氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!

本条蒼依

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第1章 レアスキルは偉大

52話 ショウの目標は泣きそうになる

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 ラーダが、今回のダンジョン攻略で製作された武器防具の買い取りを中止させた事は、商人ギルドにとって英断とされたがこの流れに乗れない事に不服がある職員達も少なからずいたのだった。

「あの商品を手に入れれば商人ギルドの立て直しは進むはずなのに、ラーダ様はなぜ無理をしてでも買い取りをしないんだ」
「ラーダ様は慎重に考えているんだ。我々が足並みをそろえねばこの窮地は乗り越えれん」
「しかし、このままでは我々の給料は削減されたままで賞与もないだぞ!」
「うぐっ・・・」
「それならば我々で動いた方がいいんじゃないのか?」
「しかし・・・売れなかった場合、商人ギルドのダメージは計り知れないんだぞ」
「馬鹿な事を!あの商品は今までにない攻撃力に防御力がある装備なんだぞ。売れないわけがないだろう!だからこそ生産ギルドの売値も強気の値段だったじゃないか」
「それはそうだが・・・」
「それにこのままで、上の言いなりにしてたらずっと下っ端でいることになる。ここで一発成果を出せば、私達にも上に上がれるはずだ」
「た、確かに!」

 今まで商人ギルドの体質の弊害である。抑圧されていた一部の職員達の暴走だった。本来、報告・連絡・相談(ホウレンソウ)をするのが普通だが、商人ギルドでは上の言う事が絶対で提案しても上司が気に入らなければ却下されてしまうのが当然だった。その為、給料を減らされて不満だった職員達は今の状況を変えたいと暴走してしまうのだった。



 そして、時は一ヶ月ほど遡りマートンの町では、ショウが新たな事をしていた。

「ご主人様・・・本当に私達もダンジョンに潜らないといけないのでしょうか?」
「あたしは必要ないかと思うのですが・・・」

 ショウに連れられシスティナとアリサもダンジョンに来ていた。ホムンクルス7人も当然来ていて10人パーティーで潜っていた。

「システィナとアリサもレベルをもっと上げて貰うからな諦めてくれ」
「それはわかりますが・・・あたしはもう30レベルに達していますし・・・」

 アリサもまた、システィナと同じく30レベルになっていた。30レベルはヒューマン族の壁であり、30レベルもあれば何の不都合はないのである。しかし、ショウはシスティナとアリサの2人にも31レベルまで上げようとしていた。

「いいか?30レベル以上上げれば、お前達だけでも万が一の時に対処出来る」
「それはそうですが・・・」
「それにアリサは鑑定(アイテム)を持っているからな。レベルは上げれば上げるほど役に立つとおもうぞ」
「今でも十分役にたってますよ」
「だが、マジカルアイテムは鑑定出来ないだろ?」
「名前ぐらいは鑑定できますわ」
「マジカルアイテムの名前だけじゃ意味ないだろ?」
「それはそうですけど・・・」
「私は大丈夫ですよね?」
「システィナもレベルを上げて精霊眼を使いこなしてもらいたいんだよ」
「でも、ドライアドとコミュニケーションは取れてますよ」
「システィナがレベルを上げたら俺の予想はそれだけではないと思っているんだがな」
「えっ・・・それってどういう事ですか?」
「精霊眼は俺にもわからんからこれ以上は予想だし、そうならないかもしれないからまずはレベルを上げて確認をしてほしいんだ」
「そんな・・・レベルを上げて何も変わらないかもしれないんなら危険なダンジョンには潜りたくないですけど・・・」
「俺の奴隷になったんだから諦めろ!」
「「そんなぁ・・・」」
「システィナ、アリサあたし達がいるから安心して」
「そうだよ・・・あたし達が傷一つつけないから大丈夫。それに傷ついても、おじちゃんのポーションもあるから安心」
「「うぐっ・・・」」
「痛いのは嫌なんだけど・・・」

 カホとイチョウが2人を慰めたが、システィナとアリサの顔は苦痛の表情だ。ちなみに、ショウのレベルはこの世界に来た時は30レベルであり、ゴブリンの集落を壊滅させた後しばらくしてようやく31レベルになっていた。あれだけの戦闘をこなしてようやく30レベルの壁を越えれるのだから、普通の冒険者で30レベル以上の人間はとんでもない経験をしている事になる。

「どちらにせよ。レベルを上げて損はないから上げて貰うからな」
「「ううっ・・・わかりました・・・」」
「そんな嫌そうな顔をするな。俺が殺させないから安心してくれ」
「ご主人様やカホ達が強いのは知っているから安心だけどやっぱり怖いものは怖いです・・・」

 そう言いながら、ショウ達はシスティナとアリサを引きずるようにダンジョンへと入っていく。そして、マートンの町のダンジョンへと入り1階層のボス部屋を簡単に攻略し、2階層に来たショウ達はその光景に目を奪われる。

「ここがダンジョンの中なのか?」
「「ご主人様・・・凄いですね・・・」」
「やっぱり挑戦しないと見れないものはあるんだな」

 ショウ達はもちろんだが、ホムンクルス達もその景色に笑顔となっていた。1階層は迷宮だったが2階層はフィールドエリアになっていて空には太陽のようなものもあり燦々と大地を照らしていたからだ。

「それでショウ。目的地は2階層と言ってたよね?ここで薬草を採取するの?」
「アユミ。ここに来たのはそれだけじゃないよ」
「じゃあ!新しい魔物の素材を狩るの?」
「いやいや、このダンジョンの最深レコードは6階層だ。2階層ごときの魔物なんか溢れているから高値にならないよ」
「じゃあ、ここにはなにを?」
「鉱石を採掘する為だ」
「「「「「「えぇ~!」」」」」」

 鉱石の採掘と聞いてアユミ達全員が驚いたのだった。

「旦那様は鍛冶も出来るのか?」
「いや、出来なくはないが錬金術で製作するのはアクセサリーだな」
「アクセサリー?」
「ああ。アスカもレベルはほとんど頭打ちだろ?」
「そうだな・・・このダンジョンレベルならあたしのレベルはまず上がらないな」

 アスカは飛車の駒を取り込んだホムンクルスだ。レベルも既に95レベルでありこの階層ならば一人で十分である。

「俺の目標はダンジョンの最深層の素材を持ち帰る事だからな。アクセサリーや武器防具は最高の物を揃えるつもりだ」
「「えぇ~!」」

 ショウの目標に驚いたのはやはりシスティナとアリサだ。2階層に来ただけでも恐怖に慄いているのに、ダンジョンの最深層が目標と聞いて泣きそうになっていた。

「ご主人様・・・嘘ですよね?」
「嘘と言って下さい・・・あたしはダンジョン最深層なんて無理ですよ・・・」
「2人とも泣くな。今すぐの話しじゃないから」
「「でも・・・」」
「準備も無しに最深層なんか行ったら、俺はもちろんアスカだって瞬殺されてしまうからな」

 ダンジョン最深層は10階層とされていた。これは人間達が勝手に思っている事で更に最深層があるかもしれないが、今の段階ではマートンの町のダンジョンの6階層が最深レコードなので分からない事だった。そして、1階層の攻略の目安は6人パーティーで全員が10レベルで攻略出来るとされていた。つまり、ショウの目標はダンジョン最深の10階層となり、全員が100レベルにならないと攻略は不可能という事になる。

「って事は、私達も100レベルにならないといけないという事か・・・」
「そう言う事だな!その為にはいずれアユミ達の武器防具も強力な物にしないといけないからな」
「「そんな無理ですよ・・・」」
「まぁ、無理そうだったら挑まないから安心しな」
「「本当ですか?」」
「ああ。目標と言ったが無理してするもんじゃないからな。俺はポーションやアクセサリー等作れたらいいんだよ」

 ショウの目標はポーションや装備品を製作する事だ。これは地球での工場で働いていた職人気質からきていた。ショウは工場で働き過ぎで過労死してしまったが、工場勤務は嫌ではなく旋盤加工で良い品を作る事にやり甲斐を感じていたからだ。そして、この世界で錬金術を貰い良い品を作る事にやり甲斐を感じていた。それにはダンジョンの素材を自分で持ち帰り、更に高級品を製作したいと思っていたのだ。

「俺のわがままだが協力してほしい。無理をしてまで最深層に行こうとは思っていないからさ」
「「ううっ・・・」」
「ご主人様・・・頭を上げて下さい。それは狡いです」
「本当にそうですよ。奴隷のあたし達が断れる事は出来ないですからね」
「そっか!ありがとな。だけど、本当に嫌ならいかないからな。だが、システィナとアリサはもうちょいレベルを上げてほしい。レベルが上がればこの前のような事があっても、俺が安心出来るからな」

 ショウは、システィナとアリサが闇ギルドの構成員のロバートに襲われた事を気にしていた。少なくともシスティナとアリサが50レベルになれば、そう簡単に狙われる事はなくなると思っていた。そして、馬鹿な事を考える人間を減らそうと考えていたのだった。
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