氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!

本条蒼依

文字の大きさ
62 / 119
第2章 新たな商売

2話 密会

しおりを挟む
 ショウが冒険者ギルドで足止めをされていたその夜、個人商会の頭目であるアーバンという人物は、貴族ギルドに席を置く人物と会食をしていた。

「この度は私共の商会ボータにいい話をお持ちくださりありがとうございます。それでこれが貴方様のお菓子です。どうぞお納め下さい」
「ぐはははは!ワシは山吹色の菓子が好きでのう」

 その場所はショウが目の当たりにすると昭和の時代劇かあっとツッコミが入るような話し合いがおこなわれていた。そして、アーバンという人間は差し出した箱の蓋を開き、貴族の男に中身を見せると金貨が箱いっぱいに詰められていたのだった。

「来月には更に多くの菓子を納める事ができそうです」
「そうかそうか。一時的にお主達の商会ボータからの菓子が少なくなった時はどうしようかと思ったぞ」 
「ホントその節はご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした」
「それでラーダの奴はいかがしておるのだ?」
「今は、ギルドマスターの地位を辞職しました。これからは商会ボータの会長職に就く形になります」
「そうかそうか。なら、商会ボータも安泰だな!」
「ええ。ギルドマスターを辞職したとしても、会長にはまだまだギルドとの人脈がありますからね」
「ぐはははははは!」
「それで申し訳ないのですが・・・今回、捕まった盗賊がいたかと思うのですが・・・」
「心配するな。捕まった盗賊は証拠不十分でもうおらぬよ」
「そうですか。それを聞いて安心しました」
「ぐはははははは!ワシに任せればいい。しかし、わかっておるな?」
「はい。任せて下さい。来月末には更に多くの菓子を持参させて頂きます」

 夜中に行われる密会は、ラーダの息がかかる個人商会と貴族の汚職の現場である。

「しかし、商人ギルドマートン支部が潰れた時はどうなるかと思いましたが、まさかこんな手を考えるとは思いもしませんでしたよ」
「くっくっくっ。それで塩の流通はどうなっておる?」
「任せて下さい。盗賊達は街道沿いに待機させております。あの街道は塩の流通には欠かせない街道です」
「そうか。ワシの計画通りに進んでおるな」
「ただ一つ厄介な個人商会があるのです・・・」
「どこの商会だ?」
「トルーネの商会です・・・あやつは昔から正義感を振りかざす奴で本当に鬱陶しい奴なんです」
「そんな奴がおるのか?」
「はい・・・商会長となったのにいまだ現役といいむ自ら行商をしている奴なんです」
「そんな奴盗賊に襲わせればいいじゃないか?」
「それがあやつは長年の経験で独自の販路を持っておるのです・・・そんな奴がサンテの村に行き塩の取り引きをしてマートンの町で原価ギリギリで販売してなかなか塩の価格が上がらないんです」
「そうか・・・本来ならとうに4倍になっているはずなのにそういう事だったのか」
「そうなんです・・・アヤツがどのような道を使っているのか分からなくて盗賊達も人員を振り分けております」
「なるほどのう・・・だから今回あ奴らの一人が捕われてしまったという事か」
「は、はい・・・申し訳ありませんでした」
「まぁよい!トルーネの事は放って置けばよい。たかだか個人商会だ。お主達は行商で儲ければよい。馬車の数が足りなければ貴族ギルドから援助してもいいしな。マジックバッグも貸し出してもかまわん」
「な、なるほど!大量に買い付けトルーネに回す塩をなくさせればいい話ですか」
「そうだ!そして、お主の馬車は意図的に盗賊に襲わせればいい」
「それでは私達が・・・」
「いいか?盗賊達に襲わせるのは塩の強奪だ。お主達行商人達の命ではない。その辺はワシから盗賊達の頭に伝えて置くから安心せえ」
「なるほど!意図的に塩の量を減らすのですね」
「そうだ。そして、ワシの息がかかる個人商会達の蔵には塩の在庫を貯めて置けばよい。塩の価格が5倍になるように徐々に上げればいいんだ」
「さすがです!」

 話に出てきたトルーネは必死に塩の行商をしてこれ以上塩の価格を上げないようにしていることがわかる。しかし、ラーダの息がかかる個人商会は賄賂を渡し、貴族から優遇されていた事が分かる。そして、アーバンと貴族は大笑いしたのだった。



 それから数日後、マートンの町では塩の流通が更に制限されていた。そして、冒険者ギルドではAランク冒険者【竜の咆哮】が帰ってこず、盗賊達の問題が先送りになり盗賊達が好き勝手暴れていたのだ。

「いったいどうなっているというんだ!なんで竜の咆哮は帰ってこんのだ!」
「ギルドマスター。落ち着いて下さい」
「これが落ち着いてられるか!Bランク冒険者がもうすでに3パーティーが壊滅してしまったんだぞ!しかも、盗賊達はどこに隠れている?いまだどこに隠れているか掴めん」
「ううっ・・・」
「塩の価格は上がる一方で唯一、トルーネさんの個人商会が頑張ってくれてはいるがこのままではどうにもならん」
「竜の咆哮はいつ帰ってくるんでしょうか・・・」
「くそぉ・・・しょうがない。ショウに助けを求めるしかないのか・・・」
「しかし、もうすでにギルドの資産を食い潰して魔道士様に払う報酬が確保出来ないかと・・・」
「竜の咆哮の帰りを待つだけしか出来ないのか」

 冒険者ギルドではベックと幹部達が頭を悩ませていた。その頃、ショウはある個人商会の前に来ていた。

「イチョウ、ここがマートンの町で塩の価格が一番安い商会なのか?」
「そうだよ。なんか、原価ギリギリで冒険者ギルドに卸しているみたいなんだ」
「よく調べたな。イチョウ偉いぞ」
「エヘヘ。これぐらいすぐ調べられるから・・・」

 イチョウはショウに褒められ照れくさそうにはにかむのだった。そして、ショウはその個人商会に入ると、商会の職員達は疲れきっているようだった。

「すいません。ちょっとよろしいでしょうか?」
「あっはい。いらっしゃいませ。今日はどのようなご要件でしょうか?」
「商会長と商談に来たのですが面会はできませんでしょうか?」
「お約束の無い方とのいきなりの面会はちょっと・・・それに商会長のトルーネはいま多忙で、今も商会から出発したばかりで・・・本当に申し訳ありません」

 トルーネ商会の職員は丁寧な対応でショウとの面会を断ったのだった。ショウもいきなり訪れた事もあり素直に引き下がろうとトルーネ商会を後にした。

「おじちゃん。どうするの?」
「そうだな。後を追うか」
「そうこなくちゃ!早く行こ」
「だな!」

 そう言って、ショウとイチョウの2人はマートンの町の南門に走るのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Gランク冒険者のレベル無双〜好き勝手に生きていたら各方面から敵認定されました〜

2nd kanta
ファンタジー
 愛する可愛い奥様達の為、俺は理不尽と戦います。  人違いで刺された俺は死ぬ間際に、得体の知れない何者かに異世界に飛ばされた。 そこは、テンプレの勇者召喚の場だった。 しかし召喚された俺の腹にはドスが刺さったままだった。

異世界にアバターで転移?させられましたが私は異世界を満喫します

そう
ファンタジー
ナノハは気がつくとファーナシスタというゲームのアバターで森の中にいた。 そこからナノハの自由気ままな冒険が始まる。

美女エルフの異世界道具屋で宝石職人してます

網野ホウ
ファンタジー
小説家になろうで先行投稿してます。 異世界から飛ばされてきた美しいエルフのセレナ=ミッフィール。彼女がその先で出会った人物は、石の力を見分けることが出来る宝石職人。 宝石職人でありながら法具店の店主の役職に就いている彼の力を借りて、一緒に故郷へ帰還できた彼女は彼と一緒に自分の店を思いつく。 セレナや冒険者である客達に振り回されながらも、その力を大いに発揮して宝石職人として活躍していく物語。

世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~

きよらかなこころ
ファンタジー
 シンゴはある日、事故で死んだ。  どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。  転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。  弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。

母を訪ねて十万里

サクラ近衛将監
ファンタジー
 エルフ族の母と人族の父の第二子であるハーフとして生まれたマルコは、三歳の折に誘拐され、数奇な運命を辿りつつ遠く離れた異大陸にまで流れてきたが、6歳の折に自分が転生者であることと六つもの前世を思い出し、同時にその経験・知識・技量を全て引き継ぐことになる。  この物語は、故郷を遠く離れた主人公が故郷に帰還するために辿った道のりの冒険譚です。  概ね週一(木曜日22時予定)で投稿予定です。

異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴
ファンタジー
俺、飯田雷丸。どこにでもいる普通の高校生……だったはずが、気づいたら異世界に召喚されて魔王を倒してた。すごいだろ?いや、自分でもびっくりしてる。異世界で魔王討伐なんて人生のピークじゃねぇか?でも、そのピークのまま現実世界に帰ってきたわけだ。 で、戻ってきたら、日常生活が平和に戻ると思うだろ?甘かったねぇ。何か知らんけど、妖怪とか悪魔とか幽霊とか、そんなのが普通に見えるようになっちまったんだよ!なんだこれ、チート能力の延長線上か?それとも人生ハードモードのお知らせか? 異世界で魔王を倒した俺が、今度は地球で恋と戦いとボールを転がす!最高にアツいハーレムバトル、開幕! 異世界帰りのハーレム王 朝7:00/夜21:00に各サイトで毎日更新中!

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

処理中です...