タイムリミット 💍

シナモン

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タイムリミット

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「…起きた?」

 驚いて飛び起きた。目の前に男が立っている。

「なん!!」

「ーー…あんた、威勢がええな」

 男は頬に手を当てながら言った。私の右手がとっさに平手打ちくらわしていたのだった。30前後だろうか。シンプルな白シャツに黒のスラックス、少しウエーブした黒い髪。日に焼けた顔、くっきりきれいなカーブを描く目、低い声、刑事ドラマに出てそうな二枚目。
 ていうか、そんなの観察してる場合じゃない! 
 なんでこんなとこに寝かされてんのー? ベッドですらない、ありふれたどこかの事務所かなんかのビニール長椅子。あんた誰? おじちゃんはーー?

「ちょ、ふ、ふくっ」

 上半身何もつけてない! 慌てて手を回した。トップレスにデニムって、なんつー格好してんの。

「何なん、あんた! おじちゃんは」
「……そんな言い方せんといてーや。俺が突っ込んで行かんかったら、あのあと何されてたかわからんで」
 ーーか、関西弁!?
「は? 何言ってんの。それはおたくでしょ」
「何言うてんねん。俺行かんかったら、あんたあのおっさんに無茶苦茶されてたんやで」
 ええ? おじさんが?
「なわけないでしょ!」
「おっさんええ年して盛んやなあ。そういうとこは見習わなあかんな」

 ボケかますな。
 はっ……このチンピラとも熱血刑事ともとれる男の風貌、物言い、再放送の刑事ドラマにありがちな部屋の雰囲気……。こいつ、ひょっとして、

「おじさん立ち退きがどうとか言ってたわ。……もしかしてあんた、地上げ屋?」
「地上げーー…?」
「おじちゃんに立ち退きを迫ってるんでしょう」

 男は言葉に詰まって吹き出した。

「ーーは? 俺が? ドラマの見過ぎやろ」腹抱えて笑い出した。

 おい、その前にやることあるでしょ!

「……ちょっと! 膝掛けでいいから持ってきてくれない? 」

 男は姿勢を直しこっちを見る。

「あんたなんか勘違いしとるで。あのおっさん占有屋まがいのことしよんで」
「え?」
「ホンマたち悪いで。競売物件に割り込んで、価格をつり上げとるんや。貧乏人のふりしてな。億の金動かしとんねん」

 釣り上げ??
 男はふっと笑って、こちらをのぞき込む。

「あんた、じじー萌えか?」
「なにー?」
「おっさんむらっときたんやろな。ビックリしたで、部屋ん中でじいさんが馬乗りになって若い姉ちゃんーーしてたんやからな」
「やめて!」
 嘘嘘、信じない!
「……ええ度胸してんな、その恰好でよう喋れるわ。普通泣きわめくか真っ赤になるやろ」

 かぁーー…。
 だから布切れでいいからよこして! 胸を隠した腕にさらに力を込めて睨みつける。

「あんたがじっと見よーけん!」
「見てたわけやない、つい…」
「やめてよ、ばかっ……!」
「何言うてんねん、俺おらなおっさんにやられとったんやって。しかも薬で眠らして。やったあと何もなかったかのようにしれっと帰されとったやろ」
「薬……」

 嘘ーー。

「姑息やねえ。睡眠導入剤やないか? 高齢者の手当てかなんかもろうとるんやろ。病院で適当に症状言うたら出してくれるからな。麻薬と違って検出されにくいし複数混ぜれば効きもいい」
「嘘、そんなの信じられるわけないでしょ」
「まあまあ、おかげで楽に仕事できたわ。あのおっさんはもうあそこにおらへんで」

 嘘でしょーーー。

「……ところで服を返してよ」
「そんなもんあらへん、あんた、気絶しとるのを俺が車で運んできたんやで」
「嘘!」

 コイツに運ばれた? もちろん布かなんかで包んでですよね? って死体か!



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