氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!

本条蒼依

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第2章 新たな商売

3話 トルーネ暗殺者に狙われる

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 ショウとイチョウが、マートンの町の南門から出て半日が過ぎた頃、【グレンの町】に向かう馬車が盗賊達に襲われているのが見えた。

「ぐっ・・・ま、まさかこんな所にまで盗賊がいるとは!」
「グヘヘ!トルーネやっと見つけたぜ」
「なっ!?ワシを狙っていたのか?」
「お前がいると迷惑なんでな!死んでもらうぜ」
「みんな頼む!ワシは今死ぬ訳にはいかんのだ」
「「「「「「わかりました!」」」」」」
「トルーネのおやっさん、俺達が必ずあいつを捕らえてやるから安心してくれ」
「た、頼むぞ」
「「「「「「はい!」」」」」」

 まさか、トルーネは自分が狙われていたとは思ってもいなかったのだ。普通盗賊達は街道を通る行商人を狙う。つまり無差別であり特定の人物を狙う事はまずないのだ。

「貴様ぁ!トルーネのおやっさんを狙ってどういうつもりだ!」
「そうよ!トルーネのおやっさんはいい人なんだからね!」
「グヘヘ!どういうつもりも何もねぇ!あいつに生きていられると困る御人もいるんだ」
「そいつは誰だ!」
「これから死んで往く奴に教えても無駄だ。大人しく死んでいけ!」
「みんな、奴をとめるぞ」
「「「「「おお!」」」」」

 トルーネを襲う人間はたった一人、全身真っ黒なレザーアーマー?で身を包み、いかにも暗殺者の風貌である。
 そして、トルーネを護衛する冒険者はBランク冒険者の【タイタンの雷鎚】だ。タイタンの雷鎚のリーダーハンスは全員に突撃命令をすると同時にパーティーメンバーが動く。

「くらえ!パワーストライク!」
「グヘヘ!いい突進だが相手が悪かったな」

 盗賊はハンスの突進技をスルーして背後に回り込み、首すじに刃物を斬りつける。その間たった数秒の出来事だった。

「「「「「ハ、ハンスぅ!」」」」」

 仲間が叫んだ時には、ハンスの首が宙を舞い首から血しぶきが噴水のように噴き出てハンスは倒れてしまった。仲間が倒され、仲間達の足が止まってしまう。

「まずは一匹!」
「そして、まとめて3匹!」

 その瞬間、3人の冒険者達の首がゴロリと落ち3人の冒険者が崩れ落ちた。

「「ガイ!サマル!ミーシャ!」」
「なんで首が跳ねられたんだ?」
「よくもみんなを!」
「待て!アターシャ突っ込むな!」

 猫獣人のアターシャと呼ばれた武闘家は、一瞬に懐に入りその拳を暗殺者のみぞおちに叩き込む。しかし、そこには暗殺者の姿はもうない。

「さすが亜人。スピードはそこそこ速いな。だが相手が悪かったな」

 暗殺者のダガーがアターシャの首をとらえた瞬間、アターシャが叫んだ。

「トルーネのおやっさん逃げてぇ!」

 アターシャは自分達では太刀打ち出来ないと悟って、依頼主のトルーネに大声で叫んだ瞬間その首が飛んだのだった。

「おやっさん逃げろ!俺が足止めす・・・」
「ザンギ・・・」
「残念だな!足止めする時間なんかねぇよ」

 トルーネが最後に残った剣士を見ると、暗殺者との距離が離れているはずなのにザンギの首がゴトリと落ちた。その暗殺方法がまったく分からない状況に、トルーネは声を失い腰を抜かしその場に崩れ落ちのだった。

「な、な、な、なんで離れた場所にいるザンギを・・・」
「グヘヘ!俺は人間を殺すのが趣味でなぁ。それも何もできずに死んでいく人間は見ていて快楽を覚えるんだよ。トルーネお前はどんな風に死んでいくのか愉しみだよ」
「ち、近寄るな・・・」

 トルーネは腰を抜かしながら後退りをしながら、額から大量の汗が噴き出した。

「まぁ、時間を掛けてもしょうがない!」

 暗殺者は舌を出し自分のダガーを舐め嫌な笑みを浮かべ大笑いすると同時にトルーネに突進する。

「た、助けてくれ!」

 トルーネが助けを叫んだ瞬間、ガキンという金属音が辺りに響き渡り暗殺者のダガーがはじけ飛んだのだった。その瞬間暗殺者は後ろに飛び退く。暗殺者とトルーネの間に割り込んだのはイチョウだった。イチョウは暗殺者を睨みつけダガーを2本手に持ち構える。

「はっ?」
「良かった!間に合った・・・」
「誰だ貴様は!」
「お嬢ちゃん逃げるんだ。あいつは暗殺者だ」
「あんたがトルーネのおじちゃん?」
「お嬢ちゃんもワシの事を知っているのか?」
「おじちゃんと一緒に後を追ってきた・・・もう安心だよ・・・」
「何をごちゃごちゃ話していやがる!面倒ぐせぇガキが死ねぇ!」

 暗殺者はイチョウに突進する。その瞬間、暗殺者の後方から詠唱が唱えられ暗殺者にかけられるか。

「時間の流れに逆らい長いときの中を過ごせ!スロー!」

 暗殺者の動きはタイタンの雷鎚と戦っていた時とは違い、トルーネの目でも確認できるほどゆっくりした動きだった。そして、暗殺者本人も理由が分からずダガーをイチョウの首を目掛けて振るう。しかし、イチョウのダガーは暗殺者のダガーを簡単に弾き飛ばした。

「そんなスローな攻撃効かない・・・」
「な~に~を~し~や~が~っ~た!」

 暗殺者の話し方も異様で間延びしながら話していたのだった。そして、ゆっくりとしたモーションで暗殺者は後ろに飛び退く瞬間、ダガーを持つ反対の手で何かをイチョウに目掛けて投げつけたのだ。
 しかし、暗殺者が投げつけたものは勢いがなく地面に落ちてしまう。

「ぐ~!いっ~た~い、何~が~起~き~てい~や~が~る~」

 暗殺者はダガーを振るった瞬間、水晶で作った鋭利な刃物を投げていたのだ。限りなく薄く加工した武器は透明で投げつけられると、人の目には追いきれずその命中した箇所は簡単に切断されてしまうのだ。この透明な攻撃にザンギ達は理由も解らず殺されたのである。

「時空の刃よ。敵を穿て!時空間の槍スペイスタムジャベリン!」
「ぐはっ~!」

 後方から詠唱するショウは暗殺者の胸を貫いてしまった。

「あっ・・・しまった!殺しちまった・・・」
「おじちゃん・・・あたしには殺すなって言ったのになんで殺しちゃうのよ!」
「す、すまん・・・あいつがなんか変な暗器を投げつけたから焦ってしまった・・・」
「暗器ってこれね・・・こんなの見たことないよ・・・」

 イチョウが手にした武器は水晶で作られた透明の薄いブーメランのような武器だった。ショウがその武器を見た時、学生時代に見た漫画を思い出し思わずツッコミを入れてしまった。

「あいつは【魁!◯塾】の影慶か!」
「おじちゃん・・・何それ?」
「いや、こっちの話だ。気にするな・・・それより、大丈夫だったか?」
「あ、貴方は魔道士様ですか?命を救ってくれて本当にありがとうございます!」

 ショウはトルーネの顔を見て驚いた。

「あ、あんたがトルーネだったのか?」
「その時は少しだけお話させてもらっただけでしたが、まさか命を救っていただけるとは・・・本当にありがとうございます」

 ショウはトルーネの顔は知らなかった。今初めて知ったのだが、ショウとシスティナがマートンの町にきたばかりの時に、少しだけ話をしたトルネコさんと名付けたその人だったのだ。(第1章16話登場)

「貴方がトルーネさんだったのか?」
「はい!ショウ殿いや、魔道士様の活躍はいつも耳にしておりました。まさか、あの時には今のような活躍をするとは思ってもいませんでしたが、今は町を救っていただき感謝しております。そして、またワシの命まで救っていただき本当にありがとうございます」
「まぁ、とにかく助けられて良かったよ。ただ護衛の冒険者達は残念だったな・・・」
「おじちゃん!冒険者達の遺体と暗殺者の死骸は集めておいたよ」
「ありがとな」

 ショウは冒険者の遺体と暗殺者を時空間倉庫に収納して、トルーネと話を続けた。

「これからはトルーネさんはどうするつもりだ?」
「いったんマートンの町に帰ろうと思います」
「それしかないよな」
「ええ・・・護衛もいませんし一人では行商は自殺行為そのものですからね。それで申し訳ありませんが、町までの護衛を頼めませんか?」
「ああ。それはもちろんだ!それに俺達はトルーネさんを追ってここまできたんだからな」

 そう言って、ショウとイチョウはトルーネの馬車に乗り込んだ。馬車には震えながら隠れていた人物がもう一人いた。

「カン。こんな所に隠れていたのか!」
「だ、旦那様・・・」
「はぁ・・・もう大丈夫だ。ワシ達は魔道士様のおかげで助かった。いったん町に帰ろう」
「うわぁああああああああ!だ、旦那様良かった!もう駄目かと思いましたぁ!」

 カンと呼ばれたのは馬車の馭者だった。そして、カンはトルーネに早く泣き止み馭者をしろと叱られるのだった。
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