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9話 残り香
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先月松江を訪れ、当然香苗の実家の住所もわかっている。だだっ広い平地に広がる出雲空港から直接タクシーでにぎやかな国道を離れ、山間部へ向かうとすぐにのどかな風景へと変わる。
実家は古い日本家屋で、玄関周りは花が飾られ、たたきもきれいに手入れが行き届いていた。
両親は高広の訪問に驚いた。まず苗字が九条。
「会長さんの息子さんですか。」両親は会長は年配だと何故か思い込んでいた。
「いえ、ぼくは弟です。」
高広はきちんと正装しており、床の間に通された。雑多なものは何もない和室の客間だ、古き良き日本の香りがする。
「年が離れられてるんですね」
「ええまあ。」
5歳、、6歳? そんなに離れてるかな? おかしいなと思いつつ、高広は説明し、届を出してもらうことに納得してもらった。一緒に届け出に向かう。
松江警察署の受付で、高広は迷いなく申請書を受け取った。 香苗の両親は、彼の手際の良さに目を見張った。 「ええ男だわ…」母親がぽつりとつぶやく。 父親も頷いた。「もしかして、この人と香苗は…」 その言葉は最後まで言葉にならなかったが、推測は残った。
高広は、香苗の身長や服装、最後に確認された場所を丁寧に記入していく。
「連休中なので服装はわからないんですよね。もしかしたらどこかに出かけたのかもしれません。」
「それでしたら、その旨をこちらにお書きください」
その姿に、両親は静かに信頼を寄せていった。 「これで、正式に動いてもらえるはずです」彼の声は透き通り静かだったが、確かに頼もしかった。
家に戻り、 高広は玄関先で深々と頭を下げた。 「今日はありがとうございました。ご心配なことがあれば、すぐ連絡ください」 両親は何度も頷いた。
「ええ男…」母親がまたつぶやいた。 父親も、「香苗がこんな人と知り合いだったとはな」と言った。 その言葉に、ほんの少しだけ安堵が混じっていた。
だが、二人は彼が先月、香苗を突然呼び出し、行き先も告げずに鉄道旅行へ誘った男と同一人物だとは、想像もできないだろう。
ええ男だ。何も知らず両親はほれぼれと見送った。
高広には気がかりな点があった。マヤのブログをさかのぼると、ある神社を訪れていた。それは。画像から判断するに、縁切り神社として有名な都内の神社だった。
マヤさん何を願ったんだろう・・・さすがにそこまでは邪推でしかない。ブログにはただお参りしてきましたとしか書かれてないからだ 高広は神社に行ってみる。
おびただしい数の絵馬が、木の枝や格子に括りつけられていた。 紐の擦れる音が風に鳴り、紙の端が小さく震えている。 高広はその場に立った瞬間、強い殺気のようなものを感じた。 祈りというより、呪いに近い。猛々しい願いが、木々の間に渦巻いていた。
「悪縁を切る…何の?」 高広は呟いた。 「兄さんとの良縁を祈るのではなく?」 その問いは、誰に向けたものでもなかった。 ただ、マヤのブログに載っていた写真の構図と、今目の前にある風景が、あまりにも一致していた。
ジャラジャラと絵馬をあさってみた。 紐が絡まり、木片がぶつかり合う音が境内に響いた。 一枚一枚、筆跡を追い、言葉を読み取ろうとした。 「別れたい」「忘れたい」「終わらせたい」 そんな言葉ばかりが並んでいた。
それらしい書き込みには、出会わなかった。 マヤの名前も、兄の名前も、香苗の影もなかった。 でも、そこに“何か”がある。
願いって、誰かに見せるものじゃないよな。 高広はそう思った。 マヤが何を祈ったのか、知ることはできない。 でも、彼女がここに来たのは事実だ。
兄さん・・・どうする?
実家は古い日本家屋で、玄関周りは花が飾られ、たたきもきれいに手入れが行き届いていた。
両親は高広の訪問に驚いた。まず苗字が九条。
「会長さんの息子さんですか。」両親は会長は年配だと何故か思い込んでいた。
「いえ、ぼくは弟です。」
高広はきちんと正装しており、床の間に通された。雑多なものは何もない和室の客間だ、古き良き日本の香りがする。
「年が離れられてるんですね」
「ええまあ。」
5歳、、6歳? そんなに離れてるかな? おかしいなと思いつつ、高広は説明し、届を出してもらうことに納得してもらった。一緒に届け出に向かう。
松江警察署の受付で、高広は迷いなく申請書を受け取った。 香苗の両親は、彼の手際の良さに目を見張った。 「ええ男だわ…」母親がぽつりとつぶやく。 父親も頷いた。「もしかして、この人と香苗は…」 その言葉は最後まで言葉にならなかったが、推測は残った。
高広は、香苗の身長や服装、最後に確認された場所を丁寧に記入していく。
「連休中なので服装はわからないんですよね。もしかしたらどこかに出かけたのかもしれません。」
「それでしたら、その旨をこちらにお書きください」
その姿に、両親は静かに信頼を寄せていった。 「これで、正式に動いてもらえるはずです」彼の声は透き通り静かだったが、確かに頼もしかった。
家に戻り、 高広は玄関先で深々と頭を下げた。 「今日はありがとうございました。ご心配なことがあれば、すぐ連絡ください」 両親は何度も頷いた。
「ええ男…」母親がまたつぶやいた。 父親も、「香苗がこんな人と知り合いだったとはな」と言った。 その言葉に、ほんの少しだけ安堵が混じっていた。
だが、二人は彼が先月、香苗を突然呼び出し、行き先も告げずに鉄道旅行へ誘った男と同一人物だとは、想像もできないだろう。
ええ男だ。何も知らず両親はほれぼれと見送った。
高広には気がかりな点があった。マヤのブログをさかのぼると、ある神社を訪れていた。それは。画像から判断するに、縁切り神社として有名な都内の神社だった。
マヤさん何を願ったんだろう・・・さすがにそこまでは邪推でしかない。ブログにはただお参りしてきましたとしか書かれてないからだ 高広は神社に行ってみる。
おびただしい数の絵馬が、木の枝や格子に括りつけられていた。 紐の擦れる音が風に鳴り、紙の端が小さく震えている。 高広はその場に立った瞬間、強い殺気のようなものを感じた。 祈りというより、呪いに近い。猛々しい願いが、木々の間に渦巻いていた。
「悪縁を切る…何の?」 高広は呟いた。 「兄さんとの良縁を祈るのではなく?」 その問いは、誰に向けたものでもなかった。 ただ、マヤのブログに載っていた写真の構図と、今目の前にある風景が、あまりにも一致していた。
ジャラジャラと絵馬をあさってみた。 紐が絡まり、木片がぶつかり合う音が境内に響いた。 一枚一枚、筆跡を追い、言葉を読み取ろうとした。 「別れたい」「忘れたい」「終わらせたい」 そんな言葉ばかりが並んでいた。
それらしい書き込みには、出会わなかった。 マヤの名前も、兄の名前も、香苗の影もなかった。 でも、そこに“何か”がある。
願いって、誰かに見せるものじゃないよな。 高広はそう思った。 マヤが何を祈ったのか、知ることはできない。 でも、彼女がここに来たのは事実だ。
兄さん・・・どうする?
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