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奥様、お手をどうぞ
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目覚めるとソファの上にいて、テーブルに奥様が突っ伏していた。
テーブルは大きな掃き出し窓に面していて、小鳥のさえずりが聞こえる。
噴水の心地よい水の音も。
「徹夜したんか?」
夏目は上体を起こした。
「いよいよ完成か? 俺、お暇しようか 」
「いてくださいよー、旦那様がお帰りになるまで。報告もしないと、でしょ? 」
「うーーん 」
風吹と喋りながらしばらく見ていると、「あーよく寝たばい 」むくっと上体を起こした。
「おい、あんた!」
「奥様! 」
寝ぼけて、服を脱ぎかけた塔子を、慌てて風吹が案内する。
「御着替えを 」
「えーせからしか―シャワー・・・ 」
「奥様…もしかして九州のご出身ですか 」
「そうたい 」
「そうなんですか? やだ―私もです! 」
「えっ 」塔子、寝ぼけが冷める 。
「どこですかー 」
「福岡です 」
「キャー私もです博多区 」
「本当ですか? 私もです。空港近くなんですよー 」
「ああ、それで… 」一日目のセリフを思い出す。 盛り上がりながら2階へ上っていく 。
「何やあいつら・・・」 見上げる夏目。
シャワーも済ませ、 降りてくると一転、ドレス姿 を披露した。
「奥様、フォー○ーズンズに行かれたいそうです」
「フォー○ーズンズ? すぐそこの?」ジンバランベイ沿いの…別荘の下の道を南下すればすぐだ 。
「もう一つありますよね、ウブドの渓谷の・・・」
「渓谷?」
塔子はピンときた。
ウブドの空は、しっとりと葉の匂いを含んでいた。
塔子は、リゾートホテルの敷地に踏み入れて、少しだけ背筋を伸ばした。
夏目が、車のキーを案内役に手渡す。
車は朝にはすっかり元に戻っていた。
「…ねえ、あの車、どうして右ハンドルなの」
「外車って左ハンドルよね?」
夏目は、眉をひそめた。
「…そりゃ本国仕様やもん」
「本国?」
「あんたホンマ何にも知らんのやなあ。イギリスの車‼ イギリスは左通行やで」
「バリも、ついでに言うたら香港もや」 塔子は、言葉を失った。「もう黙っとけや。せっかくのドレス姿が台無しやで」
そのあと、足音だけがリゾートの石畳に静かに響いていた。
深い南国のジャングルの渓流を眺める位置にレストランはひっそりと客を迎える素晴らしいロケーションだった。アジアンミックスのプレートをオーダーする。
「…さっきの話やないけど、あんたの相手するん、大変やな。九州の男でギリやないか? まるでじゃじゃ馬慣らしやんか。あいつはあんたのそういうとこ、知ってんの?」
言葉が胸に響いた。まるで空気が、夏目の言葉で入れ替わったようだった 。食って掛かる意欲がしぼんだ。
「う…ん。そうみたい。笑われたけど」
ホルターネックのネック部がゴールド、あとはblackのシックなドレスに身を包んだ塔子は、見た目は高級リゾートになじんでゴージャスなマダムに見えた。
「そうなんか」
サービスのミネラルウォーターのグラスに口をつける。そのドレスは背中が丸見えで、ビキニを身に着けているのか、背中に細いひもが結んである。
まあ、おいしい所よなあ、こういう服着た女の護衛に着くんは。目の保養というか。
海外リゾートの醍醐味や。せいぜい楽しませてもらいますわ。
テーブルは大きな掃き出し窓に面していて、小鳥のさえずりが聞こえる。
噴水の心地よい水の音も。
「徹夜したんか?」
夏目は上体を起こした。
「いよいよ完成か? 俺、お暇しようか 」
「いてくださいよー、旦那様がお帰りになるまで。報告もしないと、でしょ? 」
「うーーん 」
風吹と喋りながらしばらく見ていると、「あーよく寝たばい 」むくっと上体を起こした。
「おい、あんた!」
「奥様! 」
寝ぼけて、服を脱ぎかけた塔子を、慌てて風吹が案内する。
「御着替えを 」
「えーせからしか―シャワー・・・ 」
「奥様…もしかして九州のご出身ですか 」
「そうたい 」
「そうなんですか? やだ―私もです! 」
「えっ 」塔子、寝ぼけが冷める 。
「どこですかー 」
「福岡です 」
「キャー私もです博多区 」
「本当ですか? 私もです。空港近くなんですよー 」
「ああ、それで… 」一日目のセリフを思い出す。 盛り上がりながら2階へ上っていく 。
「何やあいつら・・・」 見上げる夏目。
シャワーも済ませ、 降りてくると一転、ドレス姿 を披露した。
「奥様、フォー○ーズンズに行かれたいそうです」
「フォー○ーズンズ? すぐそこの?」ジンバランベイ沿いの…別荘の下の道を南下すればすぐだ 。
「もう一つありますよね、ウブドの渓谷の・・・」
「渓谷?」
塔子はピンときた。
ウブドの空は、しっとりと葉の匂いを含んでいた。
塔子は、リゾートホテルの敷地に踏み入れて、少しだけ背筋を伸ばした。
夏目が、車のキーを案内役に手渡す。
車は朝にはすっかり元に戻っていた。
「…ねえ、あの車、どうして右ハンドルなの」
「外車って左ハンドルよね?」
夏目は、眉をひそめた。
「…そりゃ本国仕様やもん」
「本国?」
「あんたホンマ何にも知らんのやなあ。イギリスの車‼ イギリスは左通行やで」
「バリも、ついでに言うたら香港もや」 塔子は、言葉を失った。「もう黙っとけや。せっかくのドレス姿が台無しやで」
そのあと、足音だけがリゾートの石畳に静かに響いていた。
深い南国のジャングルの渓流を眺める位置にレストランはひっそりと客を迎える素晴らしいロケーションだった。アジアンミックスのプレートをオーダーする。
「…さっきの話やないけど、あんたの相手するん、大変やな。九州の男でギリやないか? まるでじゃじゃ馬慣らしやんか。あいつはあんたのそういうとこ、知ってんの?」
言葉が胸に響いた。まるで空気が、夏目の言葉で入れ替わったようだった 。食って掛かる意欲がしぼんだ。
「う…ん。そうみたい。笑われたけど」
ホルターネックのネック部がゴールド、あとはblackのシックなドレスに身を包んだ塔子は、見た目は高級リゾートになじんでゴージャスなマダムに見えた。
「そうなんか」
サービスのミネラルウォーターのグラスに口をつける。そのドレスは背中が丸見えで、ビキニを身に着けているのか、背中に細いひもが結んである。
まあ、おいしい所よなあ、こういう服着た女の護衛に着くんは。目の保養というか。
海外リゾートの醍醐味や。せいぜい楽しませてもらいますわ。
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