16 / 65
タイムリミット
16
しおりを挟む
「何言ってんの、あほ! もういい、じゃあ、このまま帰る」
なんとかバランスをとって立ち上がり男の手を振り払った。
「まてって、そんな恰好で…冗談言うなや」
「しょうがないじゃない」
「本気かいな」
「誰か親切な人がTシャツくらいめぐんでくれるでしょ」
隠すのやーめた! もうどうにでもなれーー。小走りにドア間際にかかる。あのハイヒールの時もそうだけど後先考えない。よくない病気だけどーー仕方ないわ。
こんな奴の餌食になるよりマシだー!
「あー、もう、わーったよ。服、きーや」
男は慌てて衝立の向こうに行って私の服を取り出した。
服! あるんかい! バッグも靴も。私は鬼スピードで受け取ると逆に衝立の向こうに下がった。
「ーー強情な女やな。て、俺、恩人なんやけどな」
しばらくして、声が近づいてきたと思ったら、男は衝立から覗き込んで、私を抱き寄せた。私はなんとか下着と服ーシャツワンピを着て、あとは靴……というところだった。
「っ……」
すごい速さでキスされた。
吸い付くようなキス。舌を絡めてくる。
こんなキス、今までのどの男とも違う。
「やめ……」
「これでおあいこ」
冗談……! きつく抱きしめられて股に足を差し込まれた。「あ!」私を刺激する。右手で後頭部を押さえ込まれ、一層深く口腔を弄られた。瞬間すごい衝撃が走る。
「ええ体してんねんな、顔かてきれいやし」
「ダメっ……」
力こめて男の胸を押した。
……! すかさず腕を掴まれる。
「やーめーろー!」
トウッ…。空手風に払いのけ離れた。シャツのボタンを閉じて、髪をかきあげる。
「かっこええやん」
狼みたいに男の目がギラついた。強い野生的な瞳。照明を映してギラギラ光を放つ。
「そんなヘロヘロのシャツで家に二人きりで、そりゃあ、おっさんもぐらっとくるわな」
ヘロヘロ!? 高かったんですけど。
「こんな時にお世辞?……悪かったわね、可愛い子じゃなくて」
「は? なんで」
「男はかわいい子が好きでしょ!」
「そんなん好き好きやんか」
「つまんないわ、どいつもこいつもかわいい、かわいい連発で! キモ」
「……あんたなんかあったん」
男は呆れたような顔をして、少し間が空いた。そしてふっと笑って、
「それでも女には変わりないで、気をつけなあかん」再び手首をつかまれる。
「はなして…」
「……『未遂』でしょうね?」かろうじて腕をつかんで抵抗を試みる。
「知らんわ。やったのおっさんやからな。とりあえずあの状態やったで」
信じられない!
「……おじさん、家族が帰って来るかもしれないから退去できないって。占有?なんてあるわけないわ」
私が知ってるおじさんは確かに家族思いという感じではなかったけど、部屋での様子はさみしそうに見えた。
そんな人が@/ピーほにゃららするかっての。
「あのなあ、そもそもあの辺一帯こっちのもんなの。正式には古くからの国の直轄領。不法占拠者が出ていくんは当たり前のことなんやで」
「うそ……」
「あんたにはあのおっさん、まともな人間に見えるん?」
聞かれてドキッとした。
「家の中見てみいな。ーー競馬競輪パチスロ……。どっぷりギャンブルに浸かっとるやろ。不動産でせこいことしだしたらまずまともな職には戻れんよ。そういうおっさんやから家族が出ていったんやろ」
「それは……」おじさんちの廊下に積まれてた新聞、赤い丸印が見えた。
「家賃滞納してバックレるんも困るけどな。おっさんは違う、その筋のプロや」
「なんね、あんた、妙に詳しいけど」
「だからー、俺は地上げ屋やないで。強いて言えば立ち退かせ屋」
「やっぱり! その手の輩じゃない」
体を振りほどき、急いでドアに向かった。男はさっと手を伸ばして遮る。
「まあ待てや、九鬼塔子さん」
「なんで、名前っ」やだ、名刺見られた?
「そら飛んだハプニングやもん。上に報告せなあかんし」
「……報告って、まさか誰かに名前をさらすの?」
「そりゃそうやん、対象物件でナニされてたわけやし」
「何言ってんの、やったのあんたでしょうが」
「俺やない」
「目が覚めたら別の部屋で裸で寝てましたって完全に犯罪じゃん。……仮に本当だとしてさっさと服着せるでしょ、普通」
「そうしよう思うてたとこで、あんたが目覚ますから」
「調子のいいこと言うな!」
しばらく見つめあう。
……これはやっぱりそうでしょ、こういう場合は絶対に、
「警察に行く」
「しゃーないなあ」
男は顔をしかめた。
「落ち着いて話さんか? どこか店で。そしたら、黙っといたるわ」
「はあ?」
コノヤローと手を伸ばしたらバシッと掴まれた。
「助けられといてそれはないやろ。……何なら俺と付き合わへん?」
「ええー? あんた頭おかしいの?」
「何でや。ええやろ別に、相性ええと思うんやけどな」
きさん……、と言いそうになって本気で突っかかろうとしたがびくともしない。
「ええやんか、日を改めて会いに行くんは自由やろ。それで始めたらええねん」
「何を始めるとーー? 私にだって付き合ってる人」
はっとそこで口をつぐんだ。
「え、そうなんや、残念」
男がぱっと手を離したのでまたまたバランスを崩してこけそうになる。
「まあええわ、何も見なかったことにする。もう関係ないおっさんの罪状増やしてもしゃあないわ」
「何言ってんの、証拠がないでしょ」
「ふっ、ええもん拝ませてもらってラッキーやったわ♪」
うってかわってあっさり、男は私の肩を抱きドアのところまで促した。
「はい、おつかれさんでしたー」
私はきっと振り向き、
「未遂でもなんでも訴えたらこっちの勝ちだからね」
「だからちゃうねんて……気の強いねーちゃんやな~、彼氏おるんやったらなおさらあんなとこにいてたらあかんやろ。まあまた会おうな」
「しつこいっ」
強い輝きを放つ目は、それが必ず実現すると物語っていた。
なんとかバランスをとって立ち上がり男の手を振り払った。
「まてって、そんな恰好で…冗談言うなや」
「しょうがないじゃない」
「本気かいな」
「誰か親切な人がTシャツくらいめぐんでくれるでしょ」
隠すのやーめた! もうどうにでもなれーー。小走りにドア間際にかかる。あのハイヒールの時もそうだけど後先考えない。よくない病気だけどーー仕方ないわ。
こんな奴の餌食になるよりマシだー!
「あー、もう、わーったよ。服、きーや」
男は慌てて衝立の向こうに行って私の服を取り出した。
服! あるんかい! バッグも靴も。私は鬼スピードで受け取ると逆に衝立の向こうに下がった。
「ーー強情な女やな。て、俺、恩人なんやけどな」
しばらくして、声が近づいてきたと思ったら、男は衝立から覗き込んで、私を抱き寄せた。私はなんとか下着と服ーシャツワンピを着て、あとは靴……というところだった。
「っ……」
すごい速さでキスされた。
吸い付くようなキス。舌を絡めてくる。
こんなキス、今までのどの男とも違う。
「やめ……」
「これでおあいこ」
冗談……! きつく抱きしめられて股に足を差し込まれた。「あ!」私を刺激する。右手で後頭部を押さえ込まれ、一層深く口腔を弄られた。瞬間すごい衝撃が走る。
「ええ体してんねんな、顔かてきれいやし」
「ダメっ……」
力こめて男の胸を押した。
……! すかさず腕を掴まれる。
「やーめーろー!」
トウッ…。空手風に払いのけ離れた。シャツのボタンを閉じて、髪をかきあげる。
「かっこええやん」
狼みたいに男の目がギラついた。強い野生的な瞳。照明を映してギラギラ光を放つ。
「そんなヘロヘロのシャツで家に二人きりで、そりゃあ、おっさんもぐらっとくるわな」
ヘロヘロ!? 高かったんですけど。
「こんな時にお世辞?……悪かったわね、可愛い子じゃなくて」
「は? なんで」
「男はかわいい子が好きでしょ!」
「そんなん好き好きやんか」
「つまんないわ、どいつもこいつもかわいい、かわいい連発で! キモ」
「……あんたなんかあったん」
男は呆れたような顔をして、少し間が空いた。そしてふっと笑って、
「それでも女には変わりないで、気をつけなあかん」再び手首をつかまれる。
「はなして…」
「……『未遂』でしょうね?」かろうじて腕をつかんで抵抗を試みる。
「知らんわ。やったのおっさんやからな。とりあえずあの状態やったで」
信じられない!
「……おじさん、家族が帰って来るかもしれないから退去できないって。占有?なんてあるわけないわ」
私が知ってるおじさんは確かに家族思いという感じではなかったけど、部屋での様子はさみしそうに見えた。
そんな人が@/ピーほにゃららするかっての。
「あのなあ、そもそもあの辺一帯こっちのもんなの。正式には古くからの国の直轄領。不法占拠者が出ていくんは当たり前のことなんやで」
「うそ……」
「あんたにはあのおっさん、まともな人間に見えるん?」
聞かれてドキッとした。
「家の中見てみいな。ーー競馬競輪パチスロ……。どっぷりギャンブルに浸かっとるやろ。不動産でせこいことしだしたらまずまともな職には戻れんよ。そういうおっさんやから家族が出ていったんやろ」
「それは……」おじさんちの廊下に積まれてた新聞、赤い丸印が見えた。
「家賃滞納してバックレるんも困るけどな。おっさんは違う、その筋のプロや」
「なんね、あんた、妙に詳しいけど」
「だからー、俺は地上げ屋やないで。強いて言えば立ち退かせ屋」
「やっぱり! その手の輩じゃない」
体を振りほどき、急いでドアに向かった。男はさっと手を伸ばして遮る。
「まあ待てや、九鬼塔子さん」
「なんで、名前っ」やだ、名刺見られた?
「そら飛んだハプニングやもん。上に報告せなあかんし」
「……報告って、まさか誰かに名前をさらすの?」
「そりゃそうやん、対象物件でナニされてたわけやし」
「何言ってんの、やったのあんたでしょうが」
「俺やない」
「目が覚めたら別の部屋で裸で寝てましたって完全に犯罪じゃん。……仮に本当だとしてさっさと服着せるでしょ、普通」
「そうしよう思うてたとこで、あんたが目覚ますから」
「調子のいいこと言うな!」
しばらく見つめあう。
……これはやっぱりそうでしょ、こういう場合は絶対に、
「警察に行く」
「しゃーないなあ」
男は顔をしかめた。
「落ち着いて話さんか? どこか店で。そしたら、黙っといたるわ」
「はあ?」
コノヤローと手を伸ばしたらバシッと掴まれた。
「助けられといてそれはないやろ。……何なら俺と付き合わへん?」
「ええー? あんた頭おかしいの?」
「何でや。ええやろ別に、相性ええと思うんやけどな」
きさん……、と言いそうになって本気で突っかかろうとしたがびくともしない。
「ええやんか、日を改めて会いに行くんは自由やろ。それで始めたらええねん」
「何を始めるとーー? 私にだって付き合ってる人」
はっとそこで口をつぐんだ。
「え、そうなんや、残念」
男がぱっと手を離したのでまたまたバランスを崩してこけそうになる。
「まあええわ、何も見なかったことにする。もう関係ないおっさんの罪状増やしてもしゃあないわ」
「何言ってんの、証拠がないでしょ」
「ふっ、ええもん拝ませてもらってラッキーやったわ♪」
うってかわってあっさり、男は私の肩を抱きドアのところまで促した。
「はい、おつかれさんでしたー」
私はきっと振り向き、
「未遂でもなんでも訴えたらこっちの勝ちだからね」
「だからちゃうねんて……気の強いねーちゃんやな~、彼氏おるんやったらなおさらあんなとこにいてたらあかんやろ。まあまた会おうな」
「しつこいっ」
強い輝きを放つ目は、それが必ず実現すると物語っていた。
10
あなたにおすすめの小説
冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない
彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。
酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。
「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」
そんなことを、言い出した。
親友に恋人を奪われた俺は、姉の様に思っていた親友の父親の後妻を貰う事にしました。傷ついた二人の恋愛物語
石のやっさん
恋愛
同世代の輪から浮いていた和也は、村の権力者の息子正一より、とうとう、その輪のなから外されてしまった。幼馴染もかっての婚約者芽瑠も全員正一の物ので、そこに居場所が無いと悟った和也はそれを受け入れる事にした。
本来なら絶望的な状況の筈だが……和也の顔は笑っていた。
『勇者からの追放物』を書く時にに集めた資料を基に異世界でなくどこかの日本にありそうな架空な場所での物語を書いてみました。
「25周年アニバーサリーカップ」出展にあたり 主人公の年齢を25歳 ヒロインの年齢を30歳にしました。
カクヨムでカクヨムコン10に応募して中間突破した作品を加筆修正した作品です。
大きく物語は変わりませんが、所々、加筆修正が入ります。
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
8年ぶりに再会した男の子は、スパダリになっていました
柚木ゆず
恋愛
美しく育てて金持ちに高く売る。ルファポール子爵家の三女ミーアは、両親達が幸せに暮らせるように『商品』として育てられてきました。
その結果19歳の夏に身体目当ての成金老人に買われてしまい、ミーアは地獄の日々を覚悟していたのですが――
「予定より少々早い到着をお許しください。姫をお迎えにあがりました」
ミーアの前に現れたのは醜悪な老人ではなく、王子様のような青年だったのでした。
※体調不良の影響で、現在一時的に感想欄を閉じさせていただいております。
10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。
地味な私を捨てた元婚約者にざまぁ返し!私の才能に惚れたハイスペ社長にスカウトされ溺愛されてます
久遠翠
恋愛
「君は、可愛げがない。いつも数字しか見ていないじゃないか」
大手商社に勤める地味なOL・相沢美月は、エリートの婚約者・高遠彰から突然婚約破棄を告げられる。
彼の心変わりと社内での孤立に傷つき、退職を選んだ美月。
しかし、彼らは知らなかった。彼女には、IT業界で“K”という名で知られる伝説的なデータアナリストという、もう一つの顔があったことを。
失意の中、足を運んだ交流会で美月が出会ったのは、急成長中のIT企業「ホライゾン・テクノロジーズ」の若き社長・一条蓮。
彼女が何気なく口にした市場分析の鋭さに衝撃を受けた蓮は、すぐさま彼女を破格の条件でスカウトする。
「君のその目で、俺と未来を見てほしい」──。
蓮の情熱に心を動かされ、新たな一歩を踏み出した美月は、その才能を遺憾なく発揮していく。
地味なOLから、誰もが注目するキャリアウーマンへ。
そして、仕事のパートナーである蓮の、真っ直ぐで誠実な愛情に、凍てついていた心は次第に溶かされていく。
これは、才能というガラスの靴を見出された、一人の女性のシンデレラストーリー。
数字の奥に隠された真実を見抜く彼女が、本当の愛と幸せを掴むまでの、最高にドラマチックな逆転ラブストーリー。
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる