だから。ええ。
そういうわけでタイトルだけ変えて今に至ってる。
中身は相変わらずの食べ物ブログだ。
最近では僭越ながらレシピを載せることもしばしば。実際自炊や主婦してる人から生の意見もらえてすごく助かってるの。
さて……。
未チェックのコメント筆頭は、またまた、というか、毎回マイペースを貫くコメントを下さる古参のみなみんさんだ。
『……ところで、ヒロくんとドレスを見に行ってきました!』
って。コメントの殆どにヒロくんネタがくっついてる。
『あけましておめでとうございます~~。ヒロくんとお正月に東京大神宮に行ってきました~。ご存知ですか?縁結びの神様で有名な神社です。こんな所にこんなご立派なお社があるんだぁって感動しました。すっごいひとでしたよ!みなさんやっぱり神様にお願いしちゃうんですね~。ヒロくんたら~奮発してお札を入れてました。ご利益があるといいな』
今年一発目の書き込みがこれ。その後彼氏と結婚が決まった彼女の文章は幸せが溢れていて、『いいなぁ……』とつい呟いてしまう。
そうしてもう1人。『いいなぁ』連発なのが同じく古参のプシィさん。
『みなみんさん、いいなあ~。ドレス姿かわいくってヒロくんもデレデレでしょうね。私は当分かかりそうです。彼氏は最近痩せてしまって〇〇に激変しちゃいましたよ。差し入れにも気を遣います。こちらのヘルシーメニュー参考にさせてもらってます』
試験勉強中なんだよね。彼氏さん。
それにしても……。〇〇というタレントの顔を思い出して和む。
ぷっ、ちょっとかわいいよね。
みんなけなげだ。思えば今までの私にはこれ系のときめきがなかったな。
『みなみんさんへ。ドレス何種類着られるのかな~。彼氏とドレスを選ぶって行為が幸せそのものですね。都内の教会でしたっけ。よかったらどこかに画像アップしてくださいね!』
『プシィさんへ。へんし~んですか。〇〇かあ。ちょっとつぼっちゃいました。あの雰囲気好き。ヘルシーメニュー考えちゃいますよね。私もこのところご年配の方にお出しする機会が多くて』
と返信して、新規に記事を書く。
『もうすっかり春ですね~。今日は半日ぶらぶらしてきました。目黒通りの家具屋さん中心に。あ、髪も切ったんですよ。主に前髪だけどね~。目指せーー様(笑)。ずっとワンレングスだったのでとても新鮮です。いいことあったらいいな。目黒も久しぶりに行ってみたけど見てたら欲しくなっちゃいました。一人用のソファを買いたいなと思っています。サイドテーブル置いてゆっくりひとりカフェ…もいいですよね』
保存していた部屋の画像入れて更新すると、コメントが入っていた。キョンママさん。主婦の方。
『〇〇、うちの主人もそれっぽいかな。おのろけになりますが一緒にいてラク~。BだけどBっぽくないの。話変わりますがBの人って両極端ですよね。良いか悪いか。主人の前に付き合ってた人もBなんだけど、も~~~すごかった(笑)。主人に救われた気分です』
B。
そういえば。
元彼氏4人のうち3人がB型だったな。
この遭遇率ってすごいな、よく考えてみれば。
今頃気付くな?
付き合ってた男どもは、一言で表せばマイペース。
マイペースなんだけど、男らしい感じじゃなかったな。
少年っぽいといえば聞こえはいいけど。ときめき皆無。
何で付き合ってたんだろう。
今思うと不思議だ。
友達の延長かな。
しかし学習能力ないな、私。普通1人で懲りるよね?
同じようなのを続けて選ぶとは。
見る目ないのね……。
BよりもABってどうなんだろうね。
完璧主義って以外に。血液型の話って自分からはしにくいな。
『キョンママさんへ。一緒にいてラクっていいなあ。私も最近年のせいか激しいのは疲れる(笑)。ずーっと黙って手をつないでいても飽きないようなゆるい相手がいいです。あ、でも草食系男子はパス』
一通りレスして、画面閉じて。
ネットし放題のワンルームマンションなので前より部屋でネットすることが多くなった。仕事場の素敵キッチンをさらせない代わりに部屋のあちこち撮って載せてるの。
もうワンショット入れるか、と思って見ると携帯ホルダーに挿した携帯が光ってる。見るとゆなからのメール着信だった。
『正月の写真彼に見せてたらさ、出雲大社で式挙げても良かったねってぬかすの。ハズイよねwww』
ぷっ。
どうでもいいのろけメールだ。
そうそう、参拝客に花嫁姿さらすことになるからね。ちょっとした芸能人気分が味わえるの。
『いいんじゃないの?女優気分でやっちゃいなよ』
打つたびに携帯に付けたストラップが揺れる。
ゆなを含む地元の友達連中(男女混合チーム)と毎年恒例の出雲大社初詣ツアーに行ってきたのだが、ふと目に付いたこれを買ってみたのだ。
浮いた感じしない天然石の縁結びストラップ。9月の誕生石ラピスラズリ。落ち着いた色合いがお気に入り。
出雲大社も縁結びで有名だ。東京じゃあんまり知られてないかな。
毎年10月には全国の神様が出雲に集ってあの子とあの子をくっ付けようなどと話し合いをするんだって、小学生まで信じていた。つまり恋愛の神様の総本山なのだと。
それを特に意識していつになく丁寧に拝んできたの。
誰とは言いませんが、いいご縁がありますように……。
連れのヤローどもは論外ですからお間違えのないようお願いします、縁結びの神様……。
デスクの脇には同じく買ったばかりのフォトスタンドが立ててある。
中のハンサムな男の人の写真と目があう。
彼の名は九条高広。会長の弟クン。
せめて私も人探しの手助けをしようと会長に申し出たらこの写真を渡された。
正面顔のどう見ても証明写真。まあ何とも味気のないこと。もうちょっと色んなスナップがあればイメージしやすいのに。男所帯ってそういう写真撮らんのか。
しかしさすがにあの人の弟だけあって、かっこいいこと!
似てるって感じじゃないけどね。さわやかな好青年という類だろうか。会長はお父さん似で弟はお母さん似なんだって。……どんだけ美男美女なんだよ、ご両親。
ライトブラウンのライオンヘアー。身長は182cm。歳は28。
この写真は5年位前のものなので勝手に現在図を脳内修正して。毎晩のように眺めて顔を頭に叩き込んでいる。
この人口爆発シティで1人の人を見つけ出すなんて至難の業だ。新宿だけで毎日300万人以上行き交ってるらしいし。
そもそも高広クンがここに来るかどうかもわからない……。
でもね。
もし私が彼の立場だとしたら、定期的に肉親の様子探りに来ると思うんだ。仲良しだったお兄さんの姿をそっと確認しに。やっぱり心配だもの。
違うかな……?
万が一ってこともある。世の中何が起こるかわからないから。私がいい例だ。室長のお呼びがなければ今の待遇はなかったんだもの。まさに千載一遇、こんな四字熟語を遣うこともめったにないのに自分の人生でそんな目に遭うなんてね。
奇跡よ再び。早く見つかってほしい。
そうすれば会長も心置きなく渡米できるだろう。
あんな悲しい顔することもなくなる。
だから私の飛行機克服と同じくらい重要課題なの。
神様、九条高広クンにあわせてください。お願いします……。
12
あなたにおすすめの小説
今さらやり直しは出来ません
mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。
落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。
そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……
行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました
鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。
けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。
そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。
シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。
困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。
夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。
そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。
※他投稿サイトにも掲載中
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
妖狐の嫁入り
山田あとり
恋愛
「――おまえを祓うなどできない。あきらめて、俺と生きてくれ」
稲荷神社の娘・遥香(はるか)は、妖狐の血をひくために狐憑きとさげすまれ、ひっそり生きてきた。
ある日、村八分となっている遥香を探して来たのは怨霊や魔物を祓う軍人・彰良(あきら)。
彼は陰陽師の名門・芳川家の男だった。
帝国陸軍で共に任務にあたることになった二人だったが、実は彰良にもある秘密が――。
自己評価は低いが芯に強さを秘める女が、理解者を得て才能を開花させる!
&
苦しみを抱え屈折した男が、真っ直ぐな優しさに触れ愛を知る!
明治中期風の横浜と帝都を駆ける、あやかし異能ロマンス譚です。
可愛い妖怪・豆腐小僧も戦うよ!
※この作品は、カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。
櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。
夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。
ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。
あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ?
子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。
「わたくしが代表して修道院へ参ります!」
野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。
この娘、誰!?
王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。
主人公は猫を被っているだけでお転婆です。
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…
ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。
一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。
そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。
読んでいただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる