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3話 はじめての課題
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外に出るとぱーっと視界が開けた。空には崩れたナスカの地上絵みたいな雲が広がっている。見わたす限りのそらそらそら……くるまくるまくるま……あとは……ナッシング。
「ここで待っとう? 車付けるで」
「そうねえ。でもあんまり距離ないんじゃない?」
「結構歩くで」
「そうだっけ?」
車寄せの向こうは巨大な駐車場。その手前の横断歩道の前でなんか喋ってる二人のすぐ後ろで、私は初めて気づいたのだ。
ーーえーと、ここってこんな山奥だったの?
「ねー、かな、荷物たくさんある?」
「荷物?」
そしてもっと早くに気づいておくべきことに気づいた。
「あーーー、忘れてたっ」
慌てて自分のバッグを探った。「これこれっ」「???」
びっくりして私を見る二人に差し出す。
「お、おみやげっていうか。つまんないものですが」
「えっ」「えっ」
二人はさらに驚いて目を丸めた。
「おみやげって」
「この前たくさんもらっちゃったし……せめてもの気持ち」
「えーー、別にいいのに」
こんなところで渡しちゃって。出された以上相手も受け取らざるを得ない。あきえは「ありがとう」と言って白いビニールの袋から中のものを出した。
「かわいい」
DEAN&DELUCAロゴ入りトートバッグ大と小。グレーの大と小は黒と白のふたつ。
グレーのをさっそく肩にかけるあきえ。
「これよく見かけるー。いいじゃん♪」
そうなの。むちゃくちゃ持ってる子多い。小さいやつランチトートにしてる人もいるし。
最近新宿で赤の限定トート持ってる人見かけて、やっぱこれかなと購入。
ネットでも売ってるポピュラーグッズだけど、喜んでもらえてよかった~。
「こっちは?」
あきえは袋の中からもうひとつ、紙袋に入った小さなギフトボックスを開ける。「カップ?」
「うん、そう」
ぽってりした形がいいんだよね。かすれた色も。
「かわいい~。こういうのほしかったんだ~」
あきえはかざした。ここ思い切り『そと』なんだけど。いや、こんなところでおみやげ出す私が悪い。
「きゃ~。ペアなんだね、ありがと、かなっ、大事にするね。おしゃれ~」
よかった。
ロゴ一つでデリの雰囲気を醸し出すマグカップ。私もお気に入りのカフェアイテムだ。
会長室でも使ってる。
これにコーヒーを注いでビーンズペーストなどを添えたnyデリカっぽいプレートを出すと、三回に一回くらいの割合で会長はnyソーホー勤務時代のことを話してくれるのだ。
どこそこで暴動があって銃声聞きながら食ったとか、またあるときは映画の撮影で全面封鎖されて静かだったとか・・。
私は会長の言葉や表情から行ったことのないnyの風景を思い浮かべて……これが結構楽しいひとときだったりする。
まー、彼の機嫌が良くなおかつ時間にゆとりがあるときに限るが。大体月2程度か? 最近は……ないなあ。
「ねー、みっくんこれにしよっか、今日の荷物入れ」
「そうやな。ええんか? ありがとうな」
ありがとうの「と」にアクセントを置いたお礼を言われ、胸が緩む。西日本界隈のアクセントだよね。
「荷物入れって?」
ふと気になって私は尋ねた。
「うん。そう。これから温泉一泊するの」
「え~、そうなんだ。どこ?」
「湯本だよ~」(宇部より西にある温泉地)
ねっ、とあきえは彼氏と目を合わせた。
そ、そうだったの? 私、何も聞いてなかった。
「そっか。ごめんね。無理言っちゃって」
「全然! 」
「ほんまや。宇部なんか途中やん」
「す、すみません」
急に恐縮する私。車出してもらって当然!……的なノリはどこへやら。
彼氏のイケメンぶりにやられたわけではない。ええ、決して。
「ま、乗ってや。狭いけどな」
さっと後部ドア開けてすすめられたのはかわいらしいレトロな小型車だった。
カフェオレみたいな色。
「かわいい~」
思わずつぶやいてしまった。
彼氏はふっと笑った。
「別に俺の趣味やあらへん。オヤジの就職祝いや」
おお、なんてオシャレなパパさんなんだ。
「外車ですか?」
「いやいや。国産。時々走っとるで」
ふ~ん、そうなんだ。車名聞いても知らないなあ……。車はあんまり詳しくないのだ。
あきえってば、彼氏の車もがらっとイメチェンしてんじゃん。
走り屋的な車乗りばっかだったのに。
変われば変わるもんだ。
「親戚がこないな車好きでこんなんばっか集めて売っとーよ。そこで買うたんや」
「へ~。中古車屋さんですか」
「まあなあ。俺はオヤジのカメラ欲しかったんやけどな。まるめこまれてしもたわ」
カメラ?
「この車なあ、よう写メられるで。さっきもね」
あっきもうんうん頷く。
「まあ、乗ってーな。古いけどエンジンとタイヤは新品や。座り心地いまいちなん、そのへんのクッションで調整してな」
笑いながらすすめてくれる。中もなかなかのラブリーぶり。
パステルカラーの円形クッションとふわふわの巻き毛生地の白いひざ掛け。その向こうに無造作に置かれたカメラバッグ。ジッパーが半分あいていて中のカメラが覗いてる。Nikomatのロゴ。オールドカメラ、本式の一眼レフだ。目黒の家具屋さんにありそうな。
「あの~、カメラって、もしかして、これ?」
「ああ、そうや。やっと手に入ってん」
「え?」
と振り返ると彼氏はほんのちょっと……照れくさそうに微笑んだ。
「俺がいくらくれ言うても手放さへんかったのにな。こないだ神戸に戻ったらころっと人が変わっとんねん。『これ、お前にやるわ。欲しかってんやろ?』言うてな。いきなり何や聞いたらデジタル一眼買うとんねん」
「あ~~。そうなんだ。時代の流れ?」
私はくすっと笑った。彼氏は頷く。
「まあ、乗ってや」
「ここで待っとう? 車付けるで」
「そうねえ。でもあんまり距離ないんじゃない?」
「結構歩くで」
「そうだっけ?」
車寄せの向こうは巨大な駐車場。その手前の横断歩道の前でなんか喋ってる二人のすぐ後ろで、私は初めて気づいたのだ。
ーーえーと、ここってこんな山奥だったの?
「ねー、かな、荷物たくさんある?」
「荷物?」
そしてもっと早くに気づいておくべきことに気づいた。
「あーーー、忘れてたっ」
慌てて自分のバッグを探った。「これこれっ」「???」
びっくりして私を見る二人に差し出す。
「お、おみやげっていうか。つまんないものですが」
「えっ」「えっ」
二人はさらに驚いて目を丸めた。
「おみやげって」
「この前たくさんもらっちゃったし……せめてもの気持ち」
「えーー、別にいいのに」
こんなところで渡しちゃって。出された以上相手も受け取らざるを得ない。あきえは「ありがとう」と言って白いビニールの袋から中のものを出した。
「かわいい」
DEAN&DELUCAロゴ入りトートバッグ大と小。グレーの大と小は黒と白のふたつ。
グレーのをさっそく肩にかけるあきえ。
「これよく見かけるー。いいじゃん♪」
そうなの。むちゃくちゃ持ってる子多い。小さいやつランチトートにしてる人もいるし。
最近新宿で赤の限定トート持ってる人見かけて、やっぱこれかなと購入。
ネットでも売ってるポピュラーグッズだけど、喜んでもらえてよかった~。
「こっちは?」
あきえは袋の中からもうひとつ、紙袋に入った小さなギフトボックスを開ける。「カップ?」
「うん、そう」
ぽってりした形がいいんだよね。かすれた色も。
「かわいい~。こういうのほしかったんだ~」
あきえはかざした。ここ思い切り『そと』なんだけど。いや、こんなところでおみやげ出す私が悪い。
「きゃ~。ペアなんだね、ありがと、かなっ、大事にするね。おしゃれ~」
よかった。
ロゴ一つでデリの雰囲気を醸し出すマグカップ。私もお気に入りのカフェアイテムだ。
会長室でも使ってる。
これにコーヒーを注いでビーンズペーストなどを添えたnyデリカっぽいプレートを出すと、三回に一回くらいの割合で会長はnyソーホー勤務時代のことを話してくれるのだ。
どこそこで暴動があって銃声聞きながら食ったとか、またあるときは映画の撮影で全面封鎖されて静かだったとか・・。
私は会長の言葉や表情から行ったことのないnyの風景を思い浮かべて……これが結構楽しいひとときだったりする。
まー、彼の機嫌が良くなおかつ時間にゆとりがあるときに限るが。大体月2程度か? 最近は……ないなあ。
「ねー、みっくんこれにしよっか、今日の荷物入れ」
「そうやな。ええんか? ありがとうな」
ありがとうの「と」にアクセントを置いたお礼を言われ、胸が緩む。西日本界隈のアクセントだよね。
「荷物入れって?」
ふと気になって私は尋ねた。
「うん。そう。これから温泉一泊するの」
「え~、そうなんだ。どこ?」
「湯本だよ~」(宇部より西にある温泉地)
ねっ、とあきえは彼氏と目を合わせた。
そ、そうだったの? 私、何も聞いてなかった。
「そっか。ごめんね。無理言っちゃって」
「全然! 」
「ほんまや。宇部なんか途中やん」
「す、すみません」
急に恐縮する私。車出してもらって当然!……的なノリはどこへやら。
彼氏のイケメンぶりにやられたわけではない。ええ、決して。
「ま、乗ってや。狭いけどな」
さっと後部ドア開けてすすめられたのはかわいらしいレトロな小型車だった。
カフェオレみたいな色。
「かわいい~」
思わずつぶやいてしまった。
彼氏はふっと笑った。
「別に俺の趣味やあらへん。オヤジの就職祝いや」
おお、なんてオシャレなパパさんなんだ。
「外車ですか?」
「いやいや。国産。時々走っとるで」
ふ~ん、そうなんだ。車名聞いても知らないなあ……。車はあんまり詳しくないのだ。
あきえってば、彼氏の車もがらっとイメチェンしてんじゃん。
走り屋的な車乗りばっかだったのに。
変われば変わるもんだ。
「親戚がこないな車好きでこんなんばっか集めて売っとーよ。そこで買うたんや」
「へ~。中古車屋さんですか」
「まあなあ。俺はオヤジのカメラ欲しかったんやけどな。まるめこまれてしもたわ」
カメラ?
「この車なあ、よう写メられるで。さっきもね」
あっきもうんうん頷く。
「まあ、乗ってーな。古いけどエンジンとタイヤは新品や。座り心地いまいちなん、そのへんのクッションで調整してな」
笑いながらすすめてくれる。中もなかなかのラブリーぶり。
パステルカラーの円形クッションとふわふわの巻き毛生地の白いひざ掛け。その向こうに無造作に置かれたカメラバッグ。ジッパーが半分あいていて中のカメラが覗いてる。Nikomatのロゴ。オールドカメラ、本式の一眼レフだ。目黒の家具屋さんにありそうな。
「あの~、カメラって、もしかして、これ?」
「ああ、そうや。やっと手に入ってん」
「え?」
と振り返ると彼氏はほんのちょっと……照れくさそうに微笑んだ。
「俺がいくらくれ言うても手放さへんかったのにな。こないだ神戸に戻ったらころっと人が変わっとんねん。『これ、お前にやるわ。欲しかってんやろ?』言うてな。いきなり何や聞いたらデジタル一眼買うとんねん」
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