氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!

本条蒼依

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第1章 レアスキルは偉大

14話 アジトには何も残っていないようだ

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 ショウとシスティナは帝国の国境を越え、今は中立地帯を旅していた。この中立地帯はどの国にも属しておらず、危険な地域になる。時折すれ違う馬車も盗賊を気にして、護衛の冒険者が剣を握るのは当たり前の行動になる。
 行商人はこうやって命がけで商品を仕入れて商売をしているので、どうしても特産品は高価な物となるのだ。

「それにしても、すれ違うたびに剣を握るのは勘弁してほしいな・・・」
「ご主人様。それはしょうがないですよ」
【そうですね。私もすれ違う時には剣の柄に手をおき構えていますよ】
「そ、そっか。このやりとりもお互い様なんだな」
「ご主人様の元の世界は護衛なくとも旅はできたのですか?」
「そうだな。そもそも盗賊なんてものはいなかったからな」
「ええ!そんな世界が?」
「それに、俺のいた世界はこんな長旅はまずしないからな」
「えっ?長旅はしないのですか?」
「二泊三日の旅行は休みの日にしたりするが、移動にこんな時間をかけたりしないんだよ」
「移動に時間をかけないとは?馬車が普通なのですか?」
「理解出来ないと思うが、馬車なんてものはなく馬をつかわず動く乗り物があるんだ」
「馬をつかわず動く乗り物!?」
「そして、その乗り物の速度はとんでもなく速いんだ。例えば、今のこの旅をしてきた道のりを数時間で移動できる」
「嘘ですよね?町を出てここまでもう3週間経っているんですよ」
「だから、仮に盗賊がいたとしても襲われる心配はないかな」
「凄い世界ですね・・・」
「まぁその分違う悩みが多い世界だよ」
「そんな便利で平和な世界で悩みが多いのですか?」
「そうだな・・・便利になればその便利さを悪用する人間が現れるという事だ」

 システィナは、ショウが何を言っているのかわからなかったが、人間の欲望は限りないのかと思った。その時、ショウに向かって一筋の矢が飛んできた。

【ご主人様危ない!】

 ホムンクルスは瞬時に飛んできた矢を剣で弾いた。すると数多くの人間が姿を現す。

「うひょー!女が二人もいやがるぜ!」
「久しぶりの獲物だぁ」
「男は殺してしまえ。女は生け捕りにしろよ」
「お前等の誰が男を殺せるか勝負しろよ。殺した奴にあのエルフをやろう」
「「「「「「「親分ホントですか!」」」」」」」

 盗賊の親分は後方に陣取りニヤニヤ笑い、大岩の上で座っている。部下の盗賊達は久しぶりの女のご褒美に目が血走りハァハァと気味が悪い。

「あんたが盗賊の親分か?」
「そうだ。お前さんも運が悪かったな。女共は可愛がってやるから心置きなく死んでくれや」
「いや、そうじゃなくてな」
「見逃してくれというなら無理だからな」
「いや、俺達を狙うのは構わないが殺すなら殺される覚悟はあるんだろうな?」
「はっ?」
「「「「「「「「ギャハハハハハハハハハ!」」」」」」」」

 ショウの言葉に、盗賊の親分は一瞬呆けて部下達は大笑いした。

「おいおいオッサン。まさかこの人数相手に生き残れると思っているのか?」
「まぁ、大丈夫でしょ。俺が戦わなくても彼女一人でお前達全員やってくれるよ」
「ギャハハハハハハハハハ!面白いおもしれぇ!まさかそんな冗談が聞けるとはよう!」
「「「「「「「「・・・・・・」」」」」」」」

 ショウの言葉に、盗賊達の表情が消え去り頭に血が昇っているようだ。

「「「「「「「「殺す!」」」」」」」」
「いいのか?もう俺様でも止められねぇぜ!」
「逃げるなら今のうちだよ。彼女も俺を護るのが宿命だからな」
お前おめぇ等、あんな死に損ない殺ってしまえ!」
「「「「「「「「「オオオオオオ!」」」」」」」」」

 盗賊の親分の号令で子分達が大声を上げて、ショウとシスティナに向かって突進する。システィナは悲鳴をあげ、ショウに抱きついた。

「きゃあああああ!ご主人様怖い」
「システィナ大丈夫だ。俺から離れるなよ」

 ホムンクルスは、突進する盗賊達を目にも止まらない速さで首を斬り落とす。

「「「「「「ギャッ!」」」」」」

 一瞬で6人の首を刎ねる。その光景に盗賊の親分の表情が固まる。

「な、なんだと・・・」

 そして、ショウに突進する盗賊達に、時空の槍スペイスタムジャベリンを発射する。黒く輝く槍は盗賊達を貫き一瞬で絶命された。

「おめぇ!戦うのは女だけだろうが!それに貴様属性魔法を使うなんて汚ねぇぞ!」
「何言っているか分かないな!殺される覚悟はあるかとさっき聞いたはかりたろ?」
「ぐぬぬ・・・おめぇ等何やってる!そんなオッサン早く殺してしまえ!」
「「「「「「うわぁあああ!」」」」」」

 盗賊の子分達は、ショウが属性魔法所持者とは思わなかった。しかし、後悔してももう遅かったのだ。錯乱状態になりながらも親分の命令は絶対だった。涙を流しながらホムンクルスに立ち向かうが一瞬でその首が刎ねられてしまった。

「貴様等・・・何者なにもんだ」
「ただの移住者だよ」
「馬鹿言うんじゃねぇ!ただのわけあるかぁ!」

 盗賊の親分の首が刎ねられる。目にも止まらないホムンクルスが盗賊の親分の後ろに回り込み剣を一閃払う。ズバッという音がしたとたん盗賊の親分の首が飛ぶ。

「お、親分が殺されかけた・・・」
「もう駄目だ・・・」
「もう終わりだ・・・」

 盗賊の親分が死んだとたん子分達はその場に崩れ落ちる。そして、両手をあげて全面降伏をした。60人以上いた盗賊達は10名生き残っただけだった。

【こいつ等はどうしますか?】
「全員このロープで縛ってしまおう。お前達逃げるなよ。逃げたらさっきの槍が背中を貫くからな」
「「「「「「「「はい・・・」」」」」」」」

 ショウは、ホムンクルスを全員時空間倉庫から出し、盗賊達を縛りあげた。

「お前達はこれで全員か?」
「アジトにまだ残っています・・・」
「そうか。じゃあ案内してもらおうか」
「「「「「「はい・・・わかりました」」」」」」

 ショウは、亡骸となった盗賊達を時空間倉庫に全員収納してしまった。そして、盗賊達のアジトに乗り込み残った盗賊を全員始末してしまったのだった。

「こんなに金銀財宝を溜め込みやがって、どんだけ人を殺したんだよ」
「「「「「ぐっ・・・」」」」」
「お前達はなんて名前の盗賊集団なんだ?」

 生き残った盗賊の口からは【風の群狼】と一言だけ白状した。そして、ショウは生き残った盗賊達を連れて西に向かうのだった。すると、三日歩くと遠くに国境壁が見えてきた。この三日の野宿は、ホムンクルスが交代で盗賊達を見張り、ショウとシスティナはハウスで寝泊まりをしていた。ホムンクルスは人造人間で寝ずに活動ができる。その為、命令すれば盗賊達を寝ずに見張る事は簡単だった。

「あの仮面をつけた女達いつ寝てたんだよ・・・」
「気味が悪いぜ・・・」
「全員おんなじに見える・・・」

 盗賊達はブチブチいいながら、縄を引かれホムンクルスに追従していた。そして、やっとの事でブリガンダイン王国の国境に着いた。

「なんだなんだ?その人数は!」
「あー!すいません。俺達で【風の群狼】を討伐しまして。こいつ等は生き残った盗賊達です」
「な、な、な、な、なんだと!風の群狼を討伐したというのか!?」
「こいつ等はこちらで引き渡したらよろしいので?」
「あっああ・・・それで構わない」

 ショウが王国の国境警備兵に伝えると、声が詰まって驚かれた。

「それでこれで全員ではないのだろう?死体はどうしたんだ?」
「ちゃんと持ってきていますよ。ここに出しても?」

 ショウは、盗賊の親分を始め、子分の死体を60体以上だした。

「うわぁあああ!まさか貴方様は空間魔導士様ですか?」
「「「「「「嘘だろ?」」」」」」
「空間魔導士様がブリガンダイン王国に移住ですか?」

 王国領でも、属性魔法の使い手は歓迎される。また、国境を越える旅人や行商人達も【風の群狼】が全滅した事を聞き歓声が上がるのだった。

「空間魔導士様が!」
「ホントありがたい!旅の安全性が!」
「すげぇな!あのどうにもならなかった風の群狼をやっつけちまうなんて!」

 国境警備兵から、盗賊の鑑識には時間がかかると言われ国境の一番近い町【アルン】で1週間の滞在をお願いされた。

「1週間ですか?」
「多分、そのくらいには懸賞金がすべて分かるかと思う。アルンまでは馬車で4日の距離だから町での滞在は三日程になると思うぞ」
「俺達は歩きだから、滞在はもっと少なくなると考えてもいいな」
「確かにそうだな。だったら、アルンに着いたら町の兵舎に声をかけてほしい。この書類を見せてくれたら話は通るはずだ」

 国境警備兵はショウに風の群狼の討伐書類を渡した。

「それで聞きたい事があるのだが、風の群狼のアジトには奴らが盗んだ物は何も残ってはいないのだな?」
「ええ!俺が全部アイテムボックスに収納しましたから」
「そ、そっか。分かったよ」

 この世界では盗賊のアジトに残る盗品や盗賊の装備品などは、討伐した人間の所有物になる。基本持てる分だけだが、持ち帰れない分はその場に残す事になるが、そうなれば衛兵がアジトに派遣され盗品などは回収されて国の財政に使われるのだ。ただ、今回は時空間倉庫を持つショウに討伐されたので、アジトに盗品は一切残らなかった。
 その為、兵士もその事を改めて聞き直し、派遣しても無駄だということがわかり気を落としたというわけである。
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