婚約者の前で奪われる!?王太子が僕の番だった夜

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異性を超えた絆

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 夜はすっかり更けていた。

 窓の向こうには、王城の庭園を照らす灯りが遠くに瞬いている。

 夜会の喧騒はここまでは届かず、貴賓室はまるで別の世界のように静まり返っていた。

 紅茶の香りが、静かな空気の中にほのかに漂っている。

 殿下は、先ほどまでの話を思い返すように、ゆっくりと息をついた。

「……それにしても、やはり驚いたよ。まさか君が、あの家の嫡男だとは」

 言葉を区切り、殿下は小さく息をつく。

「だが、君は……思っていたよりも、ずっと話しやすい」

 その言葉に、僕は軽く肩の力を抜き、照れ笑いを浮かべた。

 しばらくの間、静寂が二人の間に落ちる。

 やがて、殿下は少し恥ずかしそうに目を逸らしながら、口を開いた。

「レオンと呼んでもいいか?」

 僕は軽く息を吐き、肩をすくめて答える。

「お好きにどうぞ」

 その言葉を受けて、殿下はわずかに照れた笑みを浮かべる。

「では、遠慮なく……レオン」

 その呼び名は、ただの形式ではなく、二人の距離を少しだけ縮める柔らかな響きだった。

「……えっと、高貴な方に呼ばれると、少し不思議な気分ですね」

 殿下は軽く肩をすくめ、照れたように目を逸らす。

 けれどすぐに気を取り直すように、深く息をついた。

「そうだな……少し緊張してしまったよ。さて、本題に入ろうか」

 その声音には、王太子としての威厳がほんの少しだけ混じっていた。

「私と君は……番だ」

「夜会でもおっしゃっていましたよね……でも、僕たち、男同士ですよ? 本当に番なんでしょうか」

 僕は少し声を震わせながら尋ねる。

「だって、世界は広いのに、番に出会える人ってすごく少ないでしょう?
 しかも、ほとんど異性同士のはずですし……」

「……確かに、ほとんどの番は異性同士だ。だが、だからといって男同士の番が存在しないわけではない」

 殿下は、遠くを見つめるように瞳を細め、静かに口を開いた。

「各国の王族や、ごく一部の者だけが知る話だが、過去に男同士の番が存在した記録は確かに残っている。戦乱の記録や王家の文書に、そうした縁を結んだ者たちの名前が刻まれているのだ」

 僕は思わず息を呑む。

「……本当に、そんなことが……?」

「もちろんだ。そして、驚くことに、彼らの中には、子を成した例もある」

 その言葉に、僕の胸の奥で何かが弾けるような感覚が走る。

「……それって、つまり、番の力が性別の制限を超える場合がある、ということですか」

 僕が問いかけると、殿下はゆっくりと頷いた。

「そうだ。番の力は、深く結びついた魂同士にしか働かない。互いの力が合致すれば、性別に関係なく、可能性は開かれる」

 静かに響くその声音に、僕は言葉を失った。

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