会長にコーヒーを☕

シナモン

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5話 天敵とモール

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 日差しはきついけど、木々とタープでちょうどよく遮られ、心地よい風が抜けていく。焼きたてのピザがテーブルに並んで、隣のルリカさんはアランさんに自分のピザを食べさせた。

「Hey honey, how about you make the pizza dough and I do the toppings?」
「Great, maybe that's what I'll do・・・・・・」

「おいしーわ」

 とろとろのゴルゴンゾーラとモッツアレラとパルミジャーノと地元産ヤギのチーズが口の中で混ざる。
 高温で焼いてるので外側の耳のところもカリッと膨らんでめちゃくちゃうま~。

「キミ、チーズに気をつけろよ」反対側の隣席の会長が囁いた。
「ヒスタミンが多いよ。トマトもアンチョビも」
 すでにお腹の中だ。ピザのトッピングにゴルゴンゾーラと蜂蜜の組み合わせ考えた人すごいわ。ゴルゴン+はちみつの『にが甘』が最高。

「これの出番がなければいいが」

 会長は胸のポケットから、アドレナリンを打つ薬・・エピペン・・を差し出した。

「え、持ってこられたんですか」
「一応、念のためにね」
 結構大きい…。でかいマジックペンのよう。

「どうせ持ってきてないんだろう」
「は、はい」

「今回は私がいるからいいが、一人の時に苦しくなったら腿にこれをうつんだぞ。力こめて直角にな。形だけでも練習しといたほうがいいかもな」

「・・けっこうハードなんですね」

「自覚がないんだねえ。症状が出たらつらいのは君だろうに」
 あきれ顔された。ですよね・・。携帯するように渡されているのに。「チーズがダメなんて知らなくて」
「注意書きにあったぞ。それに牛が食べる飼料に甲殻類エキスが含まれてるかもしれないよ」
 なるほど…。
「冷や冷やするな」
「何でですか」
「一人で歩いてるときにショックが起こってそのまま放置されたらアウトだからだよ」
「えっ……」

「Hey, give me a slice」

 そのお隣のエリザベスさんが会長に話しかけてきた。あら、いつの間にかそういう並びになってるんだ。
「You can have it」会長は前向いたままそっけなく返す。
「I don't like the sound of that」
「It's been a while since I've been to a pizza party.Elizabeth, why don't you take a walk after you eat,for a change?」
「That's a good idea, but I have a better one. Honey, why don't you come for a walk with me」レオさんが笑った。助け船を出したように見える。

 顔の表情で何となく伝わるような気がするけど、こういうのが日常になるんだよなー。やっていけるのかな・・・。

「ふっ、その様子だと英語もまだまだのようだな」見透かされたような言葉を食らった。
「そ、そりゃそうですよ、話せませんもん」 
「アレルギー剤常備しないといけないし、英語は話せないし、飛行機は乗れないし、キミの世話は大変だね。本人に自覚がないとなるとますます・・・」
 そうですよね? やっぱり渡米なんて無理…とはならないか。「せめて高広がいればな・・・まかせられるのに」
 高広くん!? そうか、あいつに頼むという手があったわ。
「それにしてもナルさんより下手だなんてショックだわ」ルリカさんがこちらを向いた。「お魚はしょうがないけど、ピザ生地もなんて」
「・・・酵母が寄り付きにくい体質なのかもしれないよ。酒を飲むかどうかも関係あるかもしれないね。ルリカはアルコールダメだったよな」
「そうなの?」
 私を間にはさんで話が飛び交う。
「高広の持論だけどね。案外ありかもしれないよ。ワインの発酵も元々は常在菌の仕業だしな」
 今でも素朴なワインづくりは足で踏んで仕込んでいる。
「そう・・・弟さん、学者なんだっけ。・・・元気してるといいね」
「ああ、そういえば、メールをよこしてきたんだった」

 えっ・・とルリカさんは顔をこわばらせた。


「弟さん見つかったの?・・・やだ、早く言ってよ」

 それから英語でみんなに知らせ、「おお!」と歓声が上がった。
 皆、高広くんと知り合いなんだね。
 私もですけどねー。でもこのことはとりあえず秘密ね・・。
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