氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!

本条蒼依

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第1章 レアスキルは偉大

11話 帝国領を出る事にした

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 ショウは朝市から帰りホッと一息をつきちゃぶ台の前に座る。すると、すぐにシスティナがお茶を淹れて持ってきてくれた。

「ご主人様のおかげでだいぶん体力も戻ってきましたよ」
「そうだな。これからはハウスの外に出て運動をしても大丈夫なんじゃないか」
「わかりました。この広場で体力をつけたいと思います」

 その日から、システィナはハウスの前で腕立て伏せや腹筋運動をする事にした。

「おいおい!亜人奴隷がこんな所で何やってんだよ」
「だな?誰の許可を得てこの場所で運動をしているんだよ」
「えっ・・・ここは領主様が好意で解放してくださっている広場ですよね」
「「「「「ああそうだ!」」」」」
「ここは領主様がヒューマン族に解放してくださっている広場なんだ。お前のような亜人に解放されてはいないんだよ」
「だけど、私のご主人様はヒューマン族です」
「そうだ。ヒューマン族はいいんだよ。お前のような亜人は駄目と言っているんだ」
「「「「そうだそうだ!亜人はそのテントの中に入ってろ」」」」

 そのヒューマン族は、広場を利用している低ランクの冒険者だった。その冒険者達は、帝国出身の人間のようで亜人であるシスティナが目障りのようだった。

「だ、だけど・・・私はご主人様に指示を受けて毎日の日課である運動をしなくてはならないんです」
「だから、言っているだろうが!ここはヒューマン族が利用できる広場なんだよ。亜人がいるのは目障りなんだ」
「お願いします。この一角だけでいますので」
「「「「「駄目だ!」」」」」
「亜人がいるのは認めねぇ!」

 そこに、広場の見回りをする衛兵が駆け寄ってくる。

「こらぁ!何をやっているんだ!騒ぎを起こすとここを出禁にするぞ!」
「衛兵さん違うんですよ。ここを亜人がうろついていたからこいつにテントに入らせようとしてただけなんですよ」

 低ランク冒険者は、広場を警備する衛兵に丁寧に説明をして、自分達には非がないことを訴えた。

「亜人がだと。ま、まさかお前達・・・この奴隷に何かやったのではないだろうな?」
「そんな事をすればただじゃ済まないのはお前達の方だぞ」

 衛兵は必ず二人一組で行動が義務付けられているのだが、二人の衛兵は、システィナの顔を見て顔面蒼白になる。

「何を言っているんですか?こいつは亜人ですよ。それに奴隷がここをうろついていたんです」
「「馬鹿者共が!」」
「この奴隷の主人が誰なのか知らんのか?領主様からの掲示板にあっただろうが!」
「「「「「はっ?」」」」」
「どういう事ですか?なんで亜人ごときにそんな気を使うのですか?」
「馬鹿者共が!我等が奴隷になんか気を使うはずないだろうが!気を使うのはコヤツの主人だ」
「こいつの主人がどうしたのですか?広場を使うような低ランクの冒険者でしょ」
「確かにそやつの主人は冒険者ギルドにも登録はしておらんよ」
「「「「「はぁあ!?」」」」」
「だったら、生産ギルドか商人ギルドのどちらかに?」
「それならまだ良かったんだよ。お主達のせいで空間魔導士様がこの町を離れるかもしれんのだぞ。これがどれだけ町の損失になるかわかっているのか?」
「「「「「「く、空間魔導士様ぁ!?」」」」」」
「ああ・・・コヤツの主人は空間属性魔法の使い手だ。この事で我が主人ルーデンバッハ様が掲示板で声明を出されたのだ。空間魔導士様の奴隷はエルフ族の女だが、決して手を出さず誹謗中傷も認めないとな。それをお前らは・・・」
「そ、そんな・・・俺達は知らなかっただけなんです・・・まさか、そんなお人が広場を利用しているなんて思わなかったんです」
「そんな言い訳が通るはずがないだろうが!」

 領主はショウの存在を知っていた。それはショウが初めてこの町に訪れた時の門番の兵士と、この広場を利用した時の衛兵の二人が領主に報告をあげていたからだ。領主はショウに屋敷まで来てほしいとコンタクトをとっていたのだが、ショウはそれをずっと断わっていた。システィナがいるので、近々この町を去るつもりでいたからしがらみを作りたくなかったのだ。
 領主の謁見を簡単に断れるほどに、レア属性魔法所持者は力がある世界なのだ。これが基本属性魔法所持者ならば、領主の謁見を断れなかっただろう。それ以上に帝国領は人至上主義者が多く、システィナのような種族は住みにくい国だった。
 
「システィナどうしたんだ?何かあったのか?」

 そこにちょうどよくショウが帰ってきて、騒ぎを目にしたのだ。

「「ショウ様!」」
「申し訳ありません。コヤツ等があなたの奴隷に悪さをしたみたいで!」
「「「「「俺達は知らなかったんだ」」」」」
「あなたのような人の奴隷なら絡まなかったんだ!」
「システィナ、こいつらに何をされたんだ?」

 ショウは冒険者であろう男達は無視して、システィナに何があったか聞いた。それを見て冒険者達はシスティナに余計な事は言うなよとアイコンタクトを必死に送ったが、それは無理と言うものである。

「あ~・・・お前達に言っておくが、システィナは俺の奴隷だから嘘はつけないよ。だから、システィナを睨んでも心象が良くないからやめたほうがいい」
「「「「「「ぅぐ!」」」」」」
「そうだ!お前達は我が主人ルーデンバッハ様に裁かれるがいい!」
「そ、そんな・・・俺達はただ!」
「それでシスティナ、何をされたんだ?正直に言ってみな」
「えーっと、暴力はされていません。ただ、亜人はこの広場を使うなと暴言を・・・」
「「「「「「うっ・・・」」」」」」
「俺達はただ、亜人がいやエルフ族がうろついていたから」
「はぁあ!?だからなんなんだよ?システィナは誰にも迷惑をかけていないだろ?」
「それは、亜人・・・いやエルフ族がいたら迷惑に・・・」

 ショウは冒険者達の言い訳に腹が立った。自分達の立場ばかりの言葉でシスティナに謝罪すらしなかったのだ。

「ご主人様・・・私なら大丈夫です。だから・・・」
「システィナ。お前は何も悪くないだろ?だから、そんな事を言ったら駄目だ」
「奴隷がいいって言っているじゃないか」
「「「「「そうだそうだ!」」」」」
「俺達は悪くないだろ?なぁ、奴隷のお前もそう言ってくれよ」
「システィナは本当にそれでいいのか?」
「は、はい・・・これ以上ご主人様の迷惑にはなりたくないです」
「わかった・・・お前の意見を尊重しよう。俺もこんないざこざに巻き込まれたくないからな」
「ショウ様本当によろしいのですか?こいつ等はあなたの奴隷を蔑まれたのですよ」
「システィナがもういいと言ったからもういいよ」
「「そ、そうですか。」」
「なら私達も何も言えませんね」

 ショウがそう言うと、冒険者達6人は急いでこの場から離れようとするが、衛兵達には大目玉をくらっていた。その際6人はギルドカードを確認されて要注意人物に認定されてしまった。今回の事は当然、領主のルーデンバッハにも報告されたのだった。
 そして、ショウとシスティナは、もう関係ないとばかりにハウスの中に入ってしまう。

「システィナ、ちょっとそこに座りなさい」
「ご、ご主人様・・・」

 システィナはショウの低い声に身体がぴくっと跳ね上がりおずおずとちゃぶ台の前に座る。

「俺はお前の態度にも問題があると思うぞ」
「・・・」
「システィナ」
「は、はい!」
「俺は怒っているわけじゃないんだ。だからそんなに緊張するな」
「で、ですが・・・」
「いいか?お前達他種族にも問題があると思うのは、ヒューマン族に舐められていると自覚する事が必要なんだよ」
「うっ・・・」
「これは大前提として種族差別する人間が一番悪い」
「は、はい」
「だけどな。それを受け入れては駄目だ。俺がシスティナに伝えたいのはそれだけだ。この町の領主様は種族差別は駄目だと公言してくださる立派な貴族様なんだよ。そう言った貴族様もいるんだから理不尽を受け入れては駄目だ。わかったな?」
「はい!」

 この数日ショウは、町に買い物や酒場に繰り出し町の情報を集めていた。神様がこの町の近くに転移させた理由がよくわかったのだった。確かに、システィナがいなければショウにとって住みやすい町なのは確かだったのだ。しかし、種族差別する人間は帝国には少なからずいるのである。王国領に近い町ですら、宿に泊まれなかったり先程のように絡まれるのは日常茶飯事なのだ。
 ショウはこの数日、町でシスティナのように他種族の奴隷を見てきた。その扱いは犯罪奴隷じゃないのに使い潰すのが当たり前の扱いだった。それに飽きたら棄てる事も当たり前で拐われても気にしない主人もいるくらいだった。

「この数日で、帝国ではお前と暮らすのは厳しいと思い知らされたよ」
「ご、ご主人様!私を捨てないでください!」
「馬鹿な事を言うな!お前を捨てるつもりはないからな」

 その言葉を聞いたシスティナは、ホッと一息をつき勢いよく立ち上がった腰を下ろす。

「だから、少し早いがこの町を出て、王国領に向かう事にする。いいな?」

 システィナはショウに捨てられないとわかり、その瞳に涙を溜めて何回も頷くのだった。

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