氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!

本条蒼依

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第1章 レアスキルは偉大

51話 ダンジョン攻略が進み流れに乗れない商人ギルド

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 商人ギルドが謝罪会見をして、各地にある商人ギルドの職員達にとって寝耳に水だった。昇給や賞与はギルドが立て直せるまで据え置きと通達されたからだ。ちなみに減給されたのは王都グシリア本部だけである。

「どういう事だ!」
「なぜ私達まで割を食わねばならないんだよ」
「こんな事納得いかない!」

 この決定に納得がいかない支部のギルドマスターは、本部に抗議を入れるが敢え無く却下されてしまう。この決定に更に商人ギルドのサービスは悪くなるのだった。
 その頃、マートンの町では新たな動きを見せる。商人ギルドマートン支部のアーノルドは、ギルドが損害賠償金を支払った事でショウとのわだかまりがなくなったとし、新しいポーションの買い取りをお願いしたのだった。
 しかし、ショウにはあっけなく取り引きは却下されてしまう。これにアーノルド達上層部は憤慨したが、ショウには払えるならさっさと払えばまだ印象も違ったが、王国騎士団が出張る騒動になっていやいや支払うような組織は信用ならんと追い出されてしまう。

「なっ、なんてやつだ!無礼も程がある!」
「それはこっちのセリフだ。アーノルドさんあんた達はまだお山の大将でいるつもりなのか?そうなら相当めでたい頭をしてるぜ」
「「「「「「なっ!」」」」」」
「いいか?俺はアーノルドさん達今の上層部が商人ギルドを運営している間は絶対協力はせん!」
「「「「「「ぐぬぬ・・・」」」」」」
「早く若い人間にその席を明け渡すんだな。なら、俺も考え直すかもしれんが、今の商人ギルドは潰れた方がましだ!」
「商人ギルドが潰れたらどうなる?町への流通がなくなり混乱をきたすぞ。それでもいいのか!」
「だから、お前達はお山の大将で頭の中がお花畑なんだ」
「「「「「「「馬鹿にするのもいい加減にしろ!」」」」」」」
「商人ギルドなんかなくても商人はたくましいから安心して潰れてろよ」

 そう言ってショウは家の中に入ってしまう。その行動にアーノルド達は引き止めようとしたが、門番のヨシノとカオリに阻まれてしまう。

「「お引き取りを!」」
「話はまだ終わっておらん!」
「「お引き取りを!」」
「ぐぬぬ・・・」

 アーノルド達はヨシノ達の強さが、自分の護衛隊ではどうにもならないので大人しく引き下がるしかなかった。

「今に見てろよ・・・この屈辱忘れぬぞ・・・」



 しかし、さらなる屈辱がアーノルド達に降り注ぐ。本来南門から王都グシリアに向かう行商人達が北門から出ていくのだった。そして、その一団はダインと親しくしていた行商人ばかりでショウの私有地に向かう。

「これがストレングス・プロテクションポーションですか」
「よろしくお願いしますね」
「この数なら儂らも大儲けできますわ。ワハハハハハ!」
「「「「「「そうですな!」」」」」」
「それでは長旅を気をつけて下さい」
「「「「「「「魔道士様ありがとうございます」」」」」」」

 そして、行商人達は又、マートンの町に戻って行き南門から【グレン】【ガーシン】【王都グシリア】までの海岸線の道のりを一ヶ月かけて旅をして、アイテムや食材を流通させるのだった。その流通は王都グシリアの冒険者ギルドでは拍手喝采で出迎えられて、ショウのポーションは入荷して1時間もせず完売する。
 又、行商人達の中では王都に向かわない一団もいた。その一団はグレンから内陸に向かい【アデン】に向かう。アデンはブリガンダイン王国のもう一つの都市と呼ばれダンジョンのある街だ。王都グシリアの北に位置する商業都市と呼ばれ、王都グシリアより人口が多い都市である。
 そのアデンの冒険者ギルドに、マートンの特産品としてショウのポーションが持ち込まれた。当然だがアデンでもショウのポーションは即日完売で次の入荷は行列が出来るのだった。
 最後に、マートンの町の東門から出る行商人もいて、この一団は【スーマ】【ロードス】に向かい、ブリガンダイン王国に4つあるダンジョンがこのロードスの町である。
 アデンから北東に位置するのがこの町であり、マートンより小さな町ではあるがダンジョンがあり賑やかな町の一つである。この町でもショウのポーションは衝撃的であっという間に完売してしまう。

 この噂を聞いたアーノルドは、商人ギルドの自分の部屋で怒鳴り散らしたのは、商人の間でお笑い話として広まったのは愛嬌の一つだ。そして、行商人達が各地に渡って一ヶ月ほどが過ぎた頃にこの情報はラーダの耳に入る事になる。

「ラーダ様大変です!」
「わかっている・・・あの魔道士のポーションの事だろ?」
「ラーダ様の耳にも入っていましたか?」
「くそぉ・・・あの忌々しい魔道士めが!」
「本当に腹ただしいです!王都グシリアだけでなくアデン・ロードスにまでポーションが流通されるとは・・・」
「待て待て!今、何と言ったのだ?」
「えっ?この情報はまだ知らなかったのですか?」
「知らぬ!あのポーションがアデンとロードスに流通されたのか?その2つの町だけなのか?」
「は、はい。魔道士は多分ブリガンダイン王国の4つのダンジョンの町に流通させたと思われます。この功績はいずれ王国で取り上げられるかと・・・」
「ば、馬鹿な!商品の功績で商品ギルドが蚊帳の外だと!あり得ん!こんな馬鹿な事が認められるわけにはいかない!」

 ラーダは頭を抱えて怒鳴り散らす。そして、その怒りの矛先はマートン支部のアーノルドに向けられた。

「アーノルドは何をしていたんだ!」
「アーノルド様からの報告によれば交渉決裂に終わったと聞きます」
「なぜだ!魔道士への損害賠償金は支払いわだかまりはなくなったはずだろ。なんで交渉決裂になる?行商人に託すより商人ギルドの流通に任せたほうが儲けが多くなるはずだ!」

 ラーダはいまだ自分の思い通りになると思っているようで何も変わってはいなかった。しかし、憤慨していたラーダは黙り込む。

「・・・・・・・・・」
「どうなされましたか?」
「まぁいい・・・あのような偏屈魔道士に関わってもいい事はない。商人ギルドは何もポーションだけあつかっているわけではないからな。アーノルドにも、魔道士のつくるポーションなど相手にするなと伝えておけ」
「しかし、ポーションは需要の高い商品かと」
「なら、お前はあの魔道士を説得してポーションを商人ギルドに卸させる事ができるのか?」
「そ、それは・・・」
「確かにポーションは需要が高い割に錬成師が少ないから高く売れていたが、あの魔道士が現れたせいで中間マージンを取れなくなった」
「はい・・・」
「なら、そんな商品に固執するだけ無駄だ。それならば他の商品で利益を出すほうが手っ取り早く商人ギルドを立て直せるだろう」
「さすがラーダ様です」
「偏屈魔道士は、原価ギリギリのポーションを売らせて置けばよい。どのみち魔道士が懇意にした行商人の売り上げは商人ギルドの税金として入ってくるのだからな」
「な、なるほど!」

 行商人のポーションの売り上げは、年間の売り上げで納め行商人のランクが決まるため、行商人は儲ける為にショウのポーションをせっせと町に流通させるだけさせれば、商人ギルドに利益が入るのである。当然だが、商人ギルドが流通させる方が利益は上がるのだが、まったく入らないわけではないので、ラーダはショウを相手にするのをやめたのだった。
 そして、その決定案はすぐさまマートン支部のアーノルドに報告され、別の商品の流通を考えろと指示された。

「な、なるほど・・・さすがラーダ様だ。確かに、あのポーションは惜しいが我らがいる限りどうにもならんからな。相手にするだけ損だ」
「しかし、なんか悔しいですね・・・」
「それは確かにそう思うが、ラーダ様の決定に逆らうわけにはいかん・・・じゃないと我々の立場が更に危うくなるだけだからな」
「た、確かに・・・」

 商人ギルドマートン支部は、ショウの事は気にしない方向で行く事を決める。しかし、その決定は後に後悔する事になるのだった。
 商人ギルドがショウのポーションを無視するようになって数ヶ月が経ち、ショウのポーションは行商人達の手により4つの町で飛ぶように売れダンジョン攻略が進んでいた。各地のダンジョンの階層のボス部屋が攻略されて、魔物の素材が町に出回り活気づくのだった。
 特に王都グシリアのダンジョンは広くて、今まで3階層のボス部屋に辿り着くまでにアイテムを消費してしまい、ボス部屋が攻略出来ないでいた。しかし、ショウのポーションのおかげで3階層のボスが攻略されて初の快挙となったのだ。

「ポーションのおかげで3階層のボス部屋まで辿り着く事が出来たんだが、4階層はまた、フィールドエリアだったんだぜ」
「そうなんだ!そいつはすげーな」
「ああ・・・しかし、あのフィールドエリアまで生産者が辿り着く事は出来ないだろうな・・・」
「確かに・・・辿り着いても鉱石や木材を持って帰れるとは思えないな」

 フィールドエリアの存在は生産ギルドにとってお宝だが、王都グシリアのダンジョンはとにかく広く辿り着くだけでも困難だった。その中で鉱石や木材を持ち帰る等とてもじゃないが無理と言うしかないのが、4階層に辿り着けた冒険者達の感想だったのだ。
 しかし、冒険者達が持ち帰る魔物の素材は今までとは違い冒険者ギルドの財布を潤わした。その素材を生産ギルドがこぞって購入し武器や防具を製作する。しかし、ここで商人ギルドに不測の事態に陥る。その武器や防具を購入する資金がないのである。

「もう少し安くならないのか?」
「何を言っているんだ。この剣の素材は4階層の魔物の素材で作られているんだぜ。これ以上は負からんよ」
「しかし・・・」
「金のない商人ギルドに相手にしなくとも買い手はいくらでもいるんだからな。この商品は冒険者ギルドに直接売る事にさせてもらうよ」
「そ、そんな・・・」

 このダンジョンのボス部屋攻略の出来事について、商人ギルドは完全に蚊帳の外となっていた。これらの報告に商人ギルド本部ではラーダが幹部達と苦虫を噛み潰したような顔をして話し合っていた。

「ぐぬぬ・・・金がなければ商品が買えんではないか!」
「しかし、あれらの装備は高くて手が出せません・・・あの装備を購入すれば他の商品の数量を減らさないといけなくなります・・・」
「そんな事はわかっておる!本当に忌々しい魔道士め!あの損害賠償金がなければ購入できたものを・・・」
「無理を承知で購入はできないのですか?あれらの商品は必ず利益が出るかと!」
「駄目だ!今は無理をしている場合ではない・・・」
「ぐ・・・」

 ラーダは今の経営状況で無理は出来ないと、幹部達の意見を突っぱねたのだった。しかし、この頭ごなしに否定した事が問題になるのを、ラーダはまだ知らなかった。

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