氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!

本条蒼依

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第1章 レアスキルは偉大

18話 正体がバレちゃいました

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 次の日ショウは、シャーロットに連れられマートンの町から30分程歩いた場所にやってきていた。

「なぁ、オッサン。聞いたんだが本当にあの土地を購入するつもりなのか?」
「そのつもりだけど何か問題があるのか?」

 話かけてきたのは、ギルド職員で冒険者を引退した男性だった。男性の名前はガイルといい、年齢は40手前でCランク+まで到達したベテラン冒険者だ。そんな人物が同行する理由はシャーロットがいるからだ。場所はダンジョンに向かう方向でその場所は森の入口が目と鼻の先にあるので、魔物が来た場合護衛が必要なのだ。

「いや問題だらけだろ?その土地で何をするかわからんが、家を建てられるのか?」
「その辺は大丈夫だと思う・・・」
「大工のツテがあるのか?」
「内緒だ」

 ショウの言葉にガイルはお手上げとばかりにポーズをとる。

「ガイルさん、そんなに詮索するものではありませんよ。これは冒険者ギルドとショウさんとの取引です」
「はいはい。わかりましたよ」
「それより、周りを注意していてください」
「大丈夫だって!こんな場所に出る魔物はゴブリン程度の弱い魔物だけだ」
「ですが、戦える人間はガイルさんだけなんですからしっかり任務を果たして下さい」
「わかってるよ。心配しなさんな。何があってもシャーロットさんに傷一つつけねぇよ」
「よろしくお願いしますよ」

 たかがゴブリンだが、戦闘能力の無い人間にとってゴブリンは脅威である。そればかりか、ゴブリンより弱い飛びウサギですら突撃されれば致命傷になりかねない。

●飛びウサギ
 団扇のように大きな耳を持ち、後ろ足で反動をつけ大きな耳を翼のように使い5メートルぐらい跳ぶことが可能。その突進攻撃は骨を砕くほど強力な攻撃である。

「なぁオッサンよ」
「オッサンオッサンって、お前も変わりないだろ」
「オッサンも俺の事オッサンって呼んだらいいじゃねぇか。細かい事気にすんな」
「それなら構わんが・・・なんだ?」
「あの仮面の女はなんだ?」
「俺の護衛だ。見てわかんだろ」
「そうじゃねぇよ。何にも喋らねぇし不気味なんだよ」
「悪いな。あのは事故で顔に火傷の跡が酷いんだよ。それに声も出ないんだ」
「ガイルさん!あなたはなんでそんなにデリカシーがないんですか!」

 その話を聞いたシャーロットがガイルに怒り出した。それを見たホムンクルスはシャーロットをなだめて気にしていないとジェスチャーをする。声の出ないホムンクルスに、シャーロットは何回も頭を下げていた。

「ったく・・・あなたは黙って任務を全うしなさい」
「わかったよ。オレが悪かったって。仮面の女もすまなかったな」

 ガイルはホムンクルスに頭を下げた。そして、ホムンクルスはガイルに手をふり気にしていないとジェスチャーで伝えた。そんな事がありながら、ショウ達は購入する予定地にやって来た。

「ホント何もない場所だな」
「ええ。この土地が全部使い道の無い土地です」
「川も近くにあるし最高ですね」
「はぁあ!?何を言ってるんですか?私ちゃんと言いましたよね。この辺りは大雨が降ったら浸水しますと」
「そうだな。ちゃんと聞いているよ」
「そんな土地に500万ゴルドを払うなんて、お金をドブに捨てるようなものですよ」
「その辺りもなんとか出来ると思うよ」
「オッサンわかっているのか?確かに大雨は季節的に起こるだけだが、魔物も普通に出るんだぜ」
「それも自己責任だから大丈夫だ。それに冒険者ギルドも俺に買い取ってもらった方がたすかるんじゃないのか?」
「そりゃそうですが・・・一度売ったら買い戻しは絶対無理ですよ」
「そりゃ当たり前だろ。俺だって手放すつもりはないよ」
「わかりました。その覚悟があるならお売りします」

 ショウ達が空き地で話していると、ダンジョンに向かう冒険者達がショウの方を見てヒソヒソと笑う。

「なんだよ気分が悪いな・・・」
「そりゃ当たり前ですよ。ショウさんの事はギルドで噂になってますから」
「はぁあ!?なんでだよ!」
「当たり前だろ。ギルド登録した当日に家を購入したいと言う新人なんだぜ。どこかのボンボンが金の無駄遣いをするってな」
「どこかのボンボンってなんだよ」

 それを聞いて、システィナがクスクス笑う。

「システィナも笑うな」
「だって・・・ご主人様がボンボンって可笑しくて」
「くそぉ・・・」

 そんな和やかな雰囲気を壊す出来事が起こる。さっきショウの方を見て笑っていた冒険者が必死の形相で引き返して来た。

「あんたら早く逃げろ!」
「なんだ?何があった!」
「いいから早く・・・シャーロットさんだけでも早く逃げるんだ」

 ガイルは必死の形相で訴える冒険者の肩を掴む。

「お前一人で何があった?仲間はどうした?」
「オーガが!オーガが出たんだ」
「なんだと!なんでオーガがこんな所に!シャーロットお前達は早くは逃げろ。いくら俺でもお前達を庇いながらオーガは相手にできん」
「わ、わかったわ!あ・・・嘘でしょ。あれってまさかブルーオーガ」

 森からオーガ5体が出てくる。そして、その内一体が一回り大きな体格をしていた。

「ブルーオーガだと・・・シャーロット早く逃げろ!アイツは俺にも相手にできん」
「だ、駄目・・・足に力が入らない」

 シャーロットが動けなくなるのは無理もない。それほどブルーオーガの威圧は凄まじいものだからだ。当然だが、システィナもその場で動けないでいた。

「これは駄目だな・・・」
「おい!オッサン。お前は動けるか?」
「ガイルはどうするんだ?」
「俺の事は構うな。シャーロットの護衛できたんだからよ。死んでもアイツを逃さなきゃならん」
「わかった!なら、シャーロットさんを抱えて逃げろ」
「なっ!お前はどうするんだ!いいからその冒険者と逃げるんだ。お前達がいたら足手まといになる」
【ご主人様、どうしますか?】
「お前はオーガを倒せ。システィナは俺が守りながらブルーオーガを倒すから!」

 そこでブルーオーガが吠える。その咆哮でオーガがこちらに向かって突進して来た。その咆哮に逃げてきた冒険者は一目散にこの場から居なくなってしまう。

「もう無理だ!」

 ガイルは諦めの声を出し、シャーロットは涙を流し震えていた。

「しょうがない!オーガを倒せ!」

 ショウの号令でホムンクルスがオーガに突進する。その速さにガイルは目を見開く。そして、オーガ2体はホムンクルスの剣に倒れた。

「う、嘘だろ・・・一撃で2体のオーガを瞬殺した」
『『ぐがぁああああああああ!』』

 オーガ2体は仲間を殺され、いきり立ちホムンクルスに突撃した。そして、ブルーオーガはショウを見定め突撃する。

「馬鹿な奴め。仲間と一緒にホムンクルスにかかっていれば死なずにすんだのに」

 ブルーオーガはショウの強さを感じ取り、脅威に感じる者を見定めて突撃した。ショウはシスティナを抱えながら、右手をブルーオーガに向ける。

「おい・・・オッサン何をしている?」
「時空の刃よ。敵を穿て!時空間の槍スペイスタムジャベリン!」
「な、なんだとぉ!オッサンお前属性魔法所持者だったのか?いや、ですか?」

 スペイスタムジャベリンは、ブルーオーガの胸を貫き絶命させた。その間に、ホムンクルスも残りのオーガ2体を瞬殺してしまう。その光景にガイルとシャーロットは固まってしまっていた。

「大丈夫ですか?」
「あ・・・空間魔導士様だったのですか」
「ご主人様・・・バレちゃいましたね」
「システィナは黙っていなさい」
「ごめんなさい・・・」
「まあ、黙ってくれると助かるんだけど・・・」
「それは無理ですよ。今回の事はギルドに報告しないと後々冒険者達に被害が出かねます」
「だから、魔物はガイルが倒し・・・」
「それは無理だな・・・いや、無理があります。私がブルーオーガとオーガ4本を討伐出来るわけがないですからね」
「なんだよいきなりかしこまった言葉は!」
「当たり前ですよ。あんた、貴方は空間魔導士様で敬われる存在なのですから」
「はぁ・・・だから、正体がバレたくなかったんだ」
「だから、ショウ様はこの土地を購入しても問題は無いとおっしゃってたんですね」
「そうだよ。この土地でのんびり暮らすつもりだったんだ」
「しかし、魔物はなんとか出来るとしても、大雨での浸水はどうするつもりですか?」
「内緒だよ!内緒」
「そんなぁ~~~教えてくれてもいいじゃないですか」
「購入するから後日見にくればいいだろ!それまで秘密だ」

 ショウは大きなため息をつく。そして、諦めた様子でマートンの町に帰るのだった。そして、ギルドの厄介物の土地を購入するショウだった。

「おい!聞いたか?」
「当たり前だろ!今マートンの町で一番の情報じゃないか」
「まさか、空間魔導士様がこの町に移住するなんてな」
「それに聞いたか?国境の風の群狼を討伐したのも空間魔導士様らしいぜ」
「嘘だろ?風の群狼は大人数で兵士も手が出せない盗賊団だったのに、空間魔導士様一人でか?」
「そうらしいぜ。その報奨金であの土地を購入したと聞いたぜ」

「空間魔導士様って渋くて素敵」
「愛人にしてくれないかな?」
「あんた、Bランクの彼はどうしたのよ?」
「いやいや。あんな人より空間魔導士様の方が将来性があるじゃない。比べる方が間違いで空間魔導士様に失礼よ」
「うっ・・・」
「女ってこえぇ・・・」

 その後ろで、仲間に肩を優しく叩かれ慰められるBランク冒険者の彼氏が涙を流していた。

「まったく俺の噂で持ちきりじゃねぇか・・・」
「ご主人様。あんな派手に戦うから・・・」
「あの時はああでもしないと全滅だっただろ?システィナお前だって動けず腰を抜かしてたじゃないか」
「そんなの当たり前ですよ。ブルーオーガを初めて見たんですよ」

 システィナはショウの言葉に憤慨した。そして、ショウとシスティナは冒険者ギルドに入るのだった。すると、冒険者ギルドは歓声の渦に沸き立つのだった。
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