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3話 はじめての課題
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雲ひとつない真っ青な空にいつの間にか飛行機雲が流れていた。
かなり高い。
この白い線のはるか延長にまします我が君‥‥
今日は千葉でゴルフか。
しれっと週末ゴルフに予定変更。本当は会長が来るはずだった私の出張‥‥
なんかもやっとするんだよね。ひょっとして、してやられたり?
イヤイヤそんなことは‥‥
ゴルフったって接待だし、つまんないに決まってる。
スーツじゃない会長みてみたいなあ。どんなふうにプレイするのだろう。nice shot なんて言ったりするのかな。
「いつ飛行機が通ったのかな。もしかして戦闘機?」
ふと思いついて言ってみた。米軍基地があったはずだ
「え、岩国の?いや、ここは滅多に通らんよ。多分福岡ー東京とかそんなんでしょう」
ふーん。そうなの。
「東京の人には珍しくもなんともないですよね。そこの空港から飛んでる便もすごく少ないですよ」
と、高田さんは遠くに見える空港を首で指した。
「戦闘機‥‥見てみたいな」
「見たいですか? 時間あれば行きましょか? 運良ければ見れるよ」
「え、いいんですか?」
「もちろん、もちろん。詳しいヤツに聞いときましょうか、出没ポイント。えーとあれどこやったかな、夏‥‥海で泳いでたら真上を横切っていったことあったな」
「へえ」
それもいいなあ。また広島経由で帰ろうかな。
でも飛行機‥‥。帰路のことを思うと頭が重いわ。
こっそり新幹線で帰っちゃおうかな。時間かかるけど東京終着だから寝ちゃってもいいし。
「市川さん、足場気をつけて」
「はい」
ビルの裏に出た。広い緑地のずっと向こうに丸い池が連なっている。
えーあれがそうなの?コンクリートのプールを想像していた。
「エビというよりまりもがいそうですね」
私は言った。
「まりも?ここ山口っすよ」
ははっと呆れ顔で返された。
「ここの景色スターウォー◯のセットにちょっと似てませんか」とっさに私は言った。
「え、どこが?」
高田さんはキョトンとしてゆっくり顔を回した。そしてほう、と頷いた。
「あーー、砂丘っぽいところがね。見えなくもないけど」
無理して褒めてくれなくてもいいですよ、と苦笑された。
「何、そういうの好きなん?」
聞かれて返事に困った。
‥‥実は観たことなんですよねー。なのに何言ってるの、私。スターウォー◯どころかアバ◯ーもトラン◯フォーマーも観てない、『‥‥いつの時代の子よ?』て友達に呆れられたくらい、ファンタジー苦手人間のくせして。ロボットアニメも苦手で、そっち系のオタである兄には『ロマンのないやつ』と一瞥されちゃうくらい。
「テーマパークでこういうとこあるじゃないですかー」
言い方を変えよう。
「テーマパーク?へー、高いところで仕事してる人は見所が違いますね」
え?
「50階、でしたっけ。見る世界が違うんでしょうね。俺も一度拝んでみたいなあ」
そそそんな。バベルの塔みたいに言わないで。
「映画のセットか」
変なこと言っちゃった‥‥私は仕方なく角度を変えて全景をカシャカシャカシャ‥‥。
思いの外いい景色だったから。崖をグリーンが滝のように覆っていてハワイの離島と言えなくもない。向こう岸ではカラオケ大会でもしているのかな。歌声がガンガン響いて、『♪ぼくーらーいーまーー』某アイドルのモノマネのようだ。なんてのんびりしてるんだ。
「昔、遊園地を誘致してた頃の話じゃバイオパーク?っていうか、植物園併設の遊戯施設みたいなもんだったらしいんよね。水族館やらサファリパークやらはみんな他に持って行かれて」
それが一体どんな変貌を遂げるんだろう。私の報告にかかっているのかな。まさかね。私の担当はエビの料理だ。
「まあ、今更遊園地を、なんて思ってませんけどね、ははは‥‥」
「高田さん!」
私は声を上げた。
「はい?」
「明日のことは誰にもわからないんです。駄目元です、思ったことは形にしましょう!」
「はははい」
ちょっと何言ってるんだ私‥‥だけど私は続けた。
「私だって‥‥今はたいそうな肩書き頂いてますが、元々は派遣だったんです。それが(なんだか知らないけど)今ここにこうして来てます。これってすごいことなんです。だから、高田さんもあきらめないで夢はでっかく持ってください!うちの会社(変だけど)請け負ったものを途中で投げ出すようなことは絶対ないです(会長がそうだから)! 話もちゃんと聞いてくれます(威圧的だけど)」
「そ、そうなんだ。市川さん、派遣だったん」
「ええ」
なんだか随分余計なことを言っちゃった。 高田さんは目を丸くして唸った。
「それが会長さんのお世話を? へええええー、すげーなー」
コーヒーのおかげだってこと言うと別の意味のスゲーになるんだろうな。まあ言わないけどさ。
「ここだけの話ですよ」
「は、はい」
そんな褒めてもらっても……。おじさんたちには言わないでね。
「じゃ、自慢のエビたちを見てもらいましょう」
遠くに見えてたエビの養殖池に到着した。
「いっぱいいるー」
食用プラス観賞用、品種改良用‥‥昔は子供に分けてあげてたりしたんだって。近所の子供の遊び場だったらしい。危ないので今は立ち入り禁止だと。
「どうです、立派でしょう」
伊勢海老‥‥この不思議な形。甲殻類とはよく言い表したものだ。SFチックなボディ、ちっちゃいバルタン星人というか。実はこの池は異空間につながっていて、エビたちは地球乗っ取りのために送り込まれた先遣隊なのだ。食べられることによって使命を果たす。血液に体液に細胞にじわじわ浸出するアルファーエビエキス、やがて誰もそれと気づかないうちにまんまと体を乗っ取るのだ。hahahahaーー。と、こんなストーリーはどうかな?
「この辺でちょっと休みますか」
一通り見て回って少し休憩、おじさんたちは次の準備をするため建物に戻っていった。
飛行機が空港に着陸していく。瀬戸内の波は穏やかでキラキラ揺れている。
ホントぼーっと過ごすのにぴったりな場所だ。
おじさんたちゆるゆるした視察で拍子抜けだろうな。会長が来てたらこうはいかないわ。
「‥‥市川さん、昨夜親父と話したんやけど、よかったらうちに来ませんか。ご馳走しますよ。大したもんないけど」
「えっ、いいんですか」
「ええ。お袋がいい肉が手に入ったけん、天ぷらしようか? って。ほら、昨夜言ってたでしょ、ホルモンの」
え、嘘、ラッキー!私はウンウン頷いた。
嬉しいー天ぷら大好きー。人の家で食べるのは久しぶりだわ。
「ええ、実は水曜日まで休暇取ってるんですよね」
「へーじゃあのんびりできるじゃん。飲みすぎてダウンしても泊まっていけばいいっちゃ」
「え?」
「いける口でしょ、市川さん」
高田さんは手をくいっとやってウィンクした。
バ、バレてた‥‥?ハハハ。「あ、お袋、あのさ、昨夜の話ーーー」携帯でおうちに連絡を入れてる。
「今日は暑いねえ。喉乾きませんか」
「ええ、すこし」
「俺、飲み物持ってきますわ」
高田さんが離れて、私はテクテク池のほとりを歩いた。中でエビがちょろちょろ動いてる。携帯をかざし、写メろうと構えて、あっと驚いた。
ーー青いエビがいる。
さっと他のエビの下に隠れた。
ホントに?
脱皮した殻がそう見えたのかな。
池を覗き込んだ。
ーーいた。
確かに青い!
ズーム!
あー、イマイチピントが。逆光でよく見えない。
ブロガーのサガなのか‥‥私はケータイの画面に引きずられるようにズンズン足場の悪い縁に身を乗り出してしまった。「わっ‥‥」
足がグニュっと泥土にはまり、体のバランスがどこかへ飛んでいった。
「わわわわわーーーー」
ザッパーーーン‥‥
そのまま豪快にダイブした。
「うわっぷ‥‥」
何ここ結構深いーーー
「た、たすけ‥‥」
何とか顔を出して縁に手を伸ばすが届かない。
「たすけてーーー」
叫んだ。
エビが体に当たってチクチク痛い。
ひぃーこっちくるなーーー!
「だれかーーー」
やだやだやだやだすっごい数いるじゃん!
コ、コワイッーーーー
たすけて‥‥
◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇
フィクションです。上記のような場所は現地に存在しないのでご了承ください。
かなり高い。
この白い線のはるか延長にまします我が君‥‥
今日は千葉でゴルフか。
しれっと週末ゴルフに予定変更。本当は会長が来るはずだった私の出張‥‥
なんかもやっとするんだよね。ひょっとして、してやられたり?
イヤイヤそんなことは‥‥
ゴルフったって接待だし、つまんないに決まってる。
スーツじゃない会長みてみたいなあ。どんなふうにプレイするのだろう。nice shot なんて言ったりするのかな。
「いつ飛行機が通ったのかな。もしかして戦闘機?」
ふと思いついて言ってみた。米軍基地があったはずだ
「え、岩国の?いや、ここは滅多に通らんよ。多分福岡ー東京とかそんなんでしょう」
ふーん。そうなの。
「東京の人には珍しくもなんともないですよね。そこの空港から飛んでる便もすごく少ないですよ」
と、高田さんは遠くに見える空港を首で指した。
「戦闘機‥‥見てみたいな」
「見たいですか? 時間あれば行きましょか? 運良ければ見れるよ」
「え、いいんですか?」
「もちろん、もちろん。詳しいヤツに聞いときましょうか、出没ポイント。えーとあれどこやったかな、夏‥‥海で泳いでたら真上を横切っていったことあったな」
「へえ」
それもいいなあ。また広島経由で帰ろうかな。
でも飛行機‥‥。帰路のことを思うと頭が重いわ。
こっそり新幹線で帰っちゃおうかな。時間かかるけど東京終着だから寝ちゃってもいいし。
「市川さん、足場気をつけて」
「はい」
ビルの裏に出た。広い緑地のずっと向こうに丸い池が連なっている。
えーあれがそうなの?コンクリートのプールを想像していた。
「エビというよりまりもがいそうですね」
私は言った。
「まりも?ここ山口っすよ」
ははっと呆れ顔で返された。
「ここの景色スターウォー◯のセットにちょっと似てませんか」とっさに私は言った。
「え、どこが?」
高田さんはキョトンとしてゆっくり顔を回した。そしてほう、と頷いた。
「あーー、砂丘っぽいところがね。見えなくもないけど」
無理して褒めてくれなくてもいいですよ、と苦笑された。
「何、そういうの好きなん?」
聞かれて返事に困った。
‥‥実は観たことなんですよねー。なのに何言ってるの、私。スターウォー◯どころかアバ◯ーもトラン◯フォーマーも観てない、『‥‥いつの時代の子よ?』て友達に呆れられたくらい、ファンタジー苦手人間のくせして。ロボットアニメも苦手で、そっち系のオタである兄には『ロマンのないやつ』と一瞥されちゃうくらい。
「テーマパークでこういうとこあるじゃないですかー」
言い方を変えよう。
「テーマパーク?へー、高いところで仕事してる人は見所が違いますね」
え?
「50階、でしたっけ。見る世界が違うんでしょうね。俺も一度拝んでみたいなあ」
そそそんな。バベルの塔みたいに言わないで。
「映画のセットか」
変なこと言っちゃった‥‥私は仕方なく角度を変えて全景をカシャカシャカシャ‥‥。
思いの外いい景色だったから。崖をグリーンが滝のように覆っていてハワイの離島と言えなくもない。向こう岸ではカラオケ大会でもしているのかな。歌声がガンガン響いて、『♪ぼくーらーいーまーー』某アイドルのモノマネのようだ。なんてのんびりしてるんだ。
「昔、遊園地を誘致してた頃の話じゃバイオパーク?っていうか、植物園併設の遊戯施設みたいなもんだったらしいんよね。水族館やらサファリパークやらはみんな他に持って行かれて」
それが一体どんな変貌を遂げるんだろう。私の報告にかかっているのかな。まさかね。私の担当はエビの料理だ。
「まあ、今更遊園地を、なんて思ってませんけどね、ははは‥‥」
「高田さん!」
私は声を上げた。
「はい?」
「明日のことは誰にもわからないんです。駄目元です、思ったことは形にしましょう!」
「はははい」
ちょっと何言ってるんだ私‥‥だけど私は続けた。
「私だって‥‥今はたいそうな肩書き頂いてますが、元々は派遣だったんです。それが(なんだか知らないけど)今ここにこうして来てます。これってすごいことなんです。だから、高田さんもあきらめないで夢はでっかく持ってください!うちの会社(変だけど)請け負ったものを途中で投げ出すようなことは絶対ないです(会長がそうだから)! 話もちゃんと聞いてくれます(威圧的だけど)」
「そ、そうなんだ。市川さん、派遣だったん」
「ええ」
なんだか随分余計なことを言っちゃった。 高田さんは目を丸くして唸った。
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遠くに見えてたエビの養殖池に到着した。
「いっぱいいるー」
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「え?」
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「今日は暑いねえ。喉乾きませんか」
「ええ、すこし」
「俺、飲み物持ってきますわ」
高田さんが離れて、私はテクテク池のほとりを歩いた。中でエビがちょろちょろ動いてる。携帯をかざし、写メろうと構えて、あっと驚いた。
ーー青いエビがいる。
さっと他のエビの下に隠れた。
ホントに?
脱皮した殻がそう見えたのかな。
池を覗き込んだ。
ーーいた。
確かに青い!
ズーム!
あー、イマイチピントが。逆光でよく見えない。
ブロガーのサガなのか‥‥私はケータイの画面に引きずられるようにズンズン足場の悪い縁に身を乗り出してしまった。「わっ‥‥」
足がグニュっと泥土にはまり、体のバランスがどこかへ飛んでいった。
「わわわわわーーーー」
ザッパーーーン‥‥
そのまま豪快にダイブした。
「うわっぷ‥‥」
何ここ結構深いーーー
「た、たすけ‥‥」
何とか顔を出して縁に手を伸ばすが届かない。
「たすけてーーー」
叫んだ。
エビが体に当たってチクチク痛い。
ひぃーこっちくるなーーー!
「だれかーーー」
やだやだやだやだすっごい数いるじゃん!
コ、コワイッーーーー
たすけて‥‥
◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇ ◇◇
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