タイムリミット 💍

シナモン

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タイムリミット

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 あーあ。サイアク。
 あれから、落ち込んだってものじゃなかった。
 男の前で上半身裸だったってのは事実で、それがそもそも堂本さんにされたって…信じられない。
 ニュースに報じられるでもなく、あの男の言ったことが正しいかウソなのか結局藪の中だけど、それらの事実は変わらない。
 ついでに関西弁が頭の中エコーするようになって、眠れないの!
 あの関西弁の男。
 男が最後に言った台詞。
 また……会う?

「ーーでね、次は地元に帰って旅行することにしたの。最近流行りの場所に連れて行ってくれるって」

 繁華街のカフェで、順調に話が進んでるらしい岡部の前で私は突っ伏してた。
 

「よかったね」嬉しそうにプランを語る岡部に呟くように相槌を打つ。
「ええ、そのうちあんたにも会わせるわ」

 クリームたっぷりのパンケーキを豪快に真ん中で切り分けて、皿に入れてくれた。「はいー。あんたの」やっと顔を上げてありがと、と受け取る。あんまり食べる気しないけど……。

「あんたのお相手だって金持ちそうでよかったじゃないの」
「そうねえ」

 恐ろしいくらい富豪みたいだけど……なんだか遠くにかすんでしまったように昔のことに思える。
 それほどあの日の出来事は刺激強すぎ。知り合いのおじさんに襲われて、私は上半身裸で、男に助けられて、説教……。
 

「紳士的な人よ。でも、あんまり丁寧に対応されるとなんだかピンとこなくて」
「贅沢な話ねー。なになに、やさしい紳士は物足りない? じゃあ、危険な男とか? ぷっ、あんたヤンキー好きだったっけ?」


 そこでまたあの関西弁男が浮かぶ。まるで都筑さんとは真反対の男だ。ルックスは刑事とか、戦隊もののヒーローみたいだった。

「ヤンキーじゃない!」私は思わず叫んだ。
「は?」

 そう、何とかレンジャーのレッド。熱血ヒーロー、その系統。…あ、違うか。

「……なわけないでしょ、そもそも私はあんたの代わりに婚活に参加しただけで、別に彼氏なんか欲しくないし」
「そんなツンデレ言ってんじゃないの!」
「やっぱ男ってヤレればいいんだなぁ……」ついぼやいた。おじさんにしろ、あいつにしろ、そこは結局変わらないでしょ。
「え、何、迫られたの?」
「そうじゃないけど」違う男にね。
「しょーがないでしょ! 男と女の性よ! ムラムラしなきゃ、何も始まらないじゃないの」

 岡地はテーブルを叩いた。

「あんた、とにかくめんどくさがりだから。直しなさいって。お付き合いして、ある程度深いところまで行って、それで合わないなと思ったらすぐ次いけばいいのよ。そう、貞操観念なんて亡者の妄言よ」

 それはそうだけど、落ち込んでるのはそこじゃない、知り合いのおじさんにやられそうになった、なんてとても言えないわ。さらに密室で若い男と押し問答、半裸で押し切ったなんて……。

「わかってるけど。セック○なんて面倒くさいわ」
「あんたねー」

 だけど、久々にドキドキした。あんなに力強い男、はじめてだ。
 思い切りおっぱい見られちゃったけど。

「あーあーー……」
「ため息ばっかり」

 このあと無茶ぶりな仕事も抱えてるってのに。
 どうしてくれると?

「あ、そうだ、話変わるけど、今着てる服、どう思う?」

 私はやっと頬杖つくまでに回復して、パンケーキのかけらをぱくっと口に入れた。

「ん? まあ、……はっきり言っていい?」
「うん」
「……おばさんぽいわ。らくちんなのはわかるけど、上のワンピースもどきがねえ……。柄も生地もおばさん愛用のチュニックみたいじゃん。スパッツみたいなスキニーもダメダメ。せめて緩いレギンスでしょ、丈長めの」

 う。 
 やっぱいけてなかったか。
 男に会った日に着ていたまんまのコーデだけど。

「いい加減スキニーなんてやめたら。誰も履いてないでしょ」
「う……ん」

 そう? でも店に売ってるってことは需要があるんではなくて??

「そのつもりだったけど、ワンピの下ならいいかとついつい履いてしまったの」
「ああ……」

 岡路は額に手を当て、ダメ出しポーズ。

「あんた……。根本的になってないわ。よくそれで男ゲットできたわねえ」
「私もそう思う……」

 あかんわ、こりゃ。やっぱりスキニーは全処分か。もったいなか……。

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