氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!

本条蒼依

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第1章 レアスキルは偉大

45話 商人ギルド本部の窮地

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 その日、王都グシリアの商人ギルド本部では職員全員が慌ただしく情報を集め顔を真っ青にしていた。

「ラーダ様大変です!商人ギルドマートン支部ギルドマスターと幹部全員が逮捕されました」
「な、なんだと!それは本当なのか?」
「はい!たった今、マートンの町の領主様から遺憾の意を表明されました」
「そんな馬鹿な事が・・・」

 商人ギルドだけでなく、他のギルドは国に属さぬ独立した組織である。その組織の支部のトップがよりにも闇ギルドと繋がり暗殺を企てたとなるば、組織の信用は地に落ちる事になるのは明白だった。

「それにあたり、今回その事件を解決したのがマートンの魔道士ショウ様との事です」
「ま、まさかまたしても商人ギルドは、ショウ殿にご迷惑をおかけしたというのか?」
「ご迷惑どころの話ではありません!」
「どういう事だ!?」

 商人ギルドの集めた情報を簡潔に報告。ポーションの仕入れ担当者はライネという職員に責任を押し付けたそうです。

「ここからが問題で、冒険者ギルドでは効果の低いポーションの購入を拒否したそうです」
「まあ・・・当然の事だろう。私も聞いているよ。魔道士様のつくるポーションは効果が高いから、冒険者ギルドが拒否するのも致し方がない」
「しかし、責任を押し付けれたライネを助けたのが魔道士様で、商人ギルドにあるヒールポーションの在庫を全て買い取ったのが魔道士様なんです」
「話が見えてこん・・・なんで100ゴルドでも売れないポーションを全て魔道士様が買い取ったんだ?」
「そうです・・・その行為をフィリップ達はライネが魔道士様に売りつけたと勘違いしたらしいのです。その結果、フィリップ達はその話を魔道士様を出し抜いたと噂をばら撒いたらしいのです」
「ば、馬鹿な!商人が商談を面白おかしく話をばら撒いたというのか?」
「それだけではなく・・・」

 ラーダはその後の話を聞き頭を抱える事になる。フィリップは生産ギルドからのポーションを止め、ライネが責任を持ってヒールポーションの仕入れを再開。その後、ヒールポーションは駆け出し冒険者に大量購入。その話はショウによって拡散され頭に血が上ったフィリップは、闇ギルドに依頼を出し、ショウの奴隷を誘拐して失敗した事がラーダに報告されたのだった。

「な、何がしたかったのだ・・・フィリップの奴め」
「多分ですが、魔道士様は奴隷を家族のように扱っているみたいです」
「それがどうした?」
「奴隷を人質にして、魔道士様を言いなりにさせようとしたのではないかと?」
「はぁあ!?そんな馬鹿な事が出来る訳がないだろう?」
「しかし、フィリップは魔道士様の私有地に何回か訪問されています。アリサの件で商人ギルドの所属を願い出た事もありますし・・・」
「しかし、断られたのだろ?」
「だから、もう普通の判断が出来なくなっていたと考えられます。それにベラの件で魔道士様はギルド上層部の責任は取らせないのかと苦情を入れておられましたし・・・」
「馬鹿な!ギルドの部外者がギルドの決定に口出し出来ると本気で思っているのか?」
「実際のところ、魔道士様の思惑通りになっているではありませんか?」
「うぐっ・・・」
「それに・・・」
「まだ何かあるのか?」

 ラーダの秘書の女性から当たり前の事を告げられた。今回の責任としてマートンの町からと、魔道士のショウからの2カ所から莫大な損害賠償請求がされたのだった。

「な、なんて事だ・・・そんな莫大な金額は払えないぞ」
「私に言われても・・・」

 秘書の女性の言葉は至極真っ当な意見だった。

「と、とにかく、まずは貴族である領主様に謝罪をせねばならん!」
「魔道士様はいかがなされるのですか?」
「当然謝罪に向かうに決まっているであろうが!しかし、謝罪だけでなく順番はまずは貴族様が先に決まっておる」

 これはラーダの言う事が正しい。属性魔法所持者は貴族と同等の権力があるとは言え、それは男爵位と同じでありこれは正式なものではないからだ。やはり、こういった場合国王から正式に認められた貴族の方が先に謝罪をするのが常識である。仮にショウが貴族だった場合は、当然ラーダもショウの方を先に謝罪や損害賠償をする事になっていたはずである。
 そして、ラーダはまたマートンの町に訪問する事になったのは言うまでもない。商人ギルド代表としてマートンの町に謝罪をし損害賠償請求に応じたのだった。
 そして、一ヶ月程した後にようやくラーダは、ショウの家に訪問をしたのだった。この頃にはフィリップや幹部達の罪は裁かれ、フィリップは処刑され幹部達は奴隷に落とされ鉱山送りとなっていた。そして、当然だがロバート達は全員マートンの町を引き回し打首となった。

「今回は商人ギルドの人間がご迷惑をおかけして本当に申し訳ございませんでした・・・」
「それで、俺達にも損害賠償請求に応じてくれるんだよな」
「そ、それが・・・申し訳ございません!少し時間の有余をいただけると・・・」
「おいおい。損害賠償を待ってくれと言うのか?」
「今回、マートンの町と領主様にも莫大な損害賠償を払いまして、これ以上の損害賠償を払えば商人ギルド事態が傾くおそれがでてきます・・・なにとぞご容赦のほどを!」
「ご容赦って、俺には損害賠償は払えないって事か?」
「そうではありません。いつ払えるかわかりませんが、必ず払いたいと思っています」
「それって、あまりにも俺達を馬鹿にしているよね」
「そんな事は!我々は真摯に向き合い損害賠償請求に応じたいと思っています」
「じゃあ、何時までに応じてくれるんだ?」
「だからそれは・・・」
「なら、仮に払えないからと引き延ばされ今から20年30年先になる事もあるという事か?」
「そんな事は・・・」
「だが今現在、商人ギルドが傾きかけている程にピンチなんだよな?」
「ううっ・・・」
「その傾きかけた商人ギルドを立て直す期間は?いくら必要?人件費はどこからでる?これから商人ギルドが運営する資金は?それらが充実するまで何十年待てば払えるようになるんだ?」
「それは・・・」
「言って置くが俺は冒険者ギルドに所属しているんだぜ?危険な事も依頼で受ける事もあるんだ。そんな事は無いとは思うが、商人ギルドは俺が危険な依頼を受けて万が一の事が起きるのを待っていると推測できるぜ」
「そんな事は!」
「だが、実際いつ払えるか分からないと言っているんだ。これが30年後払われたら俺は70歳だ。そんな後に支払われても困るな」
「・・・」
「黙られても困るよ。じゃあそこの秘書さんに聞こうか?」
「わ、私ですか?」
「じゃあ話をかえようか?正直に答えてくれ。仮に貴方が俺の立場で、商人ギルドの人間に誘拐されかけた貴女は今の条件はのめるかい?」
「うっ・・・」

 秘書の女性は、そんな事は飲めるわけないと言いたいが、自分の上司の目の前でそんな事は言えなくて押し黙るしかなかった。

「ああ・・・いいよ。ギルドマスターの沈黙の威圧は何も言えなくてもしょうがないよな。意地悪な事をして悪かった」
「いえ・・・」
「あんた達はいつになったら組織環境をまともに変えるつもりなんだ?今回の事にしてもそうだが、ベラの時も俺は言ったはずだよな?上の連中の責任は取らせないのかと!だがあんた達はベラに責任を押し付けただけで終わらせた」
「いったい何を?」
「まあ、俺もあのベラって女性はムカついてたからな。あの処分については何も文句は無かったかな」
「では、それで済んだ話では・・・」
「だか、今回はあの時にギルドマスターの責任を取らせなかったから、あいつらは調子に乗ったと俺は言っているんだ」
「今更そんな事を言われても・・・」
「だな。今更だな・・・」
「いったい何を言っているのかわかりませんが・・・」
「鈍い奴だな。そこの秘書さんはわかっているみたいだぞ。聞いて見たらどうだ?」
「お、おい。魔道士様は何を言っているんだ?」
「言いづらいのですが・・・今回の件でラーダ様の責任を要求しているんだと・・・」
「はぁ?私の責任だと!」
「そうだよ!あんたが商人ギルド本部のギルドマスターなんだろ?という事は、フィリップを長年放ったらかしにした責任だよ」
「馬鹿な!私の知らない所でアヤツが暴走したんだ!私に責任なんかない!」
「だから、商人ギルドの権力者は好き勝手な事をするんだよ。あんたが任命した後放ったらかしにするから、下の人間は苦労するんだよ。あんたは商人ギルド最高権力者なんだ。だったら、商人ギルドの不正や下の人間を抑えつけている上司を取り締まらないといけないんだよ。それを長年怠った責任を取れと言っているんだ!」
「そんな事出来る訳がないだろう!商人ギルド支部は大陸中にあるんだ!」

 商人ギルドギルドマスターのラーダは絶叫して、ショウの考えを否定する。しかし、ショウは絶叫するラーダに言い放つ。

「あんた達は上に昇ってやりたい放題し、仕事の責任を部下に丸投げし失敗すれば責任を取らせ、成功は自分達の手柄にする。部下の評価は後回しに、自分達の王国をつくるのに必死のがよくわかるよ」
「私達の時代はまだ酷かったんだ!今はこうして秘書として女性も努力すれば上に上がれる」
「それも自分が気にいった人間だけじゃないのか?」
「・・・」

 秘書の女性は押し黙る。

「そんな事ばかりしているから、マートンの支部いや・・・他の町でも部下が働きにくい環境になるんだろうが!」
「何を知ったふうな事を!」
「俺は帝国領から来た人間だ。マートンの町に来るまでギルドに所属していない。なぜか分かるか?」
「そんな事しるか!」
「どの町の商人ギルドは、現場で働く従業員は暗く明らかに諦めた雰囲気が漂っていたからだよ。開く口からは、どうせこの仕事を完了させても手柄は先輩に横取りされると言ってたぞ」
「うぐっ・・・」
「あんたが出世した事は立派だと思うが、上に上がれば甘い汁を吸いいい思いだけで、現場の事は放ったらかしにするから今回ような事が起きたんだろ。俺からしたら自業自得としか言いようがないんだよ」
「うっううっ・・・」
「それで言うに事欠いて、損害賠償金がないからいつになるかわからないが待ってくれだと?馬鹿にするのもいい加減にしろよ」
「だったら、商人ギルドが潰れてしまうではないか?」
「そんな事俺に何の関係があるんだ?」
「「はぁあ!?」」

 ショウの言葉に、秘書の女性を変な声を漏らすのだった。

「いいか?あんた等が放ったらかしにした結果、調子に乗ったあんたの部下が起こした事件で、俺の家族が闇ギルドに狙われた。あんたはその損害賠償を俺に払わなければいけないんだよ。それが原因で商人ギルドが潰れるとか俺に相談されてもお門違いだ」
「ううっ・・・」
「まあ、そんな事で商人ギルドが潰れる事はないとは先ずあり得ないとは思うがな」
「ほ、本当か?」
「そりゃそうだろ。商人ギルドが潰れかけた原因は無能で利権ばかり買い漁る自分の保身しか考えない人間だ。今回の件でそんな人間が大量追放されるだけだ」
「ば、馬鹿な!我々がいなければ誰が、商人ギルドを立て直す事ができる」
「おいおい。まさかお前は自分がいなければ立て直す事が出来る訳がないと思っているのか?」
「当たり前だ!私は今まで本部のギルドマスターだったんだぞ!」
「今まで何もせず問題を起こす人間を支部のギルドマスターに任命したあんたが?いやいや、寝言は寝て言えよ」
「な、なんだと!」
「お前等無能の上層部がいなくなれば、今まで歯を食いしばり堪えてきた優秀な人間が立て直してくれるよ」
「ワハハハ!下の人間が商人ギルドを立て直すだと?」
「何がおかしい?考えが凝り固まったお前等のような老害共がいなくなるんだぜ?そうなれば、お前はお払い箱になり誰にも構われず余生を過ごす事になるよ」
「な、なんだとぉ!」
「お前達上層部は自分の思い通りにならなければすぐ顔を真っ赤にして大きな声を出せば下の人間を思い通りに動かせると思い込んでいるんだ。しかし、自分より立場の強い人間にはヘコヘコとへりくだり、そんな上司を尊敬する部下はいないんだよ」
「我々はこうして自分を抑え出世して今の地位を得たんだ」
「その結果が莫大な損害賠償というわけだ。いいか?俺は商人ギルドに一歩も引かんぞ。仮に損害賠償を待ってほしいと交渉するなら、それに見合う手土産を持ってこい!それができないなら、損害賠償金はすぐにでも払って貰うからな」

 ショウの覇気に、商人ギルドのギルドマスターラーダは椅子からずり落ちてしまった。
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