碧天のノアズアーク

世良シンア

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グランドベゼル編

14 巨大光線

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side ノア=オーガスト

白い光を帯びた巨大な光線が、オレとシンの真横を勢いよく通り抜ける。間一髪ってほどでもなかったが、恐怖を覚えるには十分な距離だ。光線はオレの後方にあった木々を消す。地面は抉れ、はるか先にあった山の麓付近には、丸々と小さな穴が空いていた。

小さいといっても、それはこの距離だからそう見えるだけ。近くまで行けば、その穴はバカみたいに大きいんだろう。

オレはお返しに氣弾を打ち込む。だが氣弾はデカ亀の身体を通り抜け、その先の木に着弾する。さらにデカ亀は全くの無反応だ。

やっぱ効かないよな。もう五回はやったし。

オレは再び持っていた剣を投げつける。予想通り剣はデカ亀の身体をすり抜け、奥の木に刺さる。

もう意味がわからん。こいつには弱点なんてのはもちろん、あらゆる氣術も物理攻撃も効かない。まさに無敵だ。

そこにプラスして、攻撃力が桁違いにやばい。あんなに遠くの山に風穴あけるってなんなん?

あんなのがくるって全くわかってなかった時、帝都がある方向にオレたちが立っていなくて良かったって、心底思ったよ。 



「さっきまでとは、見た目が全然違うね……」

カズハの一言にオレも同意する。

「たしかに。岩石みたいにゴツゴツしてたはずなのに、今じゃ半透明な身体だし、ちょっと神聖さ?みたいなのも感じるかも」

「これが本来の姿なのかもしれねぇな。見た目もそうだが、さっきまでとは明らかに氣の質がちげぇ。段違いだ」

「ああ。まさに氣の権化と呼ぶにふさわしいだろうな」

「怖い……」

「大丈夫ですよ、リュウくん」

エルはリュウの手を軽く握る。

「エルお姉ちゃん、手震えてる……」

「す、すみません。励ますつもりが、私まで……すぅ……はあぁ」

エルは自身に芽生えた恐怖を抑え込もうと、大きく深呼吸をする。

エルだってまだ十五歳だ。こんな怪物を前にして平常心を保てるはずがない。恐怖を抱くのは当然だ。

「まだ、震えてる……大丈夫……?」

「私、ダメですね。リュウくんよりもお姉さんなのに……全然、止まらない……」

エルは必死に震えを抑えようとする。だが、一向に止まる気配はない。

「エル。あんなのに怯える必要なんかない」

セツナはエル背中をポンッと叩く。

「セツナ、さん……」

「あんたは強い」

「え……?」

「私が出会った中で一番強い目をしていた。強い意志をもっていた。……薬師になるんだろ?」

「……」

「すごい薬師になってみんなを救う。それがあんたの夢なんだろ?だったらこんなところで震えてる場合じゃない。死んでいいわけもない。……戦え、その恐怖と」

セツナの重みある言葉がエルの心を射抜く。

「セツナさん…………そうです。私、こんなところで終わるわけにはいかないんです。……戦います、自分と。そしてあの魔物と」

「震え、止まった……」

「へ……?」

「へぇ。やっぱりいい目をするな、あんた」

「そ、そうです、か……?」

「ああ。私はあんたの目が一番好きだな」

「へ?!す、好き?!セ、セツナさん、何を言って……?!」

「で、リュウはどうなんだ?覚悟、決まったのか?」

エルの困惑ぶりを無視して、セツナはリュウに目を向ける。

「……うん。ぼくも、ここで死ぬのは……絶対嫌だ……!」

「ふ。その意気だ」

セツナはリュウの頭をポンッと優しく撫でる。

「ガギャァァアァァァァァァァ!!」

一際大きな声が辺りを覆う。耳を塞ぎながらもその声の主を見れば、そいつは口を大きく開けていた。そこにはみるみるうちに光の粒子が集まり、巨大な氣の塊がその口内を満たしていた。

来る……!

オレたちはすくに事態を察知し、デカ亀の攻撃を避ける態勢に入る。

その直後、デカ亀の口から高密度の氣の光線が発射された。オレ、シン、セツナ、湊は左へ、秀、カズハ、エル、リュウは右へ回避した。

その光線は、その直線上にあったあらゆるものを抉り去った。木も、地面も、山さえも……その威力はオレたちの想像を遥かに超えていた。

オレはその悲惨な光景に面を食らう。

「マジかよ。こんなの喰らったら確実に死ぬじゃんか」

オレたちの後ろが山だったから良かったものの、もし街とか人が大勢いるような場所に当たってたら、一大事どころの話じゃないって。

そう思ったのも束の間、再びあの脅威的な攻撃がオレたちを捉えようとする。光がデカ亀の口内へと収束し、放たれる。

マズイってこれは……!



「何回風穴開けちったかな、あの山脈……」

オレはチラッと後ろを見る。連なる山々にはいくつもの大穴がこの距離からでも見えた。

「さあねー。ただこれはもう、あそこに人が住んでないことを祈るしかないね」

「だな。……また来るぞ!」

近くにいたオレとカズハは、左側へと飛び退いて攻撃をかわす。

「この攻撃はもう見慣れたからな。避けるだけならどうにかなるけど、防ぐのはさすがに……」

そう。オレたちに被害が出ることは現状なさそうではある。ただ、オレたち以外にはバリバリに被害が出まくっているのだ。この超高エネルギー光線を吸収するなり相殺するなりの方法があれば実行してるけど、そんな簡単には事は進まない。

「私もさっき弾けるかなって思って絶対防御アブソリュート・ディフェンスやってみたんだけど、見事に吹っ飛ばされちゃったよー」

いやほんと、あの時はマジでびっくりした。カズハが急に光線の前に出たんだからさ。しかも、思いっきり吹っ飛ばされて、戻ってくるのに数分かかってた。

「知ってるよ。めっちゃ焦ったんだからな。あんまヒヤヒヤさせないでくれよな」

「ごめんごめん」

「こっちにも飛ばせよ!バカ亀!」

秀は特大の氣弾をデカ亀の顔面目掛けて放った。氣弾ははるか上空まで勢いよく飛んでいった。

『ガギャァァアァァ!!』

デカ亀は怒ったのか、秀に向けて口を大きく開いた。

「だからバカ亀なんだよ、お前はなぁ」

巨大な光線が秀に向かって放たれる。秀はその瞬間に、右側方へと回避行動を取った。

「おいおい、全然当たってねぇぞ。目ん玉ついてんのかぁ?」

秀は再び氣弾をデカ亀の顔面へと打ち込む。するとまたデカ亀は大声を上げ、秀に光線を放つ。

こんな感じでオレたちは攻撃をかわし続けている。秀のあの挑発行為は、実は結構ありがたかったりする。あれのおかげでオレたちに攻撃は飛んでこないんだからな。

まあでも、かれこれ二十分は経ったかもな。一応、反撃の意味も込めて、各々が氣術や弓矢を放ったりしてるけど、ここまでくればそれが無意味なことは全員把握済みだ。やられっぱなしはムカつくからやってるとこもあるかもしれない。

それじゃあ、このまま黙って避け続けるだけでいいのかって思うかもしれないが……まさにその通りだ。だって反撃するだけ無駄なのはもうわかってるしな。

だけどそれ以上に、一見無意味に見えるこの時間で、あいつの弱点が見えたのが大きな収穫だった。弱点というか、もはやこの難攻不落の城とも言えるデカ亀を仕留める、唯一の方法だな。

「だいぶ縮んだんじゃねぇか、あの亀よぉ」

「ああ……!」

秀の一言にオレは頷く。

そう、あのデカ亀は今、当初の三分の一くらいのサイズになっていた。それでもまだ周りの木よりも全然高いけどな。

一体何があったのか。

端的に言えば、氣の放出過多だな。オレたちはあいつに実質何もできてないから、それしか考えられない。はるか先にある山をも貫くあの威力。相当な氣が必要なはずだ。それを何度も何度も乱射すれば、当然内包していた氣の量は激減していく。

これが意味するのは、あいつの身体も氣でできているということだ。氣そのものだけで構成された生命体は、確認されているものだけで言えば、精霊のみらしい。ちなみにこれはクロードが教えてくれた。

それなら同じ氣の生命体である精霊もこの亀と同じようにどんな攻撃も効かないのかと言えば、そうではない。精霊を傷つけることができるのは、氣を帯びた、または氣術のような氣そのものの攻撃であれば、それは精霊にも通用する。

となると、精霊とこの亀はまた別の個体ってことになる。この亀の方が性能がいいって感じだ。でも、この亀にも弱みはあった。それが氣を使えば使うほどに身体が小さくなっていくってことだ。

これにいち早く気づいたのはセツナだった。ちょうどオレもセツナの近くにいたんだけど、その時「こいつ、縮んでる……?」ってボソッと言ったのが決め手だったな。

オレも……たぶんみんなも、あの時何かしら違和感を覚えてた。なーんか最初と違うな……でもなんだろう?ってな。だからあのセツナの一言は超痺れた。それだ!って感じで。

そこからは、あの巨大光線を避けつつもみんなに情報を共有していった。このまま手をこまねいていてもいいのかと不安だったであろうみんなにも、このまま避け続ければ勝てるという確定的な情報が来たことで、余計な邪推をすることなく避けることだけに専念できるようになった。

だからカズハが飛び出した時はマジで焦ったんだよ。避ければいいって言ったのに、防ごうとするんだからさ。まあたぶん、絶対防御の性能をより把握しておきたかったのかもな。本当に全ての害から身を守れるのかどうかってのをな。

いくら冒険者だからって、そこまで危険を冒すのは……ってそんなのオレが言えたことでもないか。

まあそれはさておき、だ。これが判明したことでオレたちの心に余裕も生まれたし、この怪物を倒せるっていう希望も見えたってわけだ。

氣を使わせれば使わせるほど、敵はどんどん小さくなっていく。なら、全て使わせれば……ってな感じにな。

「ノア。このまま俺があいつの気を引いておく。だが、このままやつがおっ死ぬかどうかはわからねぇ。油断はするなよ」

「ああ!わかってる!」

オレたちは帝都がある方角……つまりは東側には立たないようにしている。帝都に当てたら大勢の人が死ぬのは目に見えてるからな。だから回避範囲が狭くはなるけど、この亀が最初に周囲の木々を一掃したおかげで、回避可能範囲はかなり広い。東側が使えないってデメリットがあってもなおな。

それともうひとつ、この開けた大地の広さには大きなメリットがある。それはズバリ、あの亀との距離が十分に離せて、かつその姿がよく見えることだ。

あの亀の周囲は氣の濃度が高すぎる。これは紫苑と湊が教えてくれたことだ。加えてその中にいるのは危険ってことも湊やエルが言っていた。ここまで離れていればその影響下には入らなくて済むし、開けてるからあいつがどう動くのかも視認しやすい。

まあこの恩恵は全部あの氣の渦……つまりはあの亀のおかげなんだけどな。そう考えると、秀の『バカ亀』ってのもあながち間違いでもないかもなー。

「どうした?俺はまだぴんぴんしてんぞ。もっとよーく狙ってこいや!」

一言だけオレに言いに来た秀は、再び引きつけ役の任を遂行するために戻っていった。そしてあの安い挑発を再開する。

今のオレたちの立ち位置を簡単に言うと、オレ、カズハ、秀が南側、シン、セツナが西側、湊、エル、リュウが北側って感じだ。見事に三・ニ・三の布陣なのは幸いだ。パーティ最大の強みである助け合いがしやすいからな。

集まりすぎたら攻撃が飛んできた場合に全滅しやすくなるし、逆の場合は孤立無援状態で、それはそれで危険だ。だからこれくらいがちょうどいいはずだ。

ただひとつ悪い点を挙げるとするなら、カズハの位置かなー。カズハにはオレや秀の近くよりは、セツナ、エル、リュウの近くになるべくいて欲しいからな。カズハの特殊氣術はうちの守りの要だ。オレたち神仙族に使うのは宝の持ち腐れに等しい。できれば位置を交換して欲しいよな……。ここは二人でもなんとかなるし。

「カズハ!」

「何ー?」

「わるいんだけど、北側まで行ってくれないか?エルとリュウを守って欲しいんだ。それと、湊には西側に行くよう伝言を頼む」

「あー、なるほどねー。りょうかーい!」

カズハはオレの意図を瞬時に理解し、颯爽と走り去っていく。

これでエルとリュウの安全度が高まるはず。セツナたちには湊を合流させるし、大丈夫だろう。

『ドドドォォォオォォオオォォォン!』

もう幾度と聞いた轟音が耳に響く。だがそれは今までのものとはかなり違って聞こえた。やけに近くで聞こえたのだ。

右側方を見れば、秀がいる位置のやや斜め右後ろにぽっかりと大穴が空いていた。今までは頭をわざわざ下方に移動させて、地面とほぼ平行に光線を発射していたあの亀が、今の一撃は頭をそのままの位置で……上方で固定して放った。つまり、光線の方向が上から下に変化したってことだ。

そうなれば当然、光線の最終着弾位置はオレたちのいる場所に極めて近くなる。端的に言えば、危険度が急激に跳ね上がったことになる。

「秀!平気か?!」

「問題ねぇ。……学習してやがるなぁ、あの亀。単におつむが弱えバカ亀だと思ってたんだがなぁ。どうやらそうでもねぇみてぇだな。だが……ちいっとばかし遅かったんじゃねぇか?」

秀の目線の先には、木々よりも少し低い程度のサイズにまで小さくなった半透明の亀がいた。ここまでくると、今までに対峙したことのある魔物と同じようなサイズだ。

最初に比べたら怖さも激減した。光線の大きさも小さくなった。だけど氣の質自体は変わってない。見た目に惑わされて不用意に近づけば、命取りになる可能性が十分にある。

それに、あいつの周りに充満してるであろう氣の濃霧も、まだ完全に晴れたわけじゃないだろうからな。油断大敵ってやつだ。

オレは今日最大の功労者である秀に近づく。

「それにしてもだいぶ縮んだな」

「そうだな。だが俺たちの手で直接倒すことはできねぇ。それがなんともむず痒いところなんだよなぁ」

秀は後頭部をぽりぽりと掻く。

「それなー」

オレも最初から思ってた。なんでこっちの攻撃は通らないんだよ?!理不尽じゃん!!って。でもどんな形であれ、あの亀を倒せるってところだけは救いだ。いつもより達成感は全然ないけど。

ただ、この厄災がオレたちだけに降りかかったのは結構大きいことなんじゃないか?三年前に起きたっていう『アンフェール』ってやつがどんだけヤバかったのかはわかんないけど、この亀を野放しにしてたら、被害が甚大だったであろうことは容易に想像できる。

だって遠くの山脈にあんな穴をいくつも開けるし、こっちからの攻撃は効かないし……ただ自滅してくれるのを黙って見守るしかない、なんてさ。人命もそうだけど、自然も動物も魔物も……全てを無作為に破壊する厄災と化してたはずだ。

「あのサイズで最初とほとんど変わらねぇ威力の光線を吐くなんざ、ほんとふざけた野郎だぜ、あのバカ亀」

『ガギャァァアァァアアアアァァァァァ!!』

一層重みのある唸り声が轟く。まるでこれが最後の攻撃だと言わんばかりだ。

「最後まで芸がねぇ亀だったなぁ。やっぱバカ亀っつう名前がお似合いだぜ、お前にはよぉ」

あいつは口のやや前に光を収束させ、巨大な光の球体を作り出していく。それはあいつの身体をも覆い隠していた。

「ちゃんと避けろよぉ、ノア」

「当然!」

「来るぞ……!」

秀の一声と同時に光線が発射される。秀とオレはお互いに反対方向へと飛び退く。光線が音を立てて木々を貫き地面を抉る。

あの身体であの光線を放ったんだ。もう消滅しててもおかしくはーーー。

「上だ!ノア!!」

秀の張り裂けるような声が耳に響く。オレは視線を上にあげる。

そこには白く光り輝く光の玉……氣弾があった。そしてそれは勢いよく飛んでくる。オレの顔面目掛けて……。

その迫り来る氣弾はオレの反射速度を超えていた。

これはよけられーーー。







side シン=オーガスト

兄さんと俺の間に放たれた光線を避け、俺たちは分断される。その後すぐに兄さんが反撃するも、効果はなかった。加えて奴は俺の方へと再び光線を放つ。

避けることは造作もないが、これでは兄さんのもとには行けない。光線をひたすら放つことしかできない愚物のくせに、俺の邪魔をする。こんなことは許せるはずがない。

だが、あいにく奴には何の攻撃も効かない。つまりは俺のストレスだけが溜まっていくということだ。

「……だるいな……」

「へぇ。珍しいな、あんたが愚痴を言うなんて」

セツナは俺の背後にある木から飛び降りてくる。

「セツナか。他はどうした」

「湊、エル、リュウは北にいる。私も最初はそっち側で援護してたけど、あいつの注意を逸らすのなら散らばった方がいいかと思ってな」

「つまりは独断行動ということか」

「まあそうなる。けどあっちは三人で十分だろ。それに湊がいるからな」

「それはそうだが……まあいい。それより、一応聞くが、霊氣でも奴にダメージを与えることは不可能だったか?」

「ああ。セイに聞いてみたが、あんな奴は初めて見たらしい」

最上位精霊でも知り得ない魔物、か。

「たしか最上位精霊はこの世界が創造されたとほぼ同時に生まれた存在だったな」

「らしいな。ただ、セイは積極的に人間に力を貸していた時期以降は、精霊界クヴェルに籠ることが多かったらしいから、そこまで外に詳しくないそうだ」

なるほど。紫苑と似たようなものか。

「そういえばあの亀の攻撃、こっちには来なくなったな」

見れば秀がうまく気を引いている様子だった。

「それにしても暇だ。今すぐにでも鍛錬がしたい」

確かに、仮にあのままならこっちに攻撃が飛んでくることはない。見てるだけってのはつまらない。それは俺も同意だ。それに奴のせいで無駄なストレスも溜めた。どこかで発散しないとな。

「そんなに強くなりたいのか?」

「いや、別にそこまで執着はしてない。ただ自分がどこまでやれるのか試してみたいだけだ。私というよこしまな存在がこの世界にどんな爪痕を残せるのか。それが今の私の生きる意味……かもな」

「まあせいぜい、兄さんの役に立て。もし兄さんを害そうというのならーーー」

「ふ。殺すんだろ?分かってる。あんたはそういう奴だ」

「わかっているのならいい」

「……へぇ。あの亀、かなり小さくなったな。もっと近づきたいが、見えない毒の霧があるし無理か」

「あのサイズならそろそろ消えるだろう。あと一、二発あの光線を放てば、という感じか」

ん?この声は……。

「湊か。あっちはどうした」

「カズハが応援に入った。俺はカズハからこっちの応援に入るように頼まれて来たまでだ」

「へぇ。別に私ひとりでも問題なかったけど」

「セツナ。お前が急にいなくなってエルとリュウが心配していた。せめて一言声をかけろ」

鋭い眼光がセツナを見据える。

「……了解」

セツナは少し不満げに答えた。

この状況なら俺が兄さんのもとに行っても問題ないな。湊がいるなら万が一が起きても対処可能だろう。

俺は南側へと向かおうとした。が、その時だった。俺の目は衝撃的な瞬間を捉えた。奴が光線を放った直後、大きく垂直方向へと跳躍したこと。そして、あらかじめつくっていたのであろう氣弾に、高速スピンさせた自身の体をぶつけ……

兄さんと氣弾の間隔が一気に詰まった。

「兄さん!!」

俺は絶対に届くはずのない手を伸ばす。兄さんを死なせたくない。ただその一心で。



























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