氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!

本条蒼依

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第1章 レアスキルは偉大

13話 国境は安全に越えられるのだろうか?

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 冒険者ギルドにルーデンバッハが現れ、ギルド内は騒然となる。

「ルーデンバッハ様。このようなむさ苦しい場所に来て何があったのですか?」
「すぐにギルドマスターを呼んでほしい。それと穏やかな草原のパーティー全員を呼び出せ!」

 ルーデンバッハの怒りはギルドの人間全てが感じ取れた。受付嬢はその怒りに凝縮し、急いでギルドマスターを呼びに行ったのだった。
 しばらくすると慌てた様子で、ギルドマスターが受付嬢と共に奥の部屋から出てきたのだった。そして、その時には穏やかな草原のメンバーもギルドのホールに呼び出され青い顔をして正座させられていた。

「ルーデンバッハ様一体何事ですか?」
「ギルドマスターいきなり呼び立ててすまなかったな。しかし、こやつらは私の声明を無視して空間魔導士様に絡んだ事がわかった」
「そ、そんな馬鹿な!ルーデンバッハ様の声明はギルド中に報せていました」

 冒険者ギルドでも、ルーデンバッハの声明を報せていたにもかかわらず、空間魔導士に絡んでいた者がいた事にギルドマスターは血の気が引いたのだった。

「お前達今の話は本当なのか?」

 ギルドマスターは穏やかな草原のメンバー全員に問いただした。その問いにルードは顔を真っ青にして小さな声で肯定する。

「俺達はあの奴隷が空間魔導士の奴隷と知らなかったんだ」
「奴隷?どういう事だ・・・」
「こやつらは空間魔導士、ショウ殿の奴隷がエルフだったのを知らなかったそうだ」

 ルーデンバッハの言葉に、ギルドマスターはルード達を睨む。

「まさかお前達、エルフを亜人と罵り種族差別をしたんじゃないだろうな!」
「「「「「「ごめんなさい!」」」」」」
「しかし、この国ではヒューマン族のほうが優れた種族だ。昔からそうだったはずだ」
「「「「「そうですよ!」」」」」
「俺達は亜人、いやエルフが領主様が提供する広場で当然のように居座る亜人、エルフに納得いかなかったんだ」

 アード達の主張に、ギルドマスターやギルド職員は頭を抱えたのだった。

「わかったであろう!その者達は私の言葉を無視して空間魔導士様に迷惑また、この町に損害を与えた罰を与え奴隷落ちに処す!」
「「「「「「そんな馬鹿な!」」」」」」
「なんで俺達が奴隷落ちにならなきゃならないんだ!」
「そうですよ。確かにこいつ等にも落ち度はあったと思いますが、それで奴隷落ちとはいささかやり過ぎかと」

 アード達は奴隷落ちになるほどの罪ではないと訴え、ギルドもルーデンバッハの意見はやり過ぎと否定したのだった。

「ルーデンバッハ様。アード達にはギルドからキツイ処遇を与えます。そして、空間魔導士様にはギルドから謝罪と慰謝料を出しますのでどうかご容赦の程を・・・」
「私とてこの処遇はきついものと理解しておる!」
「だったらなぜ!こういってはなんなんですが、こいつ等穏やかな草原は、町に多大な貢献をしてます。まだ若い芽を潰さなくても!」

 ギルドマスターは、ギルド内のパーティーのほとんどを把握しており、アード達は若いのに町の雑用を率先してこなして1年も経たず、Eマイナスランクまであげた期待のホープだった。
 冒険者ギルドではSSSプラスランクからFマイナスランクまである。依頼を50回熟せばFランク、更に50回熟せばFプラスランクとランクが上がる。一回でも依頼に失敗すればそのランクのマイナスまで引き下げられ、本当にランクを上げるのは大変なのだ。それがわかる冒険者は自分の実力を過信せず信頼を勝ち取りランクを上げる。
 そして、アード達は若手の見本であり着実にランクを上げる模範生だった。
 しかし、ルーデンバッハは悲しそうな顔を見せ、アード達を奴隷に落とし鉱山送りにすると譲らなかった。

「ギルドマスターよ。私は町に損失を与えたと申したのだ。ギルドは国とは関係のない組織だというのは重々承知しいるがこれは譲るつもりはない」
「そんな馬鹿な・・・」
「こやつらの罪状を説明させてもらう。こやつらは私が日頃から種族差別は無くすと公言していたにも関わらず、空間魔導士様の奴隷を差別し絡んだ」
「・・・・・・・・・」
「その結果、空間魔導士様はこの国を離れたという事実が確認されたのだ」
「「「「「「なっ!」」」」」」
「これは、この町だけではなくロスドール帝国の人材の損失である!この事からしても私はそやつらに十分な温情を与えているつもりであり、こやつらには奴隷に落ち鉱山送り20年の刑に処する!」

 ルーデンバッハの言葉に、ギルドマスターは何も言えなくなってしまった。確かに、空間魔導士のような人材が他国にいけば国の損失になるのは明らかであり、そうならないようにルーデンバッハはショウに手出ししてはならないと声明まで出していたのだ。本来なら打ち首にされてもしょうがない案件だったのだ。そして、ルーデンバッハがもし、ショウが時魔人と知っていたら間違いなく、アード達は打ち首に処されていたのだ。

「「「「「そんな馬鹿な・・・」」」」」
「亜人があんなところにいたのが悪いんだ。俺達は悪くねぇよ・・・」
「まだそんな事を言っているのか!この馬鹿者共めが!」

 アードの言葉にギルドマスターが激昂し、アード達に大声で怒鳴る。それを見ていた他の冒険者達もアード達を庇う事はしなかったというより庇えなかった。
 アード達は衛兵に連れて行かれるが抵抗する。自分達が奴隷に落ちるなんてどうしても納得がいかないようだ。そして、ルーデンバッハはアード達を地下牢に入れ証拠を集める事にした。証拠は簡単に集まり、ショウが帝国国境を越える時にそれは決定打となるのだった。

「システィナ頑張れ。あの国境壁が見えるか?」
「は、はい・・・ハァハァハァ・・・」
「やっぱり町を出るのは早かったか・・・システィナすまなかったな」
「いえ・・・ご主人様は私の為を思って決断してくれたのは嬉しかったです」
「ホムンクルス、悪いがシスティナをおぶってやってくれ」
【はい。わかりました】
「ホムンクルスさんごめんなさい・・・」

 システィナの謝罪に、ホムンクルスは微笑みかけたように見え口角が上がったような気がした。そして、ショウ達はロスドール帝国の国境の大きな門の前にやってきた。その時にはホムンクルスは、ショウの時空間倉庫に収納していて、ショウとシスティナの二人である。

「ここまで来た理由は?」
「はい。私の奴隷は見た通りエルフなので、種族差別の少ないブリガンダイン王国に移り住もうと思いまして。」
「貴様は奴隷の為に出国を決意したのか?」
「はい・・・なにか問題でも?」
「いや、問題はないのだがお主は奴隷を大事にあつかっているのだな。まぁいい。では、身分証明ギルドカードの提出を願いたい。もしなければ、銀貨一枚、奴隷は銅貨五枚となる」

 お金を支払うショウに、国境警備兵は名前を尋ね水晶に触るように指示をする。これは、犯罪者を簡単に他国に流出させない処置だ。この水晶は町の門に設置してあるのと同じで犯罪者なら赤く輝くマジックアイテムだ。

「ショウです。そして、奴隷のシスティナ」
「な、なんだと!貴様はいえ、貴方がショウ様ですか?」
「はい・・・そうですが・・・」

 ショウは舌打ちをして困惑する。まさか自分の情報が国境にまで伝わっているとは思わなかった。

「まさか町に連れ戻すつもりか?」
「ああ。そんな身構えないでください。我々は貴方達を拘束するつもりはありません。ただ、ルーデンバッハ様にショウ様が国境を越える理由を聞くように指示をうけていたのです」
「どういう事ですか?」
「はい・・・ショウ様がルーデンバッハ様の町を出る前に、冒険者達に絡まれたとお聞きしました。その事実に間違いないでしょうか?」
「そうですね。システィナが冒険者達に絡まれたので出国を決意しました」
「本当に申し訳ありませんでした。ルーデンバッハ様もこうならないよう声明を出し気を使っておられたのに、迷惑をおかけして申し訳ないとの事です。これからのショウ様の生活が平穏であられるようお祈りしますと言付かっておりました」
「それはご丁寧にありがとうございますとお伝えください」

 ショウが国境警備兵にそう伝えると、国を出るショウとシスティナに直立不動でショウ達が見えなくなるまで見送るのだった。その見送る顔は厳しいものとなる。そして、このショウの言葉が決定打となり【穏やかな草原】は奴隷落ちとなり、鉱山で20年の強制労働となるのだった。

「それにしても、貴族達は種族差別を無くそうと頑張っていたんだな」
「そうみたいですね・・・」
「これで分かったろ?システィナ達も種族差別が当たり前と思わずちゃんと自己主張していかなきゃいけないんだよ」
「は、はい・・・今回の事で気づかされました」
「まぁ、過ぎた事はしょうがない。ブリガンダイン王国に入ったら生活もしやすくなるだろうし楽しくいこうか」
「はい!」

 帝国の国境を越えたショウは、これからの生活を楽しみにしたがブリガンダイン王国にはまた別の厄介事が待っている事をまだ知らない。



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